月の鳥 ビクイーン

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全6ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6]

[ 次のページ ]

月の鳥 ビクイーン

月からに贈り物 28


卵はふわふわとみんなの周りを飛び回りました
驚いたおばさん達は怖がって身を寄せ合いました

でも何故かお母さんだけは違っていました

自分から卵に近寄るとそっと卵に触れました
「およしよ 何だか気味が悪い」

おばさんはお母さんを呼び止めました

それでもお母さんはその卵を優しく撫でています
卵はお母さんに撫でて貰ってとっても嬉しそうにピンク色に輝きます

「わあ 色が変わったよ 早く逃げるんだよ 襲われるかもしれないよ」

おばさんたちは口ぐちにそう言うと卵から遠ざかって行きました

ハヤテもまたユウを抱いて卵の傍に行きます
おじいさんも同じでした おじいさんは薄っらと涙まで浮かべていました

「お帰りなさいリュウ」
お母さんの優しく卵を見つめる瞳からキラキラの涙が溢れます
ユウはハヤテの腕の中で目を覚ましました

「卵 卵さんは」
ユウは目をこすりながら卵を探します
目の前でお母さんに撫でられている卵を見たユウはハヤテに降ろして貰って卵に駆け寄りました

「ね、ね、お母さんには分かるんだよね この卵がお兄ちゃんだってことが」
ユウは嬉しそうにお母さんの後ろからお母さんの腰へ抱きつきました

「なんだって この妙な卵がリュウだって言うのかい」
おばさんもおじさんもビックリしています
おばさんたちの所へ走っていくとユウは目を輝かせて話しました

自分が何処へ行って来たのか。何を見てきたのか。そうしてリュウがドラゴンになって何をしていたのかも

おばさんもおじさんもユウが夢を見ていたんだと笑いました

「いや 確かにこの卵はリュウに違いない」
おじいさんが真剣な顔をして言うと皆は静まり返りました

「この卵はリュウに違いない」
ハヤテもそう言いました

「ねえそうでしょう。私たちには分かるもの この卵がお兄ちゃんだって」

ユウは嬉しそうにまた卵の方へ走りました

卵は嬉しくなってお母さんやハヤテ、ユウ、おじいさんの所へ順番にその身体をくっつけています

おじさんもおばさんも顔を見合わせて驚きました

卵が今度はピョンピョンと跳ねておじさんたちの所まで来ました

まるで挨拶でもしているようでした

「何だか分からないけど 怖くは無くなってきたよ なんだか可愛い卵じゃないか」

自分の身体に寄り添ってきた卵から暖かな温もりを感じたおばさんが顔を蒸気させました

皆も同じです
とても幸せな気持ちを感じていました

おじいさんは卵を家の中に招きます
その家はおじいさんやハヤテが村の人に手伝って貰って建てた新しい家でした
最初は入るのを戸惑っていた卵でしたがユウに背中を押される様にして家の中へ入っていきました

「このお家新しい私達のお家なの。お兄ちゃん来て、私たちの屋根裏の部屋もちゃんとあるんだよ」
ユウは卵に手招きして階段を上りました
卵はユラユラ揺れながら階段を上っていきました

お母さんは台所へ立つと作っておいたシチューを火にかけます
おじいさんは暖炉に薪を入れます
ハヤテは皿を並べます ちゃんと5人分ありました

ユウと卵は新しい家の屋根裏部屋から夜空を眺めていました
空に輝く星も嬉しそうに瞬いています
その星達を見守るように丸くて大きな月がいつもよりも明るい光を放っています

「お月さまからのプレゼント」
ユウが呟くと卵もうなずいているようでした

「お月様 ありがとう お兄ちゃんを帰してくれてありがとう!」

ユウの声が夜空に響きました

その時 今まで見たこのないくらいの流れ星がユウの目に映りました

綺麗な光の筋が幾つも幾つも流れては消えて行きました

それはまるでお祭りの夜に見る花火の様でした

「お兄ちゃん 星達もお祝いしてくれているんだね」

卵はピョンピョン跳ねてユウの頬や髪に触れました

ハヤテがハーモニカを持ってそっと家から出てきました

そうして月を見上げてから近くの椅子に腰かけてハーモニカを吹きます

卵はその音色に首を傾ける様に傾きました

幼い頃のリュウも赤ちゃんだったユウとこの曲を聴いた事があったのでした

卵が淡い光を強くしていきます
ユウはあまりの眩しさに目の前に手をかざして見ました

卵のその光で家も村も明るく照らし出されます

家の中にいたおじさんやおばさん。他の家の人達も外へ出てきました

そうしてその光が屋根裏部屋から出ていると知るとまた不安になりました

「大丈夫かなねえ また火事でも起こるんじゃないだろうねぇ」
おばさんがおじさんの耳元に囁きます
「大丈夫だ お前あの光を見ろ あんなに力強く優しい光りは初めてだ」

