オルタナティブを考えるブログ

タイトルも新たに、1年ぶりですが、まずは過去の記事を整理しなきゃ

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これまで、アナトリアの東部の覇権国ミタンニとヒッタイトとの間に交わされた条約の冒頭にバラモン教の神々の名前が挙げられている事を書いた。
 
 
紀元前14世紀頃の古代オリエント世界にはフルリ人の国ミタンニと鉄の国ヒッタイトが力を誇っていたが、その両国の間に結ばれたある条約の冒頭部には、ヒンドゥー教の前身であるバラモン教の神々について述べられていることを取り上げた。バラモン教、つまりヴェーダ宗教が確立したのは紀元前5世紀頃と言われているにもかかわらずにだ・・・。
 
ヴェーダの宗教(バラモン教)の神々は、アーリア人のインド侵入時に、彼らの神話に登場する神々と原住民の神々とが融合し発展したのではないかとみられている。アーリア人の信仰する宗教は、おそらくゾロアスター教の原型のようなものでもあり、イランにあってはまさに「ゾロアスター教」の基礎として確立していったのであろう。
 
 
アーリア人のインド侵入という概念からちょっと目を離すと、彼らのイランとインドへの広がりはチャリオットとインド・ヨーロッパ語族の拡散に対する定説とも重なる。そして、宗教の伝播に関しても同じような軌跡を残していることが分かるだろう。
 
 
さて、すでに何回か書いているがミタンニとヒッタイトの条約は次のようにはじまっている。
 
「ミトラ、ヴァルナ、インドラ、二柱のナーサティヤに誓う」
 
 
上記のミトラとヴァルナ、そして前回はインドラについて少し調べた。
 
 
今日は最後のナーサティヤについてだ。「二柱の・・・」というのはその神が双神だからであり、ナーサティアは別名アシュヴィン双神とも呼ばれている。(実はミトラとヴァルナも、火の神と水の神という双神とする見方もなくもない。)
   

アシュヴィン双神

アシュヴィン双神(Aśvinau)は、インド神話における医術の神で、美しい、うりふたつの双子の神とされる。名は「馬(aśva)を持つ者(御者)」の意で、それぞれナーサティヤ(Nāsatya)とダスラ(Dasra)という名を持ち、ナーサティヤは二神の別名としても用いられる。

彼らは奇跡的な治療を行い、結婚、人間や家畜の生殖を司るとされ、特に馬との関係が深く、太陽神や女神サラスヴァティーと関連を持つ。ふつうアシュヴィン双神は区別のつかない双子の兄弟の神だが、両親が異なるとも言われ、例えば『リグ・ヴェーダ』の一部の詩篇では一方は天の子で、一方はスマカという人間の子であるとされる。これに対し、プラーナ文献では太陽神スーリヤ(あるいはヴィヴァスヴァット)の妻が馬の姿で生んだ子としている。
引用先 →http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B3%E5%8F%8C%E7%A5%9E
 
 一説によると、彼らはアーリア人が崇拝した2つの神々の集団、アスラとデーヴァを代表する神であったことを示しているそうだ。しかしながら、インド方面とイラン方面では役割がことなってくる。このあたりの関連を解き明かすのは一種の巨大なジグソーパズルのようなので、ここではあまり深入りしない程度に述べておこう。
 
せっかく世界最古かもしれない双子の神が登場したので世界の神話に登場する双子の神を調べてみると、次の様に神々がある。
 
フレイとフレイヤ - 北欧神話
 
アポロンとアルテミス - ギリシア神話
 
ヘラクレスとイピクレス - ギリシア神話
 
ディオスクーロイ(カストールとポリュデウケース) - ギリシア神話 ジェミニのこと
 
ロムルスとレムス - ローマ建国伝承
 
メタトロンとサンダルフォン - ユダヤ教
 
・・・
 
双子について以下のサイトの解説が面白い。以下はその抜粋。
 
双子の間の葛藤においては、一方の運命が 別の優れたほうの力か、偶然めいた要因、出来事によって決定される。このことは、気まぐれで偶発的な性質を持ち原始的な心性にとっては、多大な畏怖の念を抱くべき問題と思わせる。また自然の無情や不公平として描かれた 「劣った一方」がもう一方の優れたものに打ち勝つチャンスを持たない力のバランス状況、優劣をあらわに示す場合も見受けられる。
 
