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外に出ないまま、三ヶ月が過ぎた。
こころなしか、体調が悪い。 常に、胸が苦しいし、なんだかあせっている。 三ヶ月も無職やってれば、世間に対する劣等感や焦燥感が日増しに強くなって当たり前なんだけど、特に強いはっきりとした原因が、私にはある。 それは、私の好きな人は、私のことを好きではないということだ。 『こんなに素敵な人はいない!!これこそ運命の出会いだ!!』 その出会いは田舎で毎日しけた面して家と職場往復するだけの私には衝撃的だった。 男らしい、容姿端麗、仕事もできる、音楽やってる・・・!! こんな素敵な人に出会えるなんて!! バカみたいに目をキラキラさせて、私はのこのこと200km以上離れた場所まで何度も足を運び、その度にセックスを交わした。 夜中、彼と電話で話す機会があると、私は眠っていたとしても彼だとわかると飛び起きて、胸のぬくもりを感じながら、朝方まで彼の声を聞いていた。私の平凡なただの繰り返しの日々の中で、それは唯一の幸せを感じれる時間だった。 働いてた頃は、電話で夜更かしして次の日眠くても心の中は幸せだったし、遠いところに住んでいるけど、会いにいけると思えば、嫌な仕事でも頑張れた。 大好きだから、このままが続けばいいな、と思っていた。 そんな関係のまま、月日は流れていった。 そんな風に過ごしていたある時、その日の為にわざわざ新調した下着を身につけ、例によって彼のマンションまでのこのこと会いにいった日のことだ。 彼のお風呂場の洗面台に、ブラシ部分の小さいミルキーピンク色のハブラシを発見した。 追い打ちをかけるように、部屋にはピンクの眼鏡ケース(中身はなかった)、動物のぬいぐるみ、それに、可愛らしい青いドレスを着た女の子のマグネットが冷蔵庫に貼られていた。おまけに食事の時にはピンク色の箸を手渡されてしまったし、彼の玄関のドアノブには、バーバリーのピンクの、どう見ても女ものの傘がぶらさがっていた。 すべて、前に会いに来た時にはなかったものだった。頻繁に出入りする女がいる気配全開のその部屋の中で、私はそれらひとつひとつを見るたび、全身が冷たくなって硬直し、何も考えられなくなった。 未だに、薬局などであの時彼のお風呂場にあったものと同じピンク色のハブラシを見つけると、彼の家の洗面台の一番上に控えめな角度で置かれたハブラシを思い出す。あの小さなブラシ部分が、それに合う小さな歯にあたって、その歯はどんな彼との一夜を過ごしたのだろう、と、めちゃくちゃ憂鬱になる 『付き合っているわけでもないのだから、誰と何しようと彼の勝手だし、私の立場で口出しできることじゃない。それに、せっかく会いにきたのだから、楽しい時間を過ごしたい』と、私は自分の泣き叫びたくなる感情を抑えた。本当は全部原型を留めないくらいにぶっ壊して、捨ててしまいたかった。 その日、普通の人より我慢の足らない私は感情を抑えるべく、ワインを一気飲みして一日中眠ってしまったり、しまいには結局、抑圧しきれなかった感情が破裂するように、彼の前で泣き出してしまった。激しく嗚咽しながら、ピンクのハブラシの事を彼に聞いたけど、うやむやにされて終わってしまった。 深く追求できるわけなかった。彼との関係を終わらせたくなかった。今までろくな恋愛してきてない私はそのぶん尚更、目の前のクソカッコいい人と、どうにか繋がっていたかった。わけわかんないくらい好きだった。 『今後、彼のような人は手に入らないかもしれない。だけど彼のことも、手に入らない。』 何かのコラムで読んだけど、確かにそうだと思う。 彼が、私のことをどう思っているのかなんとなくわかってはいたけれど、見たくもない現実が垣間見えた出来事があった。 電話口で、何故だか会話の流れは忘れたけど、感情が高ぶっていた私は彼にこんな質問をした。 『これから私じゃない人とセックスするんでしょ?』 半泣きになりながら玉砕覚悟で、早口で言い放った私への、彼の返答は 『そりゃあね』だった。 彼の声は少し、小馬鹿にしたような笑いを含んでいた。 『そういうの人より強いんだよ、俺』 『お互い様だろ』 なんとなくわかっていたものの、玉砕覚悟とはいうものの、私が覚悟していたよりもずっと、彼の言葉は私を木っ端微塵にした。 