北永劫回帰線

かつて我々は精神であった。ところが、今や我々は欲望である。

「パソ街!」16―20

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(十七)

                  (十七)



 就職祝いは、あの爆ッくれようとしてバレた居酒屋に、バロッ

クと待ち合わせて行った。今日は時間が早かったこともあってま

だ席は空いていたが、それでも我々は例の奥にある非常口の横の

席を希望した。未だ研修を修められないアルバイトの女店員は渋

々二人を案内して、

「あのぉ、駅前で唄ってる方ですよね?」

「そうや!」

「上手ですね。」

「わしゃサメかっ!」

「へへへっ・・。」

彼女はおかしな笑い方だった。

「今度聴きに行っていいですか?」

「あかん、聴かんといて。」

「えっ!」

「えっ!てな、道端でやってる者にええも悪いもないやろが!」

「あっ、こんど前で聴きます。」

「ありがとう。」

私は一言も喋らなかった。バロックは熱唱の余韻からか饒舌だっ

た。彼はビールを注文してから、私にメニューを見せながら料理

を5、6品頼んだ。

「仕事、何するの?」

「牛乳配達、朝だけだけどね。」

「マンガ描くんか?」

「いやっ、もう描けない。」

「何で?」

「ほらっ、判るじゃん。ダメかなって。」

「うんっ。」

私は、もうその頃から流れに取り残されて、売れているマンガに

も批判的だった。超能力や、スターウォーズなどの「嘘」の世界

が描けなかった。これは余裕の無い育ちの所為だと思った。いか

にも大袈裟な構想で結局「大切なのはヒューマニズムだ!」と言

うならば、何も宇宙の果てまで行って愛を叫ばなくても、四畳半

の部屋の中で事が済むだろうと思っていた。

「絵画を描く!」

「えっ?」

「そっ、絵画!」

「くっ、食えんよ?」

「うん、分かってる。」

「描いてたの、今まで?」

「いいや、これからだよ。」

私は乾杯からふた口目のビールを一気に喉に流し込んだ。バロッ

クは黙ってその様子を見ていた。私は飲み込んだビールが押し出

した息を大きく吐いて、

「どうせ食えないならやりたい事をやろうと思ったんだ。」

「あんた、サザンを超えたな!」

                                 (つづく)

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