法律メモ

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目次

1,はじめに
2,中間試案の位置付け
3,公表資料
4,改正項目
5,各改正項目の主な内容
6,まとめ

本文

1,はじめに

・2009年3月に『債権法改正の基本方針』が公表された
・その4年後の2013年3月に『民法(債権関係)の改正に関する中間試案』が公表された
・以下においては,改正の動向のフォローのため,中間試案の主な内容を整理する

2,中間試案の位置付け

・2009年3月に『債権法改正の基本方針』が公表された
・その後,2009年11月以降,法制審議会民法(債権関係)部会にて審議された
・審議のステージ
 -第1ステージ:論点整理
 -第2ステージ:中間試案取りまとめ
 -第3ステージ:改正要綱案取りまとめ
・今回は第2ステージまで終了したということ

3,公表資料

・今回の公表資料は,公表予定も含めて3つ
 1,中間試案
 2,中間試案(概要付き)
 3,中間試案の補足説明
・上記1及び2は公表済み
・上記3は未公表(平成25年4月9日現在)
・パブリック・コメント期間は平成25年4月16日乃至6月17日とされた

4,改正項目

・中間試案における主な検討対象となる現行民法の条文は,下記のとおり
 -第1編(総則)90条乃至174条の2
 -第2編(債権)399条乃至696条

・改正項目を,説明の便宜上,下記の9つに分ける(括弧内は中間試案の項目番号)
 (1)法律行為(第1乃至第6)
 (2)消滅時効(第7)
 (3)債権の種類及び効力(第8及び第9)
 (4)不履行時の処理(第10乃至第13)
 (5)責任財産の保全(第14及び第15)
 (6)多数当事者関係(第16乃至第21)
 (7)債権の消滅(第22乃至第25)
 (8)契約総論(第26乃至第34)
 (9)契約各論(第35乃至第46)

5,各改正項目の主な内容

・改正の動向のフォローを目的とする本レジメにおいては,各改正項目の主な内容のみを,簡単に述べる

(1)法律行為

 法律行為に関する改正は,下記の6つの項目(括弧内は中間試案の項目番号)
 i)法律行為総則(第1)
 ii)意思能力(第2)
 iii)意思表示(第3)
 iv)代理(第4)
 v)無効及び取消し(第5)
 vi)条件及び期限(第6)

 i)法律行為総則の改正ポイント
 ・法律行為の定義規定を設ける
 ・公序良俗の規定の中に暴利行為を無効とする規定を設ける
 
 ii)意思能力の改正ポイント
 ・意思能力欠缺の場合に法律行為が無効となるの旨の規定を設ける

 iii)意思表示の改正ポイント
 ・心裡留保の場合の第三者保護規定を設ける
 ・錯誤の効果を無効ではなく取消しとする
 ・動機の錯誤の規定を設ける
 ・表意者に重大な過失がある場合でも錯誤を主張できる場合(共通錯誤)の規定を設ける
 ・錯誤の場合の第三者保護規定を設ける
 ・詐欺取消しの第三者保護要件を善意無過失と明示する
 ・意思表示の到達の基準を明示する
 ・意思無能力者に意思表示の受領能力がない旨の規定を設ける

 iv)代理の改正ポイント
 ・代理人が自らを本人としてした行為も,代理と構成する
 ・復代理人を選任した際の代理人の責任軽減(選任及び監理のみ)の規定を削除
 ・代理権濫用(権限内の行為を代理人の図利目的で行う)行為の効果不帰属の規定(判例法理の93条但書類推)の明示
 ・代理権授与表示と権限外行為の表見代理(109条と110条の重畳適用)の規定の明示
 ・代理権消滅と権限外行為の表見代理(112条と110条の重畳適用)の規定の明示
 ・問屋取引(債権債務は受託者と相手方に生じるが,物権的効果は本人と相手方に生じる)を,「授権」と命名し民法に取り入れる

 v)無効及び取消しの改正ポイント
 ・法律行為の一部が無効でも残部は有効である旨の規定を設ける
 ・法律行為の無効・取消しの場合の返還義務の規定を設ける
 ・取消しうべき行為の追認の場合の第三者保護規定(122条但書)の削除
 ・取消権の行使期間を,現行の5年-20年から,3年-10年と短縮する

 vi)条件及び期限の改正ポイント
 ・「条件」という用語の定義規定を設ける
 ・「期限」という用語の定義規定を設ける

(2)消滅時効

 消滅時効に関する主な改正ポイントは,下記のとおり
 ・職業別の短期消滅時効(170乃至174条)の廃止
 ・民事消滅時効を10年から短縮
  【甲案】権利行使可能時から5年の一本
  【乙案】知った時から3/4/5年と権利行使可能時から10年の早い方
 ・定期金債権の時効期間を,20年-10年から,一律に10年とする
 ・不法行為による損害賠償請求権の消滅期間20年を除斥期間ではなく,時効期間とする
 ・生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間を,原則的時効期間よりも長期とする
 ・時効の「中断事由」という用語を,時効の「更新事由」とする
 ・裁判上の請求,支払督促などを,時効の「停止事由」とする
 ・債権の一部についての訴え提起を債権全部の時効停止事由とする
 ・催告は一度だけしか6か月間の時効停止の効力を有しないことを明示
 ・天災等による時効停止期間を,2週間から6か月に延長する
 ・当事者の協議を時効停止事由とする
 ・消滅時効が,援用によってはじめてその効果を生じることを明示

