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がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点
読売新聞  2016年5月16日

がんに効く?食事療法の嘘 その1


先日、ある患者さんとお話ししていて、抗がん剤の治療がうまくいって、
がんをうまく抑え込むことができたので、
「しばらく抗がん剤をお休みしましょう」、と提案しました。


 すると、
 「何かできることはないでしょうか? 何かしていないと不安なんです。
実は、私は、がんが再発してから、玄米、菜食にしていて、
牛肉も一切食べていないのです」
 と言われるので、

「大切なことは、○○さんの生活の質を大切にすることだと思います。
玄米、菜食が楽しくできるのなら、かまいませんが、
つらいものを無理にやる必要はありませんよ」
 とお話ししますと、

 「そうなんですね。私は牛肉が大好きだったのですが、
がんが再発したので、何とかしようと思い、ずっと牛肉を食べずにいました」と、涙を流してお話しされました。

上記のようなことは、多くの患者さんにも当てはまるのではないでしょうか。


「食事でがんを治す」がおおはやり

 「食事でがんが治る」
 「がんが消えていく食事療法」
 「食べ物で余命数か月のがんが消えた」

などの食事でがんを治すとうたった本は、
たちまちベストセラーになるそうです。

がんという病気になりますと、大抵の方はこれまでの生き方、
生活習慣を反省することが多いのではないかと思います。

完璧な生活習慣を送っていた、などという人は
ほとんど存在しないのではないでしょうか。

多くの方は、これまでの自分の生活習慣を反省し、野菜中心にしたり、
玄米食にしたり、ストレスがかからないように注意したりと、
色々なことをしたりするかもしれません。

 では、医学的に食事ががんに与える効果は実際どうなのでしょうか?

がんと食事の関係を考える場合には、
予防的効果と治療的効果に分けて考える必要があります。


がん予防と食事

予防的効果というのは、がんになっていない一般の人が、
がんになることを予防するといった効果です。

予防に関しては、多くの研究がありますが、ハーバード大学の疫学研究で、
がん死亡に食生活が約30%影響しているという報告があります(注1)。

このことは、がんの治療効果を言っているのではなく、
食生活を改善することにより、がんの発生を
ある程度は予防できるのではないかと言っているものです。

個別のがんの研究でも、野菜の摂取や、塩分を控えることで
がんの発生を予防できる可能性が示唆されています。

例えば、野菜不足や肥満が、食道がんや、大腸がん、
乳がんの発生原因になることがわかっています。

ただ、特定の食事やサプリメントを
推奨しているものではないことに注意してください。


ベータカロチン摂取はがんを増加させる!

ビタミンやサプリメントでがんを予防できるのか?
ということに、世界の研究者は古くから関心を抱いてきました。

実際に、ビタミンやサプリメントのがん予防効果を検証するために、
世界では多くの研究がなされました。

ある治療法が本当に効果があるのかを検証するのには、
治療群と治療をしないコントロール群とを無作為(ランダム)に振り分けて、その長期的効果を検証する「ランダム化比較試験」が必要です。

このランダム化比較試験が治療介入を伴う研究法では、
最も信頼性が高い研究となります。

がん予防の研究でも、特定のビタミンを飲んでもらう群と、
飲まないコントロール群(プラセボ群)とにランダムに振り分けて、
がんの発生率を長期的に検証した研究が多く行われました。

その研究結果をまとめたもの(システマティックレビューと言います)を、
米国の政府機関の米国予防医学専門委員会(USPSTF)が
2013年に報告しています(注2)。

その結果は、2万7,658人を対象とした2つの研究では、
マルチビタミン摂取により、
がんの発生をわずかに予防できたというものでしたが、

32万4,653人を対象とした24の研究結果は、
どのビタミン、サプリメント摂取(ビタミンA、C、D、葉酸、セレン、カルシウム)をしても、がんの発生は予防できなかったという結果でした。

このうち、ベータカロチンと、ビタミンEを使った予防研究は
研究結果が一定して否定的でした。

そして、ベータカロチンを使った11万2,820人を対象とした
6つのランダム化比較研究をまとめた結果では、

何と、ベータカロチンを予防的に飲んでもらった群では、
がんを予防するどころか、喫煙者に対して、
肺がんの発生が増えてしまいました。

これらの研究で使われたベータカロチンの投与量は、
1日30mgと大量のベータカロチンが使われました。

ベータカロチン30mgというと、トマト1個にベータカロチンが
0.8mg含まれると言われていますので、トマト37個分に相当します。

ベータカロチンは、緑黄色野菜に多く含まれるビタミンA前駆体です。
日本でも健康食品として一時期はやりました。

ベータカロチンを過剰摂取すると、なぜ、がんが増えてしまったのかは、
明らかではありませんが、偏ったものを過剰摂取することは、
正常細胞を痛めつけることにもなります。

細胞のがん化の機序はまず、正常細胞に傷がつくこと、
すなわち、遺伝子に異常が起こることから始まりますので、
ベータカロチンの過剰摂取が何らかの仕組みで
遺伝子異常を引き起こしたのかもしれません。


