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書庫スイス・ユングフラウ

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 ベルナーオーバーラントに別れを告げ、次なる目的地マッターホルンの町ツェルマットに向かう。
まずはInterlarkenから本線の乗り継ぎ駅Spiezへ、ローカル列車で移動する。
途中、美しすぎるブリエンツ湖を右手に列車は走る。

 Spitzで今度はBrig方面行きの列車に乗り換える。
やってきたのはイタリア国鉄FSの誇るインターナショナル急行チザルアルピーノ。
日本語で言えば「特急北アルプス」といったところだろうか。
振り子式車両で、カーブの多いスイス区間をスピーディーに走り抜けて、シンプロントンネルを経てイタリア・ミラノへ連れて行ってくれる。
Brigはそのイタリアとの国境手前の税関もあるスイス最後の駅だ。
そのBrigからツェルマット行きの私鉄が出ている。

 朝食に売店でパンを買っておいたのだが、車内販売がうまい具合にやってきたのでカプチーノをオーダーする。
さすがイタリアの列車だけあってコーヒがうまい!
実はこの間乗った急行の車内販売で買ったコーヒーが、スイス国鉄の車両だっただけにネスカフェでおいしくなかったのだ。

 列車はアルプスらしい雪山のカーブの連続の谷間を滑るように走っていく。
そしてトンネルに入って抜けたそこは、超巨大なU字渓谷の壁の上部だった。
ローヌ川の大渓谷だ。
この川はフランスのリヨンを経て地中海へ注ぐ。
かつてはシーザーが、イタリアと当時ガリアと呼ばれていたフランスとの行き来で何度も往復した道だ。
列車は渓谷でもかなり上のほうに出たため。急カーブで90度曲がって谷の側面をグングン降りていく。
目の下のローヌ渓谷にも線路が敷かれており並行して列車が走っているのが見える。
やがて私たちの乗った列車は谷底へ降り、本線と合流し、間もなくBrigに着いた。

 ここでツェルマット村へ行くBVZ鉄道に乗り換える。
ツェルマットは環境保護のため車では入れない。
この鉄道か、電気自動車に乗りかえる必要がある。
国鉄Brig駅を出るとその横がすぐにBVZ鉄道のホームになっている。
切符を買って乗り込む。
列車は南、つまりイタリア方向の谷間に入り、いかにもスイスらしい美しい風景を駆け抜けていく。
遠くに白く尖った雪山が見えてきた。
あの先にツェルマット、そしてマッターホルンがある。





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 登山列車がインターラーケンオスト(東)駅に着いたのは夜の7時半。
でも周りはようやく夕方がはじまったような明るさだった。
ヨーロッパの夏の日は長い。
スイスは緯度で言えば北海道の稚内と樺太の間ぐらいの位置になる。

 東駅から西駅の間はインターラーケンの繁華街だ。
とはいっても日本の観光地と比べれば実にさっぱりしたものである。
大き目のホテルに、レストラン、お土産屋さんがポツポツと並んでいる。
その建物と建物の間は牧草地になっていたりして、牛が草をはんでいる。
実にのんびりとした町並みだ。
ここでスイスナイフを購入した。
10徳で、記念に「Interlaken MARK」と彫ってもらった。

 夕食はこの辺りのレストランに入り、スイスの名物料理ゲシュネツェルテス(仔牛のクリーム煮)とチーズフォンデュ、そしてスイスワインの白をオーダーした。
特にチーズフォンデュ。
日本ではチーズをベシャメルソースでのばして、マイルド味にアレンジされたものが一般的だが、
地元ではエメンタールチーズを白ワインだけでのばすのが普通。
初心者にはちときついが、この癖のある香りが慣れるとたまらなくなる。
写真がないのが残念だが、長旅の上に当時のデジカメのメモリーの限界で節約しながら撮ってたので仕方がない。

 スイスワインもおいしかった。
スイスは観光客誘致のためと思われるが基本的にワインを輸出しない。
飲みたければスイスに来て下さい、というわけだろう。





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 谷底の村ラウターブルンネンで、U字谷のそそり立つ岸壁と滝の景色を堪能して、ここで再び列車を乗り換える。
ここからはホテルをとったインターラーケンの町に直行できるのだが、ちょいと寄り道しなければいけない。
実は行きに、ここから反対側のグリンデルワルド駅に「地球の歩き方―西ヨーロッパ」を忘れてきたようなのだ。
電話で聞いてみると、たしかに日本語らしき本があるとのこと。
別にLonely Planet-Western Europeを持っていたので最悪「歩き方」はなくても不自由はしないのだが、やはり日本語本がないとちょっぴり不安なので取りに行くことにした。

