“わが谷は緑なりき”〜私の映画ノート

原発のない、戦争のない世界に。そして「縮小社会」に向かう覚悟を。

日本映画

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野菊の如き君なりき

レンタル店で何とか品選びが出来ていた3週間ほど前に借りて鑑賞した作品。
小学生の頃原作に触れて、こんなに悲しい物語があっていいのか、と涙にくれた思い出のある本。
借りたいと思った訳ではなかったのですが、木下恵介の世界に浸りたくなり、レンタル。


大正2年(1913)に亡くなった歌人伊藤左千夫が明治三十九年(1906)に発表した小説「野菊の墓」を
木下恵介が脚色し、自ら監督した作品です。

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1955年。監督・脚色:木下惠介、原作:伊藤左千夫、音楽:木下忠司。出演:笠智衆、田中晋二、有田紀子、杉村春子、田村高廣、山本和子、小林トシ子、浦辺粂子。


映画は両岸に秋の景色が広がる川を,渡し船で渡る初老の客(政夫)が、船頭に、かつて暮らしたこの地での思い出を語り出すところから始まります。

この渡し場に近い旧家の次男として育った政夫。病弱であった母の為に、近くに暮らす姪の民子が手伝いにやって来ます。年の近い二人は気持ちがよく通じ合い、お互いの存在を好ましく思っています。しかし、その仲の良さを疎ましく感じる同居人たちは、民子につらく当たります。

その悪意を意識しながらも、2人の間には純粋な愛が育まれて行きます。

しかし、政夫は中学校の寮に入ることになり、民子も実家に戻されたことで、2人の間は裂かれることになり、映画は悲しい結末を迎えます。



主役の政夫、民子役の二人が、瑞々しく、その清らかさが、この映画の全てだという気がしました。
「恋愛」にまだ制限があった時代。結婚には親の意向が強く反映されました。民子が政夫より「2歳年上」であるということも、政夫の母が賛成できない理由のひとつでもありました。「女は子どもを産む機械、だから少しでも若く」、そう言う意識があったのだろうと思いました。
著述から1世紀を経た著作。若い人たちにはもうこの情緒は受け入れられないのかもしれません。


…「寿命」を支配するものって何なのだろうと思うようになりました…
歌舞伎役者市川海老蔵さんの妻であり、フリーアナウンサーの小林麻央さんの病状が一昨日公になりました。
発症したのが1年8カ月前。子どもさんもまだ幼いことを思うと、どれ程苦しい日々だったか…、察するに余りあります。それを極秘にして来られた海老蔵さんもどれ程辛かったことでしょう。

私が新しい治療段階に入ったのも、実は丁度1年8カ月前のこと。同じ時間を厳しい治療に費やして来られたのだと思いました。まだ33歳。「あの時は大変だったけど…」、そう言える日がご家族に訪れることを心から願っています。

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細雪

30分ほど視聴後、続きは翌日に、と思っていた所、突然襲った地震。その後映画鑑賞の気分にはなれず、そのまま返却。地震後ひと月を経て、漸く続きを見たい気分になり、再レンタル。
美しい4人姉妹(岸惠子・佐久間良子・吉永小百合・古手川祐子)の物語に引き込まれて行きました。

谷崎潤一郎の同名小説を市川崑監督が映画化。ある旧家の4姉妹それぞれの一年間の物語が、三女の縁談話を中心に、四季折々の風物を織り交ぜて描かれていきます。4人の、日本を代表する主役級の女優たちの、日本の風景に溶け込んだ素晴らしい「和の美」。市川監督の映像美に魅了されました。

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1983年。監督:市川崑、原作:谷崎潤一郎『細雪』、脚本:日高真也、市川崑、撮影:長谷川清、美術:村木忍。出演:岸恵子、佐久間良子、吉永小百合、古手川祐子、伊丹十三、石坂浩二、岸部一徳、桂小米朝、江本孟紀、小林昭二、常田富士男、浜村純、小坂一也、横山道代、三宅邦子、細川俊之、上原ゆかり、三條美紀、根岸明美、白石加代子、仙道敦子、頭師孝雄、橋爪淳。


