“わが谷は緑なりき”〜私の映画ノート

原発のない、戦争のない世界に。そして「縮小社会」に向かう覚悟を。

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チップス先生さようなら』(Goodbye, Mr. Chips)は、ジェームズ・ヒルトンが1934年に発表したイギリスの小説。
19世紀の末から20世紀の初頭にかけて、全寮制男子校のパブリックスクールで教育に携わった1人の男性教師の半生を描いた作品です。

1939年、ロバート・ドーナット主演により、1969年にはピーター・オトゥール主演によって、映画化されています。

ドーナットは本作でアカデミー賞の主演男優賞を受賞しています。
風と共に去りぬ』のクラーク・ゲイブルらが有力とされていた年のことです。

イメージ 1

1939年、イギリス映画。監督:サム・ウッド、脚本:ロバート・C・シェリフ、クローディン・ウェスト、エリック・マシュウィッツ。出演:ロバート・ドーナット、グリア・ガースン、テリー・キルバーン、ジョン・ミルズ、ポール・ヘンリード。

映画はパブリックスクールの始業式の集会の場面から始まります。壇上の校長から、「チッピング先生は発熱のため欠席」と伝えられます。

ところが次の場面では、その(チッピング→愛称)チップス先生は、息を切らしながら会場に駆けつけています。
御年83歳。現役。この作品制作時のその年齢は、今以上に物凄い「高齢者」だったことでしょう。
でも、生徒も同僚教師たちも、何の違和感も抱いていません。

チップス先生は、すれ違う生徒それぞれの名前を呼びながら、言葉を掛けて行きます。
「相手の名前を覚えると言うこと」。それは相手の「人権」を大切にするための第一歩だと私は思います。
チップス先生は、そういう先生なのでした。

制服や帽子、教室での授業風景が当時のパブリックスクールの雰囲気をよく伝えています。
生徒の気持ちを汲み取り、しかし迎合することなく、威厳を持って。チップス先生は生徒との信頼関係を作っていきます。

「教育」一筋だったチップス先生は、ある時恋をします。それはアルプスに徒歩旅行したときの事でした。
お相手は、同所にサイクリングしてやって来ていたイギリス人女性。

二人の会話から、自転車が女性にはとても「進歩的」な道具であったこと、女性の参政権が完全には認められていなかったことなど、当時の時代背景が浮かんできます。そして想いが通じ合った二人は結婚へ。

幸せに満ちた暮らしが続いていましたが、チップス先生を生涯最大の不幸が見舞います。

そして時は戦争の時代へと突入していきます。教師も生徒も次々に応召。
学校を訪れた軍の幹部が、登校してくる生徒たちを見ながらチップス先生に言います。

 軍人「お見事です、校長。ご立派な若者たちで」
 先生「恐れ入ります」

 軍人「期待できます、明日の将校たちだ」
 先生「では明日が来ないことを祈りたい」

反戦の思いが込められた作品であることが伝わる場面です。

教師人生を全うしたチップス先生は、死の床で、生徒達は自分とって「我が子」だったと穏やかに語ります。

「死の床」は明るい光の中にあります。ひとつの職業を人生の中で全うさせた人の充足感を感じさせました。
同じような明るさの中で迎える死を、私は以前、小津監督作品「父ありき(笠智衆主演)」で見ていました。

その映画の主人公も、教師でした。思い残すことなく、愛する人たちに見守られて死ぬ…かつては当たり前だったそういう「別れ」ができない時代になりつつある今、その場面はとても「満ち足りた時」に見えました。


ロバート・ドーナット ( 1905年〜1958年) はイギリス出身の俳優。本作出演時は、34歳の若さでした。
見事な老け役です。


サム・ウッド監督は「誰が為に鐘は鳴る」の監督です。他に次のような作品も制作しています。

閉じる コメント(22)

