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屋上と階段 視点を変えてみる。 家の中が騒がしかったので外に出る。 玄関を出てすぐ庭の紫陽花が声を掛ける。 「今日は傘を持っていかれるのがよろしいでしょう」 夜空に雲は見えなかった。 予報でも今夜はよく晴れると言っており、月の輝きは眩いばかりだ。 「たぶん雨は降らないと思います」 「しかし、降るのは雨だけではありませんからね」 紫陽花の差し出す折り畳み傘をポケットに押し込み、礼を言ってから歩き出した。 しばらくすると通りすがりの黒猫が訊ねる。 「降りますよ傘はお持ちで?」 「はい大丈夫です。折り畳み傘を持っています」 「よろしいよろしい」 言って、空気の匂いを嗅ぐ。 「ふむ。そうですね。そこまでお供致しましょう」 どうやら進行方向に何かあるようだ。 他愛ないおしゃべりをしながら一緒に歩いてゆく。 意外に黒猫は饒舌家だったので、飽きることなく歩むことができた。 曲がり角の前に来たとき、黒猫は足を止めこんなことを言う。 「ここを曲がるのでしたら傘を差してください」 曲がろうと思うので傘を差した。 差している間に、黒猫はどこかに行ってしまった。 角を曲がって真っ直ぐ行った先に水溜りがあった。 波一つない水溜りを眺めていると、丸いものが落ちて、水飛沫が上がった。 それが落ちて降り注いできたが、傘のおかげで濡れずに済んだ。 ふと気付くと、水溜りから這って出ようとする人がいる。 さっき落ちてきた丸いものは、実は人だったらしい。 足が抜けず困っているその人に助けの手を差し伸べ、何気なく空を見上げてみると。 虹の上を真っ白な月が転がっているところだった。
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ネムネムさん、すみません!せっかくいただいたコメントを誤って消してしまいました……。
覚えている範囲ですが、助ける側も助けられる側も、自分の気持ちに素直になるのが『ラク』になる一番の近道だと思います。言葉、行動、その他なんでもいいので、人に対して表せたらいいですよね。
2010/12/1(水) 午後 11:43
にゃはは、消しちゃったのは構いません。にしても、面白い話ですよね。こういう不思議なお話は。ほんとに、みんなが『素直』になってくれたら良いのにな。
2010/12/5(日) 午後 9:50 [ ネムネム ]
こういうお話は大好きです^^
はじめまして健一さんのところから飛んできました
sakuともうします♪
2011/5/14(土) 午後 1:45 [ - ]
sakuさんはじめまして♪
現実と非現実がまざったお話は楽しく書けるのでいいですよ〜☆
2011/5/24(火) 午後 9:09