北永劫回帰線

かつて我々は精神であった。ところが、今や我々は欲望である。

「パソ街!」11―15

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(十一)

                     (十一)



 経験の浅い船乗りが海上で船酔いをすると、それを治す為に自

らの男性自身を刺激して自慰を行い船酔いを克服すると聞いたこ

とがあるが、その為に船室には必ずエロ本が置いてあると云う。

東京という人の荒海で、人々が迷いを断ち自分自身を回復する為

にひたすら愛を求めるのも理解できる。人間から性欲を奪えば社

会はきっと成り立たなくなるに違いない。社会の中のあらゆる関

係が性的関係から演繹されるとすれば、ホームレスやニートと呼

ばれる社会弱者などは、自由恋愛の社会の中で異性との性的

関係を上手く築けない性的弱者で、社会が幾ら経済的な救済を

試みても失敗するだろう。彼等の社会性を高めるには、何よりも

男性として或いは女性としての自信を高めることが重要なのでは

ないか。それにはまず異性との交流によって社会性を取り戻し、

その社会性で自己を見つめ直すことが良いのではないか?

 社会は人と人との「共生」で成り立っている、それ以外有り得な

い。社会が彼等を見捨てる時、彼等も同時に社会を棄てる。しか

し幾ら彼等が社会との関わりを断って自己を閉ざしても、人間は

、否、生物は性本能によって異性(社会)に自己を開かねばなら

ない。その異性との関わりが失った社会性を目覚めさせるのでは

ないか。船乗りの自慰は船酔いから覚めさせてくれるが、ホーム

レスの自慰は自己本位で益々社会から遠ざかっていくだろう。つ

まり、「若い根っ子の会」と「赤線」を復活させるべきだ!

 やっちゃば(秋葉原)で大勢の人を殺傷した男はメールに自ら

の切実な性的不遇を嘆いているが、何故、彼は自分をブサイクだ

と思ったのだろう?私は写真を見てそんな風には思わなかったが

。おそらく彼は異性との関わりを上手く持てなくて、そのことが彼

をズレさせるきっかけになったのではないか?社会は論理でな

んかで創られていない。社会は理性から見れば不条理な本能

によって出来ている。人が人を蔑むのも残念ながら本能だ、だ

から理解していても「いじめ」は止まない。彼は社会との本能的

な繋がりを取り戻せなかった。ただ携帯の掲示板への書き込み

だけが唯一の社会との繋がりだったが、拒絶されたと思った時、

理性を失い本能に任せて、バーチャルの世界を飛び出してリア

リティーの世界に仕返しをした。いずれにせよ、我々社会的弱者と

呼ばれる者にとって社会的な不満よりも、もっと切実なことは異性

(社会)との関わりを失うことなんだ。はっきり言うと「女とやりてぇ

んだよ!」というのが彼の本音じゃなかったのか?

                                 (つづく)

(十二)

                     (十二)



 河川敷に足を踏み入れた場所から相当河上へ歩いた頃、K帯が

鳴った、バロックからだった。

「アパート決まったで!」

彼は我々が出会った駅前から街並を歩いて10分程の所にあるア

パートを借りた。この街で住むことに決めたのだ。私は自分が住

む部屋でもないのに何故か嬉しくて前に踏み出す足も軽くなった

。ここは都内であっても都心ではない。家並の合間にマンション

は増えたが、それでもまだ家屋が何処までも続く下町だ。ただ、

川岸にあった多くの町工場は減っていきその後には高層マンショ

ンが次々に建っていた。道沿いに少しでも空き地があればやがて

囲いができて工事が始まり忘れた頃には眩しい新築マンションが

出来ていた。その様子を上空から撮影して早送りすると、密集し

た瓦屋根の隙間から次々と白い四方形の構造物が現れて、瞬く間

に黒い家並を破壊する癌細胞のように映るかもしれない。川岸の

高層マンションを見上げながら上空での生活は随分と今までの暮

らしとは違っているのだろうと思った。快適とは不快を遠ざける

ことだとすれば、世の中で一番ウザイ事は他人との付き合いで、

快適な環境だけを考えれば、人との交わりを絶って独りで居るこ

とになる。しかし、あの居住密度の高い建物の中でいかに快適な

暮らしを満喫していても人との関わりを避ける訳にはいかないだ

ろう。つまり幾ら室内の居住環境を快適にしても、気心も知れな

い他人が壁一枚隔てて存在するという認識は、人によって様々だ

ろうけれど、決して無関心にやり過すことなど出来ないのではない

だろうか。居住を共有する他者との快適な関係を築かないで専

ら室内の快適さにこだわっても、不快をもたらす他者への不審は

消えない。そういう身近でありながらが敢て関わりを避ける暮ら

しは、将に東京で暮らす人々の行動に影響を与えているのではな

いか。見て見ぬ振りをする行動は、この密集した東京の暮らしから

身に及ぶのではないか?

