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もちろんヴェネチアに行かねばならなかったし、映画祭でやはり黒沢清の「叫」と、ジャジャンクーの「三峡好人」、『Quei loro incontri』を観て、次に行くところはもちろん日本であり黒沢清の「LOFT」を観倒すことだと考え、さあ、やっとだと興奮を押し隠しつつ、その昔、ジャ・ジャンクーについては「世界」の批評を走り書きし、青山真治を差し置いてでも、あるいは他の優れた作家の作品の批評を差し置いてでも黒沢清のレビューを走り書きしていた私は、もちろん、「三峡好人」が金獅子賞をとるであろうことは予測もできたし、まさかアラン・レネごときが次点に入るとは思わなかったにせよ、黒沢清の「熟成した」凄さはまだヨーロッパの馬鹿たちには十分には解らないだろうと思いながら、映画を見る眼の進歩、あるいは「還元」によって、黒沢清が世界の映画監督の三指のひとりであることが当然となるであろう数年後を「ざまあみろ」と笑ってやるぞと一人ごちながら奇妙に空席の多いパリからの帰国便(シャルル・ド・ゴールは好きではない)の中、ワインの趣味があまりよいとはいえないエアーに密かに70年の某アルマン・ルソーの70年(まるで自然の甘味の精達の中で趣味の良い奴らのみを集めて作らしめた完熟のメロンの中心の青白い未成熟の数列の種子にまとわりつく太古から生き延びた糖蜜のジェルのようだ!)を持ち込んで緩んだ顔をさらに弛緩させながらそれは美しいCAが運んで来給うたトリュフと共に頂きつつ、かつおすそ分けだと言うと喜んで杯を受けてくれ給うたその美しいCAとあろうことかまたデートの約束をしたかしないかの記憶はうつろなまま彼女の笑顔を子守唄とし、うとうとと眠ったか眠らないか、やはり幸福な痺れを五感に宿したまま記憶が定かではない成田をおそらくは無事通り抜けて、Sweet Home に帰ることもせずハイヤーを新宿はやや時代遅れの感ありとも言われ始めたパークハイアットに乗りつけ、明日は映画だ黒沢清だ主演の中谷美紀はよく考えると本当に美しいかも知れない、ああ、とベッドで身悶えながら持ち込んだラフロイを飲もうと氷と頼み、アイラの潮風あるいはまたヨードチンキの香りかどちらか判らぬまま向こうに薄ぼんやりとみえるのは美人ナースかと女日照りだったためかテレビコマーシャルの出演女優を見間違えつつ飲る飲らないのうちに気を失うように眠った後はやはり蕎麦とうどんしかないと新橋に繰り出して日本を懐かしみ愛でつつ、海老天は最高だグルテンてんこもりのフライしか揚げられぬヨーロッパ人は馬鹿と考えるアルコールに犯された頭は更にハイボールなぞ如何と告げる始末で、仕方なく老舗のバーへと電通通に面した階段を下りると何も言わぬのに目の前に突き出されたハイボールをレバーペーストと共に口に放り込み我を忘れてため息をついたまでは記憶にある。

皆様、ただいま。

映画を見るために帰ってまいりました。

もちろん黒澤明が束になってもかなわない黒沢清の「LOFT」を観るために。


黒沢清が現代活躍する日本の映画監督の最高峰にあることは相違なく、優れた北野武も場合によってはその「エッジ」のみが光り輝いていると言えなくもなかろうし、青山真治のショットにも「それをやるか」と冷める瞬間が無いわけではない。

しかし、黒沢清は私を沈黙させる。
判る判らないという馬鹿が陥る二元論を超え、作品には作家の意図が反映されているいやそれはどうでもよいというやはり二元論と呼べてしまう馬鹿の論理を超え、面白い面白くないという気楽な二元論を超え、映画が映画でしかないことの凄まじい美しさの彼岸で彼の作品は輝く。

ゴダールのように。

二元論者は彼の作品に裏切られる。それが心地よくなければ、二元論の安定した社会に帰って物事を良し悪しで判断し、それが是として生きてゆけばよいのだ。馬鹿め。
そうした「不自由」から開放されたくば、フーコーを超えて、バルトのように彼の作品と戯れよう。「意味」からも「印象」からも「好き嫌い」からも「官能」からも遠く離れて彼の映画は我々を犯す。

中谷美紀は「LOFT」で「意味も無く」「泥を吐く(嘔吐する)」という。もちろん私はそう告げた知人に「映画から「意味」をすくいとれるならそれが映画だと思っていれば良い。この馬鹿。」と彼に聞こえないようにそっと告げたのだ。
ただ、美しい中谷美紀が「意味なく美しく」「泥を吐く」光景に、件のミイラと共に酔おうではないか。

有志の皆様、明日、間違いなく滂沱の涙を流している中年を新宿の某劇場で、明日以降、日々見かけたならば、それは私か、馬鹿に馬鹿と呼ばれる馬鹿かのどちらかなのです。お見知りおきを。


−了

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ヲヲ〜?!!(゚ロ゚屮)屮復帰早々、更に一層、明王節に磨きがかかっておりますな!ジャジャンクーの金獅子賞をニュースで見て、明王さまを思い出していた大王より愛を込めて。

2006/9/19(火) 午後 1:00 HADES

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随分忙しかったようですね。お疲れ様です。「LOFT」は「文學界」の特集は読んで楽しみにしているところです。僕も明日か明後日ぐらいに見に行くと思います。「映像のカリスマ」や小津のシンポジウムでも、黒沢監督はたびたび「意味はない」と口走ってますね。

2006/9/19(火) 午後 10:38 [ ふくやまん ]

ONIINさん、こりゃまた素敵な噂話をありがとうございました(笑)。

2006/9/20(水) 午前 4:45 [ aly*nv ]

大王様。今回は明王節というより、ハスミ節をやってみました。ハウル批評では、カラタニ節もやったんですけど(笑)。 お元気そうで何よりです。

2006/9/20(水) 午前 4:47 [ aly*nv ]

流れ者さん。どうもです。意味とは呪縛。それが作家を縛ってしまうことに作家はもっと気づけよ!と思いますねえ。

2006/9/20(水) 午前 4:51 [ aly*nv ]

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