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タイトルも新たに、1年ぶりですが、まずは過去の記事を整理しなきゃ

政府紙幣論議

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スティグリッツ の政府紙幣に関する主張を探していたところ、デフレ脱却と政府紙幣発行に関わる議論として2003年4月に行われた『関税・外国為替等審議会 外国為替等分科会』の議事録があった。
議事録詳細はこちら→ http://www.mof.go.jp/singikai/kanzegaita/giziroku/gaic150416.htm
スティグリッツと岩田の意見の相違を表にまとめると以下のようになる。
* スティグリッツ(賛成)岩田(反対)
政府紙幣と国債造幣益発生という大きな違いがある国債を直接引き受けるのと同じ
政府紙幣のコントロール2発行量はコントロールできる財政規律を失う
日銀の独立性独立性を過大評価している金融政策の独立性確保も難しい

この議事録にあるいくつかのコメントをピックアップしてみました。とても興味深いです。

何が興味深いって・・・今の 政府紙幣に関する議論や無利子国債に関する議論、実はもう何年も前からやっていて、日銀のスタンスってのは当時とまったく変わってないのね・・・ってことかな。

スティグリッツ教授が基調講演で政府紙幣発行を提案

『エコノミストしては大罪かもしれませんが、政府紙幣の発行を提言したいと思います。しかしご理解頂きたいのですが、先に申し上げたとおり、インフレ経済はデフレ経済とは異なります。インフレ経済の場合には、私の切り札である博士号を取り上げて頂いても結構です。私が政府紙幣の発行を提言すると、皆さんは私を見つめ、この男は一体どこで博士号を取得したのかとおっしゃるでしょう。しかし、デフレ経済では、事情は全く逆なのです。少なくとも、議論に値する考え方だと思われます。政府紙幣の発行により債務のファイナンスを行います。不連続性については例証はありません。つまり、「政府紙幣の発行を始めれば、ハイパーインフレを招かないか」と質問される方がおられるでしょう。理論の上では、世界は非常に不連続的であり、日銀と財務省の適切な政策についての私の観察では、たとえ政府紙幣の発行を始めたとしても印刷機のスピードをただ速めるようなことはしないと確信しています。政府紙幣の発行スピードは非常に緩やかなものとなるでしょう。真の問題は、政府紙幣を増発しすぎるということではなく、むしろ政府紙幣の増発が不十分な量で終わるということです。したがって、不連続性については例証は存在せず、緩やかに増発すればハイパーインフレを引き起こすことはありません。経済理論によれば、適正なインフレ率が存在し、この水準となるように供給量を調節することができるのです。債務ファイナンスに比べてこの方法には多くの利点があります。その一つとして、債務ファイナンスの場合には、3ヶ月毎、6ヶ月毎、1年毎、5年毎というように債務を借り替える必要があります。しかし、政府紙幣を発行した場合にはその必要はありません。発行された紙幣は恒久的に償還されません。・・・(略)』

岩田(当時日銀副総裁)の反論に対するスティグリッツの主張

『(略) ・・・現状において、インフレ期待を形成することが可能になるような政策手段が存在するならば、検討に値すると思います。もう1つの事例として、為替市場への介入に、その他の国々の政治経済がどういう対応をとるかということですが、特にアメリカがどういう対応をとるだろうかということです。政権によって強みと弱みは異なると思います。1つのメリットとして、政権として少なくとも原則的に市場の力を重要視している政権が存在しているメリットは、為替市場に介入することによって特定の為替レートに誘導することができるとは信じていないということです。その政策が今後変更されるかどうかは別問題ですが、政府の公式の立場として介入は行わないことを一定の政策として打ち出しています。

(中略)・・・日本の制度的枠組みでは政府が紙幣を発行するのは難しいと多くの方が指摘されました。それに対しては2つの答え方があるかと思います。第一の答えとして、では、制度を変えなさいと。変革も難しいとは思います。IMFも、よく痛みを伴う選択が必要だと言っていますが、これがその痛みを伴う選択の1つかもしれません。政府が紙幣を発行することができるようにすると、特に日銀にとっての痛みが一番大きいのではないかと思います。』