大阪・船場で長く力を誇って来た由緒ある商家蒔岡家。主人が奔放な経営をしたために家運が衰え、斜陽化、家業はもう人手に渡っています。

両親が亡くなったその旧家に残された4人姉妹。映画の舞台となるのは昭和13年の大阪。長女は銀行員と結婚して本家に暮らし、次女も結婚して分家となり、夫と子どもたちに加え、妹二人(雪子・妙子)を引き取って暮らしています。姉妹にとっての一番の問題は三女雪子の結婚問題。

沢山の縁談が持ち込まれるのに、中々雪子の意に沿う話は舞い込みません。
一方四女の妙子は、5年前に駆け落ち事件を起こし、姉妹を慌てさせたことがありました。その後も、妙子は自由な生き方を貫きます。

京都嵯峨の料亭での4人姉妹の花見の場面から始まった本作。雪子の縁談話を軸に、姉妹に起こる様々な出来事が日本の美しい四季の情景を背景に描かれて行きます。



谷崎潤一郎の小説は一冊も読んだことがありません。どのような筆致で彼の文学世界が作られているのかを知りませんので、この映画は市川崑監督の美意識が反映された作品だと思って鑑賞しました。男の目線によって描かれた女たちの生き方の選択と心のありよう。女性監督が描いていれば、この「世界」は全く異なったものになっていたろうと思いました。

女優たちの和服姿。その着こなしは勿論のこと、選ばれた着物の美しさ…。また室内の調度品の味わい深い芸術性、襖絵などにも繊細な配慮が…。衣装、美術担当の方々の素晴らしいセンスを感じました。

旧家の過渡期を年長者として受け止め、決断し、見守って来た長女。しかし、重責を担う程の思考力の深みを感じさせず、どこか自己中心的。

「家」の存続と姉妹の将来。そのバランスを熟慮の下に整えて行こうとする次女。自分の生き方以上に4人の今後を思う存在。

最も不可解な存在の三女。とても純真であるかのように見えながら、お見合いを繰り返す中、納得いく答えを探しつつ「わが道」を行き、意志を貫く。

10代の頃駆け落ち騒動を起こし、自立心の強い四女。収入を得るべく、手に職を持つ彼女。上の3人の姉たちのように「旧家」の人間としての生き方に全くとらわれない反抗心と奔放さを持つ。

最も印象深かったのは、三女吉永小百合。彼女の映画はほどんど見たことがなく、ブログを始めてから見たのですが(『キューポラのある街』『おとうと』『北のカナリアたち』)、私にはどれも(当たり前ですが)「吉永小百合」にしか見えませんでした。しかし、この映画の中の彼女は、確かに旧家の三女「雪子」でありました。

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清作の妻

祇園囃子」「青空娘」で愛らしく、可憐な姿を見せた若尾文子、「その」後を見たいと思って本作を鑑賞。
少し内容を知っていた作品でしたし、増村保造監督・新藤兼人脚本では、相当きつい場面を耐えなければならないかも、と覚悟をもっての鑑賞。やはり「覚悟」は必要でした。

明治末期、戦争を背景とした差別や偏見の中を生き抜くヒロインとその夫の、愛と波乱と苦悩に満ちた日々が描かれます。

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1965年。監督:増村保造、脚色:新藤兼人、原作:吉田絃二郎、製作:永田雅一、撮影:秋野友宏、音楽:山内正。出演:若尾文子、田村高廣、小沢昭一、紺野ユカ、成田三樹夫、殿山泰司。

映画ではまず、60過ぎの老人(殿山泰司)に囲われたお兼(若尾文子)の暮らしが描かれます。ほとんど言葉を発することなく、怯えたような表情の彼女。病身の父のいる一家の生計を支えるために身を差し出したことが、その後の展開で分かります。

その老人は、入浴中突然死。お兼には遺言により、千円の財産が渡されます。実父も同時期に死亡。お兼はその遺産を持って、母と共に生まれ故郷の村に帰ります。その場面から流れ始めるタイトルバック。

囲われ者としての過去を知る村人たちは、お兼とその母を蔑視。「村八分」状態にします。それをものともしないお兼。村人との交流は一切なく、物憂い表情で送る日々。

時は日清戦争の渦中。そんな折、戦線で手柄を立てた村の模範青年清作(田村高
)が凱旋帰郷します。彼は軍隊で蓄えたお金で鐘を作り、それを帰郷の翌朝から村の山で鳴らし、村人を惰眠から覚まします。その規律ある生き方は、村人から英雄視されます。