おばさんはおじさんに言われてあらためて見ました
「ホントだね なんだかとっても良い気持ちがしてきたよ」

今度はうっとりしながらおばさんはおじさんの肩に頭を乗せました
おじさんは呆れた様な顔を一瞬だけしておばさんの肩を抱きました

みんなが幸せを噛み締めていました
自分に寄り添う人の存在や生きている事がとても大事な事だと、そこに居る誰もが同じ様に感じていました

お母さんもいつの間にかハヤテの隣に腰かけてハヤテの腕の中で微笑んでいました

月が笑った様でした
みんなの顔も笑顔でした

卵はフワフワと宙に浮いて漂いながらみんなの頭の上でまるでダンスでも踊っているようでした
その光が一段と強く輝いたと思った次の瞬間

「パーン」

大きな音がして卵が弾けました

ユウは驚いて窓辺を覗きます

地面が真っ白な煙に覆われて様子が分かりません

ユウはドキドキする心臓を片手で押さえながら外へ飛び出しました

みんなも煙の固まりの様になっている所へジワリジワリと集まってきました

それぞれが自分の大切な人の手をしっかり握っていました

上空からビューン と風が地面に吹き付けられます
「金の鳥だ!」

空に金色の光が現れていました
その光が近くなってくると風の勢いも強くなりました

お互いを抱き合いながらその風から庇いあう姿にビクイーンは微笑むとまた翼を広げて飛び去りました

「お兄ちゃん お兄ちゃんだ」

ユウが駆け寄ります
ハヤテもお母さんと手を繋いだまま走り寄りました
おじいさんは少し走って満足そうな笑顔を浮かべるとゆっくりと歩きました


今 みんなの目の前にリュウが立っていました

ドラゴンになって消えてしまったあの頃よりも少し大きくなったリュウが笑顔で立っています

「ただいま」
リュウがユウに笑いかけます

「お兄ちゃんー」
ユウはリュウの広げた腕の中へ飛び込みました

「お帰りなさい」
「お帰りリュウ」
お母さんもハヤテも笑顔でした

「おじいさん」
リュウはおじいさんの姿を見てユウの肩を抱いたままおじいさんの方へ進みます

「おじいさん ごめんなさい 僕が全て悪かったんだ」

おじいさんはリュウの肩に手を乗せると頭を振りました

「いやあ わしも悪かったんじゃ お前たちの寂しさをわかっとらんじゃった」

「おじいさん 怪我はどうなの?」
リュウは眩しそうにおじいさんを見て尋ねます

「大丈夫じゃ あのビクイーンがすっかり治してくれたんじゃ」

リュウは安心して息を一つ吐きました

「ビクイーンは僕の親友なんだよ」

「ビクイーンがみんなを幸せにしてくれたのね」

お母さんが微笑みます
ハヤテもうなずきました

「お兄ちゃん お帰りなさい」

ユウはリュウから離れると右手を差し出しました

「ただいま ユウ ごめんよ お前を怖い目に遭わせて、それに心配かけてしまったね」

ユウの手を強く握り締めたリュウ

「これは‥」

ユウが手の中を見るとあの流れ星のかけらがありました

「お兄ちゃん やっぱりお兄ちゃんが持っていたんだね」

「僕達のお守りだからね 今度はユウが持っていてよ」

ユウは嬉しそうにそのかけらを大事そうに握りしめました



「クイーーーン クイーーーン」

満月の輝く光の中から鳴き声がしたようでみんなは空を見上げました

丸く輝く月が一瞬ウインクした様に見えました

月の中には二頭の大きさの違うドラゴンとビクイーンの姿がはっきり映っていました

「ありがとう ビクイーン ありがとうレン カイ」

リュウが叫びました

二頭のドラゴンは踊っている様にくねくねと動いて見せました

ビクイーンがまた鳴きました

「クイーーーーン クイーーーーン」



満天の星が輝く夜空の中へその姿は消えて行きました



リュウはユウの手をしっかりと握ります

「これからは僕たちもこの世界を守る為に働いていこう」

ユウもしっかり握り返します

「お兄ちゃん ユウにも何かできる事あるよね」

「あるさ 僕ら人間は遥か昔からこの世界の中で生きてきたんだ。
 そして僕たちの次のそのまた次もこの世界で生きていけるようにこの地球を守っていくんだよ」

月が満足そうに笑っていました

あの神様の笑い声がリュウには届いていました

