北永劫回帰線

かつて我々は精神であった。ところが、今や我々は欲望である。

従って、本来の「ブログ」

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   「奇跡の時代」 カレン・トンプソン・ウォーカー著 雨海弘美訳



   
  図書館の新刊書を並べた一角にこの本はありました。最近の本

を読んでないなあと思って序でに借りました。私はまったく知らな

かったのですが、何でも、著者にとってこれが初めての著作で、大

手出版社が新人作家としては破格の出版料を支払ったことが話題に

なったらしい。そう言われてみれば、以前にネットのニュースにそ

れらしき見出しを見た記憶があったが記事は読まなかった。

 アマゾンの内容紹介によると、「突然、地球の自転が遅くなり始めた。

気候や農作物、人々の心にも変化が生じるなか、ロス郊外の町に暮ら

す少女・ジュリアを取りまく状況も変わっていく。なんとか生きのびようと

もがく人々の姿を静謐に描く。」とある。すでに映画化も決まっているよ

うなので、退屈するようなことはなかった。短文の簡潔な文章が小気味

よく物語を綴っていく。夢が膨らむはずの思春期の少女が世界が終焉

するかもしれない予兆の中で、それでも友だちとの葛藤や好きな男の

子への想いや思春期ならではの悩み、また時には大人の世界への批

判を語る。ただ、残念だったのは大きなテーマであるカタストロフィーの

原因が「わからなかった」で終わってしまったこと。何か、もうちょっと仮

説でもいいから原因を探って欲しかった。いまや地球環境問題は世界

中の関心が集まっている時でもあるので、実際、私の関心でもあるの

でもう少しリアリティーを与えてほしかった。

 「訳者あとがき」から転載すると、「辛口の書評で知られるニュ

ーヨーク・タイムズ紙のミチコ・カクタニが『リアルとシュールリ

アル、日常と非日常をなめらかな筆致と才気で融合させた・・・

必読の文芸作品』と賛辞を送ったほか、大好評を博した。」とある。

少しだけアメリカ文学の現状が垣間見れた。元気をもらったので、

私も小説に戻ります。


                             (おわり)




              「わが町の祭りとお会式」


 私がこの土地に来て初めてその祭りを観たのは、もう20年以上

も前のことだった。それぞれの集まりの老いも若きもが笛の音に合

わせて団扇太鼓や鉦を叩いて旧街道を囃しながら練り歩く。その前

の週には、花火大会も行われて人口5万余りの町の中心地は祭り一

色に染まります。

 その後、わたしはこの地を離れて東京へ出た。東京では何度か住

居を変えたが、東京での最後の夜を過ごした地は大田区の池上だっ

た。池上は、かつて日蓮聖人が病気治療のため身延山から常陸の湯

に向かわれる途中にこの地で入滅され、その後、日蓮宗の霊場とし

て池上本門寺が築かれ、古くより多くの信者によって崇められてき

た。その門前には、蒲田と五反田を結ぶ東急池上線の池上駅が置か

れ、そもそもは本門寺の参拝客のために鉄道が引かれた、とあった。

日蓮聖人が入滅された命日には毎年「お会式」が盛大に行われ、全

国各地の信徒がこの地に集まり聖人を供養します。私は、初めてそ

の「お会式」を観た時に、その様子がこの土地で観た祭りと全く同

じだったことに驚きました。団扇太鼓の音頭も踊り子を先導する万

灯もそっくり同じでした。その後、この町に帰ってきて毎年この地

で団扇太鼓のリズムを耳にしますが、その度に池上本門寺の「お会

式」を思い出さずにはいられません。ふたつの祭りには繋がりがあ

ると思っていましたが、ところが、いくら調べてみても日蓮宗の「

お会式」との関連はいっさい触れられていない。宗派間の何らかの

拘りからその宗教色を消し去ったのかもしれませんが、しかし、謂

われ(物語)を失った祭りとはいったい何のために行われるのだろ

うか?そのまさに換骨奪胎たる祭りは来週の土曜日にあります。

町のあちらこちらからその日に備えて団扇太鼓を打ち鳴らす音が

聞こえてきます。



                                (おわり)


「春告鳥」




            「春告鳥」


 きのう、中国山地の山間でウグイスの覚束ない初音を

耳にしました。覚束ないながらも確かに「法華経」と聴き

取れました。

 テレビでは「3・11」の追悼番組が流されていました。



   ふり返って  祈る彼方から  春告鳥      ケケロ  

  




