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りりぃ、今までありがとう

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記憶喪失に悩むご家族、知人がいる方にぜひ読んで欲しいです。
ご迷惑でなければ転載していただき、少しでも多くの方の目に触れるようご協力お願いします。

人は時の流れ中で生きています。
今二十歳の人は生まれて20年分の人生の中で、色々な人に支えられながら色々な空間の中で自分という存在を演じて来た訳です。
全ての人はそうした自分の年齢分の思い出を持っていて、自分の存在を自分なりに理解していると思います。
でも多くの人々の中には例外となる人達も少なからず居ます。

私alpha_arionもそんな人間の一人でした。

“全健忘”と診断されるまで

実は今から数年前、自分は突然“自分自身”が分からなくなりました。
どうしてここに居るのか、これからどうしようとしていたのか、そして自分が誰なのかさえ。
自宅付近のスーパーでいい大人の癖に大泣きしていたら、テナントとして入っている薬局のスタッフの方が優しく手を差し出してくれました。
お爺さんお婆さんならいざしらず、働き盛りの男が泣きじゃくっている姿を見てさぞびっくりしたのだと思います。

オロオロする私は優しく声を掛けられながら事務所までつれていかれ、スーパーの従業員に名前や住所を聞かれました。
ところが自分の身元はおろか名前さえも思い出せませんでした。
困った従業員は近所の警察に連絡し、私は交番で保護される事になったのです。
交番で私の財布の中身等から身元を探し出してもらい、私はなんとか自宅に帰る事ができました。

そうこうしているうちに離れて暮らしている母親と祖父が交番から連絡を受けやってきました。
今だからこそ、それが母親だったと分かりますが、その頃は自分の母親や祖父であるという事すら分からなかったのです。
私はその後、当然ながら病院に連れて行かれる事になりました。
かかったのは「精神神経科」。
検査の結果、担当の先生から『全健忘』であると伝えられました。

全健忘とは何もかも全て忘れてしまう、極めて重度な「記憶喪失症」の事です。
全健忘には外傷性、つまり外的要因が原因で発症したものと精神性の2種類があります。
MRIやアイソトープ等、脳の検査をいくつか受けた後、私は後者である事が分かりました。
私の場合、仕事や生活上の極度のストレスが原因だったようです。
また原因は分かったものの、明確な治療の方法は確立されていないとも説明を受けました。
直す為には一定以上の記憶を戻すか、またはゼロから生活に必要な知識を得る必要がありました。

診断後の生活

その日から私は、恐らく皆さんが想像される以上の苦難を強いられました。
具体的には家族の顔を思い出すだけのために半年以上の月日を要したのです。
精神科医の先生から記憶が戻る時に頭痛が起こる場合があるということで頭痛薬と、夜不安になって眠れなくなる可能性があるということで睡眠導入剤をもらって飲んでいました。
最初は睡眠導入剤でも軽いものだったのですが徐々に効かなくなり、ハルシオンという粉薬に変わり、最終的には手術等の全身麻酔前に使われる様な睡眠薬に至るまで使わざるを得なくなってしまった時期もあります。
コンロの炎をつけっぱなしにしたまま寝てしまって火事になりかけたり、近所なのに道に迷って再び交番で助けられた事もありました。

皆さんは「記憶喪失が治る」という事は「記憶が戻る」事だと認識されていると思います。

たしかに全ての記憶が戻ったのなら完治したと同義なのですが医師としては違います。
普通の生活ができるレベルの知識や思考力があるなら、それは治ったのだと判断するそうなのです。
つまり、たとえ記憶が戻っていなくても普通に寝て起きて、食べれて、用が足せるなど一般生活に支障が無ければ『治った』と判断されるのです。
それ以上に記憶を戻す必要があるなら、保険の効かない高額なカウンセリングを受けるなど、自費で治療を続けるしかないと言われていました。

幸い(?)自分は家族の顔等は思い出せないものの、そうした生活ができるまでさほど時間はかからなかったので長い間病院にかかる事はありませんでしたが、そんな事よりももっと自分を困惑させる事がありました。
それがこれからお話する“記憶の上書き”についてです。

知る≠思い出す

生活に必要でない何かを思い出せないだけなら、そんなに問題はありません。
しかし記憶が戻るのならそれに越した事はありませんが、記憶が戻らずに新しい記憶が上書きされてしまうのは非常に厄介です。
“記憶の上書き”とは、つまり他の誰かに「こんな事があった」、「あんな事もあった」と自分に関係する思い出話を聞かされる事によって、思い出すのではなく、それが新しい知識として蓄積されていく事です。