母が急病で倒れ、動転して医者を呼びに走ろうとしたお兼とすれ違った清作は、事情を知って、自分が医者を代わりに呼びに行きます。しかし、到着を待つことなく母は亡くなります。その出会いをきっかけにお互いに愛情を抱くようになった二人は、家族の大反対を押し切って結婚。清作は母と妹の家を出て、お兼の家で暮らし始めます。当然、母と妹は、お兼を「嫁」とは認めていません。

暫くは平穏で幸せな日々を送った二人でしたが、再び戦争が勃発。清作は徴兵されます。初めて味わった心から愛する人と暮らす喜び。その愛する人を奪う戦争。生きてこの地に戻ることはないかもと苦悩するお兼は、村をあげての出征祝いを手伝う中で、心が硬直して行き、夫をこの地に引き留めておくための悲痛極まりない行動に出ます。



狭い「世間」の中で「異端」と見なされた人間が味わう苦しさ、悔しさ、怒り、そしてそれらを経て、孤立を恐れない、無謀な圧力には決して屈しない固い意思を持つに至った夫婦。
集団から逸脱した行動をする者に、「一致団結」して攻撃する集団の醜さと恐ろしさを、夫婦に向けられた攻撃で嫌という程目にしました。
愛する人を兵隊として差し出し、死ぬことを名誉だと考えて送り出すことが当たり前なのか、愛するが故に夫の身体を傷ものにして徴兵を阻むことが当たり前なのか。映画は観る者に厳しい選択を提示します。

情念の熱激しさを感じさせた映画。反戦を前面に打ち出した映画ではありませんが、戦争が生んだ苦悩、厳しい人生の歩みを課された夫婦。戦争さえなければ、決して歩むことの無かった「後半生」が二人の前にはありました。

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青い山脈

https://www.youtube.com/watch?v=bAKmKJxtWZg(登場人物らが自転車で海岸に向かう名シーン)
ラストに近い場面をを最初にお見せしてしまいましたが、この状況に至るまでの展開をずっと見たいと思っていた作品です。しかし、レンタル店では見つからず。先日youtubeを検索していたら前編を発見、すぐに視聴しました。ところが今度は後編が見つけられず、がっかりしていた所、ギャラさんが「後編もyoutubeにあります」と教えて下さいましたので、検索後見つかった続きを早速鑑賞しました。

進歩的、平等意識を明確に持った若い教師役を原節子が演じています。
昭和24年の作品。それまでの古い価値観が少しずつ、或いは劇的に変容して行っていた時代が、生徒たちとの関わり、保護者や教師たちとの論争の中で、良く描かれていました。


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1949年。監督:今井正、脚色:井手俊郎、今井正、原作:石坂洋次郎、撮影:中井朝一、音楽:服部良一。出演:池部良、杉葉子、若山セツ子、原節子、龍崎一郎、木暮実千代、山本和子、三島雅夫、飯野公子、田中栄三、藤原釜足、花澤徳衛。


ある田舎町、女学生新子(杉葉子)が金物店の店先で、「母が手元に現金がないからこれを売って」と卵を持たせてくれたと、店番をしていたその店の息子六助(池部良)に言いながら店の中に入って行きます。

六助に依頼されてご飯を炊き、卵焼きをつくる新子。その後色々な話をした後、占い師に手相を見てもらいたいと言い出す新子。連れだって二人で外へ出たところをクラスメートに目撃されたらしく、新子はその数日後、同級生から偽ラブレターを送られるなど、嫌がらせを受けることになります。

不当な嫌がらせをした女性生徒たちの「学校の清い伝統を守る為にやった行為」という弁明を聞きながら、担任の島崎(原節子)は、守る必要のない伝統もあること、そして古い恋愛観の是正を試みようとします。しかし、生徒らの反発は強く、学校内でも大問題となり、島崎の処遇は理事会の採決を経て決定されることになります。



私の中高生時代の「生徒手帳」にはまだ「不純異性交遊」と言う言葉が残っていた気がします。既にこの映画から20年近く経っていた時代でしたが。
私の母は「そう言う考え」をずっと持っていた人でした。それに反発するかのように姉は自由に振る舞いました。

