かっくんとるうの海物語 九十九

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かっくんとるうはずっと親友だよ  25


水族館は大騒ぎです
ボートを出して3人が乗り込みました。

「急げー!」
館長さんが叫びます
「あの白イルカはとっても大事なイルカなんだー!」

ボートが波しぶきを上げて勢いを増して進みます

三人とも顔は青ざめていました。
双眼鏡を取り出して捜していたさっきの男の人が叫びます

「いました あそこです!」

お父さんイルカは必死に泳ぎます
「るう、るう どうか間に合ってくれー!るうー!」

エイが迎えに来ていました
「こっちです。早く!」

エイの後を急ぐお父さんイルカを追って、ボートも追いかけてきます

「早く、早くーわああー追いつかれるー!」

エイはるうが見える所まで来るとクルリと向きを変えて、ボートに突進しました

突然、ボートを操縦していたおじさんの顔にエイが飛び付いて張り付きました

「わあああーー助けてくれーー!」

ボートが右へ左へ大きく方向を変えます

その間にお父さんは、るうの傍に行くことが出来ました。

グッタリとして動かないるうに、お父さんが抱きしめます。

「るう るう 起きてくれ お父さんだよ るう お父さんだ!」

かっくんの頭にお父さんの声が聞こえてきました

「お父さん るうの処に行けたんだ」

かっくんがそう言うと、みんなはもっと急ぎました

「もうそろそろ 人間が見つけに来るだろう」
ボスさんの言葉を聞いたかっくんの心臓がビクンとしました

「るう るう 起きて るう僕だよ かっくんだよ!」

かっくんもるうに呼びかけます

るうはずっとずっと遠くから自分を呼ぶお父さんの声を聴いていました

「夢 これは夢。お父さん やっと会えた もうこれでいいわ お父さんに会えた。良かった」

るうの弱った心臓の音がまた弱まります

「るうだめだ! しっかりするんだ!そこにお父さんがいるんだ 起きて目を開けるんだ!」

かっくんに伝わったるうの心臓の音が、また少し強く聞こえてきました

「かっくん かっくん お父さん お父さん 本当にそこにいるの?会いたい この目で見たい」

るうの固く閉じられていた目が微かに動きます
「るう そうだ 起きるんだ お父さんだよ ここに居るよ さあ 目を開けてー!」

お父さんの周りで見守っているみんなの目から涙が溢れます。
人魚姫の涙は大きな真珠になって海の底に沈んでいきました

るうは必死に目を開けました

「るう!るう!」
お父さんが呼びかけます

「お、おとう さ ん 」

るうがお父さんを見ます

かっくんにもその様子が見えていました

かっくん達ももう近くまで来ていました

「るう よく よく 元気でいてくれたね 大きくなって  ありがとう」

お父さんの目から大粒の涙がるうの額の星に流れ落ちました

かっくんも走り寄ります

「るう 良かったね お父さんだよ ほら 本物のお父さんがいるんだよ!」

かっくんの目からもい大粒の涙がこぼれてるうの額の星に落ちます

「おとうさん かっくん 」

みんなもるうに呼びかけます
「しっかりするんじゃーやっと会えたんじゃ はよー起きて笑わんかい」
ボスさんも会長も励まします

るうの身体がピクンと動きました

ゆっくりと顔を上げると、笑顔を浮かべて、お父さんとかっくん。そしてみんなを見ました


「あり が と う」

聞こえない声で言うとまた目が閉じました

「るうー! るうー!」

お父さんはるうの心臓の音を聞きます。それから直ぐにボートに向かって泳いで行きました

かっくんは、涙を拭ってから、るうの額の星にキスをしました

「るう だめだよ せっかくお父さんに会えたんだよ 絶対に駄目だ 僕が許さない。君の親友なんだから。そんな事!僕が許さないよ!」

額の星が弱弱しく光ります

かっくんは自分の力をるうに分けるように集中し始めました

