北永劫回帰線

かつて我々は精神であった。ところが、今や我々は欲望である。

「パソ街!」1−5

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(二)

                  (二)



 眠りが遅れて襲ってきた為朝寝坊した。目が覚めた時は、すで

に仕事が始まる時間だった。日雇い派遣はこっちの都合で休むと

次の仕事も溢れるようになる。寝坊したことわりを連絡して散々

謝って許してもらい、シャワーを済ませて日用品の入ったバック

を背負ってネットカフェをでた。それでも今日一日は自由を得た

「奴隷解放の日」だった。いつの間にか、この国には奴隷制度が

復活していたのだ。

 早春の朝日がまぶしかった。棲家の無い者にとって季節天候は

決定的である。冬の深夜を何処で過ごすかは命に関わる。この冬

は温暖化が言われていたので油断をしてしまった。凍える街の隅

っこで眠ろうとしたが、寒さで眠る事も出来ず散々歩き回った末

肉体的にも精神的にも限界を超えた。限界を超えると脳が警告を

発した後、「運命に任せろ!」と告げて自ら判断のスイッチを切

断してしまった。そして私の命を支えていた多くの分子たちが私

を棄てそれぞれ元の物質へと換わっていった。もはや私は風であ

り雪であり闇であり世界そのものだった。世間や社会が消滅して

私も消滅しようとしていたが、まだ生き延びようとする生命の本

能だけが残された神経を研ぎ澄ませていた。気が着けば見知らぬ

廃墟ビルのレストランのソファに眠っていた。

 ホームレスにとって地球の温暖化は有難い限りだ。このまま熱

帯気候になって呉れないかとさえ思う。そうなると外で寝ても苦

にならないし寒さに備える必要もない。ホームレスが苦にならな

いときっと皆んな働かなくなって、その時から先進国のCO2排

出量が減り始めるのかもしれない。

熱帯の働かない若者に日本人が、

「何故、働かない?」と尋ねたら、

熱帯に住む若者が、

「何故、働く?」と聞き返してきて、

日本人が、

「楽な暮らしができるだろう」と云うと、

熱帯に住む青年が、

「働かなくても、楽に暮らしてる」と言った、

って熱帯になれば日本だってそうなるかもしれない。

 冬の間は廃墟ビルのレストランのソファで運良く寝泊まりする

ことが出来た。私を棄てた分子たちも人肌を恋しがって又戻って

来てくれた。さらにその厨房には廃業前の缶詰やパスタなどがそ

のまま放置されていた。さすがにコンロは着かなかったが、さっ

そく缶に閉じ込められたトマトやアスパラガスを解放して私の胃

に閉じ込めた。それでも何時誰か来ないかが気になって落ち着け

ないレストランだった。東京に在るものは全てに所有者がいるこ

とを改めて知った。空き地の雑草一つもその土地の所有者のモノ

なんだ。ここで行われているのは所有権の奪い合いなんだ、まだ

空気の所有者までは現れていないが。

 私はすこし歩いて近くの国家が所有する河川敷へ行った。

                                  

                                 (つづく)

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