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 不毛地帯から、同じく山崎豊子作『二つの祖国』を読んでいます。

25年ほど前に『山河燃ゆ』というタイトルでNHK大河の原作にもなりました。

第二次世界大戦中のアメリカで生まれ育った日系二世たちの物語です。

今でこそ、アメリカでは公には差別はなくなり、日本人も虐げられることはなくなりましたが、この本を読むと、当時の差別のすざましさに驚かされます。

もちろん太平洋戦争中なのでもともと蔑まれていた日本人は敵意の対象となり、強制収容所へ入れられてしまします。同じ敵国のドイツ系アメリカ人やイタリア人は普通に市民生活を続けられていたのに。

ナチのユダヤ人虐殺や、ソ連の強制労働程ではないにしても、アメリカでもこれほどの人権蹂躙行為を行っていました。

日系と言うだけで家、職、財産も奪われ、家畜以下の扱いを受けたにもかかわらず、アメリカで生まれ育ちった2世たちは、アメリカ政府に裏切られそれでもアメリカに忠誠を誓って祖国日本と戦うように強要されます。

すざましい葛藤劇がここにはあります。


ちなみにこの本は、私が中学1年生の時に初めて読んだ「児童向きではない」本でした。

でも改めて読むと、登場人物の名前と大まかなストーリー以外はほとんど覚えていませんでした。

まあ中学1年生の読解力じゃあねw。



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 瀬島龍三、今ドラマ化されている山崎豊子の小説「不毛地帯」の主人公、壱岐正のモデルとなった人の回想録です。

あんな劇的な人生あるのか、と思いきや、彼の人生ほとんど小説の壱岐正そのもので驚きです。

大本営参謀、シベリア抑留の記述はほぼ同じ、帰還後、伊藤忠商事に入社し、その後数年で部長、役員となりいすゞとGMの提携を成功させた辺りも細かな点までモデルになってます。ここまでそのまま使うと、そりゃ山崎さん、盗作疑惑も出るわけです。

もちろん、不毛地帯は彼の人生をそのまま使った部分とフィクションを付け加えた部分がありますので、全くその通りではありませんが。

例えば、終戦後に停戦命令を伝えに満州に行ったのではなく関東軍参謀として満州で終戦を迎えたこと、東京裁判でソ連軍が連れてきた妻子とは実際に会ったこと、商社社長からの誘いではなくかつての上官からの紹介で入社したこと、伊藤忠時代社長が3人替わっていること、子供は姉弟ではなく姉妹の2人、奥さんは交通事故で死亡したのではなく90歳まで生きたこと、2次防、石油開発には係わらなったこと、京都に愛人がいること、などなどは山崎氏のフィクションだったということがこの本を読めばわかります。

 大本営参謀だったことに関し、太平洋戦争で日本が大敗北を喫したことから、軍参謀としては無能だったいう意見も多いようですが、彼が着任したのは太平洋戦争前夜の時期。
すでに世界情勢も、日本全体も、軍部も政府も大衆までもが戦争に突き進んでいる状況で、入りたての一参謀が政局を変えることなどできるわけもなく、与えられた戦前日本の粗末な情報をもとに作戦課題に取り組むだけしかできなかったでしょう。
彼は軍政畑でも政治家でもなく、あくまで一作戦参謀ですから。
また、彼は太平洋戦争を計画戦争ではなくアメリカに石油を止められた「窮鼠猫をかむ」的な防衛戦争と考えています。あの状況ではあれしかなかったし、あの状況に日本を追い込んだのはアメリカの強硬政策であると。
日中戦争、ノモンハン、満州事変は彼が参謀になる前にすでに起きてしまっていた事件です。
太平洋戦争と言うと、最前線での兵士たちの手記や記録を読むことは多いですが、実際に大参謀の中で働いていた人の手記は大変貴重だと思います。
東条英機が、実は戦争を起こさないために首相に任命されたこと、陸軍といえども士官はかなり紳士的であったこと、陸軍、海軍が言われているほどは対立はしていなかったこと、アッ島玉砕の報に東条が声をあげて嗚咽したことなど、感情論なし偏見なしで正確に当時の歴史を考察する上で大切ですねこういう生き証人の資料は。

 その後のシベリア抑留は「不毛地帯」そのものです。
戦後務めた伊藤忠商事では会社を日本を代表する商社に育て上げ、最終的には会長を務めています。
その後は中曽根内閣で首相の相談役、国鉄民営化、電電公社民営化に大きな役割を果たし、JRとNTTは彼の子供のようなものです。
また韓国政界とのつながりから、ソウルオリンピックを提案、日本側から支援したことも述べられています。

 頭のいい人だったというのは読めばわかります。プロ作家でもないし物語調でもありませんが、かなり楽しんで読むことができます。
彼の文章からも、誤解を招くようなことや、無駄に秘密を暴露するようなこと、人の悪口は絶対言わない人だったようなので、かつての武士道、陸士精神を地でいった人格の方だったのでしょう。
賢くて誠実で聡明と好評価される半面、ずる賢く偽善的な世渡上手と評価する人がいるのもうなずけると思います。
彼の批判評を読んでると、戦争の責任をとって自殺しなかったことが潔くないように言われてますが、死んで全てをチャラにしようとする日本人精神は私は決して同意できません。
すぐに死のうとする精神こそが太平洋戦争をより悲劇的なものにしたのではないでしょうか。
本末転倒です。
自分の命とはいえ、自殺は命の軽視以外何物でもなく、むしろ罪を、生き恥を背負い続けながら生きる事こその方が勇気がいることだと思います。
そして、残りの人生を社会に役立て生き残った人たちに恩恵をわけることこそ、無残に死んだ人たちへの手向けだと思います。

