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九州の有明海沿岸では、昔から伝統的にイソギンチャクを食用にします。
上の写真は、福岡県柳川市の魚屋さんで売られていたイシワケイソギンチャク。
柳川は食用イソギンチャクの本場です。
これを買って帰ったら、まず周囲のプヨプヨしたヌメりを除去するために、
塩をつけて揉んで、水で洗ってまた塩で揉んで……を繰り返します。
タコを塩で揉んでヌメりを除去するのと同じ。
次に包丁で縦に二つに切り、内側の砂や貝殻の破片などを丁寧に除去します。
こうして下ごしらえが済んだら、調理します。
汁の実にしたり、唐揚げやフライにしたり、味噌煮にしたりします。
磯の香り豊かで、シコシコした歯ごたえ。
よく知らずに、ヌメりをちゃんと除去しないまま調理してしまう人がいるようで、
「有明海沿岸でイソギンチャク買ってきて食べたけど、大して美味しくない」
などと言う人がいるのは悲しいことです。
ちゃんと調理すればとても美味しい海の幸なのです。
さて、知る人ぞ知る食用イソギンチャクの地方名。
ワケノシンノス。
これは福岡県、特に南部の筑後地区で用いられる呼び名ですが、
同じく有明海沿岸でイソギンチャクを食用にする佐賀県南部でも使われます。
ワケ ⇒ 若者、若い衆
の
シン ⇒ 尻
の
ス ⇒ 穴
つまり、「若者の尻の穴」という意味になります。
なるほど確かに、ギュッと縮こまったその風貌は、肛門のように見えなくもない……
ただ、どちらかというと見た目「若者の」というより「年寄りの」それに見える(爆)
ただし、地元の人は通常、略語である「ワケ」をもっぱら使用します。
ちなみに「シリ」⇒「シン」のような音便変化は、九州独特のものです。
故郷・大分県でも、犬のことを「イン」と言ったりします。
例:犬が吠えている ⇒ 「インが吠えよる」
さて、最後の「ス」なんですが。
大分弁においても、穴のことを「ス」と呼ぶ用例は多いです。
尻の穴 ⇒ ケツんス
鼻の穴 ⇒ 鼻んス
なぜ、穴のことを「ス」と呼ぶようになったのか。
私は以下のような仮説を立てています。
蟻の巣穴をみつけた子供がが母親に「これ、なん?」とたずねる。
母親は「あー、そらー蟻ん巣(ス)や」と答える。
すると子供は、「蟻の巣」でなく「蟻の穴」であると解釈し、
”ス = 穴”として認識したまま成長してしまう。
とまぁ、こんな感じだったんじゃないかなーと想像しております(^_^)
方言を研究している私ですが、専門は津軽(青森県西半部)、秋田、
福岡(北九州・筑豊・博多・久留米)、熊本、そして故郷大分です。
今後も、話のネタになりそうな面白い方言はどんどん紹介してゆきます。
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