GWは暑かったですが、本日は雨も降ってきて涼しい日でした。
皆様はいかがお過ごしですか?
児童虐待問題について最終章です。
2月19日に墨田区で開催された「緊急虐待防止講演会」の中で、
関西大学大学院教授 才村純氏は、
「最も多い虐待の加害者が実母であり、次に実父である。
虐待の起きた家庭は地域社会との接触がほとんどない」「とぼしい」
というケースが7割、加害者の親自身が児童虐待を受けたケースが多い
と指摘されている。
社会福祉学博士、臨床ソーシャルワーカーのヘネシー・澄子氏
「愛着障害」【『子を愛せない母 母を拒否する子』へネシー 澄子(著)学習研究社】
ヘネシー・澄子氏は講演会のたびに、
「私は抱かれて育たなかったから自分の子供を抱くことができないのです」
という悲痛に満ちた若い母親の言葉を聞くそうである。
そしてヘネシー・澄子氏は、
「この母親の子ども達が成人すると、やはり自分の子供が抱けない親
になってしまう」とも指摘されている。
また、「子育ては世襲されていく。アタッチメントすなわち愛着が不足した
ことこそ児童虐待と放置の原因である。赤ちゃんをだっこすることの大
切さ、子どもをハグすることが必要だ」とも主張されている。
未熟児出生やハンディキャップの存在が子供への虐待のリスクを大きくする。
また、孤立家庭や低所得層、被虐待児が親となり、今度は自分が虐待する
側になってしまうという、「虐待の世代間連鎖」の現象も存在する。
しかし、虐待された経験を持つ者が虐待をする親となる割合は3割で、
7割は悲しい連鎖を断ち切ることができているという報告もある。
〜戦前の日本の子育て〜
・祖母や兄弟姉妹に囲まれ、周囲の人々の目が行き届き、子どもたちは
周囲から「守られている」という安心感と満足感を得ることができた。
・母親は子育ては大変だなと感じても、周囲の人々に見守られているとい
う安心感があった。赤ちゃんに母乳を含ませたりオムツを代えたりするた
びに、「自分が赤ちゃんを守らなければいけない」という思いが芽生えた。
↓
以上のような背景から「親と子ども達との安定した愛着関係」が
自然と育まれていった。
〜戦後の日本の子育て〜
1945年当時アメリカの「赤ちゃんは抱くと甘やかすことになる。
母乳ではなく時間でミルクを与える」といった行動派の子育て法
があり、それが日本に取り入れられた。
その後、アメリカでその子育て法の見直しがされたのにもかかわらず、
1960年以降の日本では「抱き癖」という言葉として残り続けた。
↓
ヘネシー・澄子氏は、ここから「母と子の愛着の絆がうまく育むことが
できなくなったのではないか」と指摘されている。
愛着障害の解決のために
例をあげると、アメリカオレゴン州「健康出発サービス」がある。
アメリカでは1980年代後半から「健康な家族」運動が起き、子供が
生まれる前から三歳まで、手厚く母と子の愛着作りを支援して、児童
虐待や放置を減らすことも目的としていた。
1994年にオレゴン州知事がハワイで「健康な家族」サービスを見学し、
早期加入の大切さを痛切に感じた。
その後、オレゴン州の36の郡から4郡を選び、「地域安全ネットワーク」
を立ち上げ、社会福祉、医療機関、保育・幼児教育機関、警察、裁判所
の連結を強化しスタートしたものである。
その結果、州議会の応援を得て、2002年までに16の郡でサービ
スが広がり、児童虐待・放置問題が半減 したことがわかった。
2003年よりオレゴン州全郡で実施されている。
現状としては、アメリカ全土へと拡大しつつある。
〜オレゴン州の家族支援ワーカーのアプローチ法〜
◎親の良いところを見つけてそれを励まし、親が欲しい情報を与える。
親たちが毎週の訪問を待ちかねているほどとの報告もある。
「弱者保護のための文化」構築に向けて
これからの日本は「弱者保護のための文化」を構築することが課題である。
子供の虐待は保護すれば終わりではない。
子供の虐待は脳自体の発達に大きな影響を与え、様々な育ちの障害を引き
起こしていく。
子ども虐待の心の傷は心理的療法を行なえば十分というものでもない。
子供虐待の影響は、幼児期は反応性愛着障害であらわれ、小学生になると、
他動性の行動障害が目立ち、思春期にむけて解離や外傷後ストレス障害と
なっていく。その中の一部の子供は非行に推移していく。