『ご指摘頂いた制度面の問題点、例えば中央銀行の独立性、また政府が紙幣を勝手に発行すればインフレにつながるのではないかというリスク、それらはいずれも重要な問題です。このようなご質問も出るだろうと予想しながらコメントしていました。つまり、日銀の独立性の有無にかかわりなく、私としては財務省が自制することなく今日から紙幣の印刷機を動かし始めるとは思っていません。そういう可能性はないと思っています。一般論として今の世の中を見てみると、独立性のある中央銀行があれば経済のパフォーマンスが良くなるという証拠はほとんどありません。日銀の方にとっては今のコメントは失礼だったとは思いますが、実際に重要であるマクロ経済上の課題、例えば経済成長、失業、あるいはフィリップス曲線の失業とインフレのトレード・オフ、つまり、インフレを安定水準に保つための代償となる失業率の水準において、中央銀行の独立性があるかどうかであまり変わりはないのです。しかし、中央銀行の独立性に意味があるとすれば、僅かな効果ですが、独立性を保っている中央銀行はインフレを下げることには少しは成功しているという点です。だからといって、経済成長率が上昇するとか、失業率が下がるとか、他の重要な変数には何の影響もありません。そこで、中央銀行の独立性というアイデアはあまりにも過大評価されているのではないかと思います。特に中央銀行自身が過大評価していると思います。

さらに、財務省が紙幣を過剰に増発してしまうのではないかという懸念に対して、2点ほど補足したいと思います。第一に、非民主主義国家とは異なり、民主主義社会ではこのような制御できないようなインフレは選挙により牽制されます。国民はそれを求めてはいません。そういう意味で、民主的なプロセスを私は信頼しており、牽制機能が働くものと確信していますし、実際、多くの民主主義国家ではそういう問題はほとんど起こっていません。
第2に、仮に民主主義の機能をあまり信頼していないとしても、政府の行動に対して制約をかけることは可能です。例えば政府は紙幣を発行する権限を有するけれども、失業率やデフレ率に見合った割合でしか発行できないようにすることは可能です。制約を課すことで牽制する方法はいくつかあります。勝手に政府がどんどん紙幣を増発するのではないかという不安が存在する場合には、制約をかけることは可能だと思います。

最後の点になりますが、政府紙幣の発行ができないというのであれば、それに代わる機能を果たす政府債券を発行することです。無利子の永久債は結局紙幣に極めて近い訳です。無利子の永久債を発行すれば、紙幣同様に流通します。これはにせ金ではありません。代替的な紙幣とでも言いましょうか。これによって問題を解決することも出来ます。』

感想としては:
日銀の政府紙幣発行に対するスタンスは6年ほど経過した現在も変わっていない。反対ロジックも同じものだ。当時から無利子国債に関して日銀は比較的慣用であったように見える。また、中央銀行の独立性に関するスティグリッツのコメントには目から鱗だ。知らなかったことじゃないけど、改めて言われると確かにと思うね。

政府紙幣論議に関してこれまでの総括とも言うべき動きが本日あった。
トピックやニュースになるのも久しぶり。


『政府紙幣・無利子国債の発行を検討する議員連盟』が提言書をまとめ

麻生総理に提出した。


実際 こうした歴史上数々あったであろう提言書から、どこまで

政策決定の場で検討されるのかは良く分からないが、まずは一石を投じたわけだ。


「まだ、検討の段階ではない」と言っていた麻生総理だが、

そろそろ 検討の段階に入ってきたのかな。


もし、これから本格検討の段階に入るのであれば、

マスメディアに売れてる高橋洋一ではなく、元祖政府紙幣の丹羽教授を招集して欲しいな〜。



【無利子国債・政府紙幣の検討表明=首相「いいことだ」】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090311-00000121-jij-pol