「ほっほっほ それでよい それでよい」

                                   おしまい


長い物語を最後まで読んで頂いて感謝いたします

私たちが生活するこの地球は決して私達だけの物ではありません
受け継がれてきた「青い地球」を小さな私たちが守ってまた次の世代へと受け継いでいきたい

人の欲は果てしなくて 便利さ 安易さを求めてしまいがちです

身近な事から出来る何かを考えて実行して頂けると嬉しいです

次回は海の物語を企画中ですのでまたその時を楽しみにしててくださいね

ありがとうございました     あみ  11月18日 晴れ
 

月の鳥 ビクイーン

月からの贈り物 27

ユウと卵はまあるい光の球に包まれてどこまでも飛んでいきました
ユウは空の上から今まで見た事のない世界を見て興奮しました

ピンク色に染まった頬。黒くて丸い瞳がクルクルと回っています。
今度はどんな素敵な所へ連れて行ってくれるのか楽しみでした

急に雲が途切れて青い空が一杯に広がっています
地面は砂と土で覆われていました

「緑が無いのね‥」

動物の死骸も見えました
黒く見える窪みには水が渇いて小さな魚も干からびていました

「こんな所に住んでいる人がいるのかしら」

ユウは哀しくなってきます
今までは沢山の木や花、何処までも広がっている海を見てきたユウには目の前の光景がまるで「死」の世界に見えていたのです

三頭の鼻の長い灰色の動物がヨロヨロと窪みまで歩いてきました
でもそこに求めている水が無い事を知るとまたヨロヨロと歩きだしました

一頭のぞの大きな生き物がよろめいて倒れ掛ります。
すると他の二頭がその倒れ掛った生き物を支えていました
ユウの頬に涙が流れて落ちました
卵はそんなユウに身体を寄せて慰めました

そこへ金色に輝く光が現れました

大地へ降り立ったその鳥は乾いた土の中へくちばしを差し入れました。
そうしてまた直ぐに飛び立ちました
「ビクイーン!」
ユウが呼びかけます
ビクイーンはチラリと振り返ってユウを見ました
羽を広げてユウ達の所まで来ると笑いかけました

「ビクイーン この卵はお兄ちゃんだよね」
ビクイーンはまた笑います

卵がポッとピンク色に染まりました
その温かな光の中でユウは起きているのに夢を見ました

この乾いた大地に、あの時洞窟で見た親子のドラゴンがやってきて雲から雨を降らせたのです
そうして乾ききった土が水をたっぷり含むと今度はビクイーンが来て種をまいています
その種から芽が出て緑の葉っぱが開きました
辺りが緑に覆われてくると動物たちがやってきてあの窪みに貯まった水を飲みました

ユウはハッとして辺りを見ましたがそこにビクイーンの姿はありませんでした
「ビクイーン ありがとう あなたが見せてくれたのはこの土地の未来なのね。そしてお兄ちゃんがドラゴンとして何をしてきたのかを私に教えてくれたのね」

ユウはドラゴンになったリュウが長い時間をかけて荒れた大地を緑の大地へ蘇らせてきた事を知りました

卵に抱きつくと卵は赤くポッと染まりました

そうしてまた猛スピードで飛び始めました

ユウはまた夢を見ていました
今度は光の中で本当に眠っていました
その夢の中でュはリュウと一緒に遊んでいました
野原を追いかけて回って二人とも笑顔でした
突然風が強くなって空からドラゴンがやってきます
怖がるユウにリュウは笑顔でそのドラゴンに手招きするのです
ドラゴンはリュウの前に降り立つとリュウにすり寄りました
「ユウ 僕の息子のカイだよ」
そう言ってドラゴンの頭を愛しそうに撫でました

ドラゴンは甘えた声で鳴くとリュウの袖を噛んで引っ張ります

「よせったら 僕は行けないんだ」

リュウがなだめます
それでもドラゴンはリュウの袖を離しません
「仕方ないなあ ユウ僕はあっちに戻るよ」

そう言ってリュウはドラゴンの背中に跨るとユウの前から飛び立ってしまいました

「お兄ちゃん 行かないでーお兄ちゃんー」

飛び起きたユウは卵が傍に居る事を確かめてため息をつきました
「良かった夢だったんだ」
でもユウは不安になりました。
「お兄ちゃんが戻って来てもまた何処かへ行ってしまうかも知れないと思ったからです。

