北永劫回帰線

かつて我々は精神であった。ところが、今や我々は欲望である。

「パソ街!」11―15

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(十二)

                     (十二)



 河川敷に足を踏み入れた場所から相当河上へ歩いた頃、K帯が

鳴った、バロックからだった。

「アパート決まったで!」

彼は我々が出会った駅前から街並を歩いて10分程の所にあるア

パートを借りた。この街で住むことに決めたのだ。私は自分が住

む部屋でもないのに何故か嬉しくて前に踏み出す足も軽くなった

。ここは都内であっても都心ではない。家並の合間にマンション

は増えたが、それでもまだ家屋が何処までも続く下町だ。ただ、

川岸にあった多くの町工場は減っていきその後には高層マンショ

ンが次々に建っていた。道沿いに少しでも空き地があればやがて

囲いができて工事が始まり忘れた頃には眩しい新築マンションが

出来ていた。その様子を上空から撮影して早送りすると、密集し

た瓦屋根の隙間から次々と白い四方形の構造物が現れて、瞬く間

に黒い家並を破壊する癌細胞のように映るかもしれない。川岸の

高層マンションを見上げながら上空での生活は随分と今までの暮

らしとは違っているのだろうと思った。快適とは不快を遠ざける

ことだとすれば、世の中で一番ウザイ事は他人との付き合いで、

快適な環境だけを考えれば、人との交わりを絶って独りで居るこ

とになる。しかし、あの居住密度の高い建物の中でいかに快適な

暮らしを満喫していても人との関わりを避ける訳にはいかないだ

ろう。つまり幾ら室内の居住環境を快適にしても、気心も知れな

い他人が壁一枚隔てて存在するという認識は、人によって様々だ

ろうけれど、決して無関心にやり過すことなど出来ないのではない

だろうか。居住を共有する他者との快適な関係を築かないで専

ら室内の快適さにこだわっても、不快をもたらす他者への不審は

消えない。そういう身近でありながらが敢て関わりを避ける暮ら

しは、将に東京で暮らす人々の行動に影響を与えているのではな

いか。見て見ぬ振りをする行動は、この密集した東京の暮らしから

身に及ぶのではないか?

 やがて道は鬱蒼とした庭の木立に埋もれた老朽化した屋敷の前

に出た。その時、鼻を突く強烈な腐臭が辺り一面に漂っていて思

わず手で鼻をつまんだ。立ち止まってその臭いの元を探るとその

老朽化した屋敷からだった。鬱蒼とした庭にはレジ袋に入った無

数のゴミや大小の廃棄物が所狭しと積み上げられていた、いわゆ

るゴミ屋敷だった。私はそこで我慢していた屁を気兼ねなく音と

ともに放出した。

                                   (つづく)

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