【無利子国債発行などを首相に提言=自民議連】
3月11日15時20分配信 ロイター
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090311-00000241-reu-bus_all
[東京11日 ロイター] 自民党の有志議員による「政府紙幣・無利子国債の発行を検討する議員連盟」は11日、緊急提言をとりまとめ、麻生太郎首相に提案した。
日本経済を危機的状況と位置づけ、政府紙幣や相続税免除付き無利子国債の発行、贈与税の減免のほか、日銀に対する国債買い切りオペの増額、量的緩和政策の導入などを求めている。提言では無利子国債について、家計の金融資産を今後の景気対策の財源として有効に活用するため、「発行すべき」と指摘。商品性は、相続免除特典付きとするほか、年限を10年または20年とし、中途換金も認めるべきとした。政府にとって利子負担は発生しないが「金持ち優遇」と批判される可能性があり、調達財源は「雇用・失業対策、零細・個人事業主対策に重点的に活用すべき」としている。併せて、高齢者世帯ほど多く保有している資産を次世代に円滑に引き継ぐため、贈与税の減免も提言。3年間に限って現行110万円の基礎控除を2500万円に引き上げることなどを求めている。

一方、政府紙幣については、無利子・無期限の国債を日銀が引き受けることと同義とされており、提言でも「100年に1度の危機」に対応するため、「政府紙幣の発行、あるいは日銀による国債の直接引き受け」を検討すべきと指摘。日銀の金融政策運営に対しても、1)国債買い取りの大幅な増額、2)デフレ脱却までの量的緩和措置の実施──を求めるべきと明記した。同連盟顧問の菅義偉選挙対策副委員長は、麻生首相との会談後に記者団に対し、首相から政府紙幣に対する言及はなかったと述べた上で、「厳しい時であり、(首相は)あらゆるもの、できることはやっていきたいとの思いが強い。全体としては、(提言に)前向きだと思う」と語った。

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GDP年率12・7%減、35年ぶり大幅ダウン
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090216-00000010-yom-bus_all

年率換算で12.7%のダウンとは、考えてみるとすごい数字が出てきたと思う。
落ち込みの最大の要因は、輸出。GDPの10〜12月期の国内総生産前期比3.0%減のうち
寄与度でみると実に3.0%が輸出減少によるものだ。

これを受けて財務省でも輸出促進の為にいろいろ議論されている様子が伺われる。

円安誘導による外需伸張、慎重な検討必要=中川財務相
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090216-00000985-reu-bus_all

『中川財務・金融相は、現行の円高が日本の経済や輸出産業に悪影響を
与えているとの指摘に対し「為替で交易条件を良くし、輸出を伸ばすという
方向性も必要かもしれないが、今回のG7でも急激な為替の変動について
は注視していく、とコミュニケに盛り込まれた」とG7声明に言及。
・・・さらに「為替だけを良くすることが、世界の中で日本が生きていく道として
いいのか。外需頼みだけで日本経済が良くなるかどうか、国際的な立場や責
任があるので慎重に考える必要がある」と続けた。
また、景気対策の財源として与党内からも導入を検討すべきとの指摘が出ている
政府紙幣と相続税減免付きの無利子国債の発行について、政府紙幣を「避ける
べき」と否定する一方、無利子国債に前向きな考えを示した。
中川財務・金融相は、無利子国債発行の利点について「日本の流動性をどのように
増やすか考えた場合、民間にある寝ているお金を引き出して、流動性を持たせると
いうことで意味がある」と述べた。』


1つ分からないのが、「政府紙幣」についてはまずありえないとしながら、
相続税減免付き無利子国債には関心を示しているところかな。

確かに政府は国民に対しても国債を売ることが出来る。
個人金融資産をどう使わせるかという議論はバブル崩壊後もあった。
果たしてこの1500兆円と言われる資産は使えるのか?


