エジプト 赤のピラミッド ダハシュール
エジプトのムバラク政権が崩壊したニュースは記憶に新しい。血を流さずに、自由を、政権を奪回したことは全世界に衝撃が走った!
日本ではテレビから流れる映像やニュースで、その様子を知ることができるが、規制され検閲を受けながらも、face bookというツールを通じ、若者たちが革命を起こしたことは、21世紀という時代の中で、大変画期的な出来事であったことは言うまでもない。
ふと、「自由とは何か。平和とは何か。独裁者とは何か」考えてみた。私の脳裏にチャップリンの映画『独裁者』が浮かんできた。様々な角度から考えさせられた映画であったことを記憶している。
ちなみに、私の母は学生時代に「和製チャップリン」と呼ばれたほどの名喜劇を演じる役者でもあり、子どもたちを厳しく鍛えあげ、優しいまなざしを与え続けた教育者であった。以前、チャップリンについて、平和と自由について、舞台に立ちながら教育者として子どもに接してきた人生経験豊かな母と色々と語り合う機会をもった。
この映画で、ユダヤ人迫害の話に凍てついた心と共に、チャップリン扮するチャーリーの演説には身震いがしたことを思い出す。シニカルに、大胆に、チャップリンが自由と平和を訴えかけているヒューマニズム精神に基づく演説にはうなずく点もあった。
戦後65年過ぎた今も世界各地で戦争が絶えない。このことは大変嘆かわしいことであり、チャップリンが理想とした世界は21世紀を迎えた現在どの国家も実現していない。
私たちは民主主義とは一体何なのか。もう一度考えてみる必要性があるのではないか。
チャップリンの指摘にもある
「ユダヤ人も黒人も白人も、人類は互いにたすけ合うべきである―
他人の幸福を念願として、お互いに憎み合ったりしてはならない」
まさにそのとおりであると思う。
しかし、この映画を最初に見た当時に中学生(15歳)だった私は、果たして彼のように自己を主張して貫き通すことができるのかが、大変難しいことであるかのように思えた。
しかし、大人になった今(34歳)はその考えは息を潜めて、必ずできるという信念が芽生えてきたことをひしひしと感じる。だめだと思った瞬間から時は止まるからである。
必ず進む、実現するという強い一念こそが、時代を動かして偉業を成し遂げる力を生み出す。
民主主義のもと、わが国は発展を遂げ、今日に至る。私の母の世代は、人と人がつながって互いに助け合いながら、日々の暮らしを営むことが当たり前であった。その日本の美徳が崩れ去り、個人主義の名の下に、虐待や孤独死などの社会的弱者に対する配慮が欠けた歪みが生じている。日々の生活の中でも絶えず繰り広げられる人の心が生み出す諍いを、国家間レベルでの争いと全く別の次元と考えるのは浅はかである。
国民の一人ひとりが考えること、何を目標として生きるかで、社会は確実に変わっていく。それを成し遂げる原動力こそ、民主主義に他ならない。
現在、エジプトは自由と開放感の歓喜でいっぱいであろう。人々は笑顔で暮らす未来に希望を抱いている。このことは素晴らしいことであると思う。私は民主主義を否定してはいない。
しかし、世界のすべての国に民主主義がすんなりと適合しないのではないかとも思い、一抹の不安がよぎっている。
私は、それぞれの民族や風土にあった方法で、社会を構築して行く手助けを先進国は果たすべきであると思う。現在行われている介入の仕方を、今後の社会の中で考えて行く必要があるのではないか。
私たちが当然のごとく享受している普通の生活がエジプトでは守られていない。その悲しくも眼を背けてはならない現状を思う時、打開を決意し立ち上がった人々の勇気に感動を覚える。いまこの一瞬を生きることが危ぶまれている極限状況に立たされた時に、人間が結集する力の持つ威力は凄まじいものであるとも思った。
日々の暮らしの中で安全安心に暮らせることは守られ、何人も冒すことはできぬ心の領域にある真の安らぎを守っていかなければならない。
すなわち、思想・言論の自由を守ることこそ、民主主義の根幹である。
平和と呼ばれている状態の日本に暮らす私たちは、過去の歴史を学び、その中から何を得て進んでいけばいいのか、どう未来へとつなげて行くのか。
私は現在、中学生の時に思いもしなかった人生を生きている。今の私にできることは何であるのか!?これからの社会を担っていくのは、私たち世代である。
ひとりひとりの力は小さくても、必ずできることがあることを私たちは再認識する必要がある。
人生の様々な岐路において、私が歩いてきた過程には無駄なものは何ひとつなかった。きっと、冷静な判断を迫られたときに議員として培ってきた色々な体験は役立つことだろう。
歴史を主観的に見ることについての意義を私はE・H・カーから学んだ。私たちは自己決定権は自分にあることを認識し、強靭な精神力を兼ね備え、氾濫する情報の渦の中で必要なものを見極める力を養わなくてはならない。
私はこれからも自己と向き合い、自分の人生をよりよいものにしていくために頑張っていきたいと思う。
追伸:本ご紹介!ぜひ、子どもたちに読んでみてほしいなと思う。
「なぜアメリカ市民にならないんだ?」
と、別の声がいった。
「国籍を変える必要を認めないからです。
わたしはみずから世界市民だとおもっています」(チャップリン)
出典:江藤文夫著『チャップリン』岩波ジュニア新書