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書庫スイス・ツェルマット

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 スイスレストランでチーズフォンデュを堪能してホテルに戻る。
夜も9時過ぎというのに、あたりはようやく日没直後でまだ微妙に明るかった。
夜風に吹かれて川沿いを散歩しながらホテルに戻る。
夕日に焼かれたマッターホルンが美しかった。
その後はホテルでいい夜を過ごせた。
高いだけあって、スイスのホテルはきれいで快適だ。

 一夜明けて、今日もすごくいい天気だ。
テレビをつけるとアニメチャンネルでキャプテン翼がドイツ語で放映されていた。
サッカーの話だけにヨーロッパの子供たちにも人気のようだ。
このツェルマットとも、マッターホルンともお別れ。
今日はGlacier express(氷河特急)にのって一気にスイスの東の端、サンモリッツに移動する。




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 ツェルマットのメインストリートであるバーンホフ通りを一通り見てみたが、さすが物価の高いスイスだけあってどのレストランもいい値段がする。
その中でも比較的リーズナブルプライスで山小屋風のいいレストランがあったのでそこに決めた。

 前菜にビュントナー・フライッシュ、この地方特産の干し肉だ。
これはスイス伝統の一皿で、自然乾燥させた牛肉を薄くスライスしたもの。
元々は越冬用の保存食だ。
これをピクルスとバターと一緒に食べる。
スペインのハモンセラーノやイタリアのパルマ・プロシュートほどの複雑で円熟した味わいではないが、固過ぎず柔らかすぎず、素朴で実に味わい深い。
これはワインと実によく合う大正解な一品だった。

 メインにはやはりチーズフォンデュをもってきた。
昨日インターラーケンでも食べたのだが、実においしかったのでまた頼んでしまった。
でも今回は一味変えてトマト風味にしてみた。
チーズにとけたトマトの酸味が食欲をいっそう誘う。

 日本でも数年前チーズフォンデユが少し流行ったが、最近はあまりお見かけしないような気がする。
見た目はおしゃれだが、エメンタールチーズに白ワインをといたこのソースはたしかに日本人にはきつすぎるかもしれない。
数年前初めて食べた時、私もちょっと食べられなかった。
だから、日本のチーズフォンデュは食べやすいように他のチーズを混ぜたり、生クリームやホワイトソースでのばしている事が多い。

でもその後、私もワインが好きになり、いろんなチーズを食べるようになってすっかりこの本場式のチーズフォンデュに慣れたようだ。
「あ〜白ワインの蒸発するこのきつい香り」とか言いながら、すっかり好物になってしまった。




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 8時ごろになって、ようやく日も傾き夕暮れらしくなってきた。
ツェルマットのメインストリートをディナーによさげなレストランを探しながら歩いている。
ここはスイス、しかも世界的に有名な観光地ツェルマット。
いい感じのレストランは幾つかあったが、さすがにどこもいい値段がする。
どこにも決められないまま歩いていたら、村の上の教会まで行ってしまった。
教会の前にはマーモットの泉。こんなかわいらしい水汲み場があるのがスイスらしい。

 と、ここで見覚えのある顔が…。
なんと、先日ベルナーオーバーラントのユングフラウヨッホからの帰りの列車の中で出会った、あのオランダに英語留学に来ていた彼女だった。


 昨日のあの時点で、彼女はグリンデルワルドの次にどこに行くかまだ決めていなかったのだが、私たちが明日はツェルマットに行くということを聞いたので、結局ここに来たらしい。
私たちは朝の列車でここに来てゴルナーグラートまで行って来たが、彼女はついさっき着いて、ホテルを決めて荷物を置いて出てきたところだった。
まさかまた会えるとは思ってなかったのでお互い興奮して喜び合った。
が、次の瞬間彼女の一言に凍りつく…。