いやいや誇張しすぎでしょ。



それは使える金融資産かそうでないかを見極めた方がいいように思うけどな。

あるいは

国債として使うべき金融資産かどうか。


この額の中には保険や年金がもちろん含まれている。個人経営企業の賃金や退職金のための準備金等も入っている。それに対応する借金とのバランスも考える必要もあるだろう。

それでもって それ以外に残った資産を国民がみんな持っているかと言えばそうではない。


格差社会なんていわれて久しいけど、


我々のような平均(以下)のサラリーマンにとっては、まず


「んじゃ 生命保険解約して国債でも買ってみるか!」

何て・・・思うか・・・


『相続税減免付』なんて付くぐらいだから、
そもそも高額所得者にターゲットを絞ってるんだろうけど、
マーケット個人の資産構築に対して、中立的ではない。

ここまで偏っていいのか・・・?


それに年金や生命保険の運用には国債で運用されている部分もあるだろうから、
それを強引に剥がすようなことになれば・・・国債自体どうなることやら。



何はともあれ、景気対策の基本は
所得を増やし、消費を伸ばすことにあるとは思うんだけど・・・

・・・違うのだろうか。


埋蔵金のように妄想的に同じパイの取り合いをしているだけのようだ。。。

【高橋洋一東洋大教授 政府紙幣25兆円発行せよ】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090213-00000111-san-bus_all

最近メディアへの露出度が高くなっている高橋洋一教授。しかしながら、「政府紙幣」の主張はもともと丹羽氏によって展開されてきたという背景がある。「政府貨幣」の有効性を主張している2人だけど、そもそも接点はあるのだろうか?違いは何だろうか?


丹羽春樹教授
元祖「政府紙幣」。大阪学院大学名誉教授にて日本経済再生政策提言フォーラム会長・事務局長。
10年以上前から「政府紙幣」に関しての提言を行っている。様々な批判を受けながらも彼の主張は、日和見の日本経済学(時には新古典派だったり、時にはケインジアンだったり)にあってはケインジアンとして、首尾一貫した理論を展開している・・・と思う。(少なくとも私には・・・)

新正統派ケインズ主義宣言: http://www.niwa-haruki.com/
丹羽春樹氏のホームページ: http://www.niwa-haruki.jp/ 
日本経済10%成長論「日本経済再生政策提言フォーラム」:
http://homepage2.nifty.com/niwaharuki/ 


高橋洋一教授
東洋大学経済学部総合政策学科の教授で、専門は財政学で元財務省官僚。小泉内閣においては、竹中平蔵大臣のブレーンとして補佐官に抜擢される。昨年末ぐらいから急速に「政府紙幣」がマスメディアで取り挙げられるようになると、25兆円の政府紙幣発行を提言し、再びスポットライトを浴びることとなった。


ふむ、元祖政府紙幣発行を提唱してきた丹羽氏と何らかの接点があると思いきや、それほど関係のある間柄でもなさそうだ。それどころか、元祖政府紙幣発行論者である丹羽氏と高橋氏の唱える政府紙幣発行には、その内容や解釈にもスタンスのかなりの違いがあるように思える。

高橋氏のコメント
『・・・このような経済情勢をシミュレートすると、80兆円に上る需給ギャップが発生する。これを埋め、完全雇用に近づけ、成長軌道に乗せる政策が必要となる。そこで私が提案しているのが、政府紙幣25兆円を発行し、日銀の量的緩和で25兆円を供給、さらに「埋蔵金」25兆円を活用し、計75兆円の資金を市中に供給するプランだ。2、3年で集中的に行い、さまざまな政策を組み合わせれば多方面に効果が出るはずだ。』

・・ん? あれ?