卵はそんなユウの考えが分かったのか優しくユウの身体に寄り添いました
ユウは卵から伝わる温もりに包まれてまた眠りにつきました

ハヤテは家に戻ってきましたがユの行方が分からなくなったと村の人達は大騒ぎしていました

ハヤテはバイクに跨るとユウを探して川までやって来ました

川の上に昇った月が水面に揺れていました

風が強くなりました

ハヤテはバイクを降りると何気なく空を見上げました

月の真ん中が違う色に輝いています

「もしかしたら‥」
ハヤテは、あの金の鳥がやってくるのかと思いました

風はどんどん強くなりました
光が近くなってきたのです

光が放つ眩しい灯りが野原を照らします
光が地面近くになると風も収まり、輝きも柔らかな丸い光になりました

「ユウ!」
ハヤテはその光の中にユウの姿を見つけて走りだしました

何度も転びそうになりながらハヤテは走ります

光に包まれて眠るユウの寝顔は幸せそうに微笑んでいました
ハヤテは安心してその卵をあらためて眺めます

光の中の卵はまるで嬉しそうに跳ねていました
そうしてその光の輪が少しずつ無くなるとユウは静に地面に下ろされて眠り続けていました

ハヤテはユウの髪を優しく撫でています
それからユウを抱きかかえるとバイクに乗ってエンジンをかけました
そしてユウを抱いたままバイクを走らせます

卵はユラユラ揺れてその光景を見ていましたがハヤテが知らないうちに卵はハヤテの後ろから付いてきていたのでした

村ではハヤテのバイクの音を聞いて誰もが駆け寄ってきました

「なんだありゃー!」

おばさんが指を差した方を誰もが一斉に見ました

底にはふわふわと宙に浮いている卵がいたのです
                          
                                      続く

月の鳥 ビクイーン

月からの贈り物 26

ユウは冷たい風の中を頬を赤く染めて川上へと走りました
吐く息は白くユウの足元で霜が踏まれる音がしていました

ユウはその流れてくる者があの時、リュウと見た卵と同じ物だと確信したのです。

きっとあの中にはリュウがいると信じて走りました

ドンドン近くなるにつれてその白い物がユウの待ち望んでいる物だとはっきりしました

心臓の音が激しくなります
ドクンドクン

ユウは息を切らして走り続けました

小さく見えていた白い物がだんだんその大きさを現してきました

「お兄ちゃん お兄ちゃんだよね」

ユウは大きな声で呼びかけます

卵はユラユラと揺れていました

「お兄ちゃん ユウだよ お兄ちゃん」

何度も呼びかけるユウに卵はまだ川の流れに沿って流されて行きます

ユウは目の前にきたその卵が自分の前から流されて行く事に驚きました
だってあの時の卵は川に流されたユウを助けてくれたのです
お兄ちゃんだったら自分の声を聞いて自分の方へ来てくれるはずだと思っていました

