|
〜その3からのつづき〜
(9)契約各論
契約各論に関する改正は,下記の12の項目(括弧内は中間試案の項目番号)
i)売買(第35)
ii)贈与(第36)
iii)消費貸借(第37)
iv)賃貸借(第38)
v)使用貸借(第39)
vi)請負(第40)
vii)委任(第41)
viii)雇用(第42)
ix)寄託(第43)
x)組合(第44)
xi)終身定期金(第45)
xii)和解(第46)
i)売買の改正ポイント
・売買予約につき,一方のみならず双方が予約完結権を有する場合のあることを明示
・履行に着手したのが手付解除をする本人であるときは手付解除が否定されない旨を明確化(判例同旨)
・瑕疵担保責任の「瑕疵」を「契約の趣旨に適合しない」と言い換える
・契約不適合の効果は,履行追完,損害賠償又は解除とする
・履行追完,損害賠償及び解除をする権利を放棄するのと同時に,代金減額請求が可能
・契約不適合の場合の期間制限に2案
【甲案】消滅時効のみ
【乙案】消滅時効,及び知った時から1年
・商法526条類似の検査・通知義務
-検査義務:遅滞なく
-通知義務:相当な期間内
・競売の場合に瑕疵担保責任を認めない570条但書の規律を変更し,この場合でも担保責任を認める
・引渡し後の契約不適合の場合は,買主には,その責任を売主に追及する権利がない(危険の移転)
ii)贈与の改正ポイント
・他人物贈与も有効な旨を示すため,贈与の定義の「自己の」を削除
・「瑕疵」を「契約の趣旨に適合しない」とする
・解除の際の原状回復義務が現存利益を限度とする旨を明示
・事情変更による贈与者の困窮を解除の原因とする
・受贈者に,推定相続人の廃除事由(892条)に該当する著しい非行があったときの解除の規定を設ける
iii)消費貸借の改正ポイント
・諾成的消費貸借契約の成立に書面を要するとする
・書面には電磁的記録を含む
・諾成的消費貸借契約の目的物受領前の借主による解除権を認める
・諾成的消費貸借契約は,目的物受領前に借主が破産手続開始決定を受けたときは効力を失う
・消費貸借の予約の成立に書面を要する
・書面には電磁的記録を含む
・消費貸借の予約は,目的物受領前に借主が破産手続開始決定を受けたときは効力を失う
・消費貸借に基づく債務を旧債務とする準消費貸借を認める旨を明示する
・利息が元本受領時から生ずる旨を明示
・利息付消費貸借の目的物不適合の貸主の担保責任は売買の規定を準用
・無利息消費貸借の目的物不適合の貸主の担保責任は贈与の規定を準用
iv)賃貸借の改正ポイント
・賃貸借終了後の目的物返還債務を賃貸借の定義規定(601条)に盛り込む
・賃貸借の存続期間の上限(20年《604条》)を廃止
・不動産の賃貸借が対抗要件を備えている場合の,不動産譲渡人から譲受人に対する賃貸人たる地位の移転の判例法理を明記
・対抗要件を備えた不動産賃借人による妨害排除請求及び返還請求の明示(判例同旨)
・敷金の意義,発生時期,充当に関する判例法理の明文化
・減収による賃料減額又は解除の規定(609条,610条)を削除
・賃貸人と賃借人との間の合意解約は,適法な転借人に対抗できない旨を明示
・賃借物の全部滅失の場合の賃貸借の終了の判例法理を明文化
・賃貸借終了時の借主の収去権及び収去義務の整理。但し,分離不可能物又は過分の費用を要するものはこの限りでない
・原状回復義務の整理。なお,通常損耗及び経年変化の原状回復義務を負わない旨の明示(判例同旨)
・ファイナンスリース契約に賃貸借の規定を準用する。但し,賃貸人の修繕義務(606条),必要費の負担(608条),売主の担保責任は準用しない
・ライセンス契約に,その性質に反しない限り,賃貸借の規定を準用する
v)使用貸借の改正ポイント
・使用貸借を要物契約(593条)ではなく,諾成契約とする
・借用物の引渡し前の借主による解除権を認める
・書面による使用貸借は,引渡し前でも解除できない
・使用貸借終了時の借主の収去権及び収去義務の整理。但し,分離不可能物又は過分の費用を要するものはこの限りでない
・原状回復義務の整理。なお,通常損耗及び経年変化が原状回復の対象か否かについては規定を置かない