この75兆円を1/3ずつこんな風に均等に分ける意味がよく分からん。

それに、政府紙幣発行が25兆円とは、『政府紙幣=ハイパーインフレ』と唱える人には申し訳ないが、丹羽氏に比べ随分と少ないような気がする。

更に「日銀の量的緩和で25兆円」というのもよく分からん・・・。市中にお金が回らないので「政府紙幣」と思っていたんだけどなぁ〜・・・。そもそも土地本位のシステムがデフレに陥った時に、貨幣が本来の役割を十分に果たせず、日銀の政策実効性が難しくなる。いわゆる第2種流動性の罠というヤツだ。そこで「政府紙幣」という案でもあったような気がする。まぁ 最大の焦点はデフレギャップだけど。



・・・とまぁそうこう書いているうちに


丹羽氏の高橋氏に対する批判が飛び出してることに気が付いた。
http://www.melma.com/backnumber_133212_4352579/



なるほど




仲良さん・・・という訳ではなさそうですね(笑

高橋是清について

高橋是清(たかはし これきよ)
1854年-1936年

政府紙幣をいろいろ調べていくと、必ずと言ってよいほど名前の挙がる政治家(財政家)がいる。高橋是清だ。彼は、明治後期から大正、昭和初期にかけて活躍した日本の政治家で、その時代の日本経済は、1920年に第一次世界大戦後の経済恐慌に襲われ、その7年後には金融恐慌、さらに1930年には世界恐慌が起こった。日本銀行総裁(1911年)になり、合計7度の大蔵大臣を歴任し、1932年には総理大臣にまでなった彼は、日本のケインジアンとも呼ばれ、激動の時代の日本経済、しいては金融政策の舵取りを見事にやってのけたと言われている。


昭和金融恐慌の時、相次いで起こった経営破綻をきっかけに、取り付け騒ぎが起こり、破産も相次いだ。そんな中、田中義一内閣が成立し、当時80歳の是清を大蔵大臣に任命して沈静化を図る。彼は、すぐさま5月12までモラトリアム(執行猶予)を実施し、全国の銀行を一斉休業にさせると、3日間で片面印刷の200円札を大量に刷り、これみよがしに銀行の店頭に積ませた。それを見た国民は安心し、その後金融恐慌は沈静化に向かったという。

これが彼の政府紙幣についてのエピソードだ。

有効需要政策によって経済が回復し、物価上昇の兆候が見え始めた1935年には、彼は緊縮財政で軍事費削減を主張する。しかしながら、当時勢力をつけていた軍の反感をかい、残念ながら2・26事件にて軍に射殺された。

以下は抜粋
『軽視される高橋是清の偉業』 経済コラムマガジン(第287号より)
*********************************************

昭和恐慌は、第一次世界大戦時の好況の反動が発端である。1914年第一次世界大戦は起ったが、日本は戦場にならず、輸出の増大で日本経済は大いに潤った。しかし大戦が終わり、列強が生産力を取戻すにつれ、日本経済は落込んだ。1920年以降、日本経済はずっと不調が続いた。特に27年には金融恐慌が起り、取り付け騒ぎや銀行の休業が到るところで見られた。

ところがこのような経済が苦境の最中の29年に発足したのが、浜口幸雄内閣であり、蔵相が元日銀総裁の井上であった。なんとこの浜口・井上コンビはデフレ下で緊縮財政を始めたのである。ところが浜口首相は「ライオン宰相」として国民から熱狂的な支持を受けていた。前の田中義一首相が、腐敗などによって国民から反感をくっていた反動と思われる。

浜口首相は「痛みを伴う改革」を訴え、「全国民に訴う」というビラを全国1,300万戸に配布した。内容は「・・・我々は国民諸君とともにこの一時の苦痛をしのいで、後日の大いなる発展をとげなければなりません」と言うものであった。実にこの首相は小泉首相と酷似している。そして国民から熱狂的に迎えられたと言う点でも両者は共通している。昔から日本ではバンバン金を使う者より「緊縮・節約」を訴え、「清貧」なイメージの指導者の方が、少なくとも当初は支持を集めるのである。最近、公共事業に反対する候補者がどんどん選挙に勝った。これもこのような日本人の心情を理解すれば納得できる。