がん予防は食事をバランスよくとること

国立がん研究センターがん予防・検診研究センターがまとめた
「日本人のためのがん予防法」には、がんに対する食事に関しては、

 偏らずバランスよくとる。
 * 塩蔵食品、食塩の摂取は最小限にする。
 * 野菜や果物不足にならない。
 * 飲食物を熱い状態でとらない。
 と書かれています(注3)。

 ここでも、特定の食事やサプリメントは決して推奨していません。

偏った食事療法、サプリメント摂取などは、がん予防どころか、
がんを増加させることにもなりますので、注意が必要と思います。


がん体験者の食事について

がん体験者、がんサバイバーの方が、どのような食事を取ればよいのか?
ということに関しては、国立がん研究センターがん情報サービスで、

米国対がん協会(American Cancer Society)が
2012年に公表した、
「がんサバイバーのための栄養と運動のガイドライン
第4版を引用して解説しています。

こちらでも、特定の食事療法やサプリメントを推奨しているわけではなく、
「野菜、果物、全粒穀物を多く含む食事パターンにしましょう」
と書いてあるのみです。

医学的な研究としては、早期乳がん患者を対象として、
低脂肪食を摂る食事療法群と、一般的な食事を取る群との
大規模なランダム化比較試験が行われました。

一つの研究(2437人を対象)では、低脂肪食群が、
乳がんの再発を24%低下させるという結果になりました(注4)が、

もう一つの研究(3088人を対象)では、低脂肪食群と、
一般食群とで再発率には差がありませんでした(注5)。

このように、医学的研究でも、特定の食事療法が、
がん体験者のその後の経過を改善するという
確固たるエビデンス(科学的根拠)が示されていません。

がんを予防するために、一般の方、また、がん体験者であったとしても、
特定の食事療法やサプリメントががん予防につながるという
医学的根拠はありません。

がんを過度に恐れるあまり、自分で何とかしようと、
偏った食事療法やサプリメントに頼ろうとする人は後を絶ちません。

そのような食事療法は、決して楽なものでなく、
生活の質まで落としてしまうものです。

間違った情報に左右されないで、正しい情報を知って、
楽しい食生活を送ってほしいと思います。

 次回は、食事療法の治療的効果についてお話しします。


参考

1. Harvard Report on Cancer Prevention. Volume 1: Causes of human cancer. Cancer Causes Control. 1996;7 Suppl 1:S3-59.

2. Fortmann SP, Burda BU, Senger CA, Lin JS, Whitlock EP. Vitamin and mineral supplements in the primary prevention of cardiovascular disease and cancer: An updated systematic evidence review for the U.S. Preventive Services Task Force. Ann Intern Med. 2013;159(12):824-34.

3. 国立がん研究センターがん情報サービス. 日本人のためのがん予防法. http://ganjoho.jp/public/index.html.

4. Chlebowski RT, Blackburn GL, Thomson CA, Nixon DW, Shapiro A, Hoy MK, et al. Dietary fat reduction and breast cancer outcome: interim efficacy results from the Women’s Intervention Nutrition Study. J Natl Cancer Inst. 2006;98(24):1767-76.

5. Pierce JP, Natarajan L, Caan BJ, Parker BA, Greenberg ER, Flatt SW, et al. Influence of a diet very high in vegetables, fruit, and fiber and low in fat on prognosis following treatment for breast cancer: the Women’s Healthy Eating and Living (WHEL) randomized trial. JAMA. 2007;298(3):289-98.


勝俣範之(かつまた・のりゆき)
 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授

1963年、山梨県生まれ。88年、富山医科薬科大卒。92年国立がんセンター中央病院内科レジデント。その後、同センター専門修練医、第一領域外来部乳腺科医員を経て、2003年同薬物療法部薬物療法室医長。

04年ハーバード大学公衆衛生院留学。10年、独立行政法人国立がん研究センター中央病院 乳腺科・腫瘍内科外来医長。2011年より現職。

近著に『医療否定本の?』(扶桑社)がある。専門は腫瘍内科学、婦人科がん化学療法、がん支持療法、がんサバイバーケア。がん薬物療法専門医。

転載元転載元: Dr ミカのメモ帳: 脳・栄養・心 (発達障害・特別支援教育)

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Drミカさんのブログからの転載です。
転載元の記事に書いたコメントをこちらにもシェアしておきます。

バランスのよい食事がいいですよね。

がんだけでなく、どんな病気でも、食事だけでなく、生活習慣や
心理的なもの、環境的なものなど、いろいろな要因が複雑に絡み合って
いるし、一人一人原因も症状も違うので、○○がいい、という話が
あったとしても、すべての人に当てはまるわけではないと思います。

無理し続けるのでゃなく、自然に気軽に継続できることが、やはり
一番よいのではないかと思っています。

2016/5/17(火) 午前 5:07 アミーゴプラザ 返信する

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