vi)請負の改正ポイント
・仕事未完成の場合にも,下記のときには,既履行仕事分の報酬及び費用請求権を認める
-仕事の成果が可分,かつ給付を受けることに注文者が利益を有するとき
-完成のために必要な行為を注文者がしなかったとき
・注文者の帰責事由により仕事が完成しなかった場合,全額の報酬及び費用請求が認められる
・仕事目的物の不適合の場合の修補請求につき限界事由による制限を設ける
・解除,損害賠償の規律については債務不履行の一般条項(債権総論)に委ねる
・不適合の場合の免責特約は,引渡し時に請負人が不適合につき悪意の場合は不適用。現行640条は,悪意かつ不告知を要件とするが,この要件を悪意のみに軽減
・注文者破産の場合の請負人の解除権を,仕事完成前に限定
vii)委任の改正ポイント
・受任者の自己執行義務を定める
-原則:自己執行義務
-例外1:委任者の承諾
例外2:やむを得ない事由
・委任の無償性の原則(648条1項)を削除
・委任事務処理に対する報酬支払方式と成果に対する報酬支払方式の規定を設ける
・委任者又は受任者の破産の場合の委任契約の当然終了(653条2号)を改め,解除事由とする
・準委任のうち,知識,経験,技能その他受任者の属性が主要な考慮要素となっているもの以外については,自己執行義務,任意解除(651条),死亡又は後見開始による委任の終了(653条1号,3号)を準用しない
viii)雇用の改正ポイント
・労務の中途終了の場合の割合に応じた報酬請求権の明示
・使用者の帰責事由に基づく労務の中途終了の場合には全額の報酬請求権を認める
・期間の定めのない雇用の解約申入れの民法上の予告期間の定め(627条2項,3項)の削除
ix)寄託の改正ポイント
・寄託を,要物契約(657条)ではなく,諾成契約とする
・有償寄託における,寄託物受取前の受寄者による解除を認める
・無償寄託においても,寄託物受取前の受寄者による解除を認める。但し,書面による寄託の場合は解除不可
・受寄者が寄託物を受け取る前に寄託者につき破産手続開始決定がなされたときは,受寄者又は破産管財人は寄託を解除することができる
・受寄者の自己執行義務
-原則:自己執行義務
-例外1:寄託者の承諾
例外2:やむを得ない事由
・寄託物の損傷又は一部滅失の場合の寄託者の損害賠償請求権の短期期間制限(1年)の規定を設ける
・混合寄託の要件として,すべての寄託者の承諾を要する
x)組合の改正ポイント
・組合契約につき,一部の組合員の意思表示又は法律行為の無効又は取消原因があっても,その他の組合員により組合契約は有効に成立する
・他の組合員の出資債務の不履行を理由として,自己の出資債務の履行を拒絶できないし,組合契約の解除もできない(判例同旨)
・組合員の債権者は組合財産に対して権利行使できない
・組合員は組合財産の分割請求ができない
・組合の債権者は組合財産に権利行使できる
・組合の債権者は,各組合員に対しても均等割合で権利行使できる。但し,債権者が債権発生時に各組合員の損失分担割合を知っているときはそれによる
・新組合員の加入の要件(全員の承諾又は組合契約の定め)を明示
・新組合員が加入前の組合債務の履行責任を負わない旨を明示
・組合員の脱退の場合,脱退組合員は脱退前の組合債務の履行責任を負う。但し,組合に対して,当該債務の履行若しくは免除を得ること,又は担保提供を請求できる
xi)終身定期金の改正ポイント
・終身定期金債務者の定期金債務不履行の場合に,終身定期金債権者が契約を解除できることを明示
xii)和解の改正ポイント
・和解により争いをやめることを約した場合,争いの対象である権利の存否又は内容に関する事項のうち当事者が争っていたものについて錯誤あっても,95条の錯誤の主張はできない旨を明示
6,まとめ
・『債権法改正の基本方針』(2009年3月)の数カ月後に発行された,内田貴『債権法の新時代』(2009年9月)の第1章に示された下記の3つの理念
-現代化(判例理論,解釈論の条文化)
-再法典化(消費者契約ルール,商行為法の民法典への取り込み)
-契約法の国際統一
・かかる3つの理念は,今回の中間試案でも維持されている
以上
|