甲羅の星が眩しいくらいに輝きます

「うわあ 凄い光だ 目が開けてられない」

バズーもみんなも目を覆います

かっくんは身体がとても熱くなっていきました

身体中から力が湧いてきます

かっくんはるうの手に自分の手を重ねました

かっくんの身体が金色に光ります

コメットもシュリも祈っていました

空の雲の隙間から太陽の光が、るうとかっくんを包み込みました

「るう るう 生きるんだ 死ぬな 僕達はずっとずっと親友なんだよ まだいっぱい いろんな冒険一緒に行こうよ るう  神様 まだ るうをるうを連れて行かないで!」

かっくんは必死に祈りました

その頃お父さんは、ボートの前に顔を出すと、まるで誘うようにボートをるうのいる処まで連れて戻ってきました

「なんだ これは !!」

館長も他の二人もびっくりします
「白いイルカがいる 」
「館長 そのウミガメです さっきやってきてたのは」

館長はイルカに寄り添うウミガメを見て考えました

「成る程 この海の仲間達は、どうやら私たちにこのイルカを助けて欲しくて、此処まで連れてきたんだな」

「なっそうだろう」
館長はお父さんイルカに話しかけます

お父さんは首を縦に振りました

「それなら さあ 私にちょっと見せてくれないか」

館長はボートから降りるとかっくんの甲羅を叩こうとして手をひっこめました

「なんて熱いんだ こんなに熱くなって‥そうかお前もこのイルカに力を送っているんだね」

「館長 そんな事があるんですか?」
飼育係りの男の人が聞きました

「人間だって 手当って言って具合が悪い部分に手を当てて痛みを和らげるだろう。動物だって、魚だって同じだとしてもおかしくないだろう」

それから、るうの身体を触りました
耳を心臓に当ててみたり、お腹の音を聴いていました

「内臓から出血してるかもしれないこのままだと 死んでしまう よし 運ぶぞ」

館長はかっくんに話しかけます

「お前も一緒にくるかい 心配なんだろう」

かっくんはうなずきます
お父さんイルカは館長に向かって何度もお辞儀をしました

ボートに乗せられたるうとかっくんが水族館へ向かうと、みんなも水族館が見える処までやってきました

お父さんイルカは、逃げる事はないだろうと思った館長は、るうの手当てを優先しました

水族館に呼ばれた獣医さんが手配して緊急に手術が行われました

かっくんはその状況を仲間達に知らせます

手術の間にお父さんイルカはプールに戻されました。
お父さんは抵抗しませんでした

「みなさん ありがとう みなさんのおかげであの子は助かりました。皆さんに会えてあの子も幸せだったと分かって とても嬉しいです。ありがとう もし、もし また海にあの子が戻れた時は‥」声が詰まって、後が言えなくなったお父さんに代わってボスさんが言います 

「その時はしっかり あたしたちが迎えます。心配しなくても大丈夫 あの坊やもついている」

お父さんは無言で深くお辞儀をすると、飼育係りさんの待つ網に進んで行きました

みんなは、その日から代わり番こにかっくんからるうの様子を聴いては、カモメさんに頼んで営業で廻っているボスさんたちにも知らせました

サーカス団のには新メンバーがいました。
シュリです。

人魚姫は人魚と一緒に九十九島の魚たちと仲良く過ごしていました


そろそろ 太陽の日差しが強くなったという頃です

「お父さん 本当に此処でいいの?」

「ああ お父さんはもう此処の生活に慣れてしまったんだ。それに子ども達の喜ぶ顔が見れて、嬉しいんだよ。」

「じゃあ 私はかっくんと一緒にお母さんを探す旅に行くわ」
「ああ そうしておくれ お母さんは必ずその水族館に居るはずだよ」
「お母さんに会えなくてもお父さんは平気なの?」

「そりゃあ 会いたいさ。出来ることならまた、皆で暮らしたいさ でも、お父さんもお母さんも心でずっと繋がっているんだ。いまもお母さんと話してるんだよ。だから平気だよ」

