北永劫回帰線

かつて我々は精神であった。ところが、今や我々は欲望である。

ゆーさんの「パソ街!」1―5

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(五)

                 (五)



 ミコの母親は、従ってわたしの(元)妻は、山々の谷間を縫って蛇

行する河川が急流を勢い良く流れ落ちて、その勢いが広がりに変わ

る盆地の外れにある実家で暮らしている。わたしは大阪生まれの大

阪育ちのため娘が生き延びることが出来る環境は妻の実家しかない

と思った。ただ、そこでわたしが娘の為に始めた無農薬栽培が農家

の人々の顰蹙を買って、彼等から害虫を育てるなとまで言われて、

こっちはこっちで飛来する農薬に困り果て、気まずい反目が生まれ

た。そんな時に、技術屋根性からか勢い良く流れる用水路の水流が

利用されていないことに思い立って、発電機を作ることにしたが、

ところが試作した発電機が用水路の取水口を破壊するに到って、遂

に村八分にされてしまい住めなくなった。それでもわたしは水流発

電機の製作が諦め切れず、人里がダメなら山の中でと老後の蓄えを

切り崩して工場を造ってしまった。呆れ果てた妻は愛想を尽かして

実家に戻ってしまった。しかし、実際のすれ違いはそれ以前から生

じていた。彼女は娘の症状が現代医学では治癒できないと知ると、

わたしの知らない間に祈祷術や気功術や霊媒術といった神秘主義に

縋るようになっていた。技術屋のわたしの立場から、彼女が語る効

果に眉に唾をつけて聞いていたが、それらの治療は恰(あたか)も改

善したかのように装われていたが、どれも根本的な治癒には到らな

かった。それでも妻は一時的な変化に眼を奪われてその効果を信じ

て疑わなかった。やがて、彼女はわたしについている悪霊を追い払

う為に一緒に除霊を受けて欲しいとまで言い出した。わたしはそう

いうことがたとえ事実だとしても、理屈の確かめられない怪しい力

に頼るのは娘にとっても家族にとっても自分自身の生きる力を失う

ことになるからと言って断固拒否した。

「仮に事実やとしても、一度そういう神秘を体験した者が、その後、

その力を頼らずに生きることができると思うか?苦しくなるとまた

神秘主義に縋ろうとするやろ」

自分以外の力に依存して、果たして自分を信じることができるだろ

うか。大事なことは自分自身を見失わないことではないか。そんな

ものに頼らずに自分らの力だけで生きていこうと説得したが、妻は

縋った藁を離さなかった。

 我々はもちろん未知の世界で生きている。だからと言って未知の

力に頼ってしまえば自立して生きることができないではないか。つ

まり、常に大きな力の前では服従するようになるだろう。そして、

そういう能力が具わっていると勘違いした神秘主義者たちは、遂に

は自分は特別な存在だと信じ込み、やがて権力者として力のない人

々を見下すようになるに違いない。

                                  (つづく)

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