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アントワープはアムステルダムやロッテルダムと同様、海上貿易で栄えた街である。特に有名な商品はダイヤモンドだ。世界にはダイヤモンド市場が20ほどあるそうだが、そのうちの4つもがここアントワープにある。研磨、トレード,共に世界一の市場なのである。 当然街にはダイヤモンド博物館なるものがあるが、時間が時間だけに見学はかなわないだろう。手早く見れるアントワープの他の名所はないものか、絵画の巨匠ルーベンスの家もあるが、見に行くほどの興味もない。地図を見るとマルクト広場のすぐそばにSchelde(スヘルデ)川が流れているので行ってみることにした。 川岸に行ってみてびっくりした。ゆったりと流れるスヘルデの川幅は想像以上に広く、東京や大阪の埋立地と埋立地の間の、大型貨物船が通れるほどの運河のようだった。実際、大きな外洋貨物船が向こうのほうに見える。古の繁栄は過ぎたとはいえ、さすがに世界有数の海港貿易都市である。 川岸にお城があった。本物の城を改装した海洋博物館だった。ヨーロッパの城らしい城を見たのはこれが初めてだったので、思いがけないラッキーな発見だった。ひととおり外観を見て、そろそろ駅に戻ることにした。今日の予定では列車でオランダに入ってライデンで宿をとるつもりだ。 再びトラムに乗り中央駅に戻ってきた。ブリュッセル−アントワープ−アムステルダムはオランダ・ベルギーの主要路線なので1時間に一本は列車が出ている。手持ちのトーマスクックの時刻表によれば、あと20分ほどでアムス行きが来る。ライデンへはそれに乗る。
ところがである。駅に張り出してある時刻表を見ても、電光掲示板を見てもアムステルダム行きの列車などない。だんだん不安になってきた。しかしこのアントワープからアムステルダム行きの列車がないわけがない。なにせこの地域の主要路線だ。横浜から東京行きの列車がないようなものである。ありえない。 さっさと駅員に聞けばいいのに英語を話すのがめんどくさいのも手伝って待ってみることにした。今朝乗ったブリュッセルからブリュージ行きの列車は40分も遅れてきた。きっとまた遅れているに違いない。ところが到着予定時間から20分待っても30分待っても電光掲示板にアムス行きなど表示されない。あせりながら何度も何度も時刻表を見ているうちにあることに気がついた。アントワープの駅が2つあるではないか。Antwerpen CentraalとAntwerpen Berchem である。 ?????少し考えてやっとわかった。ここCentraal駅は本線からの引込み線の終点なのである。ブリュッセル−アムステルダム線はタリスなどの国際高速列車や急行が走る。いちいち中央駅の引込み線に入れて進行方向を変えてる暇はない。それで本線上にBerchem駅が設けられている。国際列車はそこに停車するのだ。駅に張り出してある時刻表を見てみると、なるほど、確かにここ中央駅から隣のBerchem駅に行く列車がシャトル便のようにある。急いでその一つに飛び乗った。 4分ほどでBerchem駅に着き、降りてみた。何もない寂しい駅だが、この駅の時刻表には確かにアムス行きが載ってる。ほかにも数人の乗客が乗り換えのため待っている。間違いないだろう。でもまだ油断できない、と思っていたところへアムス行きの列車が滑り込んできた。乗り込み、バックパックを下ろして席について、やっとほっと胸をなでおろした。ヨーロッパの大きな都市には駅が幾つかある場合があることは当然知っていたが、まさかこういう形があるとは予想だにしていなかった。 緊張が切れた安心感で饒舌になった私は妻にそのことを興奮気味に説明した。そうしているうちに列車は国境を越えベルギーからオランダに入ったようだ。駅に停まっている他の列車の色や形が変わった。 窓の外はだんだん薄暗くなってきた。 |
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2007年05月11日
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