 やがて道は鬱蒼とした庭の木立に埋もれた老朽化した屋敷の前

に出た。その時、鼻を突く強烈な腐臭が辺り一面に漂っていて思

わず手で鼻をつまんだ。立ち止まってその臭いの元を探るとその

老朽化した屋敷からだった。鬱蒼とした庭にはレジ袋に入った無

数のゴミや大小の廃棄物が所狭しと積み上げられていた、いわゆ

るゴミ屋敷だった。私はそこで我慢していた屁を気兼ねなく音と

ともに放出した。

                                   (つづく)

(十三)

                   (十三)



 ずいぶん遠回りして、私はまた駅前へ戻ってきた。バロックは

昨日と同じ場所にヘタって、昨日と同じようにギターを抱えてア

ヤしていた。人通りは相変わらずだが、昨日と同じように誰も彼

に関心を与えずに通り過ぎた。私は東京人がする様に、人の目を

気にしながら少し離れた所から遠慮がちに彼に頭を下げた。する

とバロックは大阪人の人懐っこさで「おうっ!」と言って手招き

をして私を呼んだ。

「ちょっと、ここに居って。」

そう言うといきなりアヤしていたギターをしごいて鳴かし始めた

。また、「STAND BY ME」だった。こうして私は今日

もサクラを演じることになったが、歌い終わらないうちに制服を

着た三人の女子高生が私の後ろで足を止め彼の歌を聴き始めた。

すると彼女らが目当てと思われる、「うだつが上がらない」と云

う言葉にすら無縁の冴えないフリーター風の男達が彼女達を取り

囲んだ。やがて彼女達は流行りの歌をリクエストしたが、バロッ

クはあっさりと「知らん!」と言って応えなかった。するとその

場にはどう取り繕っていいのか解らない気まずい空気が漂った。

私はすかさずサザンオールスターズのバラードの曲をリクエスト

すると、彼女たちも思い出したように手を叩いて賛同した。それ

から彼は大人の仕事を覚えた子供のように、サザンの曲ばかりを

歌い続け、彼女たちも手拍子をしながら一緒に口ずさんだ。やが

て昼の部はめでたく終わったが、盛り上がりの割には徒労に終わ

った。そして往来の夜の部は、仕事で傷んだ脳味噌をまた明日の

仕事の為に備えてアルコールで消毒し終った中年のサラリーマン

に入れ替わった。彼等は自分の思い通りになる時間を何とかして

引き伸ばそうと、ヨレヨレになりながらも昼間は相手にもしない

路上のミュージシャンにさえチョッカイを出した。もしも寝なけ

れば朝が来ないとしたら、一晩中寝ないでいることも何の苦にも

ならない程、彼等は次の日の朝が来ることを苦にしている様に思

えた。おかげで夜の部は大幅に延長することになり、昼のサービ

ス興行を取り返す程の実入りになった。ついにはバロックは疲れ

から声が出なくなって、私に歌詞を見せて「唄ってくれ」と言っ

た。私は全く自信などなかったがバロックに急かされて仕方なく

唄った。すると音程の操作が不慣れな為に、急に上げ過ぎて音階

の天井に遮られて下に落ち、下にある筈の音が休んでいるうちに

違う所から現れたりして、これが結構ヨッパライに受けてしまい

、冷や汗を掻きながらも調子扱いて最後までボーカルを担ってし

まった。やがて人通りも途絶えて、帰り支度をしながらバロック

が言った、

「サザンはすごいな。」

私が答えた、

「えっ、ああっ、長いよね。」

「歌謡曲やからな。」

「歌謡曲?」

「もう飽きた。」

「『いとしのエリー』と『TUNAMI』って似てるよね。」

「日本のビーチボーイズやもん。」

