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これから子犬を迎える人、現在犬と暮らしている人、ブリーダーさんなど、多くの方に 「門脈体循環シャント」について知って頂きたくて、新しい書庫を作りました。 手術によって治癒が期待できる場合や、手術不可能で食事療法で延命を望む場合など、 門脈シャントには様々なタイプがあります。こういう病気があるという事を知って頂く事に より、早い段階で治療を受けられて、元気で幸せな生活が長く送れる犬猫が増えるよう、 願いを込めて・・・ 「元々、体が弱く生まれてしまった子犬(猫)だったんだね」 「小さかったもんね」 「食が細かったもんね」 昔からたびたび聞かれる言葉です。 子犬のうちに亡くなってしまう犬の中に、どれくらいの割合で門脈シャントの犬がいるだ ろうと、ふと考える時があります。 この先天性の病気は、獣医師の中にもまだまだ浸透していない疾患なので、他の病気 と誤診される事が非常に多いと思われます。 アルもそうでした。 生後3ヶ月頃、うちに来て丁度1週間経ったある日、その異変に気付きました。 食べて1時間〜1時間半後に必ずと言っていいほど吐くのです。獣医さんに診せても、 「梅雨時だし、胃腸の調子が悪いんでしょう。子犬はデリケートですしね。」 と、胃腸薬を出されました。でも、全く症状が改善されませんでした。体力をつけるため に、煮て柔らかくした肉を混ぜて食べさせたりしました。しかし、症状はますます悪化。 その後ワクチンの件を獣医さんに相談したら、大丈夫でしょう、という事で5種混合を 接種しました。しかしその事で、坂道を転げ落ちるように、ますます悪化していきました。 獣医さんは抗生物質の注射と、飲み薬を処方しました。もちろん良くなる筈が無く、アル は度々入院しました。退院するたび に元気になって帰ってくるので、その獣医さんを信 頼していました。 後でわかった事ですが、入院中はほとんどフードを食べていなかったのです。アルが 入っていたケージには、食べ残されたウエットフードが・・・。あの光景を思い出すたびに 、今でも泣けてきます。 門脈シャントの犬は、フードを食べる事で症状が悪化するのです。家族のいない、病院 のケージ内で過ごすストレスで、食べられなかったアル・・・。それが症状を緩和していた なんて、皮肉な事です。 ある日、転機が訪れました。どうしていいかわからず、犬用のミルクを買いにペット美容 室に行った時の事です。なぜ美容室かというと、どこのペットショップも閉まっていたから です。いちかばちかで、美容室へ。ミルクを買うときに、オーナーさんにアルの事を話すと、 「優秀な先生を知ってるの」と、 ある動物病院を紹介してくださいました。 それが、主治医の先生との出会いでした。血液検査で肝機能全般の低下と、アンモニア の上昇が見られ、レントゲンで小肝症(肝臓に栄養が行かないために極端にに小さい)が 発覚しました。その結果、肝臓に行くべき血液が、異常な血管によって毒素と共に全身に 回ってしまうと同時に、肝臓に栄養が行かないために肝臓機能が低下していく「門脈体循 環シャント」の疑いが強いと言われたのです。 肉を食べると大量のアンモニアが発生します。だから食べた後に具合が悪くなっていた んだと、その時初めて納得しました。すぐに大学病院を紹介され、その2週間後には、運 良く異常な血管を縛る手術を受ける事が出来ました。 手術は成功し、その後8年間、健康な犬と同じようにお肉を食べ、普通のフードが食べら れる生活を送る事が出来たのです。残念ながら今回、手術が出来ないタイプの門脈シャ ントになってしまいましたが、あの時手術が受けられて本当に良かった、と思います。 もしあのまま、わからない獣医さんに通い続けていたら・・・ もしあの日、他のペットショップが営業していたら・・・ アルは8年前に、とっくにこの世からいなくなっていたかも知れません。 