ギリシア神話のヘラクレスとイピクレスはその一例である。ヘラクレスは 新月の2日に生まれ イピクレスはその4日に生まれたが、この神話にはイピクレスの行動や性格が伝えられていない。しかし伝説の中で全く消えてしまうわけではなく ヘラクレスの名声の元は、そのイピクレスの背景から覗い知ることができる。劣った双子は その兄に対して葛藤を孕む挑戦をするのだ。ヘラクレスは、その埋め合わせに自分の仕事の相棒としてイピクレスの息子を伴い12の難業を果たす。

双子の伝説で唯一一貫しているのは、モチーフの形式や構造が同じ点である。エサウ対ヤコブの葛藤は、彼らの子孫であるカインとアベルにも 同型性が認められる。アベルも双子のうち年少でアダムの次男であった。カインによりアベルの殺害も、細部が拡大されエサウとヤコブ物語の中で繰り返されながら 双子のモチーフが何代にも渡り長期的因果関係を含み示す。

紀元前1250年頃、ラメセス2世の時代 対立する双子は、パピルスにアンプとバータの物語りとして劇的な形で残されている。この物語は、後のセトとホルスの争いに連なる古代人の思考を示しているが、広い意味でほとんどの双子の葛藤の先例と言える。

(中略)

多くの神話は、太母から生まれた光と闇の双子の話を見出すことができる。ゾロアスター教のように 悪の原理と善の原理を対比させる二元論の宗教はすべて まず原始の子宮から生まれた子供として擬人化された この二つの原理を前提としなければならなかった。それ故 中世の異端者たちは、次のように主張した。


神と悪魔は双子の兄弟であった。

なぜなら もし神に暗黒面を表す双子がいなければ 

神は、この世にはびこる悪の責任も 取らねばならなかっただろう

 

バラモンとゾロアスターで入れ替わる善と悪

ヴェーダの宗教(バラモン教)で語られる物語において、神々はデーヴァ神族とアスラ神族に分類されている。デーヴァはサンスクリットで「神」を意味するが、要するに彼らは「神に仕える神」とされていた。
 
デーヴァは現世利益を司る神々とされ、人々から祭祀を受け、それと引き換えに恩恵をもたらす存在とされた。このデーヴァ神族の王が雷神インドラである。(ウィキペディア引用)
 
一方アスラは倫理と宇宙の法を司る神々だそうで、何だかこうした役割を聞くとエジプトのマアトと似ている気がする。そして名前でピンときた人も多いと思うが、アスラが仏教にとりこまれると漢字で阿修羅と書くようになる。『リグ・ヴェーダ』においては、アスラ親族を代表してインドラとしばしば対決するヴァルナの姿が語られている。
 
 
ヴェーダの宗教が大衆化していくと、デーヴァ信仰が盛んになりアスラ信仰が衰え・・・ついにアスラは神に敵対する悪魔として扱われるようになった。
 
何となく分からなくもない。インドで貨幣経済が起きたのはかなり早い時期からであったが、経済が発展するにつれて実利が重視されるようになると、これらに恩恵をもたらすデーヴァがもてはやされたのは自然の成り行きだったかもしれない。
 
 
・・・・
 
 
しかし、西に目をむけると何と立場が逆転する。
 
 
アスラは善神アフラ・マズダーとしてゾロアスター教の最高神に登りつめ、デーヴァにあたるダエーワが悪神として扱われているようになる。善悪二元論でゾロアスター教は有名なのだが、最高神アフラ・マズダーに対を成すものとして、絶対的な悪であるアンラ・マンユがいる。この悪の親玉アンラ・マンユに影のごとく仕えているのがダエーワと呼ばれる悪魔達なのである。
 