今度はユウが卵を追いかけて走ります

ユウは早く卵を止めたくて川の中へ入って行きました
川の水はとても冷たくてユウの足は直ぐに氷に様に冷たくなりました
ユウはそれでも必死に卵を追いました

「アッ」

ユウが川底の石につまずいて転んでしまいした

川の冷たい水の中でユウの身体は熱を失っていきます

「お兄ちゃん 待って ユウだよ!」

それでも懸命に追いかけるユウ

「お兄ちゃん  ユウだよ  」
ユウは悲しさで一杯になってしまいました
卵はお兄ちゃんじゃなかった お兄ちゃんなら止まってくれるはずだと思ったのでした

卵は相変わらず川の上をユラユラ揺れて進んでいます

ユウは泣きだしてしまいました
冷たい水の中に浸かったままで

ふいに太陽が雲の隙間から顔を出しました
すると卵がふわりと揺れて太陽の中で浮かび上がります
ユウは涙をゴシゴシ手の甲で拭い卵を見上げました

太陽の光が卵を透かしていました

その中に見えた物にユウはまた呼びかけます

「ユウだよ! お兄ちゃんユウだよ!」

卵の中にいるのはあの金の鳥ではありませんでした はっきりはまだ分からないけれどその形は人の様に見えていました

ユウが大声で叫ぶとようやく卵はユウの存在を初めて知った様にフワフワとユウの近くへやって来ました

「お兄ちゃん だよね」

ユウは涙で濡れた頬を更に赤く染めて今では目も耳も頬も手もどこもかしこも赤くなっていました

卵はユウの前で止まるとゆっくりとユウの周りをまわり始めます

そうして少しずつユウを岸辺の方へ歩かせました

「川から上がれって言ってるのね」
ユウは川からあがります

冷たい身体が風に当たってユウはガタガタと震えました

卵はそんなユウの身体にピタッとくっつきます
卵から感じる温かな温もりをユウは感じていました
ユウの冷え切った身体は次第に暖かくなってきました

ユウには見えないけれど、ユウと卵はとても柔らかな光の中に包み込まれていました

「お兄ちゃんなんだよね」
ユウが卵に触れて話しかけました
卵はがふわりと浮くとユウの身体も一緒に浮きあがります

そのままふわりふわりと卵とユウは空の上まで昇っていくと今度は風よりも早く飛んで行きました

ユウはちっとも怖くありませんでした
これから行くところがどこでも良かったのです 大好きなお兄ちゃんの傍にいられる事がユウには幸せでした


山の炭焼小屋で仕事を終えたハヤテは山の上のあのボスオオカミの墓に花をそっと置いて目を閉じました
あの時ボスオオカミは自分が殺してしまいましたが出来る事ならという想いでした
時折此処に来てリュウの話や今ではあまり見なくなったオオカミの群れの話をしました
それからハーモニカを取りだして暫くそこで過ごすのです

ユウは夢を見ている様でした

緑の山々を下に見ながらユウは卵と一緒に旅をしています

幾つもの山を越えて大きな海もユウは初めて見ました
キラキラ光る海にユウと卵を包む光が映っていました

海を越えた向こうにある山の裾野にある小さな村では少年が畑で野菜を収穫していました
その傍らにはお母さんらしき女の人と小さな女の子がヨチヨチと歩いているのが見えました

ユウも卵も嬉しくなって笑顔一杯になりました

今度はその山から違う山へ行きました
今度の所はまだ緑が少なく土が見えていました
でも近くに行ってみると小さな芽が沢山生えていたのです

ユウと卵の光は今度は岩肌の見える山の洞窟に入って行きました

ユウはハッとしてその光景を見ました

そこにいたのはあの火の龍のレンとまだ幼いドラゴンの赤ちゃんでした
レンは卵の光を優しく見ると何かをささやくように小さなドラゴンに言っていました
小さなドラゴンはその光を見るとキャッキャッと笑ったようです
レンは光に翼を振りました

光は2,3度大きく揺れて洞窟から出ました

「ドラゴンの赤ちゃんだった」
ユウは不思議な事に驚きませんでした
ドラゴンは確かに存在していたのです
お兄ちゃんがドラゴンとして生きていた何カ月かを自分に見せているのだと思いました

卵はまた凄い早さで風の中を進んでいきました。


                                    続く   

月の鳥 ビクイーン

月からの贈り物 25

レンが戻ってきた事を素直に嬉しく感じるドラゴンでした
一緒に力を合わせて雨を降らせる事が楽しくなっていたのです
ドラゴンはそれまで以上に張り切っていました。
レンはそんなドラゴンを優しい目で見ています

レンの踊りは前よりももっと激しくなってドラゴンへの信頼とそれ以上の想いが宿っていました

ビクイーンもまたそれまで以上に忙しく緑を育てる事に専念しました

明るくなってから暗くなるまでクタクタに動き回った3人は夜になるとぐったりとして寝てしまいます。ドラゴンが家の事やユウの事を考える時間が少なくなってきました

レンはドラゴンがもう夢を見ても叫ばなくなった事を嬉しく思っていました

あっという間にまた1ヶ月が過ぎてあの少年の家の周りにも作物の芽が育っていました
あの濁った水汲み場の水は大きく膨れ上がって今では池のように水が溢れていました

少年はその日も水を汲みに行きましたがこれまでと違って足取りも軽く鼻歌を歌いながら歩いていたのです
ドラゴンとレンはその様子を見て思わず笑顔になりました
レンがドラゴンの翼にそっと自分の翼を合わせました
ドラゴンは笑っていました ドラゴンは子どもの笑顔を見れた事で幸せを感じていたのです。

少年が家に帰るとお母さんも笑顔で出迎えてくれました
両手を広げたお母さんの元に走り寄る少年を見ていたドラゴンの胸がチクリと痛みます

『僕 なにか忘れてしまったのかな』
ドラゴンがレンに言いました
『どうしたんだい』
『あの親子を見ていたら嬉しいはずなのになんだか急に寂しくなってしまったんだよ』

