法律メモ

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国際仲裁レジメ

1 はじめに
   日本企業におけるコンプライアンスの重視

2 仲裁とADR
   仲裁がADRに含まれるか
    国際ビジネスでの定義:仲裁は通常ADRに含まれない
    日本での定義:仲裁はADRに含まれる(ADR法でのADRの定義)

3 国際仲裁の歴史
   17世紀末    仲裁に関する最初の制定法(イングランド)
   19世紀     City of London Chamber of Arbitrationの設立
            (現在のロンドン国際仲裁裁判所(LCIA)の前身)
   第一次世界大戦後 国際商業会議所(ICC)設立(パリ)
   1958年    ニューヨーク条約
   1961年    ニューヨーク条約への日本の加盟
   2003年    日本の仲裁法制定

4 国際仲裁のメリット
(1)簡易・迅速
    ただし,仲裁代理人の費用を含めて敗訴者が負担する可能性に注意

(2)仲裁人という判断権者の中立性・専門性

(3)柔軟性
   ・仲裁地の選択
   ・準拠法の選択
   ・仲裁機関及び仲裁人の選択
   ・ディスカバリーにおける文書交換の程度の選択

(4)非公開性
    ただし,仲裁当事者の守秘義務までは当然には保証されない

(5)一審性
    ただし,裁判所における取消の可能性あり
     ・仲裁合意の無効又は逸脱
     ・仲裁手続の適正
     ・公序良俗違反 など

(6)執行の容易性
    ニューヨーク条約の存在
    *なお,国際仲裁判断の90%は任意に履行されている

5 仲裁条項起案の検討事項
(1)広範仲裁条項と限定仲裁条項
    仲裁事項が契約の解釈と履行に関する紛争に限定されるか否か
    ="ariging"を"in relation to"や"in connection with"とも解釈できるか
    →裁判例の解釈は2つに分かれている。
     かかる解釈問題が生じないように,そもそも広範に文言を定めるべき
      *In re Petition of Kinoshita&Co.,287 F.2d 951
       (2d Cir.N.Y.1961)
        →限定的に解釈された
      *JCAA仲裁の仲裁廷の判断例
        →限定的に解釈された

(2)仲裁による紛争解決の排他性
    仲裁条項の存在にもかかわらず,訴訟による解決を行う可能性
      "may be finally settled by arbitration":排他性なし
      "shall be finally settled by arbitration":排他性あり

(3)仲裁判断に基づく判決の登録に関する合意
    仲裁判断の裁判所による執行には,判決の登録に関する合意が必要か
    ="may be entered in any court having jurisdiction thereof"の文言が必要か

     *Daihatsu Motor Co.,Ltd.v.Terrain Vehicles, Inc.,13 F.3d 196
       →"finally settled"という文言で,判決の登録の文言は不要

(4)仲裁人の数
    JCAA,ICC:デフォルト・ルールの仲裁人を1人とする
    CIETAC,UNCITRAL仲裁規則:デフォルト・ルールの仲裁人を3人とする

(5)仲裁機関
    *ICCにおける特殊性
     ・Terms of Reference=争点整理
     ・仲裁判断の仲裁機関によるreview

(6)仲裁地
  ア 仲裁地の定義
    ・仲裁地には法的概念と物理的概念がある
  イ 法的概念の仲裁地
    ・法的概念の仲裁地とは仲裁法との連結概念
    ・原則として仲裁地の仲裁法が適用になる
    ・仲裁判断地とは法的概念の仲裁地のこと
  ウ 物理的概念の仲裁地
    ・物理的概念の仲裁地とは実際に仲裁を開催する地(仲裁手続地)
    ・仲裁人や仲裁代理人の便宜で仲裁地以外で開催される場合あり

(7)仲裁費用
  ア 仲裁人報酬及び管理費用の概算
    ・1人仲裁人の場合(HKIAC,SIAC,ICC)
      係争額    :仲裁人報酬+管理費用
      US$ 500,000:US$ 20,000〜 60,000
      US$ 1,000,000:US$ 20,000〜 90,000
      US$10,000,000:US$ 40,000〜240,000
      US$50,000,000:US$ 70,000〜370,000
    ・3人仲裁人の場合(HKIAC,SIAC,ICC)
      係争額    :仲裁人報酬+管理費用
      US$ 500,000:US$ 20,000〜150,000
      US$ 1,000,000:US$ 40,000〜210,000
      US$10,000,000:US$ 90,000〜620,000
      US$50,000,000:US$170,000〜940,000
  イ 検討事項
    ・仲裁費用に代理人弁護士の報酬・費用を含めるか否か
    ・仲裁費用の負担割合を敗訴者負担とするか否か

(8)多層的紛争解決条項
   ・仲裁を申し立てる前に交渉,調停による紛争解決を試みる旨の規定

6 国際仲裁の手続進行
(1)第1段階
    仲裁申立て
     ↓
    答弁書提出
     ↓
    仲裁人選定
      経験,バックグラウンド,リーダーシップなど