 グリンデルワルドへ行くにはツヴァイリュチネンで途中下車して、朝に乗ったグリンデルワルド行きに乗換える。
心配だったのは、追加の切符を買う必要があるかだったが、持っていたのが一日券だったようで問題なかった。
グリンデルワルドに着いて駅員さんに尋ねると、奥から本を持ってきてくれた。
忘れ物がちゃんと保管されているなど、フランスやイタリアならありえない話だが、さすがスイスである。
「チャイニーズキャラクター(漢字)が書いてあるから中国語かと思ったよ」と駅員さん。
何語にしたってアルファベットならともかく、漢字なぞこちらの方はチンプンカンプンだろう。

 それにしても日が明るい。
午後3時ぐらいの明るさだと思いきや、実はこの時夕方6時45分だった。
本を手に再びインターラーケン行きの列車に乗り込む。
インターラーケン・オスト(東駅)に着いたのは午後7時半だった。
ここは町外れなので中心部へと歩く。そんなに大きな町ではない。
向こうにそびえる雪山を眺めてみると、さすがに山々を照らす日差しが夕暮れっぽく赤みを帯びていた。
インターラーケンから眺めるベルナーオーバーラントの山々もなかなか雄大だった。




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 ヴェンゲンの駅から列車はいよいよ巨大なU字谷へと降りていく。
勾配は今まで以上にきつい、カーブの多い下りとなる。
そして目を上げると、その眺めたるや息を飲む壮大さと美しさである。
まさにUの字型に、アルプスの両側の緑の台地は突然垂直の崖となって切りたたれる。
その崖の高さが途方もない。
そして落ちていって、底辺近くから緑の緩やかなカーブとなって谷底に至る。
谷底もそうとう広く、緑の牧草地や森に一筋の川、そしてところどころに小さな集落が見える。

 この壮大な景色は何万年も前の氷河期に出来上がったものである。
そう、かつてはこの谷がそっくりそのまま巨大な氷河だったのだ。
これが単純に雨水による大地の侵食なら谷はV型になり、しかも水は柔らかい所から浸食していくのでS字型のくねくねとした谷となる。
このようなV字谷は日本の山間部ではおなじみだ。

 しかし氷河は違う。
大地一面に降り積もった雪はその重さと圧力で氷になっていく。
それらが元々の地形の高低差で押し合いへし合いをしながら下へくだっていく。
夏には融け出した水が染み込んでいき、氷と大地の間を流れ潤滑油的な役割を果たし、上の氷はさらに滑り落ちていく。
その氷河の流れるスピードは平均で年速40mぐらいらしい。
その巨大な氷の塊が動くわけだから、地表の岩石は砕かれ、そのまま谷をえぐりとっていく。
こうしてできたのがU字谷だ。

 とほうもなく高い滝も見える。
この滝はシュタウプバッハの滝。落差は300mほどもあるそうだ。
ゲーテやワーズワーフもここを訪れ、この壮大な落差に驚嘆したという。
このような滝は、このラウターブルンネンの両側の崖に、大小いくつも噴出している。
これもまさにU字谷である。



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 私たちを乗せたWAB鉄道の登山列車は緑の牧草地を駆け抜け、さらに下っていく。
人を寄せ付けないような広漠とした雪と岩原の世界、そして広大な緑の丘の牧草地を走っていたが、やっとこの辺りから人間の生活圏に入る。
伝統的なスイスの山小屋風の家が建ち並ぶ、ヴェンゲンの村だ。

 ここはベルナーオーバーラントの中でも最もユングフラウに近い村として人気がある。
圧倒されるほど巨大なU字谷ラウターブルンネンのちょうど頂上部に位置し、冬はスキー客でも賑わう。
この駅から列車はさらなる急勾配を、谷の上から谷底までU字谷の側壁を縫うように下っていく。
大小カーブの連続、勾配はさらにきつくなる。
そして車窓からの景色もさらにダイナミックに、さらに美しくなっていく。

 ユングフラウは間近で見るといかにも猛々しく男性的で、とても名前の“乙女”というイメージからかけ離れているが、こうして距離をおき少し遠くから眺めると、その巨大な峰は艶やかさをさらに増し、より魅力的に見える。

やはりご婦人は近づきすぎず、遠くから眺めるのが一番ということだろうか。




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