レンは驚いてドラゴンを見つめます ドラゴンは忘れてしまっているのでしょうか
あのリュウだった頃の記憶を

レンとドラゴンはまた雨を降らせる為に飛び立ちました
でもその日のレンは元気がありませんでした いつもの様な熱い炎がうまく出せません

『疲れているんだよ 今日はこれでもう帰ろう』
ドラゴンが優しく慰めました
レンは苦しくなりました このままドラゴンの記憶が失くなってしまう事を素直に喜べなかったのです

その夜ドラゴンが眠ってしまうとレンは一人で夜の闇の中を飛んでいました


ハーモニカの音色が響いていました
あの人がリュウの人間だった頃のお父さんだと直ぐに分かりました
傍らには小さな女の子が祈っていました

『あれがユウ  』

レンはもう少し近くで見たくなって空から降りてきてしまいました

ハーモニカの音が止みました
「ドラゴン」
ハヤテの声にハッとしてユウが顔を上げました
ユウの瞳にはみるみる内に涙が溢れます

「ドラゴン  お兄ちゃん お兄ちゃんなの?」

レンはその女の子の流す涙を見ると飛び立とうとしました

ユウが言葉よりも早く走るとドラゴンの大きな足にしがみつきました

「お兄ちゃん お兄ちゃん 行かないで お兄ちゃんがドラゴンでもいいからユウのお兄ちゃんなんだからユウの傍に帰ってきてー」

ハヤテも駆け寄ります
「リュウなのか?お父さんだ お母さんも待っている。毎日お前の食事を用意して待ってるんだ」

レンは振り向く事が出来ませんでした。足を少しだけ上げて揺すりました。ユウは地面に倒れこみます。レンはそのまま飛び立ちました

「お兄ちゃん 帰って来るよね ユウ待ってるから ずっと待ってるから」

ハヤテはユウを抱き起こしてユウの肩に手を乗せました
ユウは涙を流しながらドラゴンの飛んで行った空を見ていました
お母さんはその話を聞いて静にうなずくとリュウのセーターを編み続けました
おじいさんは外へ出て月を見上げました
「神様 一体いつになったらリュウを帰して下さるのじゃ」


神様は長いひげを撫でながらその言葉を聞いていました

朝方に戻ってきたレンをビクイーンは待っていました
『レン大丈夫かい』
ビクイーンにはレンが何処へ行って来たのかが分かっているようでした
『ビクイーンこのままにしていていいのかい』
レンが尋ねるとビクイーンはレンの肩をポンと叩いて飛んで行きました


ビクイーンは神様の所へやってきました
神様は目を閉じて椅子にかけていました

『神様 これ以上人間に戻さなかったらリュウの記憶がどんどん失われてしまいます』

神様は目を開けると下界が見渡せる所へ歩いて行きました
「随分緑が目立つ様になったのう」
『それなら もうそろそろいいじゃないのですか』

「ほっほっほ まあもうしばらくの間じゃ」

神様はまたそう言うとスッと消えました

ビクイーンは翼を激しく透明な柱にぶつけました
部屋がぐらりと揺れてまた静けさを戻します

夜が明けてまた3人はいつもの様に忙しく動きまわりました

ふいにドラゴンの頭の中で声がしました「お兄ちゃん」
『えっ?』
その声に懐かしさを感じるドラゴンでした
『どうしたんだい』
レンが動きを止めたドラゴンに聞きます
『なんでもないよ』

ドラゴンの胸がまたチクッと痛みました

その夜です

レンはドラゴンをある場所へ誘いだしました

『ドラゴン あんたの記憶は失いかかっているんだ このままだと二度と人間には戻れなくなる』

レンから言われてドラゴンは首をかしげました
『人間?僕が?』

レンは覚悟を決めていました。
でもそうなる前に神様から言われたようにしなければリュウを人間に返す事は出来ません。

海の洞窟へ入るとレンはドラゴンの前で踊り始めました

ドラゴンは黙って見ています

レンはドラゴンへ身体を寄せて愛しい子どもを抱きしめる様にドラゴンを抱きしめました




ユウとハヤテがドラゴンと逢ってまた1カ月が過ぎようとしていました

冬の訪れた山々には白い雪が積っています

氷の張った川の水の下を魚が寒そうに泳いでいます

ユウは今日もまたリュウと遊んだ川まで来ていました

川の氷はまだ薄く、指で触るとミシッと音を立てて崩れました

その時 ほんの一瞬指で触れただけなのに川の氷がミシッミシッと音がして辺り一面の氷が割れ始めました。川の水の流れが速くなります。氷はその流れの中に溶けてしまいました