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おはようございます。

「チップス先生さようなら」は英文科の後輩達の教科書に成っていました。

話はよく聞かされていました。

非常に懐かしい記事です。

ありがとうございました。

ポチです。

2012/5/20(日) 午前 6:29 [ - ]

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なまずさん、
そうですね、「英語」の教材によく使われた素材ですね。

私も映画ではなく、何かで読んで、物語の概要は知っていました。
その当時の「時代」の流れが色濃く反映されています。

チップス先生役のロバート・ドーナットが
長い教師の「人生」を好演していました。

2012/5/20(日) 午前 11:34 alf s mom

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こんにちは〜〜

昔の先生と生徒の間には目に見えない愛情が
あったように感じます・・私の感想ですが ^^

今は、そんな信頼関係が薄くなったように感じますね
ポチ

2012/5/20(日) 午後 1:51 tukidate57

戦争を美化したり、正当化する人々が多い世の中になっていますが、
僕は生涯、反戦・平和を大きな声ではないけれども叫んで生きたいと思います。チップス先生のように…
いい映画ですね。ポチ!

2012/5/20(日) 午後 6:21 メタボチョコ

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こんばんは。
ピーター・オトゥールの方は見た記憶が有るのですが内容は良く覚えていません?
ロバート・ドーナットについては知りませんでしたが、控え目で誠実な人間性が見えて来るようです。
寛大さや人間のやさしさが、それとなく伝わる映画のように思いました。
イギリス特有の皮肉を込めた何気ない戦争批判の会話が大声で叫ぶより痛烈に感じます。

2012/5/20(日) 午後 7:26 [ SIN=KAI ]

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こんばんは。
リメイク版はみましたが、これは観ていません。
写真をみると時代の雰囲気がよくわかりますね。
1939年製作というとドイツがポーランドに侵攻して戦争が始まった
年ですよ。イギリスも戦争に巻き込まれていく時によく撮れたも
のですね。当時はどんな評価をされていたのでしょうか。

2012/5/20(日) 午後 8:34 [ hisa24 ]

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つきだてさん、
先生によるとは思いますが、
昔の方が、生徒との絆を強く作れる先生が多かったような気もします。

今はモンスターペアレントがいたり、
学級崩壊が起こったり…と、
先生方を取り巻く環境も、以前とは大きく変わってきています。
本当に、ストレスの多いy歩の中になってしまいました。

ポチ、有難うございます。

2012/5/20(日) 午後 9:38 alf s mom

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メタボチョコさん、
とても共感できるコメントです。
私も同感です。

戦場に生徒たちを送り出さねばならなかった教師たちは
本当に辛い想いをした時期があったのだと思いました。

平和に死ぬ…それも大切な人としての権利なのだと思いました。
ポチ、有難うございました。

2012/5/20(日) 午後 9:45 alf s mom

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sin-kaiさん、
ピーター・オトゥール版を見ておられたのですね。

本作も、生徒との関係においては、それ程印象的なエピソードは描かれていませんでしたので
オトゥール版でも、その点は同じだったのかもしれませんね。

ロバート・ドーナットは、老け役がとても似合っていました。
でも、時折見せる悪戯っぽい表情には、
少し「若さ」が感じられ、そこがまたとても爽やかな明るい印象を残しました。

「寛大さや人間のやさしさが、それとなく伝わる映画」、
仰るとおりです。

2012/5/20(日) 午後 9:51 alf s mom

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hisaさん、
リメイク版をご覧になっていたのですね。
生徒たちとのエピソードが大半を占めるストーリー展開だと思っていたのですが、
途中挿入された、結婚相手との出会いもとても印象深いものでした。

この映画の中の「戦争」は、第一次世界大戦でした。
映画の中で、その終結が告げられます。

本作が作られたのは、第二次世界大戦に突入していった時期。
当時、人々にどう受け止められていったのかは、調べた限りでは
分かりませんでした。
でも、アカデミー賞主演男優賞を受賞していますので
評価された作品だったのだろうと思います。