(2)第2段階
    準備手続会の開催
      手続決定書の内容の確定=手続事項の確定
       *仲裁手続を運営するためのUNCITRAL摘要書
         =手続事項のチェックリストとして使うことができる
     ↓
    主張書面・書証・陳述書の提出
    (文書提出要求・文書提出命令のやり取り)
       *IBA国際仲裁証拠調べ規則
         →ヾ慙△つ⊇斗廚任△詁団衒現颪猟鷭侈仁

(3)第3段階
    口頭審理(審問)

(4)第4段階
    審理終結
     ↓
    仲裁判断
      *多数決による
      *反対意見の公表の可否

(5)仲裁判断に対する異議申立方法
  ア 仲裁地国の裁判所における取消
  (ア)仲裁廷の無権限
      =仲裁合意の無効又は仲裁範囲外
  (イ)手続保障違反
      =通知の不存在又は防御不可能
  (ウ)仲裁廷の構成又は仲裁手続の違反
  (エ)仲裁可能性(仲裁適格)違反
      ・仲裁可能性が否定される例
        →株主総会決議不存在,無効,取消
          理由)対世効が生じるから
      ・特許権の有効性の仲裁可能性
        →当事者間の相対効として仲裁可能性あり
          ex)米国連邦特許法294条
  (オ)公序良俗違反
  イ 仲裁判断の承認・執行拒否(ニューヨーク条約5条)
  (ア)拒否事由
       上記取消事由とほぼ同じ
  (イ)仲裁地国において取り消された仲裁判断の承認・執行
       承認・執行裁判所の裁量的判断
       *裁判例
         −コロンビア地区連邦控訴裁判所
          TermoRio S.A.E.S.P.v.Electranta S.P.,
          487 F.3d 928(D.C.Cir.2007)
            →執行拒否
         −アムステルダム控訴院
          Yukos Capital S.A.R.L.v.OAO Rosneft.
          1 Stockholm Int'l Arb.Rev. 219(2009)
            →執行許可
         −フランス破棄院
          Sté PT Putrabali Adyamulia v. Sté Mnogutia Est Epices,
          2007 Rev.Arb.507
            →執行許可

(6)和解による終了
    *国際仲裁の約60%が和解で終了している

7 国際調停の選択
(1)国際調停のメリット
  ア 費用が低額
  イ 期間が短い

(2)国際調停の手続き
  ア 申立て
     一方又は双方による申立て(JACC調停規則)
  イ 調停期日における協議
     評価型調停:配分型交渉による調停
            →ゼロ・サムでの決着
     促進型調停:統合型交渉による調停
            →交渉材料を増やし,双方の主張の背後にある理由の満足

8 まとめ
  ・訴訟に代わる簡便かつ確実な手段としての国際仲裁
  ・しかし,国際仲裁の訴訟化(手続の長期化,費用の高額化)
  ・そこで,国際調停による解決を模索すべき

9 参考文献
  ・「国際仲裁のよりよい活用を目指して」
   (簗瀬,グリアー,小原,NBL975-977)
  ・『国際取引紛争 仲裁・調停・交渉』
   (中村達也,三省堂,2012)
  ・『国際ビジネス紛争の解決―訴訟・仲裁・ADR』
   (中村達也,大学教育出版,2008)
  ・『企業間紛争解決の鉄則20―国際弁護士を使ったコスト節約のノウハウ』
   (蘯菲Ч─っ羆経済社,2012)
以上

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こんにちは、国際法に興味がある学生です

(2)仲裁による紛争解決の排他性
仲裁条項の存在にもかかわらず,訴訟による解決を行う可能性
"may be finally settled by arbitration":排他性なし
"shall be finally settled by arbitration":排他性あり

という点が気になりました。あまり教科書等では見ない論点なので・・・。
このようなことが問題となったICJにおける裁判等はあるんでしょうか?

また(1)広範仲裁条項と限定仲裁条項
の点は問題になってるのは日本やアメリカにおける商事仲裁だけなのでしょうか?

お時間があるときにお応えしていただけたらと思います。
よろしくお願いします。

2012/10/30(火) 午後 1:28 [ run*at*a_la*d ] 返信する

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コメントありがとうございます。

1,仲裁による紛争解決の排他性

論点としては,『国際取引紛争 仲裁・調停・交渉』(中村達也,三省堂,2012)113頁に記載されていたものですが,裁判例があるか否か知りません。
済みません。

2,広範仲裁条項と限定仲裁条項

このレジメでご紹介したこの論点についての裁判例,仲裁例は,『国際取引紛争 仲裁・調停・交渉』(中村達也,三省堂,2012)111−113頁,『国際ビジネス紛争の解決―訴訟・仲裁・ADR』(中村達也,大学教育出版,2008)143−144頁に紹介されていたものでして,それ以外の国で問題となっているか否かは知りません。

お役に立てず済みません。

2012/11/2(金) 午前 9:27 [ 布袋 ] 返信する

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