過去の投稿日別表示

[ リスト | 詳細 ]

全1ページ

[1]

イメージ 1

10月の終わりから、こちらでお世話になっているNさんの家で一冊の本と出会った。

今日は、その本のことについて書こうと思う。

名もなき一人の静岡出身の青年が自転車で世界一周を目指していたが、1992年12月18日メキシコのエンセナーダという街で不慮の事故に合いこの世を去った。

その当時(85年〜92年まで)現地で彼が書いた日記や手紙を、何年後に彼の母親によってまとめられた本は、偶然か必然か分からないけれど歯車みたいなものがガシャガシャっと何度が噛み合って僕の前に現れた。

静岡にずっといたら多分、この本とは出会わなかっただろう。
エンセナーダに来なければ、彼のことをきっと知らないままだっただろう。

その思った瞬間からページをめくりだし、
スペイン語の勉強も忘れ、読みふけった。

大学時代から28歳までの旅の記録。

彼の世界中の人々との出会いや出来事は、妙にリアルに感じられた。

残りのページ数が少なくなるということは、徐々に僕の今住んでいる町に近づいてくるということだ。
同時に彼の死へのカウントが0に接近している。

そういう緊張感から生まれるリアルさだったか分からないけれど、どこかのBARでコーヒーでも飲みながら僕の目の前で彼がその旅について語っている、そういう不思議なリアルさがあった。

正直に言うと、その地で起こった出来事や感じたことを自分のためにずらずらと書きなぐった日記(本来、日記は自分のためにあるものだから)に彼の母が少し手を加えたものは、文学的には皆が満足するようなレベルにはないと思う。
けれど、彼の人生に対する『志』というか彼の生きる『情熱』みたいなものは、読者にひしひしと伝わるものがあった。(少なくとも僕はそれを強く感じた。)

最後のページの方に、
『出発前に記した旅の計画書』のところにこんな文がある。

意義  20代という人生最高の時代を、自分の能力と可能性の限りをつくして、生きたいと思った。

目指す道も通る道も違えども、休憩地点みたいな所で出会えたらこんなに、いかした事をいう奴を、見逃さなかっただろう。

この言葉は、僕の残りの20代の中に呪文のように刻まれる。

またNさんのお兄さんが亡き著者に寄せられた言葉が、印象に残っている。

永遠に生き続ける生命はない。
生き長らえて小さく生きるよりも、たとえ短くとも大きく生きたい。

彼によってもたらされた、万人にプラスの力を与えてくれる言葉だった。

今日は彼の命日。冥福を祈る。


生命もゆ
28歳 世界自転車旅行の記録

著者 滝口豪人
編集 滝口美代子

最後に。
母親が亡き息子に綴る思いは、とてつもなく切ない。
無条件にわが子を愛する力は、偉大だ。

この記事に

開く コメント(0)

全1ページ

[1]


.


みんなの更新記事