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今年のアカデミー賞で3賞を受賞したネットフリックスオリジナル映画「ROMA/ローマ」のアルフォンソ・キュアロン監督。 Mike Segar / REUTERS <アカデミー賞監督賞の受賞作が劇場公開へ。一見当たり前のようだが、実は今年の受賞作は日本で初めて劇場で上映されるネットフリックス映画だ>
3月9日に日本でも劇場公開された「ROMA/ローマ」。2月25日に授賞式が行われた第91回米アカデミー賞では10部門にノミネートされ、監督賞、撮影賞、外国語映画賞を受賞した。ほかにも第75回ベネチア映画祭や第76回ゴールデングローブ賞など多くの映画祭で上映され受賞をしており、2018年の夏からすでに台風の目となるだろうと注目されていた。
監督のアルフォンソ・キュアロンは日本では「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」や「ゼロ・グラビティ」などが有名だろう。「ROMA/ローマ」は、モノクロの映像美が印象的なヒューマンドラマで、まだこの映画を見ていない人も浜辺で肩を寄せ合い抱き合ってる人たちの印象的で美しいポスターを見かけたことがあるかもしれない。
さて、この「ROMA/ローマ」だが、作品の内容以外のところでもニュースに取り上げられることが多かった。それは、「ネットフリックス映画は果たして映画と認めてもよいのか?」という問題である。今までも何度か是非を問われてきたこのイシューだが、「ROMA/ローマ」が多くの映画賞を受賞し注目を集めたことで、ネットフリックス映画についてこれまでにないほどの賛否が飛び交っているのだ。
映画館で上映しないのに「映画祭」で賞を獲れる?そもそも、ネットフリックスオリジナル映画はなぜ各映画祭で問題視されるようになったのか?
ネットフリックスはアメリカ発の映像ストリーミング配信会社である。「ネットフリックスオリジナル映画」と一概に言っても「自社制作」や「他社が制作した作品の世界(もしくは一部の国)の独占配信権をネットフリックスがもっている場合」「ネットフリックスが制作を発注した場合」など様々なパターンがあるが、基本的に制作される映画も配信を目的にされたものが多い。映画館で公開を目的としない作品を果たして"映画"とカテゴライズしてもよいのかが議論を呼んでいるのである。
特に、2017年のカンヌ映画祭ではこの問題が大きく取り上げられた。カンヌ映画祭の規定は、コンペティション部門の作品について「フランス国内で劇場公開された作品であること」や、「封切日から動画配信までのインターバル期間」などが厳しいと有名だが、この年の映画祭ではネットフリックス映画が2本、アマゾン映画が1本出品された。上映時、ネットフリックスのロゴがスクリーンに映し出されると観客席の一部からブーイングが巻き起こったほど観客側も賛否が分かれた。結局、翌2018年のカンヌ映画祭にはネットフリックスは作品を出品しないことを発表した。
とはいえ、大部分の観客はその作品が面白ければ映画館で見ようが家で見ようが関係ないというのが本音だろう。今までは映画館の上映時間に合わせて足を運んでいた観客が、今では自分で映画を見る場所とタイミングを選ぶ時代になったといえる。まさに映画とTVとのボーダレス時代だ。実際、ネットフリックスは2020年以降も多くの映画を製作することを発表している。
アジアでのオリジナル映画制作に力を入れ始めたネットフリックス WeAreNetflix / YouTube
アジア市場に向けたオリジナル作品も一方、ネットフリックスはアジア市場をにらんだオリジナル作品制作にも力を入れ始めており、昨年11月にはシンガポールでアジア市場を対象としたカンファレンス「See What's Next: Asia」を開催した。さらに日本では今月12日にネットフリックスと日本のアニメ制作プロダクション数社が包括的業務提携契約を行うことを発表した。数社との契約はすでに執り行われており、第一弾として「攻殻機動隊SAC_2045」や「スプリガン」など人気アニメの制作・配信が行われる予定だ。
