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「みたび『愛と死を見つめて』を見つめて」
「愛と死を見つめて」の記事を載せながら、実は本も映画も観たことが
なかったのですが、映画だけはYouTubeで観れたけれど、このたびネット
で古本を取り寄せて読みました。大島みち子さんと河野実さんの文通を纏め
た「愛と死を見つめて」と彼女が書き遺した「若き命の日記」です。と言う
のも、前にも書きましたが、どうしても大島みち子さんのことが頭から離れ
ないのでもっと知りたいと思ったからです。軟骨肉腫という難病に冒されて
、進行を止めなければもう助からないと知りながら、再発を防ぐために顔の
半分を切除したにもかかわらず、若い命に巣くった病魔の進行をくい止める
ことができずにやがて再発する。彼氏である河野実さんの強い考えから嘘や
隠し事はやめようと決めて、死を覚悟したふたりの手紙は揺れ動く感情が赤
裸々に綴られている。われわれは日常生活の中で他愛のない話をしていても
、相手の人が余命幾ばくもないことを知りながら日常の会話を交わすことは
まずない。そもそもそんな非日常的な事実を知れば日常の会話は成り立たな
い。日常生活は誰もが「いつまでも生きている」という前提の上で成り立つ
。確か彼女も本のどこかで、主治医から両親だったかと一緒に今後の治療方
針を聴く場面で、誰もが治る見込みのないことを知りながら、それには一切
触れずに話を聴いていることの不思議を記していた。彼女の死が避けられな
いと判った後のふたりの手紙は、残された時間の中で残酷な現実に向き合い
ながら、日常を取り戻そうとする思いと、非日常をどう受け止めればいいの
かの間で苦悩する。ふたりは愛で繋がっていても死の影は彼女にだけ忍び寄
る。死を悟った彼女には愛しか残されていない。そして彼女の死はやがてふ
たりの愛を引き裂く。彼女は命とともに愛も失う。いっぽう彼の方は愛を失
っても命は残る。やがて彼女の死によって愛を繋ぐことは出来なくなる。限
られた愛の行方の選択を委ねられたのは彼の方だ。彼女は何度も自分のこと
を忘れて新しい人生を手にして欲しいと願う。が、彼は生きることを諦めな
いで欲しいと訴える。生きている限り愛は続くからだ。しかし、彼女の余命
は尽きて彼の愛に見守られながら息を引き取る。それは「愛は死を乗り越え
られるか」それとも「死は愛を引き裂くか」の瀬戸際のやり取りだった。も
しも「命は愛に先行する」とすれば、彼女の死によって二人の愛は終わった
ことになるが、しかし「愛は死に先行する」とすれば、たぶん二人の愛は永
遠に終わることはないだろう。
(おわり)
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