女学校のそれまでの「伝統」汚す、所謂「不純」な関わりを男子学生と持ったと勘違いされた女子学生が受けた同級生らからの非道な嫌がらせ。それに決してめげなかった女子学生、そして様々なそしりを受けながらも、自分の主張を曲げなかった新任教師。

あの時代(今はもっと息苦しいかもしれませんが)、長いものに巻かれずにいるためは、強い信念が必要だったはずです。その強い意志を持った教師を、原節子が好演していました。男女平等、因習の打破…新しい時代の到来を感じさせた希望に満ちた作品でした。

教師と生徒との間で起こった「問題」が、同僚教師や保護者、生徒の中でどう克服されて行くかの展開にやや物足りなさは感じられましたが、あの明るい未来を感じさせるendingを見たら、もうそれでいいという気持ちになりました。
若い池部良(31)、今話題のディーンフジオカに似ているな…と思いながら見ていました。
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わたしのグランパ

ホリプロスカウトキャラバンから誕生した新人石原さとみのデビュー作。公開時17歳。
刑期を終えた祖父・グランパが石原さとみの家族の許へ戻ったことで繰り広げられる穏やかではなくなってしまった日常が、時折ユーモラスな展開も交えながら描かれた物語。祖父と孫娘の情の通い合いが素晴らしい…。
グランパ役は菅原文太。その存在感、そして重く響く低音voice,、最高でした。


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2003年。監督・脚本:東陽一、原作:筒井康隆『わたしのグランパ』文藝春秋刊。出演:菅原文太、石原さとみ、浅野忠信、平田満、宮崎美子、波乃久里子、伊武雅刀。   

父(平田)母(宮崎)、中一の娘珠子(石原ひとみ)の三人家族の許へ、殺人罪で服役していた祖父(菅原文太)が戻って来ます。直前まで祖母(波野)が同居していたのですが、祖父と一緒に暮らすのはゴメンと家を出ます。

13年前に服役した祖父。珠子にとっては初対面の「祖父」でした。珠子は、祖父をグランパと呼ぶことに決めます。ただ、初めて一緒に暮らすのですから、グランパとの会話に珠子は「敬語」を使いました。

地元の商店街の人たちはグランパを温かく迎えますが、珠子のクラスメートらは、刑務所帰りの祖父がいることで、珠子をいびります。しかし決して怯まない珠子。

ある時不良グループに絡まれている珠子とその友人がいる場面に遭遇したグランパは、絡む少年たちに手痛い「指導」をしたことで、それから珠子と友人が狙われることは無くなります。

平穏に推移していた「社会復帰」後の祖父との暮らしでしたが、出所後程なくして、珠子の家の前にヤクザ達が出没するようになります。それは13年前、祖父が起こした事件と関係していました。珠子と友人は、ヤクザと祖父の取引の「カード」として扱われることになってしまいます…



沖縄での命がけで行われたあの素晴らしいスピーチが、映画の中で響く菅原さんの声に反応して私の心の中で何度も「リフレイン」されました。
菅原文太や波野久里子(祖母役)を相手にしても、全く動じることなく、堂々と演技していた石原さとみ。その繋がりの滑らかさ、三者の間に作られていた信頼感がとても心地よかったです。

ラストでは沖縄の集会で、壇上にゆっくり上られた菅原さんの姿と声が蘇り、胸がいっぱいになりました。


2年前、訃報に接して石原ひとみが思いを語っています。

突然の訃報にとてもショックを受けています。
デビュー作『わたしのグランパ』でご一緒させていただきまして、芝居を全く知らない私に菅原さんはとても温かく接してくださいました。横顔だけのシーンがあって、その時、私には、そこにいるだけで伝わる、人としての生き方が、存在が、何よりもの説得力なのだと子供ながらにはっきり分かりました
いつまでもそのままの君でいなさい、と撮影終わりに声をかけて下さったことを鮮明に覚えています。

菅原さん演じる“グランパ”が亡くなったのを知って孫役の私が涙するシーンでは、最初はなかなか泣けなかったのですが、メイクさんに今まで優しく接してくれた菅原さんが本当にいなくなったと思えばいいんじゃない?と言われ、すぐに泣けたことを覚えています。

あの、柔らかい笑顔とジーンとする声のグランパにもう会えないと思うと本当に悲しいです。成長した姿で再会したかった…

心からご冥福をお祈り申し上げます。 

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