永遠に不滅の精神を受け継ぐ覚悟
祖母(麻生秀子)は幼き頃より、よく私に自分の祖父である江澤富吉の
ことを話してくれました。
その光景は、つい昨日のように、よみがえってまいります。
房総半島の城下町大多喜出身の江澤富吉は、兄初代江澤金五郎と共に、
明治時代、東京に乗り込み、自己の考えてきた一つの生き様である
「商道先駆」を実践してまいります。
「商道先駆」
その考えの根本とは、
「ヨーロッパの騎士に騎士道、日本の武士に武士道があるように、商人には商道があり、道徳にのっとった商売を行うことこそ、商人の責務である」
と説き、そのことを実行してまいりました。
東京銀座天賞堂を創設し、日本で初めて本格的にダイヤモンドを扱い、
明治期には天賞堂のイルミネーションは、銀座の三大名物と称されました。
それまでの、坐売りに対し、立ち売りを励行し、近代対面販売を確立し、
日本で初めての商品券ともいうべき、商品小切手を発行したり、
まさに、近代商業の名をほしいままにしました。
そんなことを思い出していましたら、私の祖母と同じく江澤富吉の孫である、
江澤雄一氏のことが「エコノミスト(2009年1月20日号)」
に掲載されました。その文面をそのまま掲載します。
「エコノミスト(2009年1月20日号)」より
金融危機の主因は「金融界のモラル欠如」
これを契機に日本の教育目標も再検討すべき
大蔵省(現財務省)国際金融局長、UBSグループ日本代表兼副会長などを歴任した、
東洋学園大学の江澤雄一理事長に、世界を襲う金融危機の行方とこれからの大学教育
のあり方を聞いた。
― 今世界は「100年に一度の危機」に襲われています
江澤:1992年まで大蔵省で国際金融行政などに携わり、退官後は外資系金融機関
に転じて、金融ビジネスに関わりました。その経験から言わせてもらうと、経済も金融
もグローバル化して、巨大で複雑なモンスターになってしまい、手に負えなくなったこ
とが危機の背景にあります。
ところが、これを動かすのはしょせん人間であって、最終的には経済や金融に携わって
いる当事者のビヘイビア(行動、態度)に帰着する、と考えるべきだと思うのです。
― 米国では金融機関トップの報酬があまりに多いと批判が高まりましたね。
江澤:報酬が象徴的ですが、金融機関の経営があまりにも短期志向だったことが
金融システムの安定性を損ねました。米国の住宅金融会社は、返済の見込みがない
借り手に対して、「いざとなったら家を処分すれば返せる」などと不動産価格の値上
がりを前提にした強引な貸し付けを行いました。
さらに、債権が証券化されて全世界に拡散したのはご存じの通りです。
今このプロセスに関った投資銀行などに税金を投入するにあたり、金融機関の「短期
的利益が得られるならやってしまえ」というこれまでのビヘイビアが問題になっています。
企業にとって、収益性と倫理はつねに相克が起きますが、やはり経営者自身が自らを
どう改めるかが問われているのだと思います。
― 今後、世界はどのように解決すべきでしょうか。
江澤:金融機関に対する公的資金の注入などが進み、金融システムを補強するため
の当面の対応はできたと思います。私が見るところ、これからの課題は2つあって、1つ
は国際金融の監督体制をどうするか、もう1つはリセッション(景気後退)への対応として
財政出動をどうするか。
前者についてお話すると、国際金融の監督体制というのは、銀行がバーゼル銀行監督
委員会、証券がIOSCO(証券監督者国際機構)、さらには金融システム全体については
G7(先進7カ国)傘下の金融安定フォーラム――とバラバラになっているんですね。
これをどう統一するか。
IMF(国際通貨基金)はブレトンウッズ体制の一つの柱ですが、発展途上国の支援だとか
世界経済の調査に重点を置いていて、金融システム安定化の役割を果たしていないとい
う見方が多い。「ブレトンウッズ2」ともいうべき新しい体制をどのように築くかが今後の大き
な課題になるでしょう。
― さて、これだけ激変する時代にあって大学教育はどうあるべきとお考えですか。
江澤:このダイナミックに変化する時代に日本人がどう活躍すべきかが問われています。
これまでの日本の教育を振り返ると、かつては国全体が「追いつけ、追い越せ」とのムード
