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(六十九)
バロックは、その男が作った発電機を見せてもらった。
「すごいよ!」
そう言って写メを寄こした。それは、横から見ればほぼ三角形で
、長い一辺を底に置かれていた。正面から見ると恐らく水を取り
込む吸水口と思われるが、横に広がった口が三角形のもう一辺に
沿って上を向いていた。バロックの説明に依ると、その中でター
ビンが回り発電も出来るらしい。今はタービンのトルクを上げる
為に、発電機の中の水の流れを如何にスムーズにするか研究して
いるという。方丈記ではないが、行く川の水の流れは絶えずして
、しかも本の水にあらずで、雨が降れば水流が増し、塵が流れて
詰まる。降らなければ水流が減り、電気が流れずに困る。様々な
条件の下でも安定した発電を得ることはそう簡単ではないらしい
。それは、夜は発電しない太陽発電だったり、風が吹かなければ
回らない風力発電も、スローエネルギー(そう呼ぶらしい)につ
いて回るモドカシサではあるが、我々はそういうモドカシサをも
う一度取り戻すべきではないだろうか、とバロックは言った。
「まるで生命維持のチューブを外してベットから立ち上がった末
期患者のような清々しさを感じたわ。」
私はかつてホームレスで散々モドカシイ思いをしたので、素直に
共感は出来なかったが、何となく言いたいことは解った。確かに
文明社会は我々のモドカシサを解消してくれるが、それと引き換
えに、我々はこの安穏な檻から抜け出せなくなって、ついには愛
や勇気や誇りといった人間性が、もどかしくなってはいないだろう
か。
こうして、仕方なく連れて行かれたバロックは、しばらくそこに
留まることを決めたのだ。もちろんK帯は圏外で、全く連絡が取れ
なくなって、私は随分モドカシイ思いをした。
(つづく)
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「パソ街!」66―70
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