しかし不況下でこのような逆噴射的な経済運営を行ったため、経済はさらに落込み、恐慌状態になった。当り前の話である。浜口・井上コンビは財政政策だけでなく、為替政策でも大きな間違いを犯した。「金輸出の解禁」である。

ここで為替制度をちょっと説明する。為替を変動させておけば、総合収支尻は、為替の変動によって自動的に調整される。ところが為替を固定させておくと、総合収支の決済尻をなにかで埋め合わせる必要がある。輸出が好調で総合収支が黒字の場合には問題がないが、反対に赤字の場合には国際的に価値が認められている「金」などで決済することになる。つまり「金輸出の解禁」は、変動相場制から固定相場制、そして金本位制への移行を意味する。

さらに浜口・井上コンビは固定相場に復帰する際のレートを日本の実力以上に設定した。実勢より一割も円高の水準で固定相場に復帰したのである。これは単純に以前の固定相場の時のレートを採用したからである。この二人は、蔵相や日銀総裁を経験した経済のプロと思われていた人物である。しかし頭が固い(悪い)のである。

浜口・井上コンビの狙いは、構造改革で競争力を高め、輸出を増やして、不況から脱することである。しかし設定した固定為替レートは高すぎ、逆に輸入が増えた。また貿易業者は、輸入代金を市場から外貨を調達して払うのではなく、高い円で金を買い、これを送って決済した。金はどんどん輸出され、日銀の金の保有量が減った。金本位制のもとで金の保有が減ったため、政府は財政支出を減らす必要に迫られた。これによって経済はさらに落込んだ。この結果、財政支出を削っているにもかかわらず、財政はさらに悪化したのである。

さらに29年のニュヨーク株式相場の崩壊から始まった世界恐慌の影響も日本に及んで来た。日本では街に失業者が溢れ、大幅な賃金カットが行われ、労働争議が頻発した。特に農村は、農産物の大幅な下落によって大打撃を受け、「おしん」のような娘の身売り話も増えた。

このため農村から離れる者が増えた。しかし一方、逆に街で働いていた人々が失業して、どんどん農村に帰って来た。彼等は元々農家の次男・三男達であり、帰農者と呼ばれた。帰農者は明らかに失業者である。しかし井上蔵相は「帰農者は失業者ではない」と主張している。元々彼は「失業はたいした問題ではない」と言う認識の持主である。そして失脚後の32年2月に彼は暗殺された。今日の日本政府も、失業者のほとんどは「ミスマッチ」と言っている。本当によく似ているのである。



歴史学者のマルクス主義史観
30年の5月、浜口首相は、ロンドン軍縮会議・五カ国条約の批准に不満を持った分子に襲撃された。次の首相の若槻礼次郎首相も構造改革派であった。したがって日本経済はどん底状態になった。そしてついに31年12月に政友会に政権交代が行われ、犬養毅内閣が発足した。犬養は、以前首相も経験したことのある高橋是清に大蔵大臣就任を懇請した。

高橋は矢継ぎ早に、デフレ対策を行った。まず「金輸出の解禁」を止め、さらに平価の切下げを行った。最終的には約4割の円安になった。そして積極財政に転換し、その財源を国債で賄った。さらにこの国債を日銀に引受けさせることによって金利の上昇を抑えた。実に巧みな経済運営である。

そこでまず当時の経済成長率の推移を示す。

昭和恐慌時の実質経済成長率(%) 経済成長率

1927 3.4
1928 6.5
1929 0.5
1930 1.1
1931 0.4
1932 4.4
1933 11.4
1934 8.7

32年からの経済成長は実にすばらしい。実際、列強各国はこの時分まだ恐慌のまっただ中であり、日本だけが恐慌からの脱出に成功したのである。

1932年に国債の日銀を引受けを始めたが、物価の上昇は、年率3〜4%にとどまっている。1936年までに日銀券の発行量は40%増えたが、工業生産高は2.3倍に拡大した。そしてこの間不良債権の処理も進んだのである。