るうとかっくんは顔を見合わせました

「かっくん 娘を頼んだよ 羽っ返りだから 上手くやってくれよ」
お父さんはかっくんにウインクすると、それから大きくプールを泳いで高くジャンプして見せました

飼育係りの男の人も、館長さんも、女の飼育係りの人も大きな拍手をしました

「さあ じゃあ 行こうか」

館長さんの言葉を合図にるうがクレーンで持ち上げられてボートに乗せられました。
かっくんは館長さんが抱きかかえてくれました

「元気で暮らすんだよ もう危ない事がなるべくしない事だ!いいね!」

館長さんが笑います

「寂しくなるな」
飼育係りの人と仲良くなったかっくんは、その男の人の手に触れて挨拶をしました。

「じゃあ るう 行こう みんなが待ってるよ!」

「うん。 みなさんあるがとうございました。」

るうは、一度海に深く潜ってからジャンプをして見せました

「ブラボー!!ピューピュー!」

館長さんも男の人も笑顔で見送ってくれました


「お帰りなさいー!」

みんなが笑顔で迎えてくれました
九十九島のみんなも笑顔でした

「もうすぐ 出発するのですか?」

人魚姫が尋ねます

「はい。早くお母さんに会いたいんです。」
「そうですか。身体は大丈夫でしょうか?」
るうはみんなにもジャンプを披露します

「まあ すっかり元気になって 本当に良かったわ」

「いろいろ心配おかけしました。」

るうは思い出して涙ぐみます

「まあ るうさん 門出に涙はいけないわよ」

「みなさん また会いに来ます。」

かっくんが男らしく胸を張って言ったのでバズーが吹きだします

「何だよ バズー!笑うところじゃないだろう」

かっくんは頬を膨らませます

「ほら〜やっぱりまだお子ちゃまだろう 無理すんなって」

「バズー!僕は大きくなったんだ」

「そう言えば お前でかくなったなあ」

水族館にいる間にかっくんは随分大きくなっていました

「もう、坊やでも、チビでもないからね!」

かっくんがまた胸を張ります

「かっくん 遅い もう、先に行くわよー!」

少し先で待っていたるうが、かっくんを呼びました 

「ああん るう〜待ってよ〰行かなきゃ じゃあ またね 」

かっくんが慌ててるうの方へ泳ぎ始めました

見送るみんなは笑っていました


「ねえ るう 待ってよ〜君の方が泳ぐの早いんだから 僕が先に行くよ!」

るうはかっくんが近くにくるまで待っていました。

チュッ

かっくんの頬にいきなりキスをすると海に潜ったるう。

かっくんの顔は真っ赤になりました

「るうったら いきなり何するの〜!」

「おーい 顔赤いぞ〜まるで茹でタコみたいだぞー!」

バズーが茶化します

「恥ずかしいよ〜るうー!」

海に潜ったかっくんにるうが寄って来ていいました

「かっくん ずっとずっと私たち親友だよね」
「うん。僕とるうはずっとずっと親友だよ」

 
一人じゃない
信じあえる友が一緒
それに いざという時は助けに来てくれる仲間がいてくれる  

キラキラと輝く九十九島 ありがとう

             おしまい
 

          

 
 
 

