“わが谷は緑なりき”〜私の映画ノート

原発のない、戦争のない世界に。そして「縮小社会」に向かう覚悟を。

ドキュメンタリー

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一週間余り前に観た作品です。見終わってまず思ったのは、こんなに人々の生活、生きる場、そして生存権が圧迫され続けているのに、誰も責任を取っていない事への怒りでした。

そしてその日、帰宅後に知ったニュースは「勝俣恒久元会長ら東京電力の元幹部3人が福島第一原子力発電所事故を巡る業務上過失致死傷罪容疑で強制起訴」と言うものでした。責任の所在が漸く明らかになる、これまでに4年もの月日が流れた…そう言う思いがこみ上げました。

本作の監督は「六ヶ所村ラプソディー」「ミツバチの羽音と地球の回転」など核や被ばくをテーマにしたドキュメンタリー作品を作られた鎌仲ひとみ監督。生活の基盤である「ふるさと」を去るか残るかの選択を迫られた母親の悩みつつも行動する姿、そしてチェルノブイリ事故から28年を経た現地を本作は丁寧に伝えます。

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2014年。監督:鎌仲ひとみ、プロデューサー:小泉修吉、撮影;岩田まきこ。

東電福島原発事故から4年。事故による影響は安全である、危険であるといった議論が続く中、自主避難をせず、ぞの場で生きていくことの選択をした人々がいます。様々な葛藤を経ての決断。母親たちは、少しでも被曝を減らす為に、線量計を持ち、通学路の危険個所の除染を自主的に行います。

行っているのはママレンジャーを結成した、子どもの生活を被爆から守ろうとする母親たちのグループ。中心となるのはお寺の住職のお連れ合い。お寺を守り、保育園を経営し、二人の母親でもある女性。お寺には全国各地から、支援の農産物が毎月(or毎週)届けられます。そのことを「広報」し、多くの希望者と分け合う「レンジャーたち」。

現在は避難指示区域のうち、その制限が解除された地域への「帰還」が奨励されています。帰還した人には90万円の補助金が交付されるとのこと。どこまで安全が確認されたのか、明らかではないままの施策、政府の無責任体質、「福島事故」の一刻も早い収束を図りたい姿勢がそこには見えます。

挿入されるチェルノブイリ事故から28年後のベラルーシの状況。そこでは、多くの子どもたちを診察し続けてきた小児科医の女性らに話を聞き、長期間にわたって低線量の汚染地域で暮らしてきた子どもたちに何が起きたのかが語られます。

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福島のママレンジャーたち

 も感銘を受けたことの一つは、定期的に全国から届く支援の野菜の多さ
決して「福島」だけの問題にしていない人々の存在、その温かな思いやりは感動的でもありました。

共に泣き、共に笑い合い、気持ちを共有できる母親たちの連帯。そのつながりの確かさに心動かされました。

松本市菅谷昭市長のチェルノブイリの子どもたちへの医療による献身。甲状腺の専門医である菅野谷医師は、勤務していた信州大学を退職してチェルノブイリの医療支援を始め、ベラルーシには5年半ほど滞在し、甲状腺がんの手術対応などの支援を続けました。素晴らしい支援の形です。その後福島についても色々な提言をされています。

チェルノブイリの子どもたちを保養のために受け入れ続けている日本の方々がいます。人々の、繋がる心の素晴らしさ。それとは反対に、チェルノブイリと比較すると、様々な放射能に関する基準値の福島の緩さに、政府の、住民の健康を守る意思の薄さを感じます。

日本でも色々な場所で福島の子どもたちを保養地として受け入れるところがあります。保養に入る前と後とでは、内被曝値は明らかに減少していました。子どもたちの「体内」感受性の強さ、回復力の迅速さを思いました。


境を超えて繋がって行く、「子どもたちを守りたい」と言う思い。
事故から4年、日本でも被曝を軽減する新しいステージが始まった。放射能についても危機感が次第に薄れ、事故の風化がささやかれる今だからこそ、誰もが見るべきドキュメンタリー。(本作のチラシより)

同じ日本に暮らす住民として、選択に苦悩する、した人々の存在を私たちは決して忘れてはいけないのです。

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こんばんは
「丸木夫妻の怒りと優しさ」も読ませていただきました。丸木夫妻の怒りと優しさは、表裏一体のものだと思います。差別を嫌い、懐が深く、優しい感性をお持ちの方だからこそ、このように残酷な戦争への怒りをお持ちなのでしょう。
画家が自分のメッセージを描くのに、沖縄の絵の場合、160冊もの本を読まれたと知って驚きました。それもきっと亡くなった方達の苦しみを追体験されたかったのだと思います。
あの絵の迫力は、広島も長崎も沖縄も・・どれも死者の苦しみに寄り添った優しさとこういう目に遭わせた戦争への怒りの両方が描かれているのだと思いました。ご紹介ありがとうございました。

