あめちゃん夢想

素敵な人々がたくさんいた、温故知新です。

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うわさ2

たくさんの肉を抱えた橋本が立っていた。
「今日は ばりばり食べるばい」
「さとこ、皆さんにも声掛けてきてくれ、
用意頼むな。それとおまえといとの分は別にして
たくさん食べるんだぞ。」

「うん、兄ちゃん、早く太郎の顔みて少し大きくなったよ。
いと姉ちゃんも待っているよ。早く行ってあげて。わたしが用意しておくから」
「たのむな」

宴会が始まった。
橋本は子供のために現金が欲しい事。
奉公するには妻子をここにおいてもらいたいことを皆に話した。
「いいよ。さとこちゃんも良く働くしね。さとこちゃんがいるとあかるくていいよ。」
「みんな、いただこううまそうな肉だ。野菜は売るほどあるからな。」
「あっそうだ。笠戸丸で一緒だったイッパチ、覚てますか?」
「ああ、イッパチならここにいたよ。しばらく山戸もいたよ。
イッパチの奴、賭博場ではたらいていて最近じゃ、
羽振りがいいらしいよ。街を肩で風きって歩いているらしい。
あんまり評判はよくないよ。まぁやくざな家業だしな。
あいつ、なんだか勝負運が強いんだ。ここにいた頃も
なんとかっていう動物くじを当てたって言ってたな。
博才があるのもどうかな。
あいつの人生にとっちゃいいんだか、悪いんだか。」
「正直、うらやましいかぁ。」

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うわさ

橋本の静かなことばを聴きながら
ひとり身の香山には実感はないが
こんな地球の裏側まできて
農場での苦労、二度と帰れないだろう故郷

つないでいくのは いのち
なんだろうと漠然と考え夜空を見上げた。

「橋本さん、覚えとるかな。
笠戸丸でさとこちゃんと一緒にいた子、イッパチたち」
「ああ、あいつらはどうしておると?」
「あいつらはたくましいか。
ほとんどしゃべれもしないのに仕事を探して歩きまわって
噂だと山戸は歯科医院で、イッパチはカジノで働いているらしか。
不思議だな、自然に向いているほうに行くのかな。
あいつら何もわかってなかったと思うけど・・・」

「あの時はまだ、さとことかわらず幼い顔してたけどな。
おいもがんばらにゃいけんとね。」



さとこは相変わらず働いていた。
この頃ではいとは太郎につきっきりなので
まわりの目もあり、さとこはいとの分も働かなくてはいけなかった。
朝早くから食事の仕度、畑しごと、この頃では町に野菜を何人かで
売り歩くこともあった。
ブラジル人はあまり野菜を食べなくて
あちこちで働く日本人相手の商売でたかが知れている。
野菜を売って帰り道、肩を叩かれた.

都会

橋本は簡単な日常会話ならポルトガル語ができるようになっていたので、太郎のために
医者のいる都会、サンパウロ近くに移ろうかと考えていた。
サンパウロなら違う可能性もあるかもしれない。

まずは サンパウロ近くの農園に身をよせることにした。
ここでも 生活はたいへんだったが日本人が助け合い野菜などを
つくり売っていた。
もちろんお金を稼げるわけではない。
橋本は妻子をここにおき ひとり奉公に出ようと考えていた。
まず 香山に相談しようと元移民会社の人たちが暮らす部屋を
たずねた。
トン、トン
「開いてるよ」
「誰?」
「橋本です。香山君おんなはっですか?」
その声に香山が飛び出してきた。
「あ、どうした、なにかあったのか?」
橋本は事情を話した。
「今、おれたちは おもちゃを作ってるたい」
奥から上塚が顔をだした。
「おもちゃですか?」
「竹とんぼやら俺たちがこどものこら遊んだおもちゃだよ。
どうにも喰えなくてはじめたんだが、これが良く売れるんだよ。
手伝っていってくれ、大金ではないが奥さんにうまいものくらい土産に持って帰れるよ。
その間にいい仕事を見つければよか。」
「工場で働くとかどこかの屋敷で奉公するか、
これは主人しだいだろうが、とにかく今日は泊まっていきなさい。
ピンガでも呑んで話をきかせてくれ。」
「はい」橋本は返事をしながら横目で香山を見た。
香山は静かにうなずいた。

酒に目のない上塚は橋本を種にビンガを飲み始めた。
仕方なくみんな円座になり、宴会が始まってしまった。

ふたりはそっと抜けて窓辺にすわり
思い出話や香山が帰った後のサン・ジョアンギ農場の話をした。
太郎がどんなに可愛いか、とにかく今は現金を稼いで
栄養のあるものを食べさせたい。
「いのちをまもりたい・・・」

宝物

コーヒー農園ではあいかわらず、みんなコロノのままで
当初よりはすこし蓄えを持てる人も出始めてはいたが
コーヒーも農業も天候で左右されるので安心できなかった。
さとこの家では弟が生まれていた。
名前を太郎。
みんなとても喜んでいた。
もちろん さとこもすこしずつ落ち着く生活のなかで
輝くような新しい命は先の希望に思えた。
太郎は体が弱かった。やさしく抱いてないと
すぐにでもそのまま永遠に目覚めないのではと
思わせる赤ん坊だった。
ただ目がとてもきれいで澄んでいて
さとこにとっても宝物だった。
守ってあげなくてはいけない存在に思えた。
太郎を中心に三人の気持ちもまとまり
さとこはわたしも家族の一員と思えた。

さとこはいとが少しでも体を休め、乳が出るように
働いた。星を見ることも忘れた。イッパチを思い出すことも・・・
ひたすら働き、疲れを取るための睡眠をとるだけの日々が続いた。

指輪

イッパチは急にまじめな顔をして

「山戸兄、頼みがあるんだ。指輪を作ってほしいんだ。」
「どんな 指輪だ?」
「それはディラーがしていた指輪と同じで シルバーで
かがみがついているんだ。
練習に使うんだ。」

「作るのはかまわないが条件がある。
決してこの先、なにがあってもイカサマだけはやらいでくれ。」
「わかっているよ。おれは日本人としてウチナンチュウとしてイカサマはしない、
約束するよ。平太兄、山戸兄ふたりに誓うよ。」

「おれはおまえを信じる。イッパチ、危ないまねはやめろよ。」

「カジノには用心棒もいるし、山戸兄が心配するほど
おそろしいところじゃないよ」

山戸は腕をあげていて 家に着くと すぐとりかかり
 イッパチの注文どおりの指輪を作り上げた。
「すごいよ。思っていたとおりだ。
ありがとう。山戸兄、この指輪を見るたびに
山戸兄との約束おもいだすよ。」

修行の日々・・・
イカサマの手口も伝授されたが
約束どおりイカサマはやらなかったし、
日本人がカジノに来ると
「ろくな事にならないから」と追い返した。

そのことを恨んだのかイッパチの羽振りのよさそうなところが
気にいらなのか日本人社会でのイッパチの評判は散々だった。

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