もしかしたら、もしかしたらって 必死に、ぶらさがって 見て見ぬフリして 本当はなんにも、ぶらさがるもんなんて存在しないのに 白いレースのワンピース、会う日のためにわざわざ買って、会う日の前に何軒も探し回ってようやく買った履きなれないヒール履いて、無理してツモリの高いパンプス買って バカみたいだね 悲しくて寂しくて、苦しかった。 希望がなくなったと思った。 私の中で彼は、大きな大きな存在だった。 それでも潔くなれない私は、連絡はとってしまっている。たまに、なんでもない会話を交わす程度だけど。会いには行っていない。ピンク色の呪いがかかった部屋を思い出すだけで、足がすくんでしまう。本当はすごく会いたいけど、ものすごくセックスしたいけど、またあれを見ることになると思うと、とてつもなく、怖い。 冒頭で書いた胸の苦しさは、なんでもなく交わす会話の中に、最近、感じ始めている。br> 彼の口から発せられる『女』という言葉に、敏感になりすぎている。 例えば、女友達には下の名前で呼ばれるとか、もし恋人ができても音楽やり続ける、とか。軽く流すべきところでも、考えすぎてものすごくナーバスになって、うまく話せなくなって、電話を切ってしまう。 実は、彼との電話を切ってから、これを書き始めた。クラブにいる女の子の話を聞いて、また突き落とされる感覚が襲ってきた。自分でも、異常だと思う。 彼のことは相変わらず大好きだ。 だから他の女の人とセックスしてるって思うとやっぱり嫌だ。 子供っぽいって言われると思うけど、 やっぱり、とてつもなく嫌だ。 私はあなたを愛したかった。 私はあなたに愛してほしかった。 だけど私はあなたに、愛してもらえなかった。 やっぱり、苦しいよ 見て見ぬフリは、できないみたい |
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お元気でしたか?
毎日暑いですよね。抱きしめてさんも、お身体ご自愛くださいね。




> knd*rmさん
コメントありがとうございます。
トラックバック、歓迎ですよー!
[ Hanako ]
2015/3/7(土) 午後 6:15
ありがとね! (^O^)/
[ knd*rm (お友達専用) ]
2015/3/7(土) 午後 10:02
> knd*rmさん
そういえばこれ書いてる時、人を殺すような気持ちでした
[ Hanako ]
2015/3/8(日) 午後 3:52
> Hanakoさん
コメント有り難うございます。怖いこともあるんですね。自分のこわさは、3ヶ月どころか3000日くらい人と話さなかったとかそんなです。でもそちらもつらかったんですね。
[ こえがだせないひきこもり ]
2015/3/15(日) 午後 0:06
> こえがだせないひきこもりさん
コメント、ありがとうございます。とても、つらい経験をされているのですね。
私の場合ですが、直接人と会って話すより、ブログ上の方がお話しやすいように感じます。
yahooブログという場所でよければ、またお話したいと思ってくださるなら、またお話しましょうね。あなたの写真は、きれいですね。
[ Hanako ]
2015/3/15(日) 午後 3:05
「そういえばこれ書いてる時、人を殺すような気持ちでした」Hanakoさん
とりあえず,
____魂の殺害____
であることだけは間違いない。
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[ knd*rm (お友達専用) ]
2015/3/15(日) 午後 3:51
> Hanakoさん
きれいじゃないことこそ大事だったりするかもしれませんよね。自分の日常はきれいとは違うんですけど、とりあえず草花とか生き物に助けてもらったりもしてます。人も、本当はきれいなもののはず、て思うときもあります。苦しんでるようにも見えます。助けになれなかったりしますね。
[ こえがだせないひきこもり ]
2015/3/15(日) 午後 9:35
> こえがだせないひきこもりさん
なんだかあなたの言葉は澄んでいるように感じます。
たしかに、きれいなことだけが大切なことというわけでは、ないですものね。
草花や生き物が助けてくれることがあるのですね。
私も、耳を澄ませてみようかな。
助けたい人がいたのでしょうか。
救えなかったとしても、助けたいと思ってもらえた人は、うれしいのではないかなと思います。
[ Hanako ]
2015/3/15(日) 午後 11:09