ユウはずっと遠くの川上から何かが流れてくるのを見つけました

ユウの心臓が早くなります

寒さで赤くなった頬が更に赤く染まります

ユウは待ちきれなくなって駆けだしました

                                      続く 

月の鳥 ビクイーン

月からの贈り物 24

ドラゴンは今日も遠く離れた枯れ果てた土地へ向かって飛んでいた

2週間前と違うのは自分の隣にいるのがビクイーンでは無かった
あの火の龍のレンが一緒だった事でした

あの時の山はあれから随分変化していました

レンに教えられたドラゴンは海の上の雲を呼びよせて大雨を降らせてあの乾ききった土を蘇らせました
ビクイーンの運んできた植物の実や種を撒くとビクイーンの身体の中でエネルギーを倍増させた植物たちは急激な成長を見せていました

緑が芽吹き、木々が伸びて今では遠くから見ると裸の土は見えないくらいに山を緑が覆っていました
ビクイーンとドラゴンは一つの山を生き返らせるとまた別の山へ行って同じ事を繰り返していました

ドラゴンが何度目かの雨を降らせると山から川へと水が流れ出しました
川の水は最初は僅かで直ぐに砂や土に吸われてしまいました。
最初のうちドラゴンはレンが雲の中へ入るとくねくねと踊りだして自分の身体にまとわりつく事が嫌で仕方ありませんでした

「こっちへ寄るなよ」
「あたしだって嫌なんだ でも仕方ないだろう 」

レンとドラゴンは喧嘩ばかりしていましたが二人が力を合わせた時に雨の量は多く降ります
仕方なくドラゴンはレンの儀式を黙って受け入れていました

レンの熱を帯びた身体から光が発せられた時に雲が輝きだします。その時ドラゴンの口から強い風を放つと雲から地上へと雨が降り出しました
一つの雲から雨が降らなくなるとまた次の雲へと移って繰り返しました
雨が降らなくなった雲はまた海の上へ戻しておきます
レンとドラゴンは今度は海の中へ入っていきます そうして今度は海の水を雲へと昇らせる為にその水をドラゴンが吹きあげます。その水を今度はレンがさっきの炎よりも柔らかな炎で雲まで瞬時に蒸発させます。

こうした事を繰り返して行くうちに
ドラゴンとレンは息の合ったパートーナーに変っていきました

そうしてあっという間に1ヶ月が過ぎました

一番最初に緑を蘇らせた山は今では小鳥や昆虫が暮らしていました

川の水は淀む事も無く流れています

ビクイーンとドラゴンそしてレンはその山の頂上にいました

『ねえ ビクイーンこれで神様は僕を人間に戻してくれるのかな』

その言葉に驚いてレンが詰め寄ります
『リュウあんたまだ人間に未練があるの』
『何そんなに怒ってるんだよ』
レンは顔を真っ赤にしていました もうすぐ炎でも吐き出しそうでした

ビクイーンは困った様に二人を見比べていました

『神様が君を戻す時はまだ先のようだよ』

ドラゴンはがっかりしました
その様子を見ていたレンもどこか寂しげにドラゴンを見ていました



ユウは毎晩のお祈りを欠かしませんでした
時々ハヤテが山から降りてくる様になりました
おじいさんは相変わらず離れの小屋で鍛冶屋の仕事を続けていましたが今ではお昼は家族と一緒に食べる様にしていました
お母さんはリュウがいつ戻ってきてもいい様にリュウの服を縫っていました

今夜の月はまたあの頃の様なまん丸な月でした
ユウは月の前でひざまずいて祈っていました
ハヤテはそんなユウの後ろで昔子ども達に聴かせたハーモニカを吹きました
悲しげな音色が月に照らされた野原に響き渡ります

神様は腕を組んでその様子を眺めて深いため息をつきました
「はてさて どうしたものかの 」

そこへビクイーンが一人でやってきました

『神様 一体どうなさるのですか まさかこのままドラゴンのままですませるのですか』

ビクイーンの身体は青い炎で覆われていました
「ほっほっほ まあもう少しの辛抱じゃろうて ドラゴンが自分の望みの為に続けるうちはまだまだじゃろうな  ほっほっほ」そう言いながら笑うとまた消えてしまいました