「うまいな。」

バロックはしばらく黙っていた。そして、

「そもそも音楽は、って言う気はないけれど、いかにして退

屈な日常を忘れさせるかが音楽の魅力だとすれば、仕事の手

を止めてまでも聴きたくなるような衝撃を与える曲はもう生

まれてこないのかもしれない。」

「どうして?」

「音楽が日常になってしまったから。」

「氾濫しているという事?」

「うん。」バロックは続けた、

「大体、ファンを大事にするロックミュージシャンなんて、

そもそもおかしいんや。ミュージシャンは音楽的な意味で常

にファンを裏切り続けなあかんのや。」

「裏切るの?」

「っていうか、先を行く。」

「あっ!、後から行くから歌謡曲なんだね。」

「ファンに媚びてるんや!」

「でも、売れなかったらどうするの?」

「そうや、それが怖いんや!だから媚びる。」

「それって良くないの?」

「ええよ。ただ飽きてくる、演ってる方も。」

「だからライブパフォーマンスが過激になるんだ。」

「見世物やからな、今のコンサートは。たとえばアイドルは、見

てくれの良さで売ってるけど、それって怖いもの見たさで売る化

け物屋敷と違わへんやろ。」

「売れれば何でもいいのかってこと?」

「うん、今は何もかもが世の中に媚びてる、すべての芸術が。」

「そもそも芸術って何?」

「人を日常から覚醒させるもん!」

「じゃ、今は芸術が商業主義に覚醒させられたんだ!」

「うまい!、みんな売れそうなものを客の顔色を窺いながら創っ

てんや。」

「自信がないから?」

「いや、売れたいから。すべての文化は経済に負けたんや。」

「心に愛が無ければ、どんなに美しい音楽も相手の心に響かない、だ

。いっそ下ネタだけでラブソングを創ればいいんだよね。」

「あっ、それ衝撃的、超エロイ歌をネットで流せばいいんだよ。」

「やる?」

「考えとくわ。」

帰り支度が終わったのでそれ以上話しは続かなかった。ギターを

背負いながらバロックが言った。

「またあそこやろ?よかったら泊まっていきなよ。」

「ありがとう。」

私はバロックの好意にすがることにした。

 バロックが借りたアパートは、近くにある電気工学系の専門学

校の生徒が多く住んでいたが、やがて学校もマスコミ関係の教室

などを増やした為、それまでは男ばかりの学校に年頃の女子が増

えて、体裁を気にしはじめた男子生徒がさすがにこの部屋はと敬

遠するほどの古いアパートだった。途中のコンビニで食い物を買

って、確かに古いが住む者を永く迎え入れてきた暖かさのあるア

パートの玄関を入った。薄暗い廊下は左右に部屋を分けていた。

奥から二つ目の左側の部屋の前でバロックは止まって引き戸を開

けた。そして入り口の電源を入れると部屋が光った、

「いらっしゃいませ。」

「ありがとう。」

「お客さん、非常口はあちらにありますが、決して爆ックレない

ようにお願いします。」

バロックは奥の非常口と書かれたシールを指して言った。二人は

顔を見合わせて笑った。そして彼は私の背に腕を掛ける様にして

私を中へ導いた。もちろん部屋には何もなかった。ただ、時代遅

れの裸電球の黄色い光が新しい住人を歓迎するかのように暖かく

輝いていた。その四角い部屋は、ホームレスの私の生活が失った

ものをしみじみと思い出させた。
                    
                                  (つづく)

(十四)

                (十四)