今日の日本政府の経済運営はミスの連続であるが、昔は賢明な政治家もいたものである。高橋是清は日本人の誇りである。なにしろケインズの一般理論が世の中に出たのが36年の12月であり、実にその5年前に既にケインズ理論を実践したのが高橋是清である。今日でこそカルトまがいの経済学者がよくノーベル経済学賞を受賞しているが、もっと昔からノーベル経済学賞があったら、高橋是清こそこの賞にふさわしい人物である。筆者は、昔から、くだらない経済学者より、実際に経済界で活躍し、人々に貢献した政治家や実業家にこそノーベル経済学賞は与えられるべきと考えている。


しかし高橋是清の業績は、今日あまり人々に知られていないだけでなく、時には全く違う解釈がなされている。今週号を作成するに当り何冊かの本を参考にした。特に歴史学者の評価が問題である。

学者の中には高橋是清の政策を軍需インフレ政策と指摘している者もいる。たしかに軍事費は増大したが、これも当時の国際的な緊張の高まりを考えると、簡単には否定できない。また世界恐慌の脱出のために軍事費を増やしたことは列強各国に共通している。しかし本格的に軍需支出が増えだしたのは37年以降である。むしろ経済があまりにも順調に回復したので、インフレの徴候が現れ、是清は引締め政策に転換し、軍事予算を削ろうとした。このため軍部の反発をかい36年の2.26事件で殺されたのである。つまり軍事費が本当に増えだしたのは、高橋是清の死後である。

高橋是清は、軍事予算を増やすと同時に地方での公共事業費を増やしている。学者は、これは土木業者だけが潤ったと、いつも通りのパターンの批難をする。しかしこれによって失業が減ったのは事実である。少なくとも高橋財政政策によって、有効需要が増え、設備投資も増え、都市部の勤労者は潤った。年に10%の実質成長率を達成できれば、かなりの経済問題が解決の方向に向かうのは当然である。

歴史学者は、高橋是清の政策は、インフレの目を残す政策と言っている。たしかに急速に景気が回復したため、イフンレの徴候が現れた。そこで高橋是清は一転、金融引締めに動いた。日銀が引受けた国債の90%を市中に売却し、余剰資金の回収を行ったのである。実に柔軟な経済運営である。たしかに日銀の国債引受けによる資金調達と言う手段は、軍備拡張を可能にし、インフレの種なったのは事実である。しかし先ほど申したように、軍需予算が急増したのは、高橋是清が暗殺された以降の話である。

歴史学者の中には、農村の経済が上向かなかったことを指摘する者もいる。しかし当時、農村では凶作が続いていたのであり、これを高橋是清の責任にすることはできない。どうも歴史学者は、高橋是清の政策を過少評価したり、間違った印象を与えるような記述を行いたがる。これには何か変な意図を感じるのである。

昔から歴史学者にはマルクス主義者や、これに強い影響を受けた者が多い。つまり彼等は、資本主義経済は必然的に恐慌に陥ると言う確固たる歴史観を持っている。したがってこれに対する是清が行った有効な政策に対しては、「将来にインフレの元になった」、「ダンピング輸出」そして「軍事国家への道をつけた」と言った具合にケチをつけるのである。日本の教科書も彼等の影響を受けており、高橋是清の奇跡的な偉業に対する記述がほとんどない。

とにかく日本教科書では、デフレ時にインフレ的手法を用いて経済を立直した為政者の評価が低い。逆に「わいろ」が横行したといった記述がなされたり、流通貨幣増大策を「悪貨は良貨を駆逐する」といった表現で否定する。逆にデフレ政策を押進めるような「清貧の思想」を持った政治家を持上げる傾向が強い。歴史学者は、経済がデフレに陥り、最後に民衆が立上がり、革命が起ることを期待しているのであろう。これも長い間、日本の歴史学者がマルクス主義の影響下にあったからと筆者は見ている。
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http://www.adpweb.com/eco/eco287.html 

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