また、お隣りの韓国では、今年1月ネットフリックスオリジナルドラマ「キングダム」が大ヒットし注目を集めた。シンガポールでのカンファレンスで発表された際にも一番注目を集めていた作品だ。製作費200億ウォンをネットフリックスが全額投資しており、今年1月から世界190か国(27言語字幕、12言語吹替)で配信が始まった。
ドラマの舞台となるのは韓国お得意の朝鮮王朝時代という時代劇だが、中身はなんとゾンビ物でアクションシーンも盛り込まれている。映画のようなクォリティーの高さで話題を集めており、配信開始前からシーズン2の制作も決定し、現在撮影中だ。配信が始まった1月25日以来、韓国内のネットフリックスの利用者が65.6%もアップし、200万名が実際に利用を始めたという。「キングダム効果」と呼ばれるこの現象は、もともとターゲットだった20代の利用者を24万人増加させたばかりか、50代以上の利用者も13万人増やした。また、一番視聴時間が短かった50代以上の利用者の平均視聴時間も伸びたという。
韓国へのネットフリックス進出は2016年1月6日だった。韓国ではもともと地上波放送以外にケーブルテレビと契約している家庭が多く、ネットフリックスの月額契約もそれほど抵抗はなかったようだ。現在、韓国映画はネットフリックス独占配信版権映画が多く、ソン・ガンホ主演の「麻薬王(DRUG KING)」や、パクへイル/スエ主演の「上流階級」などがある。このように、各国が自国の強みを生かしたコンテンツを製作し、同時に国境を越えて全世界に配信できるシステムは映画の作り手にとって魅力的である。
ネット配信ならではの機能を活用した「ブラックミラー:バンダースナッチ」 Netflix Japan / YouTube
もはやゲーム? 見ている人によってストーリーが違う!ネットフリックスはまた違った形でも、映画と映画以外のコンテンツとの垣根を越えている。それが「ブラックミラー:バンダースナッチ」だ。ブラックミラーといえば、イギリス版の「世にも奇妙な物語」のようなドラマと言えばわかりやすいだろう。1話完結で、近未来を舞台にしている話が多く、SFチックなストーリーとなっている。
今回、放送されたこの「バンダースナッチ」のエピソードは、配信後から元々のファンはもとより、ゲームマニアからも注目を集めることとなる。その理由はストーリーが進むにつれて画面に選択肢が現れ、視聴者の選択によって話やエンディングの進み方が違ってくるという内容だからだ。まさに、TVゲーム感覚で映画の登場人物とストーリーを操作できる体験型映画なのである。こういったインタラクティブ作品をネットフリックスは2017年6月に「長ぐつをはいたネコ: おとぎ話から脱出せよ! 」、また翌月7月に「バディ・サンダーストラック」といういずれも24分の作品2本を配信してきた。しかし、両方とも子供向けアニメーションだった。今回、「ブラックミラー:バンダースナッチ」ではついに大人向けのインタラクティブ作品を配信し大成功したのだ。今後もこういったインタラクティブ作品は増え続けていくだろう。そうなると、ドラマ/映画/ゲームのボーダレス化はますます進んでいくと思われる。
ネットフリックスに限らず、VRや4DXシアターなど現実と映像のボーダレス化はこの先も進化を続けていくはずだ。つい先日、スティーブン・スピルバーグ監督が「テレビフォーマットはアカデミー賞のノミネートには適していない」と発言したという報道があった。本人はその後否定はしたものの、2018年4月にも同様の発言をしているだけに今後も尾を引きそうだ。
映像配信サービスが自らコンテンツを作る時代にあって、これからさらに増えていくであろうコンテンツのボーダレス化に対して、柔軟に対応していくべきか、映画との線引きを明確にしていくべきか。映画館の存在意義や、映画作品とは一体何なのかを問われる時期に差し掛かっているのかもしれない。
今年のアカデミー賞で3賞を受賞したネットフリックスオリジナル映画「ROMA/ローマ」 Netflix Japan / YouTube
アジアのオリジナル作品として20億円をかけて制作された話題作「キングダム」 Netflix Japan / YouTube
アカデミー賞からネットフリックスを閉め出そうという発言が炎上したスピルバーグ TODAY / YouTube |

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