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月からに贈り物 28
卵はふわふわとみんなの周りを飛び回りました
驚いたおばさん達は怖がって身を寄せ合いました
でも何故かお母さんだけは違っていました
自分から卵に近寄るとそっと卵に触れました
「およしよ 何だか気味が悪い」
おばさんはお母さんを呼び止めました
それでもお母さんはその卵を優しく撫でています
卵はお母さんに撫でて貰ってとっても嬉しそうにピンク色に輝きます
「わあ 色が変わったよ 早く逃げるんだよ 襲われるかもしれないよ」
おばさんたちは口ぐちにそう言うと卵から遠ざかって行きました
ハヤテもまたユウを抱いて卵の傍に行きます
おじいさんも同じでした おじいさんは薄っらと涙まで浮かべていました
「お帰りなさいリュウ」
お母さんの優しく卵を見つめる瞳からキラキラの涙が溢れます
ユウはハヤテの腕の中で目を覚ましました
「卵 卵さんは」
ユウは目をこすりながら卵を探します
目の前でお母さんに撫でられている卵を見たユウはハヤテに降ろして貰って卵に駆け寄りました
「ね、ね、お母さんには分かるんだよね この卵がお兄ちゃんだってことが」
ユウは嬉しそうにお母さんの後ろからお母さんの腰へ抱きつきました
「なんだって この妙な卵がリュウだって言うのかい」
おばさんもおじさんもビックリしています
おばさんたちの所へ走っていくとユウは目を輝かせて話しました
自分が何処へ行って来たのか。何を見てきたのか。そうしてリュウがドラゴンになって何をしていたのかも
おばさんもおじさんもユウが夢を見ていたんだと笑いました
「いや 確かにこの卵はリュウに違いない」
おじいさんが真剣な顔をして言うと皆は静まり返りました
「この卵はリュウに違いない」
ハヤテもそう言いました
「ねえそうでしょう。私たちには分かるもの この卵がお兄ちゃんだって」
ユウは嬉しそうにまた卵の方へ走りました
卵は嬉しくなってお母さんやハヤテ、ユウ、おじいさんの所へ順番にその身体をくっつけています
おじさんもおばさんも顔を見合わせて驚きました
卵が今度はピョンピョンと跳ねておじさんたちの所まで来ました
まるで挨拶でもしているようでした
「何だか分からないけど 怖くは無くなってきたよ なんだか可愛い卵じゃないか」
自分の身体に寄り添ってきた卵から暖かな温もりを感じたおばさんが顔を蒸気させました
皆も同じです
とても幸せな気持ちを感じていました
おじいさんは卵を家の中に招きます
その家はおじいさんやハヤテが村の人に手伝って貰って建てた新しい家でした
最初は入るのを戸惑っていた卵でしたがユウに背中を押される様にして家の中へ入っていきました
「このお家新しい私達のお家なの。お兄ちゃん来て、私たちの屋根裏の部屋もちゃんとあるんだよ」
ユウは卵に手招きして階段を上りました
卵はユラユラ揺れながら階段を上っていきました
お母さんは台所へ立つと作っておいたシチューを火にかけます
おじいさんは暖炉に薪を入れます
ハヤテは皿を並べます ちゃんと5人分ありました
ユウと卵は新しい家の屋根裏部屋から夜空を眺めていました
空に輝く星も嬉しそうに瞬いています
その星達を見守るように丸くて大きな月がいつもよりも明るい光を放っています
「お月さまからのプレゼント」
ユウが呟くと卵もうなずいているようでした
「お月様 ありがとう お兄ちゃんを帰してくれてありがとう!」
ユウの声が夜空に響きました
その時 今まで見たこのないくらいの流れ星がユウの目に映りました
綺麗な光の筋が幾つも幾つも流れては消えて行きました
それはまるでお祭りの夜に見る花火の様でした
「お兄ちゃん 星達もお祝いしてくれているんだね」
卵はピョンピョン跳ねてユウの頬や髪に触れました
ハヤテがハーモニカを持ってそっと家から出てきました
そうして月を見上げてから近くの椅子に腰かけてハーモニカを吹きます
卵はその音色に首を傾ける様に傾きました
幼い頃のリュウも赤ちゃんだったユウとこの曲を聴いた事があったのでした
卵が淡い光を強くしていきます
ユウはあまりの眩しさに目の前に手をかざして見ました
卵のその光で家も村も明るく照らし出されます
家の中にいたおじさんやおばさん。他の家の人達も外へ出てきました
そうしてその光が屋根裏部屋から出ていると知るとまた不安になりました
「大丈夫かなねえ また火事でも起こるんじゃないだろうねぇ」
おばさんがおじさんの耳元に囁きます
「大丈夫だ お前あの光を見ろ あんなに力強く優しい光りは初めてだ」
おばさんはおじさんに言われてあらためて見ました
「ホントだね なんだかとっても良い気持ちがしてきたよ」