ビクイーンは炎を静めていました。
ビクイーンには聞こえてきました ハヤテのハーモニカの音色とユウの祈る声が

『ドラゴン 君には帰る家がちゃんとあるよ。待っててくれる人がいるんだよ』


神様の言うようにドラゴンはまだ自分が人間に戻る為だけを考えていました
ドラゴンが何かに気が付かなければまだ人間に戻れない事をビクイーンは知らされました

ドラゴンは夢を見ていました
人間の自分がユウと一緒に川で遊んでいました
川の流れは緩やかでユウの可愛い笑顔がリュウの目に映っています
突然レンが炎を吹きだして川の水を炎に変えてしまいます ユウは炎にのまれて助けを呼んでいました『ユウ  ユウ  レン止めろ 止めるんだー』 

そこで目が覚めたドラゴンは自分を見つめるレンの瞳に涙が浮かんでいる事を知りました
『レン  一体 どうしたんだい』
初めて見るレンの涙にドラゴンは驚きました

レンはドラゴンに背を向けると何処かへ飛んで行きました

『変な奴』
ドラゴンはさっき見た夢の事でユウに会いたくてたまりませんでした

朝がきてもレンは戻りませんでした

『ドラゴン 何があったんだ』
ビクイーンが尋ねてもドラゴンには答えられません
何故レンが泣いていたのかさっぱり分かりませんでした

『僕にだって分からないよ』

『ねえ今日は僕と一緒に来てほしい所があるんだけど』

ビクイーンがドラゴンに言いました

ドラゴンとビクイーンはある村へ向かいました
そこは今いる所よりもとても暑い所でした
村は砂や土で屋根も畑らしい所も埋もれていました

小さな少年がそんな荒れた赤茶色した土の一か所に掘られた水汲み場で泥の様な色の水を汲みだしていました。小さなお椀に貯めてその水をバケツに入れています。何回も繰り返してようやくバケツに半分ほどになってその少年は立ち上がると歩きだしました

空の雲に乗ってその様子を見ていたドラゴンは胸が苦しくなりました
少年が長い時間をかけて家に戻ると中からやせ細ったお母さんが赤ちゃんを抱いて出迎えていました 少年はその水を大事そうに桶に移すとまたお母さんに手を振って水汲みに歩きだしました

お母さんは赤ちゃんを家の中に寝かせると今持ってきてくれた水で料理を始めました
上の方の水を丁寧に鍋にうつします。石で汲んだ窯へ火を焚きつけて僅かなトウモロコシの粉と芋のかけらを入れていました。

『此処だけじゃないんだ 作物も水も無くてまだ苦しい生活をしている所は沢山あるんだよ』
ビクイーンは静かな口調で言いました

ドラゴンは自分がなんて恵まれた生活をしていたのかという事を想いました
家には暖かな部屋があってお母さんは美味しい料理を作ってくれた。井戸の水はいつでも自由に飲む事も出来た。緑が一杯の野原で遊びまわっていた。

『僕よりずっと小さな子が家族の為にあんなに一生懸命に働いているんだね』

ドラゴンは恥ずかしくなりました

自分の事ばかりを考えていました
ただ乾いた土地に水を撒いて植物を生やしてさえいれば自分の役目をはたしていると思っていたからです

『ビクイーン 僕は間違っていたよ 誰の為にでもなかったんだ 僕は自分の為だけにやってただけだったんだ』

ビクイーンは微笑みます
『君が分かってくれて嬉しいよ』

ドラゴンはうなずきます

『どんなに時間が掛っても僕は子ども達が楽しく暮らせる様に此処もそして他の所も作物の実る綺麗な水が飲める所に変えてみせるよ』

太陽が真上に上ってドラゴンとビクイーンを照らします

太陽の中からレンが姿を現わしました

レンは朝とは違っていつものレンに戻っていました

『ドラゴン行くよ 急がないと日が暮れるだろう』

『うん そうだね 急ごう』

ドラゴンとレンは力強く飛び立ちました

ビクイーンはその様子を笑顔で見送りました

                                     続く



 

全6ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6]

[ 次のページ ]


.
あみ
あみ
女性 / O型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
11/30まで5周年記念キャンペーン中!
Amazonギフト券1000円分当たる!
ふるさと納税サイト『さとふる』
お米、お肉などの好きなお礼品を選べる
毎日人気ランキング更新中!
話題の新商品が今だけもらえる!
ジュレームアミノ シュープリーム
プレゼントキャンペーン
コンタクトレンズで遠近両用?
「2WEEKメニコンプレミオ遠近両用」
無料モニター募集中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事