るうーのお父さん! 24

かっくんは目の前でぐったりと動かなくなったるうの身体をさすり続けていました

ボスさんがエイと一緒に戻ってきました

るうを見ると慌ててエイから降りてるうに駆け寄ります

「一体何時からこんな状態なんだい」

ボスさんは青い顔でかっくんに聞きました

かっくんが少し前だと答えると、ボスさんは小さく丸めた薬をるうに飲ませようとします

「ええい これじゃ飲ませられん。坊やお前が飲ませるんだよ」

かっくんに薬を渡すとボスさんはるうの口を持ち上げます 

かっくんはその薬を咥えるとるうの口の中へ入れました。

るうは全く動きません。

「ボスさん。るうは大丈夫だよね。死んだり、死んだりしないよね」

かっくんは不安そうにボスさんとるうを交互に見ます

ボスさんはもう一度るうの胸に手を当てました

「心臓がだいぶ弱っているようだ。このままじゃ危ないかもしれん」

「そんな‥ボスさん!どうにかしてるうを助けてよ!」

かっくんはボスさんに迫ります

でもボスさんは黙り込んでしまいました。

「そうだ!人魚姫さん。お願いだよ!後一つお願いが残っているよね!そのお願いでるうを、るうを助けて欲しいんだ。お願いだよ!」

人魚姫も困った様な顔でかっくんを見ます

「もしも、これがるうさんの運命で、それが寿命なのだとしたら‥私は神様には逆らえません。」

「そんな‥なんでも叶えてくれるんじゃなかったの?お願いだよ!きっと神様も許して下さるよ」

かっくんは人魚姫にすがりつきました

「命に関することは私にはどうする事も出来ないのです。ごめんなさい」

人魚姫は涙を流して謝りました
その涙は次々に真珠へと変わって砂の上に落ちて行きました

かっくんは今度はコメットの所へ行きます

「コメットさん。助けて。お願いだよ!るうを助けて!」

コメットもシュリも悲しそうに首を横にゆっくり、振りました。

「一体、一体どうしたらいいんだ!」

かっくんが叫びます。

会長が遣ってきました。

「もしかしたら、助かる方法があるかもしれん。」

かっくんもバズーもみんなが会長の顔を見つめます。

「こほっん!いや、出来ればの話なんじゃが‥」

「教えてください。僕、何でもします」

かっくんの真剣な眼差しを会長がジッと見返します。

「人間に診てもらうんじゃよ」

「エッ!何だって!人間にるうを診せるって、それって、るうを人間に捕まえさせるってことなの!そんな‥」

かっくんは、動かないるうを見ます
ボスさんがかっくんの肩を叩きます
「坊や、会長の言うとおりだ。るうはあの大タコに心臓か内臓を潰されたのかもしれん。そうなったら薬だろうとなんだろうと、あたしらにこの子を助ける事は出来ないんだ。でも人間ならるうを助ける事が出来るかもしれん。」

コメットも人魚姫もるうの傍でうなずきました

バズーがかっくんの肩を掴むと身体事抱きしめました

「こうなったら、それに賭けよう。るうを死なせたくないならお前も賛成するんだ」

かっくんはバズーも震えている事が分かると、涙が溢れて止まりません。

「分かった。バズー!みんな!るうを運ぼう」

かっくんの決意をみんなが喜びました

バズーとかっくん。それにエイがるうの身体を持ち上げて海岸へと進みます。

「バズー、どうやったらるうの事を人間に報せられるかな?」
バズーは首を捻ります
「そりゃ かっくん。君が呼んでくるんですよ」

エイが当たり前でしょうというように言いました。

「そうだよ。お前は陸だって歩けるんだから、お前が人を呼んでくればいいんだ!」

バズーもエイの言う事に同意します
「僕が行って分かって貰えるのかな‥」

いよいよ海岸が近くなりました。

波打ち際までるうを運ぶと、砂の上にるうの身体を横たえさせます。

そこはあの九十九島の水族館の近くの海岸でした。
かっくんはまだその事は知りません。

「坊や。あたしも一緒に行こう」
ボスさんが言うと、バズーも一緒に行くと言いだします

「ここは、水族館の近くたい、わしが案内すったい。」
会長も名乗りを上げてくれました

「あんた、いい奴だね」
ボスさんが会長に言うと、会長は咳こみました。

「はよーいくばい!」

会長を先頭に水族館を目指します

るうの事は残ったエイや他の皆が見ていてくれました

朝だというで車は通っていませんでした。

海岸から大きな白い建物が見えてきました

「大丈夫かな?捕まってしまって、みんなの所に戻れなかったらどうしよう」

かっくんは初めて人間に会いに行くことで緊張していました。
人間に見つかったら捕まえられて、二度と海に戻れなくなるかもしれんないという恐怖もありました。でも、水族館が近くになった今は、るうを助けてもらうために頑張ろうと固く誓います。