 
アシュヴィン双神は前述の通り、インドにおいて重宝されていたが、ゾロアスター教になると悪魔として扱われるようになる。しかしながら、彼らの姿は若く美しいせいもあるのか、ハルワタートとアムルタートと呼ばれる女神として刷新され、悪神軍団ダエーワに対抗するために善神軍団であるアムシャ・スプンタに加えられる。
 
 
両方の女神は密接不可分とされハルワタートは水の守護神として熱を司る悪神タルウィに対抗し、アムルタートは植物の守護神として渇きを司る悪神ザリチュの敵対するようになる。
 
                      アーリア人のインド侵入
 
イメージ 1
 
 
               善と悪が入れ替わるバラモン教とゾロアスター教の関係
 
イメージ 2
 
いずれにしてもヒッタイトとの契約の頃というのは、ヴァーダの時代区分でも初期・・・つまり、ミトラ、ヴァルナ、インドラ、そして二柱のナーサティヤが調和を保っていた時代であったと考えられる。
 
そして、ゾロアスター教の二元論や、ヴェーダの宗教後期になって分裂し対決する状況になる前の・・・そう古き良き時代の面影を残しているとみてとれるだろう。
 
 
・・・といいながら現在進行形で読みはじめた講談社出版の「古代インド」と「ゾロアスター教」には、ここまでの記述を若干違うところもある。それらを読んでから書けばいいのだが、まぁ、今回は前哨戦とうことで・・・。
 
まぁ・・・
 
フルリ人の国であるミタンニ王国でサンスクリット語と思われる言葉やアーリア人の神々が登場するのは、チャリオットの伝承、サンスクリットとアヴェスター語の類似性を考えるとそれほど突拍子のある事でもないようだ・・・。
 
 

閉じる コメント(7)

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私は、以下の記事を解明するために、論文を書きました。

******************************

双子の伝説で唯一一貫しているのは、モチーフの形式や構造が同じ点である。エサウ対ヤコブの葛藤は、彼らの子孫であるカインとアベルにも 同型性が認められる。アベルも双子のうち年少でアダムの次男であった。カインによりアベルの殺害も、細部が拡大されエサウとヤコブ物語の中で繰り返されながら 双子のモチーフが何代にも渡り長期的因果関係を含み示す。

******************************

先述した様に、創世記作者は、<エンキをカインに変換>しています
。(厳密に言えば、エンキを、カインとヤハウェに変換している)

この場合、カイン(鍛冶師)がアベル(牧羊者)を殺害した事は、エンキ(鍛冶神)がドゥムジ(牧羊者)を、イナンナを救出するために 、身代りとして殺害した事に対応しています。

2010/10/17(日) 午前 0:03 マーラーー 返信する

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<カインとアベル>・<エンキとドゥムジ>・<エサウとヤコブ>・
<ヤハウェとヤコブ>は、同一の呪術的儀礼を表現したもの、と言えます。

それが、「イスラエル=神と戦う者」という意味に結実しているのです。

(論文の第2部で解説。)

2010/10/17(日) 午前 0:30 マーラーー 返信する

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、「イスラエル=神に対して戦う者」( 神 対 人間 )

2010/10/17(日) 午前 0:45 マーラーー 返信する

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神話「イナンナの冥界下り」によれば、イナンナの下僕女が、エンキ
にイナンナの救出を懇願すると、エンキは、万能の智恵で、イナンナの救出方法を考案しました。

だから、結果的に、ドゥムジ(牧羊者)は、エンキに殺害された、と考える事ができます。

2010/10/17(日) 午前 5:19 マーラーー 返信する

マーラーーさん
まだ論文をすべて読んでいないので、私見を述べるのはもう少し後になりそうです。いずれにしても双子伝説というのはかなり奥が深いですね。

2010/10/19(火) 午後 0:56 [ 9回裏二死満塁 ] 返信する

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いつでも構いません♪。(笑い)

健康に御留意してください。(マジ、にんにく が良い。)


論文の<第3部>は、付録ですので、読まなくてもいいです。

2010/10/19(火) 午後 4:35 マーラーー 返信する

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*D​d​o​g​ さん * には、 お邪魔して、すいません。

あと3ヶ月で退散します。(笑い。)

2010/10/19(火) 午後 4:40 マーラーー 返信する

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