ちなみに彼は連載中の不毛地帯は忙しくて読まなかったらしいですが、韓国の兵士にサインを求められたり、読んでた奥さんが「今週私交通事故で死んじゃいましたよ」と言われたり、部下に京都出張で恋人に会ってきたんですか、とからかわれたりしたようですね。

山崎氏はほとんど単独で彼に関する取材をしたようで、直接のインタビューは一回ぐらいだったようです。
後に、読む機会があったのでしょうか、「よく調べてるな」と感心したそうです。




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 いよいよ最終巻になりました。

社運をかけてイランでの油田開発を手掛ける壱岐とその部下たち。

末席しか与えない政府主体の石油開発プロジェクトから脱退し、独自路線でイラクでの油田発掘権の落札を狙う近畿商事。

官僚、政治家への根回し、パートナー会社との提携、イラン王族との人脈作り、砂漠地帯の過酷な気候。

莫大な資金を調達しても落札できるとは限らない。そして落札してもそのエリアから石油が出る保障などどこにもない。

小国の国家予算にも匹敵する金を博打のように使いまくる石油開発事業。

当たれば日本の需要の一画を支えるほどのエネルギー獲得と莫大な収益が、外れれば全ての金と労力がドブに消え去り、会社の経営は間違いなく傾き、壱岐は社内No.2の立場を失う。

クライマックスだけに、手に汗握りながら読んでいました。

そう、読みながら石油はまだ出ないか、まだ出ないか、と登場人物のようにハラハラしてしまいました。

そして大恩ある大門社長を会社のために見事に引退へと導く手腕。

ホント最後まで痛快でした。

テレビドラマでどこまで表現できるか楽しみです。



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 フォードじゃなくて、フォークと千代田自動車との提携は暗礁に乗り上げ、難航します。

そのうち壱岐は日本の石油事情を危惧し、中東の石油開発に手をのばします。

前大戦で、日本は石油で追い詰められてアメリカに宣戦布告し、石油不足で負けた。

資源の乏しい国、日本において石油確保は国益にもかなうと、元、大本営参謀として、商社マン最後の仕事としてこの仕事に取組みます。

妻が事故で亡くなったことで、千里と恋仲になるものの、結婚までには踏み出せず。

そうしている間に、ライバル東京商事の鮫島が、血に飢えたサメのようにフォーク会長に接触。

壱岐は会社内では専務に昇進し、実質社内NO.3に。

いよいよ、後半戦です。

前半はシベリアの不毛地帯、中盤は日本の殺伐とした商戦の現実の不毛地帯、後半は中東の砂漠の不毛地帯を描写しています。

特に石油開発編は読んでいて筆に力が入っているのが感じられるぐらいです。

近畿商事のモデルの伊藤忠は、たしかにエネルギー会社を持っており、伊藤忠のガソリンスタンドはよく見かけますので、結果はどうなるのか解るのですが。

この話、オイルショックがあった70年代前後の出来事で、やっと私が生まれた時代になりました。

私がオムツをしている時に、大人たちはこんな壮絶な商業戦争をしていたというのは感慨深いです。

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 今度は自動車産業です。

今でこそ日本車は世界のトップクラスの地位にありますが、不毛地帯では日本の自動車業はまだまだ不良品の多い三流産業の時代です。

経営不振にあえぐ千代田自動車(いすゞがモデル?)と、アメリカビッグ3のひとつフォーク社(フォードだよね?)との業務提携を画策し、壱岐率いる近畿商事が暗躍します。

スピード昇進を遂げる壱岐に嫉妬する他の役員たちとの確執、妻との突然の死別、ごたごたの中、壱岐はアメリカへ現地社長として赴任します。

ニューヨークに住めるというのだけうらやましい・・・

アメリカ式の強引なビジネスを展開するフォーク社と、弱小ながらもプライドを捨てまいとする千代田自動車、輸入自由化目前に混乱する日本の政財界。

そんな中、壱岐をライバル視する副社長里井の心臓発作。

この巻も読みごたえばっちりでした。

それにしても商社マンってのは、すざましいばかりの行動力と情報収集力が要求されるのですね。

当時、アンカレッジ経由だったアメリカ航路も、東京−大阪を新幹線で行き来するような感覚に、読んでるこっちが時差ぼけしてきます。

頭の回転は当然として、語学、異文化への順応、交渉術、強靭な体力が求められる商社マンってすごいですね。

祖父がやはり商社に勤めていて、アメリカのダンロップなんかと取引をしていたので、親近感はあります。

まあ、私は頭が悪いし、気も弱いので、商社マンなんて絶対無理でしょうが、あこがれなくもない仕事です。


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