「ここが、水族館っていうて魚やイルカのおっところたい」
「イルカ!イルカってあの話してたイルカなら、もしかしてるうのお父さんがいるんだね!」

かっくんはそのイルカにも会ってるうの事を伝えたくなりました

「ねえ、人間にどうやって伝えるの?」

かっくんは人間と話した事も、触ったこともありません。

「ここにいるみんなで力を会わせて海岸まで人を連れていくしかないだろうね」
ボスさんが言います
「どがんすればよかやろか‥」

いよいよ建物の入り口が見えました。
おじさんが掃除をしています。奥の方でガラスを磨いている女の人もいました。

「とにかく、あの建物の中に入って誰を連れていくか決めるとしよう」

ボスさんの言葉にうなずいてみんなはソロソロと建物の玄関の傍に来ました。

掃除のおじさんの姿はもうありません。
入り口は開いています

ソロリソロリと中へ入ります

中に入ると、魚の写真やクラゲの写真が飾ってありました。

「イルカだ!白いイルカだ!」
かっくんは、一枚の写真の前で叫びます。
バズーもボスさんも、その写真に写っているイルカが、るうのお父さんだと思ってうなずきました。

ずっと奥で水音がしました。
まだ、薄暗い中を進んでいきます

クラゲが一杯の水槽や、魚たちが水槽でのんびり泳いでいました。

パシャン!
水が跳ねる音が聞こえてきます
「こっちだ!」

会長が先に進みます。
明るくなってきたのは、そこが外にあったからでした

二人の人が白いイルカと一緒にいます

「あれが、るうのお父さん。るう会いたいよね。るう!」
かっくんは、まるでるうに自分が今、見ている映像を送る様に目に焼き付けるように見つめます

「おい、こっちに来るぞ!」
バズーに引っ張られて、かっくんは初めて男の人が走って来ている事を知りました。
男の人はとても驚いていました。

「なあ こっちこっち なんでこんな処にウミガメがいるんだ!」
もう一人の女の人が走ってきます
かっくんはカチコチになります
ボスさんがハサミでかっくんのお尻を突つきます。
かっくんは、びっくりして飛び上がると、それを見ていた、男の人が笑います

「なんだなんだ。蟹が2匹にタコ、それにウミガメまで‥一体何事なんだ?」

かっくんはイルカの方をチラチラ見ます。

「アラッこのウミガメさん。見て甲羅に星のマークがあるわよ!」

そう女の人が言った時です

白いイルカがジャンプするとプールの上に上がりました

「まあ、一体どうしたの。そう海の仲間に挨拶ね。いい子だわ。でも早く戻ってね」

女の人がイルカの方へ歩いていきます

かっくんは急いでイルカの方へ歩きます

「おい、このウミガメそっちに向かってるぞ!」

男の人が声をかけると女の人が振り返りました

その隙に女の人の足にバズーの手が伸びます

「きゃっー何、このタコ!わああ 早く外して!」

男の人が駆け寄ります

かっくんはイルカの目の前に立っていました

「君はもしかして、るうの私の娘のるうの友達なのかい?」

白いイルカが涙を目に溜めて言いました
「はい、僕はるうの親友で、かっくんです。るうはお父さんに会うために此処まで来ました。」

「るう。るうが近くにいるのかい。」

「はい。でも今、とても弱ってて‥その‥」
「るうに、るうに何があったんだ!」

かっくんの手に、お父さんの手が触れました。
その途端。お父さんの頭の中には、ぐったりとしている、るうの姿が飛び込んできました。

「そんな‥るう。るうはまだ息はあるのか!」

かっくんは驚いてお父さんを見ます。
「見えたんだよ。るうが倒れている所が‥」
「僕達、ここの人に助けて貰おうと思って来たんです。」
「そうだったのかい。そんなにるうは危ないんだね」
お父さんは考えます

「どうやってこの人を連れていけばいいのか‥」
かっくんが呟きます

「この壁を飛び越える事が出来たら、私が泳いで逃げれば追いかけてくるはずだ。だが、この壁は高すぎる。いまの私にはとても飛べないよ」

お父さんが悔しそうに唇を噛みました。

かっくんは一生懸命に祈ります
「ここで、僕が飛べたら、お父さんを海まで飛び越えさせる事が出来たら‥」
かっくんと、イルカの前に男の人が立ちました。

「さあ、プールに戻って。ウミガメくん、君はこっちだよ」

そう言うとかっくんの身体を抱き抱えます。
「止めてよ!やめて!降ろしてよ!」

かっくんは手足をばたつかせます。

バズーはまだ頑張って女の人を掴まえています
ボスさんと会長は男の人の足をハサミで突きます

「なんだ!一体何なんだ」

男の人がぶんぶん足を振って両方の足にしがみついている蟹を落とそうとしています。

「このままじゃ るうが危ない! そうだ 最後の願いだ!人魚姫さん聞こえる!」

人魚姫はるうの傍にいました
「かっくんの声だわ  かっくん。聞こえます。どうしたんですか」

「人魚姫さん。最後のお願いが決まったんだ!叶えてくれるよね」

「かっくんの願いなら叶えます。」

「ここに、るうのお父さんがいるんだ。」
「やはり、そうでしたか‥」
「お父さんをこの建物から海にジャンププさせて欲しいんだ!そうしたらきっと人間が追いかけてそこに来るはずなんだ!」