2012/5/20(日) 午後 9:59 alf s mom

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こんばんは。

観たことはないのですがいい映画のようですね。
「生徒達は自分とって「我が子」だった」と言える教師って今の時代いるでしょうか?
戦争という誰もが平等に経験する不幸の多い時代だったからこそ、そういう人への愛情が生まれるんでしょうかね…

やはり最期を誰にも看取られずに死ぬというのは辛いですね。
自分の最期を人に看取ってもらえないのも辛いですが、大事な人の最期を看取れないというのも辛いことだと思います。
孤独死のニュースをたまに聞きますが、他人の出来事であっても何だか悲しい気持ちになります。

2012/5/20(日) 午後 10:31 [ tammy ]

どんな職種でも長年勤めあげた満足感ありますが、特に教師の仕事は感慨深いものがあるんだろな〜と思います。反面普通の仕事と同じように淡々と毎年同じサイクルで過ぎていくんですね。とてもいい映画だったと思います。TB&ぽち

2012/5/20(日) 午後 11:09 pony

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tammyさん、
教え子を「我が子」と言える先生は、多分今の時代には居られないかもしれません。

「信頼関係」ができてこそ本当の教育は行われるのだと思います。チップス先生は、そういう関係を作る努力を常にしていたのだと思います。
教師の役割は単に知識を教え込むだけではなく、
人格の完成を目指し、豊かな人間性を育てること。
チップス先生は、それを自覚しておられたのだと思います。

祝福されて生を受けるように、穏やかで幸せな「死」を迎えることがどれ程大切かを思いました。

2012/5/21(月) 午前 0:08 alf s mom

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ponyさん、
教職のフィナーレは、他の職業とはかなり異なると思います。
「人間」を育てる仕事、
これほど、やり甲斐があり、大きな喜び(勿論苦しみも)を感じられる仕事は余りないと思います。

チップス先生の、爽やかな笑顔と軽快な足取りは、とてもあたたかく魅力的でした。
TB&ポチ、有難うございます。

2012/5/21(月) 午前 0:28 alf s mom

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34歳のロバート・ドーナットが、ご高齢の役を演じられたのは、

それだけ、「精神」が高い所にあったのでは? そんな風に想いました。 現代の日本では、34歳・・、そんな「精神」を持ち合わせた若者が居るであろうか? 今の60過ぎの政治化を見ていると、そんな風に考えてしまいます。

2012/5/21(月) 午後 2:25 [ 魔法使い ]

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たくさんの記事にコメントいただき有難うございました。

とても上手い老け役でした。
昔の人たちは、「本物」の大人になれていたのだと思います。
ですから、年齢以上の役も、
精神力を高めることによって演じられたのでしょう。

翻って還暦を過ぎた日本の政治家たち、
自分たちの「党益」のことしか考えていないようで
本当に情けなくなります。

2012/5/21(月) 午後 7:41 alf s mom

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ピーター・オトゥール版(TVで少し見た程度ですが)以前に、旧作オリジナルがあるのは知りませんでした。英文科の学生、英語の授業では、よく出てくるようですね。

2012/5/24(木) 午前 5:50 fpd

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劇的ではなく、
淡々とした静かな展開でした。チップス先生の教師としての生涯を
一人で演じきったロバート・ドーナット、
主演男優賞受賞が納得できました。
P.オトゥール版も、少し興味があります。

息子も授業で使ったと言っていました。

2012/5/24(木) 午後 7:31 alf s mom

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タイトルだけは知ってましたが・・・、反戦の想いが込められた内容だったんですね。

出会いたい作品です。

2012/6/1(金) 午後 10:50 [ datechibu ]

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教師と生徒の授業中の出来事など、
私には少し物足りない部分もありましたが、
教え子を戦場に送らねばならない教師には、
とても辛いものがあったのだろうと思いました。

「天職」という言葉がありますが、
チップス先生にとって、教職は正にそうだったのだと思いました。

2012/6/3(日) 午前 1:42 alf s mom

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