今度はうっとりしながらおばさんはおじさんの肩に頭を乗せました
おじさんは呆れた様な顔を一瞬だけしておばさんの肩を抱きました
みんなが幸せを噛み締めていました
自分に寄り添う人の存在や生きている事がとても大事な事だと、そこに居る誰もが同じ様に感じていました
お母さんもいつの間にかハヤテの隣に腰かけてハヤテの腕の中で微笑んでいました
月が笑った様でした
みんなの顔も笑顔でした
卵はフワフワと宙に浮いて漂いながらみんなの頭の上でまるでダンスでも踊っているようでした
その光が一段と強く輝いたと思った次の瞬間
「パーン」
大きな音がして卵が弾けました
ユウは驚いて窓辺を覗きます
地面が真っ白な煙に覆われて様子が分かりません
ユウはドキドキする心臓を片手で押さえながら外へ飛び出しました
みんなも煙の固まりの様になっている所へジワリジワリと集まってきました
それぞれが自分の大切な人の手をしっかり握っていました
上空からビューン と風が地面に吹き付けられます
「金の鳥だ!」
空に金色の光が現れていました
その光が近くなってくると風の勢いも強くなりました
お互いを抱き合いながらその風から庇いあう姿にビクイーンは微笑むとまた翼を広げて飛び去りました
「お兄ちゃん お兄ちゃんだ」
ユウが駆け寄ります
ハヤテもお母さんと手を繋いだまま走り寄りました
おじいさんは少し走って満足そうな笑顔を浮かべるとゆっくりと歩きました
今 みんなの目の前にリュウが立っていました
ドラゴンになって消えてしまったあの頃よりも少し大きくなったリュウが笑顔で立っています
「ただいま」
リュウがユウに笑いかけます
「お兄ちゃんー」
ユウはリュウの広げた腕の中へ飛び込みました
「お帰りなさい」
「お帰りリュウ」
お母さんもハヤテも笑顔でした
「おじいさん」
リュウはおじいさんの姿を見てユウの肩を抱いたままおじいさんの方へ進みます
「おじいさん ごめんなさい 僕が全て悪かったんだ」
おじいさんはリュウの肩に手を乗せると頭を振りました
「いやあ わしも悪かったんじゃ お前たちの寂しさをわかっとらんじゃった」
「おじいさん 怪我はどうなの?」
リュウは眩しそうにおじいさんを見て尋ねます
「大丈夫じゃ あのビクイーンがすっかり治してくれたんじゃ」
リュウは安心して息を一つ吐きました
「ビクイーンは僕の親友なんだよ」
「ビクイーンがみんなを幸せにしてくれたのね」
お母さんが微笑みます
ハヤテもうなずきました
「お兄ちゃん お帰りなさい」
ユウはリュウから離れると右手を差し出しました
「ただいま ユウ ごめんよ お前を怖い目に遭わせて、それに心配かけてしまったね」
ユウの手を強く握り締めたリュウ
「これは‥」
ユウが手の中を見るとあの流れ星のかけらがありました
「お兄ちゃん やっぱりお兄ちゃんが持っていたんだね」
「僕達のお守りだからね 今度はユウが持っていてよ」
ユウは嬉しそうにそのかけらを大事そうに握りしめました
「クイーーーン クイーーーン」
満月の輝く光の中から鳴き声がしたようでみんなは空を見上げました
丸く輝く月が一瞬ウインクした様に見えました
月の中には二頭の大きさの違うドラゴンとビクイーンの姿がはっきり映っていました
「ありがとう ビクイーン ありがとうレン カイ」
リュウが叫びました
二頭のドラゴンは踊っている様にくねくねと動いて見せました
ビクイーンがまた鳴きました
「クイーーーーン クイーーーーン」
満天の星が輝く夜空の中へその姿は消えて行きました
リュウはユウの手をしっかりと握ります
「これからは僕たちもこの世界を守る為に働いていこう」
ユウもしっかり握り返します
「お兄ちゃん ユウにも何かできる事あるよね」
「あるさ 僕ら人間は遥か昔からこの世界の中で生きてきたんだ。
そして僕たちの次のそのまた次もこの世界で生きていけるようにこの地球を守っていくんだよ」
月が満足そうに笑っていました
あの神様の笑い声がリュウには届いていました
「ほっほっほ それでよい それでよい」
おしまい
長い物語を最後まで読んで頂いて感謝いたします
私たちが生活するこの地球は決して私達だけの物ではありません
受け継がれてきた「青い地球」を小さな私たちが守ってまた次の世代へと受け継いでいきたい
人の欲は果てしなくて 便利さ 安易さを求めてしまいがちです
身近な事から出来る何かを考えて実行して頂けると嬉しいです
次回は海の物語を企画中ですのでまたその時を楽しみにしててくださいね
ありがとうございました あみ 11月18日 晴れ
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