 「水と油っていうのは相性が合わない喩えで使われるよね、」

「んっ、」

バロックの部屋でコンビニで買った弁当やスナックを口に入れな

がら、あっ、もちろん缶ビールも飲みながら、何も無い部屋で胡

座をかいて喋るバロックに、私は昼間の疲れから彼に断って、身

体を横にしてそれから縦にして肘を枕に彼の話を聞いていた。

バロックは続けた、

「それって溶け合う事が相性が良いという前提で使われているけ

ど、おかしいと思えへん?」

「ふん。」

「水は水で自分を変えない、油も油で水に溶け込もうとしない、

それでも同じ器の中で大人しく収まっている。それってすごい正

しい関係だと思わない?」

「なるほど。」

「ところが日本人は本来混ざることが好ましいと思ってるから無

理矢理に力を加えて混ぜ合わせようとする。」

「それって男と女のこと?」

私が口を挟んだ。

「ああっ、それでもええ、」

「たとえば男と女でいうと、出会った頃は互いに距離があって相

手のことを慮るが、やがて一つの器に入ると互いの性質を無視し

て一つに成ろうとして無理をして遂には責任を相手に転嫁する。」

「同じ器に居ることが苦痛になってくるんだ。」

「だから始めから男と女は水と油だと認識して器に入る事が大事

なんや。」

「いずれ間違いなく分離する?」

「しかし接する処も必ずある、その境界面こそが互いを理解する

重要なところやと思う。全ての変化は境界で生まれるんや。」

「どうするの?」

「通い婚!」

「何?それ、一緒に住まないの?」

「そう、ズルズルと一緒に生活しないで、必ず自分の部屋へ

戻って独りの時間を持つ。」

「もしどちらかが他の異性に気が変わったらどうするの?」

「どうも無い、別れるしかないやろ。」

「そんな簡単に踏ん切りがつくのかな?」

「しやから絶対に一緒に住まないんや。」

「そうやって割り切れればいいけど。」

「つまり俺が言いたいのは、恋愛にとって大事なことは距離や

、せめて相手の全体が見える程度の距離を保てと言うてんねん

、互いにあまり近くで見ないことや。いつも一緒に居たいとい

う思いが叶った時、恋人はあんたの退屈な日常や、意味の解から

ん変な癖や、だらしない寝姿やふてぶてしい態度や曖昧な応対に

、「白馬の王子様」が「墓場の小父さん」に替わるのに時間は掛

からん。それでもあんたは恋人の身勝手な想いを冷めさせない自

信があるか?恋愛の夢から醒めさせるものは日常なんや。そして

人が恋愛の感情を激しく燃え上がらせるのは、恋人同士で居る時

よりも、実は、独りで居る時なんや。」

「距離ね。」 

「磁石で言うとマイナスとマイナスはもちろん反発をするけれど

も、ある距離があればそれ以上は干渉せえへんやろ。その距離こ

そが互いを結ぶ距離やと思うんや。」

「結ぶのかね?」

「この国はすぐに一致団結だとか満場一致とか組織の論理で、そ

れぞれの意見など聞かないで、組織への服従を押し付けるけれど

、器を振るのを止めたらまた元の水と油に戻るだけや。」

「じゃあ、どうすればいいの?」

「どうすればいいんだろ?」

「えっ!」

「つっつまり、組織というのはその存在そのものが一つの目的を

共有しているのやから、そのこと以外で個人の言動に要らぬ干渉

をするべきや無いと思う。」

「どんなこと?」

「言ってしまえば道徳や!」

「えっ!」

「なんでみんな同じ考えを強制させられなあかんねん?」

「ううーん、」

「国を愛そうなんて、大きなお世話や、」

「誰が生まれた国を好ましく思わないか!」

「うん。」

「愛は強制されて生まれるもんやないし、いかなる義務からも自

由だ!」

「美徳とは、偽装した悪徳に過ぎない、だよね。」

「何、それ?」

「あっ、道徳のこと。えっと、ラ・ロシュフコー!」

「ああっ、そうだっけ。えっと、何の話しだっけ、始め。」

「えーとっ、水と油!」

「おおっ、せやせや!」

「うん。」

「たとえば、器の中に入れられた水と油は、水と油の二つがある

けど、力ずくで混ぜてしまえば水と油が混ざった役立たない汚水

になるだけや。」

バロックは続けた、

「今までワシラは上からの距離だけに従わされてきたけれど、こ

れからは間違ってもいいから自分達の意志を表すべきや、そやな

いと上からのプレッシャーに取り込まれて、やがて自分自身を見

失い油まみれにされて棄てられるのが落ちや。」

「そんなことをすれば皆なホームレスになってしまうんじゃない

の?」

「ホームレス結構やんか、権力におもねって自らを虚しゅうして

奴隷となって生きるよりも、はるかに自立した清い生き方や!」

「ああっ、この国には奴隷かホームレスかの選択しか残されてい

ないのか?」

「いや、もう一つある!」

「えっ、何?」

「成功して大金を手にすること。」

「成功ね、無理やね、きっと。」

「しかも、もう一つある。」

「えっ、もうひとつ?」

「死ぬこと!」

「・・・。」

缶ビールを逆さにして喉へ流し込んでいた私はその言葉に絶句し

たが、私は応えずに話を変えた、

「もしかしたら、何でも溶かそうとする水の性質こそが、我々日

本人の気質なのかもしれないね。」

「ああっなるほど。」とバロックは言って残りのビールを干した

。そして程なく胡座をかいたまま頭を垂れて黙ってしまった。バ

ロックは寝ていた。我々の会話はこうしてぐだぐだのまま終わっ

た。私もその後は何も記憶せずに次の日の朝を迎えることになっ

た。

                                (つづく)

(十五)

                  (十五)



 バロックが言った社会での選択肢が気になった。我々の選択肢

は四つで、企業に服従して奴隷になるか、それを拒否してホーム

レスになるか、一か罰かの勝負をして大金を手にするか、そのど

れをも潔しとせずに世の中から暇(いとま)を貰って身を消すか

、はて、それも嫌ならどうすればいいのか?