2015/8/8(土) 午後 7:31 mimi

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もうひとつの「小さき声のカノン」、小出先生の講演会で鎌仲ひとみ監督が予告を出してくださいました。前から気になっていた映画です。でもあいにく聴力が落ちて、日本映画は諦めていましたのでこんなに詳しいご紹介、嬉しく思います。
フクシマのことでは、以前から怒りがいっぱいです。
避難させない、食べて応援、しかも正しい情報は隠蔽。どころか・・被曝した人たちの健康を守るために力を尽くすのではなく、いかに国民の目を欺き、危険でないと思わせるための嘘作りに腐心してきました。あきれ果てます。
苦しんでいる人たちを尻目に、オリンピックに邁進する愚劣さも怒り心頭です。
今、フクシマで避難できなかった人たちはどうしているのかと思っていましたが、ママレンジャーを立ち上げて子供たちを守ろうとしているお母さん方、また、全国から無関心ではいられない優しい人たちが手をさしのべられ、応援されてくた事実を知り、私も心打たれました。

2015/8/8(土) 午後 7:58 mimi

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「チェルノブイリ28年目の子供たち」というDVDがあります。これを見ると、日本とチェルノブイリでは被爆者、特に子供たちへの対応が全然違います。こういうところを比較して、政府や東電に訴えて行かなければいけないと思います。長くなって要領を得ずにごめんなさい。

2015/8/8(土) 午後 8:00 mimi

Alf.momさん、こんばんは♪

この映画と、出演されている主役のお母さんは、僕も知っていました。
岩上安身さんの「IWJ」で、以前「百人百話」(本にもなっています)という「事故後の福島のお母さんたち」へインタビューを行うという企画をされていたことがあり、その時、写真のお寺の住職のお嬢様であるこのお母さんのインタビューも聞きました。

このお母さん、官邸前のデモにも参加されるなど、普段の静かな佇まいからは想像しにくいアクティブな活動を精力的にこなされている姿勢には胸打たれるものがありますよね。
また、いつか彼女が、安倍首相が演説している街宣車へ向けて、「反原発のプラカード」だったかを掲げようとした所、怪しげな男たち(自民党員だと思われます)に詰め寄られ、そのプラカードを有無を言わさず押収されたことも・・・

鎌仲ひとみ監督の作品は、常に「現場主義」で、机上の空論ではなく、自ら最も危険でホットな現場へ果敢に足を踏み入れて丹念な取材を重ねることで培われたリアリティーに支えられているため、自分もその場にいるような臨場感や既視感を覚えます。

2015/8/8(土) 午後 9:06 [ 木枯 ]

(続きです)

そして、「問題」を浮彫りにした後は、単なる批判に留まらず、「こういう方法や創意工夫もありますよ」という建設的で創造性に溢れる提言を必ず盛り込んでおられる所が素晴らしく、「ネガティブ」から「ポジティブ」を生み出すという軽やかな“試練のクリアの仕方”が、観る者へ腑に落ちる共感を与えるように思います。

「重いテーマ」に、しなやかなタフさで切り込む姿勢が、無関心な人々の視線を無理のない形で「福島の今」に向かわせるように感じますので、この映画を含む鎌仲監督作品が、もっともっと多くの人たちの心へ届けられることを願っています。

2015/8/8(土) 午後 9:11 [ 木枯 ]

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> mimiさん、
先日記事にした丸木さんの「沖縄の図」。
それに関連するような記事が週刊金曜日にありましたので、掲載しました。
「手配中の過激派から暴力団員までありとあらゆる人が惹き付けられた」、
そう言う方々であったこと、知りませんでした。でも、それが納得できます。
>丸木夫妻の怒りと優しさは、表裏一体のもの…そうだったのだと思います。
「巨悪以外の生きとし生けるものをすべて受け入れられた」姿勢、
絵の中に込められた「巨悪」への怒りは、優しさに裏打ちされたものだったことを
受け留めることができました。

2015/8/8(土) 午後 11:25 alf's mom

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> mimiさん、
私も政府と東電については、ずっと怒りを覚えています。
「被曝した人たちの健康を守るために力を尽くすのではなく、いかに国民の目を欺き、
危険でないと思わせるための嘘作りに腐心」…それに騙されてしまう方も多いのだと思います。
福島の事故のことが人々の心から薄れていくことをとても憂えています。

福島のことを思えば、原発の再稼働など許せる訳がないのです。
それが国民の総意とならないことがとても残念です。
「チェルノブイリ28年目の子供たち」のDVD,見てみたいです。
チェルノブイリ事故後の対応から、日本政府は多くのことを学ぶ必要があります。

二つの記事にコメント頂き、有難うございました。

2015/8/8(土) 午後 11:25 alf's mom

みんな、、
同じ思いやね。
丸木夫妻といい、ママレンジャーといい
みんな真実と向き合って、現実は残酷なのに、懸命に伝え 折れずに前をみて、歩いてる。
自分はどれだけ彼等をわかっているのか?
自分を恨む 身内の現実など、なんと小さい事か?
もう一度、今の現実を受け入れ 諦めず前に進む。
時は、止まらない。
今、出来ることを後の後悔にならぬよう、精一杯考え 行動します。
ママレンジャーに勇気を貰います。

