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藤田さんは松竹の撮影所が中心でしたので、滅多にお目にかかることはありませんでした。 なので、藤田さんについてはえらそうに言う資格がありません。 でも10年以上前、一度だけ仕事をしたことがありました。 Vシネマの「はぐれ記者 こちら大阪社会部」というドラマです。これはミスターマガジンに連載されていた、 「こちら大阪社会部」(原作・大谷昭宏、作画・大島やすいち)という漫画をもとにドラマ化したものです。 題名は「どアホー記者 こちら大阪社会部」だったのですが、 ビデオ販売する時に「はぐれ記者 こちら大阪社会部」に改名されました。 このドラマは残念ながら第一作で終了したのですが、 このドラマをご覧になった方から第二作を待ち望んでいるような評価がありました。 このドラマの撮影中こんなことがありました。 ドラマ後半のシーン。 あるクラブ(スナック)の中で、記者クラブキャップ役の藤田まことさんが、主役の石田靖さんがスクープした 新聞記事を見て、さらに檄を飛ばすところ。 小道具が準備した新聞を藤田さんに渡し、さぁテストいこうとスタッフに緊張と気合が入ったとき、 藤田さんが新聞を手にしながら怒鳴った。 藤 田「この記事がないじゃないか!」 このカットはキャメラは正面から撮っているので、記事の面は映らない。 また用意した新聞は、一応架空の新聞社の社名が入っただけのものだった。 現場は静まり返り、さらに、 藤 田「芝居ができないよ!」 予想外の言葉だった。 映画の芝居はキャメラに映らなければ、その記事があると想像して芝居をするものだ、と思っていた。 藤田さんであれば何の事は無い事だろうと思っていた。 右往左往しながら、 あわててピックアップ用の新聞(その記事だけをアップで撮影する為の新聞)を差し替えて事なきを得た。 しかし、その言葉で分かったことがあった。 藤田さんの芝居があって、他の役者さんたちの芝居がある。その逆もしかり。 芝居はアンサンブル。どの一つも欠けても始まらない。 ましてやスタッフが役者の芝居の障害となる事をしてはいけない。 いい芝居が出来るように役者に手助けしてあげなければならないんだ。 役者もスタッフも一つのチームだから。 私以外にも教えられた役者、スタッフはたくさんいるでしょう。 その人たちは皆一様に私と同じ気持ちだと思います。 たとえ小さな撮影母体であっても、 信念をまげず、役者として誠心誠意、作品に注ぎ込んで下さった藤田まことさんに感謝いたします。 ありがとう御座いました。 天から若い役者、若いスタッフたちを暖かく見守っていて下さい。 藤田まこと (本名・原田真、享年・76歳) ご冥福をお祈りいたします。安らかに…。
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