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前回の記事で
「ジャズってなんだか難しそうで……という方には、まずはピアノトリオを」
というお話をしました。
もちろん、ピアノトリオの全てが親しみやすい音楽をやっているワケではありません。
どこからどこまでが基本メロディなのかもよくわからないような演奏もあります。
たとえば、主旋律を相当に崩して演奏していたり。
あるいは、元から主旋律自体が無くてアドリブ回しだけで成り立っている曲だったり!
(こういう場合、コード進行またはモード(スケール)と小節数・コーラス数だけが先に決められている)
ジャズを聴き込んでゆくと、こういった演奏もクールで素晴らしいのですが、
最初のうちはまず「メロディがハッキリしていて親しみやすい曲」から入ってゆくのが一番です。
ここで思い浮かぶのが、いわゆる「スタンダード」と呼ばれる曲群です。
ジャズで言う「スタンダード」とは、多くの演奏家に親しまれ演奏し尽くされてきた曲です。
ジャズメンのオリジナルだけでなく、むしろミュージカルの曲であったり、
昔のポピュラー歌手の流行曲であったりすることが多いですね。
ガーシュウィンの黒人ミュージカル「ポーギーとベス」の曲「Summertime(サマータイム)」や、
シャンソンの名曲「Autumn Leaves(枯葉)」などは、ジャズファンならずとも曲名ぐらいは聞いたことがあるのでは?
これらスタンダードに共通して言えることは、
とにかくメロディがわかりやすく平易で親しみやすいという点です。
ジャズは他の音楽ジャンルに比較すると、自分のオリジナル曲にこだわって演奏することは稀です。
もちろん、優れたオリジナル曲を書くジャズアーティストはたくさんいますが、
何十年も前からよく知られ、多くの人に演奏されてきた曲をも積極的にとりあげます。
全曲スタンダードだけのアルバムやライブというのも、ごくフツーです。
米ポップスやJ-POP、ロックの世界では、これはまずあり得ないコトですね。
他のアーティストの曲を演奏するのって、コンサートでも余興程度に一曲、
アルバム吹き込みでもせいぜい一曲程度ですよね。
(コピーバンドとは違いますよ?)
私がスタンダード系の曲で最も好きなのは、作曲家コール・ポーター(1891〜1964年)の作品群です。
この人の曲は、とにかくメロディが平易で、しかもコード進行がとてもお洒落。
映画音楽やミュージカルの分野で活躍した人なんですが、
この人の残した曲はジャズフォーマットでの演奏にも素晴らしくマッチしているんです(^-^)
基本的なジャズ演奏は、常に3連符の後ノリで組み立ててゆくのですが、
このジャジーなビート感に絶妙に合うワケですね〜。
ポーターの曲は今後どんどん紹介してゆくことにしますが、
今日はちょっと別の人のヤツを……
ジャズ初心者の方でも「Take The 'A' Train (A列車で行こう)」という曲はご存知の方が多いでしょう。
デューク・エリントン楽団のピアニスト、ビリー・ストレイホーンの作詞作曲です。
この人が書いた曲で私が大好きなのが、今日動画をご紹介する「Raincheck」という曲です。
スタンダード……というほどしょっちゅうとりあげられている曲ではありませんが、
とにかくメロディの小洒落た雰囲気がスタンダードっぽいです(^^)
私の敬愛するピアニスト、トミー・フラナガン(1930〜2001年)のお気に入りの曲でもあり、
アルバム「Jazz Poet」での録音をはじめ、ピアノトリオライブで頻繁に演奏していました。
それでは、トミー・フラナガン・トリオの演奏「Raincheck」をお聴き下さい……
簡単な前奏 ⇒ メインテーマ ⇒ ピアノアドリブソロ ⇒ ベースソロ
⇒ ドラムス8バース交換(ピアノソロとドラムソロを8小節ずつ交互に演奏)
⇒ メインテーマ ⇒ エンディング
たいていのピアノトリオ演奏は、こんな感じです。
ベースソロが無かったり、ドラムスが1コーラス分の完全ソロになったり、
バース交換がピアノ⇒ドラムス⇒ベース⇒ドラムスになったりと、
セッションリーダーの音楽性や好みでいろいろ変わりますけどね。
この動画は1991年の映像ですが、この時期にレギュラードラマーだったルイス・ナッシュではなく、
ボビー・ダーハムがドラムを叩いています。
珍しいことに、冒頭のメインテーマ前半をスティック、後半をブラシで演奏している(笑)
ベースは、私の尊敬する名手、チェコ出身のジョージ・ムラーツです☆
フランチシェク・ポシュタのもとでクラシック・コントラバスを学んだ人ですが、
ジャズの世界で大成功を収めています。
全然リキまないスムーズな運指で、個性ある華麗なソロを聴かせるベーシスト。
作曲者のビリー・ストレイホーンはデューク・エリントン楽団のピアニストでしたが、
エリントン自身がピアニストなのに、なんでわざわざ別のピアニストを? ということになりますが、
エリントン作品とされる曲の多くは、実はストレイホーンの作曲であったと言われています。
エリントン楽団はビッグバンドですから、エリントン自身が指揮者をやることも多い……
そんな時にはストレイホーンがピアノを担当したりしたのですが、
エリントンがストレイホーンを重用した一番の理由は、彼の作曲の才能だったようです(^_^;;
メインテーマのコード進行をしっかり頭に入れてみると、
その後のピアノやベースのアドリブソロがこのコードに沿って構築されていることがわかると思います。
初心者の方の中に「アドリブって、全員が全員バラバラに即興やってるの?」と言う人がいますが、
もちろんそんなコトをやったら、不協和音だらけで音楽が成立しません(苦笑)
ちゃんと一定の取り決めがあって、その範囲でみんなが即興演奏をやっているのです。
この「Raincheck」は、今回「スタンダードっぽい」という点を考えてとりあげました。
スタンダードには「Satin Doll」「My Funny Valentine」「Stella By Starlight」といった、
少し食傷気味の曲もたくさんあるんですけど(苦笑)、
「I Love You」「How High The Moon」「Love Is Here To Stay」のような飽きの来ない曲もたくさんあります。
今後少しずつ紹介してゆきたいと思います。
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