 私は今まで、学校を卒業して製造会社で奴隷として働き、世間

の冷たい目を受けながら逃げ出して、一攫千金を夢みてマンガ家

を志し、出版社に裏切られてホームレスになって、あと残されて

いるのはどうして世の中から暇乞いをするかだけだった。

 高校を卒業して、父のいない私は就職する他選択はなかった。

それは判っていたが希望する職種は、どれも進学を果たさなけれ

ば入場券を手にできなかった。卒業間近になって仕方なく決めた

就職先には何の夢も持てなかった。そして、育った牧場を後にし

て屠殺場へ引かれていく牡牛のように、ただ絶望だけを胸に社会

へ放り出された。何の期待も持たなかった会社は、期待通りに何

も無かった。大手の自動車会社の下請けの金属加工の会社で、

いつも親会社の業績によって人が出たり入ったりしていた。やが

て、ほとんどの熟練工は高給の為暇を出されて、仕事が増えて

生産が間に合わなくなると、昨日までパチンコで稼ぐつもりでいた

者が当てが外れて有り金を摩って、仕方なく派遣会社に雇われて

送られてきたり、近所の農家の主婦が、家の中で自分だけ遊んで

いるように見られるのが耐えられなくて始めたパートや、ついには

中国から日本の優れた製造技術を習得する為に時給485円で

不満を言わずに働く研修生までやって来て、みんなで一生懸命

「不良品」を作った。それでも管理者は腐らずに、朝のラジオ体

操の正しいやり方から、工場内はポケットに手を入れて歩かな

い様にとか、便所でのオシッコのやり方までも手取り〇取り教

えていた。もちろん作業を如何に効率的にするかについても熱

心で、否、熱心そうに見せていた、毎月の改善提案の提出は

義務化され、私はある工程に於いて、機械を使っての自動化を

提案して、作業時間の短縮が図られることを説明したら、予算が

無いとの理由で却下された。しかし、しばらくして手作業による

誤操作での不具合が北米のディーラーで見つかり、何千台もの

製品検査を親会社から指示されて、巨額の支出が発生するに

到って、やっとその工程は私の提案どうりに改善された。もちろ

ん自動化によって作業時間も半減したが、こんどはその作業で

毎夜残業を当てにしていた中国人の研修生が私に文句を言い

出した、つまり残業時間が減って給料が少なくなった事の逆恨

みだった。

 朝礼は半数にも及ぶ「外国人」のせいで、営々と築き上げられ

た営業方針の唱和や安全作業の宣言が、可笑しな片言の日本

語の安全宣言で、毎朝失笑をもたらすくつろいだ交流の場に変

わり、その通りに笑うほど不良品が出た。危惧の念を持った経

営者は、理解しがたい規律を押し付けてきた。それは作業時間

内での中国語の禁止や、親会社の自動車以外での通勤の禁止

、親会社の車以外の駐車は駐車料を取られた、周りは畑だらけ

なのに、さらに不良品を出した者からの減給など、いよいよ潮時

だとは思っていたが、ついにはラジオ体操を毎朝ひとりが交代で

前に出て中国人の研修生の見本となる体操を行うよう決めた。実

は私は全く体操をやらなかったので順番を覚えていなかった。大

体なぜ体操をみんなで一緒にやらなければならないのか、その意

味が分からなかった。会社は一方で自己管理と言い乍ら、なぜか

ラジオ体操だけは変えようとしない。もし、欧米の人に、日本でも

っともこの国らしいものは何かと尋ねられたら、私は間違いなくラ

ジオ体操と答える、きっと欧米人には理解出来ないだろう。始業前

の準備運動くらい自分一人で出来ないのかな。しかも会社で毎

朝ラジオ体操をしてもカードにハンコを押してくれないんだから、

会社を辞めた。私はあの親会社の自動車だけはあげるよと言わ

れても、言わないが、決して乗ろうとは思わない。

                                 (つづく)

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