だったため、教育も知識偏重だったといわれています。
やはり単なる知識ではなくて、自分で考えて、判断して、行動できる人を生み出す教育――
リベラルアーツを重視する必要があると思います。
世界が多極化し、ロシアが復活、中国もインドも台頭するなか、日本はどうすべきかが問わ
れていると思います。その答えはソフトパワー、つまり知力、技術力、文化力ではないでしょ
うか。日本がソフトパワーとして世界に貢献し、存在感を発揮するうえで、大学の役割はきわ
めて重要ですが、それは学生の独創性、創造力、人間力を高めることだと思います。
さらに、大学というのは学校教育の最終段階ですから、ここがどういう目標を立てるかが中
等教育、初等教育にも影響する。日本の教育がなにを目標とするかを再検討すべき時期に
あると思います。
― 米国では、リベラルアーツに特化した、小規模であっても評価が高い大学が数多いと聞きます。
江澤:まさにそうであって、リベラルアーツが目標とする独創性、創造力、人間力は平均的
な学力とは必ずしも合致しないんですね。つまり、私立大学は、スタンダードな国立大学
と違った特色ある教育を行って社会に貢献できる面が大きいと思うわけです。
― 先ほどの企業経営者の倫理観の問題もリベラルアーツ教育と関係あるとお考えですか。
江澤:今までの日本では、「組織の中で効率的に働ける」といった一定のモデルとなるような
人間像があって、これを養成してきました。国立大学は決まりきったパターンの人間を作って
きたといってもいい。要は、企業や役所にとって「使いやすい人材」を養成するのが教育と考
えられてきたわけです。
しかし、「追いつけ、追い越せ」の時代が過ぎて、日本は新しいものを開拓し、創造しないと
いけない時代に入り、決まったモデルではなく、一人一人が持ついろいろな可能性を大事に
する教育が必要になっていると思うんですね。
そこでリベラルアーツという考えが出てくる。これは人間の生き方を教えるわけです。
型にはまった人ではなくて、いろいろなタイプの人がいてもいい。
しかし、人としてやっていいこと、いけないことをしっかりと考えさせないといけない。
これがリベラルアーツであって、先ほどの企業経営者のビヘイビアの問題にしても、人として
の生き方が問われていると思うんですね。
― その点、東洋学園ではリベラルアーツ教育をどのように実践されていますか。
江澤 :学生たちに感動する場を与えることです。学生時代の深い感動がその後の人生の
原点、拠りどころになると思うからです。先生や友達と人生を語らう、心に触れる本や映画に
出会う、スポーツに励んで試合に勝つ、ボランティア活動で人助けをする、こうした1つ1つ
の体験が大きな感動につながる。
東洋学園大学は「時代の変化に応える大学」「国際人を育てる大学」「面倒見のよい大学」の
3つの理念を持っています。これを実践するには規模が大きな大学よりも、学生数が2600人
程度の小規模な大学だからこそきめ細かい教育ができるというのが私たちの考えです。
規模を大きくするのではなく、教育の中身を充実させる、学生の可能性を引き出す。
この考えを大事にしていきたいと考えています。
江澤雄一(東洋学園大学理事長)
1962年東京大学法学部卒業後、大蔵省(現財務省)入省。ハーバード大学行政学修士。
在ニューヨーク領事,在英公使,国際金融局長,J・Pモルガン特別顧問、
UBSグループ日本代表兼副会長を経て現在、特別顧問。
2003年より東洋学園大学理事長。経済同友会幹事,お茶の水女子大学経営協議会委員
生きた経済を実践され、将来の日本を支える人材の育成に情熱を燃やされている江澤雄一氏
江澤雄一氏は、現在の国際金融、教育に対して、大変含蓄のある提言をしています。
江澤富吉の商道先駆の精神は、今尚、その孫に受け継がれていることを実感している今日この頃です。
尊敬すべき親族である江澤雄一氏には、いつも私はご指導をいただきながら、日本の今後について考え続けております。
江澤雄一氏の思いを少しでも伝えるべく、これからも日々活動に勤しんでまいります。
あそう あきこ
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