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ここ10年くらいの日本のポピュラーシーンは振り返ってみよう。
まず小室サウンドがヒットチャートを賑わした。
ユーロビートなど洋楽に影響されたアップテンポなダンスナンバーが若者の心を捉えた。
その結果、16ビートは完全に定着した。
音程もかなり高く、舞い上がるようなメロディラインが特徴的だった。
女性ヴォーカルが自分の高音域ぎりぎりまで使い、声量も目一杯で歌い上げるような曲が主流となる。
あげくにサビは全部裏声、みたいな曲も生まれる。
この時期、ポップスの王道を行くドリカムやミスチルも霞みがちになるが、次第に落ち着きを取り戻す。
さすがの若者もハイテンションに疲れたのか、ポップスらしいポップスが息を吹き返す。
ブリグリ、ELT、マイラバなどメロディセンスで勝負するグループが人気となる。
ヨーロッパでカーディガンズなど、力みのない楽曲が売れ出すのと呼応するように、メロディを伝えることに徹するような素朴な歌声が、人々の気持ちを捕える。
と同時に、平井賢やミーシャなど本格派も徐々に台頭。
洋楽を聴いてきた人たちが、本場のR&Bを消化したような歌唱力に魅力を感じたのだろう。
若者もヒップホップに注目するようになり、洋楽に対する興味が高まってくる。
アメリカのヒットチャートに登場するミュージシャンの歌唱力は押しなべて高い。
若者の耳も肥えてくる。
そんな中で、宇多田の登場である。
あちらのヒップホップをマスターした歌唱力はかなり魅力的だった。
同時にメロディメーカーとしての実力も高水準だったため、まれに見るビックセールスとなる。
私も心酔した。
今までの邦楽にないリズム感覚は新鮮だった。
そのリズム感を正確に伝えることのできる歌唱力に、思わず引き込まれる。
創意にあふれたアレンジもメロディラインを引き立てて小気味よかった。
こうしたミュージックシーンを受けて、中島美嘉の戦略が決まってくる。
中音域の歌唱力を際立たせる、ミディアムテンポな曲で勝負。
差別化であると同時に、ハイセンスな楽曲が受け入れられるとの見立てである。
ところがその後の展開が混乱する。
というかまた落ち着いてきたということだろうか。
今のヒット曲はみんなポップ!
当然か!
旧来のロックバンドスタイルにポップな味付け。
ピップホップというスタイルにポップな味付け。
R&B調にポップな味付け。
ドラゴンアッシュ系の無骨なヒップホップが必ずしも長続きせず、M-floを経てケツメイシである。
ケツメイシはメロディアスな曲、ヒットするための曲に徹している。
間奏にラップ、といったところだが、アレンジとしても成功しており、ヒップホップを知らない人にも心地よさを与える。
それにしても、ベニーKでやっと聞くに堪える女性ラッパーが出てきたという印象だ。
柴崎コウのあまりジャズワルツは売れなかったな。いいプロデュースだと思ったのに。ジャズ風はまだポップじゃないということか。
ジャズと言えば、オレンジペコのヴォーカルは物足りないな。演奏は一流のジャズしてるのに。一部では人気のようだが、中途半端だ。
ジャニーズの楽曲も相変わらずだ。去年のウィンズの楽曲センスがよかったので変化を期待したが。アレンジは物まね気味だったが、かなり先端行っていた。
いかん! 話が違ってきた。でも、やっぱり音楽の話は個別の話の方が面白いのだろうな。
さて、ポピュラーミュージックで先端を行くというのは、みんなが忘れかけているポップなメロディを提供できるセンスのことだろう。
ファッションのように流行が巡る、という現象がポピュラーミュージックでも出てくるだろう、これからは。
ポピュラーミュージックも半世紀を越えるカルチャーになったのだから。
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