        「人よ、寛(ゆるや)かなれ」



 本は読むためのもので飾るためにあるのではないという信念

から読まなくなった本は大方処分したが、「そうだ!」、確か

ボードレールだったと思うが部屋には一冊の本も置かずに思索

に耽ったと何かで読んだことがあったからかもしれないが、そ

れでも、どうしても捨てられずにニコチンで燻製のように茶色

く変色した本棚を眺めていると、ふと、若い頃に読み耽った金

子光晴の本が眼に留まった。私は、どうしてか言葉から生まれ

る詩情に疎くって、たとえば、中原中也の詩を読んでも未だに

何が言いたいのかよく解らずにいるくらいで、もちろん金子光

晴も詩人として作品を遺した人だったので、読んだ記憶があっ

ても一編の詩も浮かび上がって来ないで、「確か、蛾だったよ

な」くらいで、そんなことだからおそらく彼の詩集は処分して

しまったに違いないが、ただ、一冊だけ残された「人よ、寛(

ゆるや)かなれ」と題された随筆が目に留まった。これも題名だ

けが気に入って辛うじて手元に残ったが、その内容については

まったく忘れてしまった。さっそく中を開いて読んでみたが、

その人と為りは甦ってきたが然したる想いはなかった。つまり、

私には、「人よ、寛(ゆるや)かなれ」という題名だけが彼のメ

ッセージとして残されていた。

 今日は情報技術の飛躍的な発展によって、伝わってくるニュ

ースや社会の在り方について、過ちが許されない世知辛いモラ

ルが近代人を縛っている。何気ない呟きさえも全世界の人々に

まで知れ渡り非難される。何もかもが整ってないといけなくて、

油断して階段を踏み外した者は抹殺されるバトル社会である。

しかし、われわれとはそんな確立した存在だろうか?少なくと

も私は、過ちを犯してからでないと正しいことさえ分別できない

だらしない人間である。欠伸さえも気兼ねなくできない社会で

「人よ、寛(ゆるや)かなれ」という言葉ほど私の心を緩ませるメ

ッセージはない。それにしても、いったいわたし達は何処へ急

いでいるのだろうか?

 その随筆の中で彼は、「われわれは、すぐに極限に走る傾向

があって、余裕が少ない。」と言いながらも世界中を放浪して

きた経験から、「それも、日本人だけに限ったことではなく、

どこの民族でも、多少、ニュアンスのあらわれかたがちがうだ

けでぎりぎりのところで人間がそれぞれもっているもので、時

には、その熱っこさにびっくりすることがあった。」そして、

「中国人の二重底性格にも、一面拳から血を流すまで机をたた

いて、じぶんを通そうとして議論をしている若者たちがいて、

議論の主旨も寛大さを欠き、一方的な憎悪をかきたてていた。」

さらに、さまざまな民族に於いても、他人を排他することで自

分を正当化しようとする偏狭で利己的な論理の不条理に暗然と

した。当時(1974年)はまだ米ソ冷戦の最中で、ベトナム戦争、

中東紛争の悲劇が世界を不安に陥れていたが、その解決を探

るために繰り返し会議を重ねても、「その解決の埒があくのがお

そい」「そのわけは各国の政治人の、それらの国を代表した言い

分が、――もちろんその国々の全体の人々の意見が利我的で、

すこしの損もしまいとがんばれるだけがんばることで、解決が長

引く。」「その延び延びのあいだに、多くのいのちがなくなった悲劇

が、人間精神の今日の欠落を指摘しているにもかかわらず、だれ

にも、なにほどのこともできないようである。」「そして、これはどうや

ら逆に、個人の賦活、ひとりひとりの精神生活の反省がされなけれ

ば、悲劇はなくならないのではないかとおもうと、僕は、全身の血が

退いていくおもいがする。」 と語っている。

金子光晴『人よ、寛かなれ』より

 果たして、われわれは、寛(ゆるや)かであるだろうか?


                       (おわり)

   




     「自分自身のために残す三島由紀夫の言葉」


「純文学には、作者が何か危険なものを扱っている、ふつうの奴な

ら怖気をふるって手も出ないような、取り扱いのきわめて危険なも

のを敢て扱っている、という感じがなければならない、と思います。

つまり純文学の作者には、原子力を扱う研究所員のようなところが

なければならないのです。私小説ばかりでなく、読者はそれこそハ

ラハラして、作者の身の危険を案じながら、それを読むのです。小

説の中に、ピストルやドスや機関銃があらわれても、何十人の連続

殺人事件が起こっても、作者自身が何ら身の危険を冒して『危険物』

を扱っていないという感じの作品は、純文学ではないのでしょう。」

        「孤立無援の思想 高橋和巳 全エッセイ集」より
        「仮面の美学 ― 三島由紀夫」


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