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麻生副総理の「新聞を読まない人は全部、自民なんだ」発言には笑った。産経のように安倍政権擁護を鮮明にする大衆紙もあるから、この場合の「新聞」とは朝日新聞や毎日新聞などを指すのだろう。
一応、根拠はある。若い世代ほど自民党支持率が高い。若い世代は「一番新聞を読まない」。そんな傾向を基に、新聞を読まない人は自民党支持だと極論することになる。
6月に行われた講演会での発言であり、内輪話みたいなもの。とはいえ、「新聞を読まない人」という大雑把な括り方はほんとに子供っぽい。己の幼稚性を認識できない人間を国政のナンバー2に頂くことのあわれ…。これはもう笑うしかないではないか。
朝日新聞の世論調査(7月14〜15日実施)によれば、「一番参考にするメディア」として18〜29歳が選んだのは、「ネット」38%、「テレビ」35%、「SNS」16%、「新聞」8%。30代は「ネット」53%、「テレビ」28%、「新聞」12%、「SNS」7%の順だった。
そして「SNS」を選んだ層の内閣支持率は48%、「ネット」層は42%、「テレビ」層は38%、「新聞」層は32%。情報源として新聞に頼らない人たちの内閣支持率は高い。しかし自民支持率とは連動しない。「SNS」層の自民支持率は34%、「ネット」層は37%、「テレビ」層は34%、「新聞」層は32%。
「全部」みたいな稚拙な表現は麻生副総理の得意とするところ。物事を単純化して投げつける悪罵は、子供同士の喧嘩ではよくあるが、要職を務めてきた政治家にしてはレベルが低すぎる。元首相だぞ。要するに日本の政治のレベルは低いということか。
それとも、「私は自分に味方してくれる仲間に囲まれているひとときが大好きです」という構えの安倍総理を頂く政治状況が、レベルダウンにつながっているのか。
まぁ仕方ない。その手の批判は何度も書いてきた。矛先を変えよう。なんで若者は自民支持なのだ!
昨年の衆院選での出口調査で、自民党支持率が比較的低かったのが60代。新聞の主な購読者は60歳以上と言われている。「新聞」と自民党支持率には、麻生副総理が指摘する通り、負の相関関係があるようだ。
だがあくまでも相関関係だ。新聞の論調に影響されて反自民になるとの見方は単純すぎる。テレビだって政権批判が盛んだから、「マスコミ」と言い換えてもよい。マスコミの与える影響が大きいとすれば、若年世代だって反自民が優勢でなくてはおかしい。
政治状況を判断する能力は、高齢者に一日の長があると解釈することができるのではないか。あくまで平均すればの話だが、高齢者の方が、政策を評価する能力も、政党を比較する能力も、政治家を見極める能力も、おしなべて高いと考えてもよいのではないか。
そうであるならば、現在、判断力の高い人たちは自民党支持率が低いと捉えることが可能だ。
自民党は、経験が浅く判断力の劣った若年世代からの支持が多いことを喜んでいるわけだ。若者は、就職率が向上した現象だけをとらえて自民党政権を支持している、と見る識者もいる。
この「高齢者は経験にもとづいて的確な判断ができ、若年世代は目先の現象だけで政治を判断しがち」という見方も単純すぎる。それは認める。実際には、各世代の政治判断には一種の“クセ”があると私は思っている。
それでもなお、経験の差は大きい。経験を重ねてこそ、噓やはったりを見抜く能力が高まる。政治家の性格を見極め、将来の政治行動を読む力も向上する。特定の政治問題について、重大なことなのか、大げさに騒ぎ立てているだけなのかも分かるようになっていく。
愚かな高齢者も多いが、少なくとも新聞に論評を書き、テレビに解説者として登場する年配者たちは、考察を重ねてきた人たちだ。平均以上の判断力を身に着けていると考えてよい。
もちろん、その論を鵜吞みにする必要はない。メディアには刺激的な論で注目を集めようとする“クセ”がある。著名な論者といえども感情が先立つことがある。ときに詭弁を弄する。理屈をこねくり回すだけで何も言っていないに等しいこともよくある。
新聞には編集方針という“クセ”がある。反面、編集を経ていることは信頼の証になる。個人の独断は排除され、間違いは訂正されやすい。組織的に自省し、歴代の編集者たちの教訓が受け継がれていく。
麻生流の「全部」みたいな発言は、活字になる前に必ず訂正される。マスコミは表現に慎重であり、「完全」や「絶対」なんて言葉は極力使わない。そうでなければマス(=大衆)の審判にかなわない。
経験も実績もない若者が、マスコミを軽んじるなんて尊大だ。会社で先輩をバカにするのと同じだ。若い営業マンは先輩のやり方をまねる。若い技術者は先輩に教えを乞う。若い研究者は先人の論文をひもとく。そうやって一人前になっていく。それと同じことだ。
最新情報を知らない年配者は時代遅れのように見えるかもしれない。しかし職場では、最新情報を知っているだけでは仕事にならない。情報量を誇る人間はたいてい仕事ができない。偉そうなだけで、組織に貢献しない。
情報が氾濫する現代だからこそ、情報の質を見極める能力が求められる。取捨選択しなければ溺れてしまう。
だから若者よ、新聞ぐらい読め。確立した権威に耳を傾けろ。記事内容を理解できない自分を恥じろ。社会の見方を学べ。判断基準を盗め。自分なりの判断力を身に着けるのはそれからだよ。さもないと、誰かさんみたいに愚かで幼稚な高齢者になっちゃうよ。
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