多重人格をもつようになることもある。そして、感情コントロールや衝動コント
ロールが不良となり、人を信用することができず、協調することができずうつ
状態へとなる。
次世代へと虐待の連鎖が継承されていくという最悪の状態へもつながっ
ていく可能性が高い。
日本において、保護された後の子どもたちのネグレクトについても考えて
いかなくてはならない問題である。
乳児院、児童養護施設、里親、情緒障害児短期治療施設、児童自立支
援施設、子どもの心の専門家、子どもが入院できる心療系の病棟など、
全て足りないのが現状である。
保護された施設で起きる人手不足や更なる虐待の問題も深刻な状況
にあることを認識し、私たちに何ができるのかを考え、行動にうつして
いくことが求められている。
子ども虐待が引き起こす社会への影響力の大きさについて述べてきた。
墨田区において、子どもたちの健全育成のためにも、最悪の状況を未
然に防ぐための手立て早急に考えていく必要性が求められている。
区長の見解を決意も含めて伺いたい。
傷つき悩んでいる人々が解決の扉にたどりつきますように。
全ての子どもたちが健やかに毎日暮らせますように。
安らぎの場所を見つけ癒され、新しい第一歩が踏み出せますように。
私はいつも心から祈り続けています。
これからも、児童虐待問題について研究し、ご報告いたします。
〜参考文献〜
・『子を愛せない母 母を拒否する子』へネシー 澄子(著)学習研究社
・『子ども虐待という第四の発達障害』杉山登志郎(著)学研
・『心に傷をうけた人の心のケア―
PTSD(心的外傷後ストレス症候群)を起こさないために』
クラウディア・ハーバート(著)保健同人社
・『隠された児童虐待―PTSD・依存症の発症メカニズムと効果的なトラウマセラピー』
鈴木健治(著)文芸社
・『殺さないで 児童虐待という犯罪』毎日新聞社児童虐待班(著)中央法規
・『インナーマザー あなたを責め続ける心の中の「お母さん」』斎藤学(著)新講社
・『アダルトチルドレンと家族』斎藤学(著)学陽書房
・『「家族」という名の孤独』斎藤学(著)講談社
・『「自分のために生きていける」ということ』斎藤学(著)大和書房
・『「家族」はこわい』斎藤学(著)日本経済新聞社
・『嗜癖する社会』A・W・シェフ(著)斎藤学(監訳) 誠信書房
・『内なる子どもを癒す』C.L.ウィットフィールド(著) 斎藤学(監訳)誠信書房
・『子どもと悪(今ここに生きる子ども)』河合隼雄(著)岩波書店
・『抱きしめてあげて』渡辺久子(著)彩古書房
・『はじめてであう小児科の本』山田真(著)福音館書店
・『社会で子どもを育てる』武田信子(著)平凡社新書
グループ・ウィズネス編「性虐待を生きる力に変えて」明石書店
・『第1巻 親と教師のためのガイド』
・『第2巻 小さな女の子・男の子のためのガイド』
・『第3巻 10代の少女のためのガイド』
・『第4巻 子どものころに性虐待を受けた女性ためのガイド』
・『第5巻 子どものころに性虐待を受けた人のパートナーのためのガイド』
・『第6巻 性暴力を生き抜いた少年の男性の癒しのガイド』
・『トラウマを乗り越えるためのセルフ・ヘルプ・ガイド』
オロール・セガン(著)白川美也子(監修)河出書房新社
・『児童虐待と動物虐待』三島亜紀子(著)青弓社
・『ドメスティック・バイオレンス』小西 聖子 (著)白水社
・『トラウマの心理学―心の傷と向きあう方法 』NHKライブラリー 小西 聖子 (著)
・『女性たちが変えたDV法―国会が「当事者」に門を開いた365日』
DV法を改正しよう全国ネットワーク (著)
・『トラウマを乗りこえるためのセルフヘルプ・ガイド 』オロール・サブロー=セガン
・『デートDVってなに? Q&A』日本DV防止・情報センター
・『デートDV 愛か暴力か、見抜く力があなたを救う -』
遠藤 智子 NPO法人全国女性シェルターネット(協力)
・『ドメスティック・バイオレンス―愛が暴力に変わるとき』森田ゆり(著)小学館文庫
・『DV(ドメスティック・バイオレンス)--殴らずにはいられない男たち』豊田正義(著)光文社新書
・『DVと虐待―「家族の暴力」に援助者ができること』信田さよ子(著)医学書院
・『ドメスティック・バイオレンス―男性加害者の暴力克服の試み』草柳和之(著)岩波ブックレット
あそう あきこ