(3)債権の種類及び効力

 債権の種類及び効力に関する主な改正ポイントは,下記のとおり
 ・特定物の引渡しまでの善管注意義務(400条)を,「契約の趣旨に適合する」保存義務とする
 ・種類債権の特定事由に当事者の合意を付加する
 ・外国通貨債権の履行につき,現行403条の日本円ではなく,当該外国通貨とする
 ・法定利率を変動制とする
   -法改正時の法定利率を3%とする
   -その後年1回改定する
   -改定は,基準貸付利率(日本銀行33条1項2号の貸付の基準利率)の変動に応じて0.5%刻みとする
 ・変動法定利率の適用ルール
   -利息の場合は利息支払いの最初の時点の利率
   -遅延損害金の場合は遅滞時の利率
   -債権存続中に法定利率の改定があった場合は,以降は改定後の利率を適用
 ・中間利息控除に適用する利率は,固定利率で年5%
 ・債権の請求力を認める規定を設ける
 ・履行請求権の限界を下記のとおり明示
   -物理的に不可能な場合
   -履行に要する費用が債権者が履行により得る利益を著しく上回る場合
   -契約の趣旨に照らして相当でない場合
 ・履行の強制が民事執行法に基づき行われることの明示

(4)不履行時の処理

 不履行時の処理に関する改正は,下記の4つの項目(括弧内は中間試案の項目番号)
 i)債務不履行による損害賠償(第10)
 ii)契約の解除(第11)
 iii)危険負担(第12)
 iv)受領(受取)遅滞(第13)

 i)債務不履行による損害賠償の改正ポイント
 ・責めに帰することのできない事由の存在を免責要件とする旨を明示
 ・債務の履行に代わる損害賠償を請求した後は債務の履行を請求できない
 ・履行遅滞後の限界事由発生の場合,免責事由があっても免責なし。ただし,履行遅滞の有無にかかわらず免責事由が発生すべきときのみ免責事由となる
 ・限界事由と同一の原因により債務者が受けた利益についての債権者による代償請求を認める
 ・損害賠償の範囲を通常損害と予見すべき損害の二本立てとする
 ・予見時期は不履行時
 ・契約後に予見すべきとなった損害は,回避措置を講じることにより損害賠償義務を免れる
 ・不履行についての過失のみではなく,損害の発生又は拡大についての過失も過失相殺の対象とする
 ・損益相殺の明文化
 ・金銭債務の不履行による損害賠償を,法定利率以外にも認める
 ・金銭債務の不可抗力による抗弁を認めない旨の規定(419条3項)を削除
 ・賠償額の予定のある場合に裁判所がこれを増減できない旨の規定(420条1項後段)を削除

 ii)契約の解除の改正ポイント
 ・契約解除につき,帰責事由の有無を要件としない
 ・契約解除を,催告解除と無催告解除の二本立てとして条文上整理する
 ・催告解除につき,不履行が契約目的の達成を妨げない場合には解除できないこととする
 ・密接関連する複数の契約の一部の不履行の場合,複数の契約の目的が全体として達成できないときは,複数の契約すべてが解除できる
 ・解除による原状回復義務には,利息(545条2項)のみではなく,果実も含まれる
 ・解除による原状回復義務は,自己のすべき給付の価額又は現存利益のいずれか高い方を,価額の上限とする
 ・免責事由のない債務者に対する債権者の解除権につき,催告による解除権の消滅の規定(547条)の適用を排除。限界事由による不履行の場合に,損害賠償請求権を取得できない債権者(債務者に免責事由があるため)の解除権が消滅することにより,当該債権者の反対債務のみが残る結果となることを防止するため
 ・解除権者が受領した目的物を毀損した場合の解除権の消滅の規定(548条)を削除

 iii)危険負担の改正ポイント
 ・危険負担の規定(534条,535条及び536条1項)はすべて削除。限界事由の場合はすべて解除に一元化
 ・債権者に帰責事由のある場合の債権者による解除権の制限(536条2項の規律を維持)

 iv)受領(受取)遅滞の改正ポイント
 ・受領(受取)遅滞の効果をより明確化する
  -増加費用の負担(485条但書参照)
  -保存義務の軽減

〜その2につづく〜

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