「ツェルマットって有名なマッターホルンって山が見れるんですよね。で、どの山ですか?」

振り向くとそこには黄昏時の黄金色に輝いたマッターホルンの雄姿が…

「…いや、あの三角形のすごい山があるでしょ。あれだけど…」

「えっあの山だったんですか?!わたしてっきり反対側の山かと思ってました。」

 反対側の山?!うーん、確かに日本ではありえない高さの山々がこの村をぐるっと囲んでるけど、だれが見てもマッターホルンだけは特異である。
しかし「あははは、これがマッターホルンだったんだ、知らなかった。」と写真を撮る彼女のなににも動じそうもない、しかし純真無垢な笑顔を見ていると、なんかどうでもよくなってきた。

 世界にはいろんな人がいる、でも日本人もいろんな人がいるということをスイスで教えられた。
もちろんラブリーな人という意味でw。





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カフェを出て、夕食までツェルマットをぶらぶら歩いてみた。
マッターホルンから流れてくるマッターフィスバ川沿いから村のメイン通りの方に歩いてみると、薄暗い古い倉庫がひしめき合っている一画に入った。
観光地化された賑やかなメイン通りとは異なり、この辺りは実にひっそりとしている。
伝統的な建物なのはその黒ずんだ風格のある壁や柱を見ればわかる。
実に興味深かったのは基礎の上にすえられている柱の間にピザ生地のような丸い薄型の石が挟まっていることである。
これはネズミ返しだ。
石と木の違いはあるが、高床式なのと奈良の正倉院を思い出した。
スイスの長い冬を越すための貴重な食料を、かつてはここに保管していたのであろう。

もう一つ、ある一軒のお土産やさんの前で木彫りの像が立っていた。
フクロウと、まるで日本のなまはげの様な形相の化け物。
かつてのケルト文化の中に登場する化け物(妖精?)の一人だろうか。
スイスもフランス、イギリス、アイルランドと同じくケルト人の地だった。
なにせ民族大移動やキリスト教導入以前の、紀元前1世紀のカエサルのガリア戦記に彼らの先祖が、まさにこの地で登場する。
アルプス地方の祭りでよく、明らかにキリスト教とは無縁と思われる人形や仮装を見かけるが、ケルト文化を今に色濃く残している証拠なのだろうか。
しかも日本の山間部にもありそうなこの顔。
山岳地方に生きる人々のなにかの共通の意識、例えば闇に対する恐れなどの表れなのだろうか。



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 標高3000mのゴルナーグラートからツエルマットに戻ってきた。
すでに夕方の5時だがまだこんなに明るい。
夕食にはまだ時間があるのでマッターフィスパ川沿いのカフェで一休みすることにした。
環境保護にうるさいツェルマットだが、この川はコンクリートで固められている。
村のすぐ上からは広大なマッターホルンの裾野と、さらに上には巨大な氷河が広がっている。
あれだけの面積の雪解け水がこの狭い谷間に集まってくるのだから、これは仕方がないのかもしれない。

 さてカフェでたのんだのはカプチーノパフェとリベラ。
Rivella(リベラ)はスイスの代表的乳清飲料で、どこでも売ってる。
チーズやバターなどの乳製品を作った後に出来るホエーを飲み物にしたもので、酪農国のスイスでは特にたくさんできるのだろう。
日本の乳清飲料よりちょっとすっぱめで、リンゴみたいな味がする。
3種類の味があるが、この時飲んだのは緑の緑茶味。
ヨーロッパは最近、緑茶が静かなブームだとかないとか。
でも別に緑茶の味はしなかったような気がする。

 それにしてもパリから旅が始まってベルギー、オランダととにかく怒涛のように歩いてきた。
でも今日は展望台で昼寝して、今はカフェでマッターホルンを眺めながらゆったりとくつろいでいる。
こんなにゆったり、まったりしたのはこの旅で初めてかもしれない。
これまでの私の旅のスタイルは、鬼のように観光地を足早に周る日本人風だったように思う。
でもいろいろな処で、ゆったりとその街の空気に浸るようにカフェでビールを飲んだり、たっぷり時間をかけてレストランで食事を楽しんだり、広場や大聖堂の階段で本を読んだり、おしゃべりしたり、ただぼーっとしている欧米人観光客をたくさん見てきて、だんだん自分の旅のスタイルに疑問を持ち始めてきた。
なるほど、こんな贅沢な旅の仕方があったのか、とリベラを飲みながら気づかされた。





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