2015/8/8(土) 午後 11:43 [ baldman ]

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> 木枯さん、
映画の中心に置いて取材されたお母さんのこと、ご存知だったのですね。
「安倍首相が演説している街宣車へ向けて、『反原発のプラカード』だったかを掲げようとした所、怪しげな男たち(自民党員だと思われます)に詰め寄られ、そのプラカードを有無を言わさず押収されたことも・・・」…そういうこともあったのですね。
ひとり何役もこなしながら、本当に「しなやか」に活動されている姿に、
多くの人たちを惹きつける力を感じました。
鎌仲監督の作品は「丹念な取材を重ねることで培われたリアリティーに支えられている」
と私も思います。この映画の取材に当たっては400時間の撮影フィルムを要したとのこと。
それを2時間の映画にまとめられた繊細な作業を経た作品なのだと思うと
余計にその重みが感じられました。
取材相手と敬語ではなく「日常語」で語り合える関係を作られている所にも
監督の「つながり合う心」の築き方と熱意が伝わります。

2015/8/8(土) 午後 11:50 alf's mom

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(続きです)
>「重いテーマ」に、しなやかなタフさで切り込む姿勢
それは全ての鎌仲作品に共通するものだと思います。
是非、見て、「再稼働の是非も含めて」考えて頂きたいドキュメンタリーです。
丁寧にコメント頂き、有難うございました。

2015/8/8(土) 午後 11:51 alf's mom

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> bald manさん、
私もママレンジャーに勇気をもらいました。
時々辛さや悩みを抱えて涙しながら、でも時には元気いっぱいの笑顔をみせて
活動しておられる温かなつながりのメンバーの皆さん。その連帯する心、強いつながりに
心打たれました。

>もう一度、今の現実を受け入れ 諦めず前に進む。
時は、止まらない。…仰る通りです。
多くの方に福島の「今」を、知り、考えて頂きたいです。

2015/8/8(土) 午後 11:56 alf's mom

私も見ました、この映画。。

汚染水を、あと最低3年間は、ドバドバ垂れ流すだけ、
政府の隠蔽その他、
ママさんが、一言、「(福島は)捨てられたんですよね。。」
と言っていたのが印象的でした。。

それでも、大根やほうれん草を、被曝していない地方から、
無料で送ってくださる方々。。それを見て、
ママさんが、喜びで涙を見せる場面も、私も感動して、思わずもらい泣き。。

まだまだ日本は、捨てたもんじゃないですね。そう思いました。。

政府はなにもしませんが、新国立競技場を建てるお金があるのなら、
少しでもいいから除染やらなにやらに使って欲しい。
東京も、被曝しているので、そこに各国から選手を集めて被曝させるのはどうかと思います。。選手は5輪にかけているので、
辞退するなんてありえませんから。

2015/8/9(日) 午前 7:32 [ カンコ ]

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> カンコさん、
ご覧になっていたのですね。
オリンピック開催のために、福島の真実を、政府は隠したくてたまらないよう。
「捨てられたんですよね…」、私も心に突き刺さるような思いで聞きました。
原発が狭い国土に50基余りもひしめく日本列島。どの地域も「ひとごと」ではないことを
みんなが意識して、福島の思いを共有してほしいと思いました。

全国から届く愛に満ちた「野菜」たち、私も胸がいっぱいになりました。

五輪に費やされる莫大な税金。既に国立競技場問題では違約金など100億ものお金が無駄に費やされました。
「私たちの税金だよ!大事に使いなさいよ」と声を大にして言いたい。

2015/8/9(日) 午後 2:34 alf's mom

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福島のスクリーンで観ました、涙ぐむ人が居たように記憶してますが、半分くらいの混みようだったように思います。

鎌仲さんのドキュメンタリーには考えさせられる作品が多いです。でも今回の映画の舞台となった市にたまに出かけることがあるのですが、私が接する学校関係者さんからは保養や野菜がもらえる・・・という話は聴いたことがありません。市内でも情報やつながりが、ある人と無い人で差がある・・・ということも忘れないようにといつも思います。

2016/4/11(月) 午前 1:38 [ datechibu ]

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> datechibuさん
原発事故が決して収束していない事、
頭では分かっていても、それを鎌仲監督が映像化されたことで、日々様々な「選択」を経ながら暮らしておられる福島の方々の日常を肌で感じることができました。

同じ地域に暮らしていながらも、「情報やつながりが、ある人と無い人で差がある」
…datechibuさんが得られた感覚、その通りなのだと思います。
情報が行き渡ることで、より良く変わっていく事は絶対にあると思います。

2016/4/11(月) 午前 9:12 alf's mom


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