アルが手術を受けた時、タイムリミットぎりぎりだったのです。ぐったりして意識も朦朧 とし、腹水が溜まり、お腹がパンパンに膨れていたのです。あと1週間、いや一日遅か ったらどうなっていたか。 不思議なめぐり合わせに感謝でいっぱいです。 アルはラッキーな犬でした。 この病気と診断されず、訳もわからぬまま抗生物質を大量投与され、間違った治療をさ れ亡くなる犬が、少なくないかも知れません。 この病気を勉強していく中で、胃腸障害、結石(シャント犬特有の アンモニウム結晶の 誤診)・膀胱炎(頻尿になるため)・・・などの間違った病名が付けられた犬が非常に多い事 を知りました。 まだまだ獣医学界に十分に浸透していない病です。正しく診断できる先生は、あれから8 年が経った今でも限られています。手術を安全に出来る先生、施設となると、もっと少なく なります。 〜飼い主が気付く、主な症状〜 ・小柄で成長が遅い、被毛が薄い ・食後1時間〜2時間後位から、嘔吐、元気消失などの症状が出現、時には徘徊などの異常行動 ・慢性の下痢 ・頻尿、多飲多尿 ・寝てばかりいて、遊びたがらない ・菜食主義、偏食(食べてはいけない物が本能でわかるため) その他、食欲不振・嘔吐・下痢・血尿。隅に隠れる・壁に頭を押し付ける・震える・旋回行動 ・攻撃的 になる・ボーっとする・てんかん発作・失明・昏睡といった神経症状があります。 (肝性脳症) 上の症状のうち、いくつかが、生後3ヶ月(離乳期)〜2歳くらいで確認され、どんな治療を 受けても改善されない時は、ぜひ違う病院でも診てもらってください。放置しておけば、早 くて数ヶ月で命を落とします。症状は非常に軽度なものから重篤なものまで幅広いです。 また、後天性は年齢を問わずに症状が現れます。 *上の症状が出れば必ずしも門脈シャントだとは限りません。先生の中には安易に門脈 シャントだと診断してしまう方も見受けられるそうです。 決め手になるのは、「胆汁酸」と「アンモニア」の高値です。約半数に、尿中にアンモニウム 結晶が認められます。その他、血中蛋白・尿素窒素・アルブミンの低下、小さな肝臓・大 きな腎臓もこの病気の特徴です。 通常の肝機能で調べるGOT/ALT、GPT/ALT、ALPは正常範囲内の場合があります。 確定診断は開腹下で造影剤を入れて行います。処置可能なシャントであればそのまま手 術します。 詳しい解説は こちら 病名も告げぬまま「安易に抗生物質やステロイドを投与する」 そんな病院であれば、変えたほうがいいと思います。以前、良い動物病院の選び方という テーマの雑誌記事で、わからない場合、とりあえず抗生物質を使う獣医さんがいると書い てありました。 どんな病気にも共通する事だと思いますが、何の説明も無しに「私に任せれば大丈夫」 「言うとおりにしなさい」と高圧的な先生は信用できないのではないでしょうか。きちんと 説明してくれて、飼い主の疑問・不安に真剣に向き合ってくれる先生に出会えれば幸せ ですね。 しかしながら、獣医さんとは頭から足先まで全部診なければならない職業なので、それ ぞれの得意分野があると思うのです。その得意分野以外の症例もしくは、高度な医療設 備が必要な症例では、快く紹介状を書いてくださる先生がベストだと思います。 門脈シャントは、遺伝性も疑われる内臓奇形で、アイリッシュ・ウルフハウンドではす でに遺伝病の一つとして問題になっているそうです。(門脈シャント・肝内型) この病気がもっと世の中に知られ、遺伝性についての統計等の研究が進み、不幸な犬猫 が減っていけばと強く願っています。 アルは今日も、いつもと変わらず食欲があり、安定した状態が続いています。
このまま、肝臓病の特効薬が出る日まで、がんばろうネ! |
門脈シャントについて
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