北永劫回帰線

かつて我々は精神であった。ところが、今や我々は欲望である。

「パソ街!」46―50

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(四十七)

                    (四十七)



 サッチャンがラジオ番組で語った一言は、彼女の知名度の低さ

の所為か、何の問題も起きずに忘れ去られた、かのように見えた

が、後で知った事だが、やはりラジオ局には抗議の電話やファッ

クスが殺到していた。ラジオ局は表沙汰にはしたくなかったのだ

。ところが、ネット上でもその話題のスレッドが立ち、そこには

雲霞のように賛否の書き込みがされて、その臭いを嗅ぎ付けた

三面記者が、それを紙面を埋める為の小さな記事にした。その記

事が発端となって、ラジオ局は隠し通すことが出来なく為り、謝罪

会見をする破目になってしまった。

「出演者の『サッチャン』の発言が、ラジオを聴いて頂いた聴視

者の皆様に不快な思いをさせまして、誠に申し訳ありませんでし

た。」

テレビのワイドショーで取り上げられたこの会見は、畏(かしこ

)まった場で、ラジオ局の部長が発した「サッチャン」という言

葉が妙に新鮮に聞こえて、質問をする記者もやたらと「サッチャ

ン」を連呼しだして、神妙に始まった会見は何時しか笑い声が漏

れるほど和んで終わった。それでも、彼女の歌を番組のエンディ

ングに流していたテレビ局は、ラジオ局と同じ系列だったが、そ

の週から別の歌手の曲に差し替えた。彼女が縋り付いていた縄は

今まさに切り落とされようとしていた。彼女は自分の歌を聴いて

貰う大きなチャンスを失ったのだ。

 ところが、ネットでは「サッチャン」での検索は増え続けて、

それがきっかけで彼女の歌のすばらしさが改めて認められて、K

帯着歌のダウンロードが驚くほど増え、さらにCDの売り上げも

、天に在す神様が彼女が縋った縄を手繰り上げているかのように

、急激に伸びていた。そして、ついには著名な言語学の教授がそ

の問題についてテレビの中で、

「彼女の発言は誠に正しい。名前とは人に知ってもらう為にある

。ところが昨今の名前に使われる字とその読みは、甚だしく乖離

して、まるで身内だけが判れば良いかのように、他人に認識して

もらうことを拒否しているようにも見える。それは『うちの家で

は林檎のことをイチゴと呼んでます』と言ってる様なもので、家

の中だけなら問題に為らないが、著しく社会性を逸脱した命名で

ある。このことは、人々の社会性が希薄になった事と関係するの

かもしれないが、彼女の指摘は我々専門家こそが警告するべきだ

ったと反省している。」

と語った。すると今度は、すでに我が子に「読み仮名クイズ」の

ような名前(暇潰しにはなるだろうが)を付けた親達が激しく抗

議した。こうして「サッチャン」のひと言は、社会を巻き込んだ

議論に発展してしまった、が、御蔭でというか彼女の「エコロジ

ーラブ」は順調に売り上げを伸ばしていた。

                                (つづく)

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