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バルクの黙示録 その4 フェニックス伝説の起源
さて、フェニックスについてのバルクの質問は続く。
11 このフェニックスが食べるものが『天のマナと地の露』であるというのは、完全に旧約聖書の出エジプト記に対応している。マナは出エジプト記においてエジプトから脱出したモーセとイスラエルの民のために神が天から降らせたという食物だ。
このマナの様子について旧約聖書は『荒野の面には、薄いうろこのようなものがあり、ちょうど地に結ぶ薄い霜のようであった』と記している。エジプトから脱出してきたイスラエル人にとってははじめてみるものだったに違いない。
彼らはそれを見て「なんだこれは?」と互に言ったとあるが、ここから、つまりヘブライ語(アラム語とも)の「何だこれは?man hu」という言葉からとって『マナ』と言う名の由来になったと言われている。
ちょっと、実際に旧約聖書の記述を見てみよう。
出エジプト記 第16章3節 〜 まぁ、裏を返せば、カナンに辿り着いた後は食べるのをやめてしまったということで、きっと本当はあまり美味しくなかったのだろう・・・。
モーセがエジプトを脱出した紀元前12世紀ごろから聖書が編纂された西暦3〜4世紀の間にはおよそ1600年という途方もない時間的開きがある。マナが何であったかは長い月日を経て忘れ去られ、聖書が編纂される時代にはそれが何であったかは忘れ去られていたのではないだろうか。
こんな事情もあってか、この砂漠に突如出現したマナが何であるかというのは長年研究者を悩ませてきた。まさに「何だこれは?」というぐあいだ。
マナとは何か?他にはマナをタマリスク(Tamarisk)と呼ばれるギョリュウ属の植物から採れる樹脂とする説もあるが、これは一度に少量しか取れないので、放浪するイスラエルの民を養うのは無理があるとして否定されている。
上記の二つに比べ、近年定説となりつつあるのが砂漠地帯で低木に寄生したカイガラムシの排泄した排泄物(甘露)であるという説だ。この排泄物は、糖分を多く含んでいて聖書に記述の通り甘く、また形と色も“コエンドロ(コリアンダー)”の実のように白色である。
カイガラムシというのは馴染みの薄い虫かもしれないが、園芸などをやっている人たちにとっては害虫以外の何物でもない。しかしながら、種類によっては、分泌する体被覆物質や体内に蓄積される色素が重要な資源ともなる。以下のサイトには次の様に書いてある。
カイガラムシの仲間は、悪い虫ばかりではありません。食品の赤い色素「コチニール」をとる「コチニールカイガラムシ」、高級塗料とか、チョコレートや菓子のコーテットなど意外に利用範囲の広いシェラックをとる「ラックカイガラムシ」(この2種は外国産)、 特殊な白ロウをとる「イボタロウムシ」のように、貴重な資源を提供してくれる仲間もあります・・・ ふむ。
それに、マナは早朝の気温が低い時間に結晶し、固まりになって枝から大量に落ちるそうでうで、これも聖書の記述との整合性を後押しする。
さて、バルクなる人物はフェニックスの食べ物を聞いた後、今度は排泄について質問する。さすがだよ。。。
12 フェニックスが蛆から生まれる説はあったが、蛆を排出するとは他に例を見ない。蝿の幼虫である蛆は、およそ糞などに発生するのだが、昔のヨーロッパでは蝿が卵を生むからではなく自然発生するものと考えられていた。日本でも「蛆がわく」という表現はこのあたりの認識の名残だと思われる。
もう一度フェニックスの伝説で自ら炎を出して死んでゆくと言う「自殺説」の他に、蛆が沸き出してそこからフェニックスが誕生すると言う「蛆誕生説」があったことを思い出してほしい。分かっている限りにおいて、この説を最初に唱えたのはローマの歴史家であるプリニウスで、西暦77年に完成したとされる著書『博物誌』で展開している。
前回の記事で、初期キリスト教を代表する神学者である聖クレメンス(アレクサンドリアのクレメンス:150年〜215年)も同様の説を唱えていことを述べた。この聖クレメンス成る人物は、ギリシア哲学というものがキリスト教へ人々を導くために存在したと考え、その思想的な遺産をキリスト教へ継承しようとしたという。
このブログではギリシア哲学とユダヤ教神秘思想のカバラとの親近性についても述べてきたが、もちろんギリシア哲学はキリスト教に繋がるというクレメンスの主張に同意できる。多神教の社会にありながら、ギリシア哲学者達は絶対唯一なるモノ、完全なるモノを求めた。(最近ビデオで『トロン:レガシー』を見たが、あのあたりの世界観はギリシア哲学が背景になっているような気がする)
おそらく外典エノク書が編纂されたのは、聖クレメンスが活躍した時代の後だろうから、エノク書におけるフェニックスに関する質疑応答に蛆が関連するのも頷ける。ただし、蛆からフェニックスが登場すると言うこれまでの説ではなく、フェニックスの排せつ物が蛆であるという点が異なる。
さらに驚きなのは蛆からキナモーモンが排出されると言う。キナモーモンは一説によるとアダムが楽園追放時に神に懇願して持ちだしたものであるが、この外典でも「王たちや支配者たちが用いるところのキナモーモン」と表現していることから、王権とかかわるもので神聖なものであることは確かだろう。
カンロと甘露カイガラムシやアブラムシなどの昆虫からの糖分を含んだ甘い排せつ物は甘露と呼ばれる。ウィキペディアの記述で言うと近中学で言うところの甘露とは「篩管液を主食とする半翅目昆虫が排泄する糖分に富んだ液体」である。
その一方で、甘露と言うと日本人ならばおそらくカンロ飴などが思い浮かぶが、そのほかにも甘露梅、甘露醤油、甘露煮などいろいろな生活な場面で使われる。
しかし、全く両者は全く違うものではない。
後者の甘露の由来としては次にように紹介されている
「かんろ」は梵語、アムリタの漢語訳。アムリタの意味は「不死」。インドヒンズー教の神話では、神々がこの世のはじめに大海を撹拌して得た不死の霊液。これを飲むと、苦悩は去り、長寿、死者をよみがえらせる。 ちょっと話がごちゃごちゃしてきてしまったが、旧約聖書、外典バルク書、ローマ博物誌、ヒンズー教の神話、中国の伝承など、キーワードをそのまま並べ替えただけで、いろいろなところでつながっている。
2つの甘露、でも根源は同じなのではないだろうか?
第6章が中途半端なのだが、内容的にはこの辺りにしておこう。
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すごい。
2011/8/13(土) 午前 7:00