たとえば家族に「お前はいついつ、これこれこうだった」と聞かされれば、そうだったのか…と、その出来事を“新しい知識”として記憶し、真に自分が経験したその出来事の記憶がますます思い出しにくくなっていきます。
そんな新しく憶えた知識を元に他の人と会話をすると、その出来事の記憶が戻ったのだと勘違いされ、次第に話の接点が噛みあわなくなり、場合によっては言い争いになってしまう事もあります。
今も私の頭の中にはそうして新しく学習した“思い出の記憶”が山の様にあります。

つまり「自分はこういう人間だったのだ」と認識しているだけで決してそうした思い出がある訳では無いのです


たとえ全てが事実でも、経験して憶えている事と人から聞いて知った過去の出来事の間には大きな違いを感じました。

特に家族や親しい友人等は私の記憶を戻そうと一生懸命過去の思い出話をしてきます。
私はそうした思い出話をたくさん聞いて思い出すどころか、そうした話を“新しい知識”としてどんどん蓄積し、本当に思い出したい真の自分の記憶をますます封じ込めていくことになったのです。
結果、自分はその後の診察で『逆行性健忘』、つまり近年の記憶は戻っているものの特定時期(主に20歳)以前の記憶が失われていると診断され、酷い場合には精神分裂症や多重人格症等を併発する可能性もあると説明されました。

現在では僅かながら幼少時代の記憶も若干戻っている部分があるため、現在は『乖離性健忘』と診断されてはいますが、後遺症として小中学校時代の記憶など無きに等しく、二十歳以前の実生活に関わる大部分の記憶は失われたままです。

記憶というものは「その人そのもの」です。
食べ物の好き嫌いも、強いては人の好き嫌いも、その経験の中から分析、評価し判断します。
例をとると、家族の話では私は納豆が苦手だったそうです。
でも今の私にはそんな記憶はなく、むしろ苦手どころか納豆好きですらあります。
これはさしずめ小さい頃に納豆を食べて嫌な思いをした経験も忘れてしまった事の副作用ではないかと思います。

記憶喪失はその人の性格や、大げさに表現すれば人格そのものを変質させてしまうものなのです


皆さんの近くに記憶喪失に悩む人がいるのなら過去の思い出話等はなるべくしないで、できる限りの自然体で接してあげて下さい。
知らないという事は大変不安になるものです。
でも私は記憶喪失になって、知らないという事の罪や、知っている事の大きさと責任も痛烈に感じるようになりました。

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この記事をご覧になられた方、可能な限りで結構です、転載にご協力下さい。よろしくお願いします。

2006/5/18(木) 午後 3:58 あかね 返信する

私は病院で働いていて、外傷性の記憶喪失の方と出会ったことがあります。50代の男性の方なんですが交通事故後意識が戻ったものの奥さんや子供のことが思い出せない、相手がそう名乗って献身的に尽くしてくれているからきっとそうなのだろう、でも家族ですら忘れていることを家族にだけはいえない!とこっそり教えてくださいました。聞いている私も切なかったです。

2006/5/19(金) 午前 2:43 さく 返信する

真剣に見てしまいました・・・ なんか、すごい話ですねぇ。そうとうツライ事があったんですかね?今でも昔の記憶はないんですよねぇ・・・どんな心境なんでしょう?というか記憶を忘れたという事はすぐに理解出来たんですか?きっとすぐに理解出来なかったのでは?

2006/5/19(金) 午前 2:48 たけぼ 返信する

記憶喪失かぁ〜わたしはないですね〜小さい頃の記憶はあまりないですけど、それって大人になるに連れて消えて行くんですね〜・・・うんうん。( ;´・ω・`)人(´・ω・`; )

2006/5/19(金) 午前 9:36 [ myamyamyanyanyanya ] 返信する

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jellyfishさん>自分も家族には数ヶ月の間、思い出したフリをしていました。記憶を無くすということは一人の人を亡くすようなものですから、結局回りの人を出来る限り悲しませないようにして、自分自身の存在を確認していくにはそれしか方法がありませんよね。

2006/5/19(金) 午後 3:35 [ alpha_arion ] 返信する

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tkymtmkさん>一過性のもので最初から乖離性だったなら、きっと気づく事無く治ってしまったかもしれません。でも全健忘で自分自身も忘れてしまうと極端な不安にかられるためか、私の場合は割と早い内に受け入れる事ができました。

2006/5/19(金) 午後 3:42 [ alpha_arion ] 返信する

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あいさん>不思議な事に知識として学習した事や身体で覚えたような技術の類はしっかり憶えているんです。それ以外の生活面での記憶、たとえば友達の顔や出来事の思い出ですね。かなり回復してから旧来の友達らしき人に出会ったのでできる限り知っているフリをしてみたんですがやっぱりバレて、記憶喪失の後遺症だと説明したら納得してくれましたが結局悲しませてしまったようです。

2006/5/19(金) 午後 3:50 [ alpha_arion ] 返信する

パンツにみそ汁も忘れたのですね

2013/8/11(日) 午前 0:43 [ ひめの ] 返信する

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