「わかりました。急がないといけません。いま直ぐいいですか」

かっくんはお父さんに呼びかけます
お父さんはかっくんの考えを聞いてうなずきます。

イルカのお父さんはプールに戻るとグルグルと泳ぎました。
勢いをつけるように、早く泳ぎます。 

「今だ!!」

かっくんが叫びます
お父さんの身体が高く、高くジャンプしました。

「おおおお  なんて高さだ こんなの初めてだ!」
「凄い!どうしたの!」

二人が驚いて見ている中を、イルカの白い身体がドンドン高く上がっていくと、そのまま壁の向こうに消えて行きました

バッシャンー!!

「やった!成功だ!るう、今からお父さんがるうに会いにいくよ。るう起きて!」
かっくんはるうに呼びかけました。


                                       続く                                            

     

大タコの最後  23


大タコに捕まったるうは、必死に身体を動かそうとしました。
「無駄だ お前はもうすぐ陸に行くんだ。海の中ばっかりで飽きてるんじゃないのか。まあ水が無かったら生きてけないだろうけどな あははは」

るうは大タコの手に噛みつこうとしましたが無理でした

大タコの中にいるクラゲやバズーはシュリを守りながらあちこちを突きます
でもクラゲの足も身体もふにゃふにゃで大タコにはくすぐったいだけでした。

「このままじゃおいらたちも溶けちまう・・シュリ大丈夫か?」

先に大タコに入ったシュリを心配するバズーでした

シュリはニッコリ微笑むと赤い糸をたぐりよせます

「一体どうするんだ?」

バズーもクラゲもシュリの行動を不思議そうに眺めます

シュリはその糸を持って、スイスイ泳いで、大タコの尖った歯のように硬い部分へ糸を結びました
それからその糸の端を持ってバズーの所へきました

「バズーこの糸を力一杯引っ張って!」

バズーに糸を渡すとシュリは今度はクラゲたちを集めます

「あなたたちは電気を集めて欲しいの」

クラゲたちはお互いの手を重ねて輪になります

身体の光が弱まって行きます 

「おいおい これじゃあ みんなにこいつの身体が分からなくなるだろう」

バズーが糸を引っ張りながら赤い顔で言いました

「ええ みんなにはもう分からなくなるでしょう。でも今はこの大タコの動きを止めないと、るうさんが危ないわ」

「そうだな。るうを陸に揚げさせるわけにはいかない」

バズーは一層力を込めて糸を引きました

大タコは身体の中がチクチク痛みだした事に気がつきます

「なんだこの痛みは まるで何かを引っこ抜かれそうだ!うう痛い!」

大タコはるうを握っている手に力を入れます

「うう 苦しい‥」
るうは息が出来ないほど強く握りしめられて気を失ってしまいました

グッタリしたイルカを見て大タコはにやりと笑うと痛みをこらえながら海岸を目指しました

「俺に逆らった奴は皆殺しだ はっはっは なあにみんな俺が喰っちまうんだけどな」
大タコは愉快そうに笑います

かっくんはコメットやボスさん、人魚姫たちとるうの後を追っていました
大タコの姿は光が消えてしまっていたけれど、るうのその姿を見る事が出来ました

「るうがぐったりしている。」
かっくんが怒りを込めて見えない敵を睨めつけました

「坊や。今度こそお前さんの出番のようだ このままじゃあの子が危ない!」
ボスさんの言葉にかっくんはうなずきます。

コメットがかっくんに近ずくと言いました

「あの身体の中にはシュリがまだいるんです」

かっくんはコメットの目を見ました
「分かっています。バズーだっているんだ。それにクラゲさんたちも‥」

「あたしの作戦が不味かったようだね‥すまないね」

ボスさんが珍しく自信無く呟きます

「いいえ。そんな事はないんです。ただ光が消えてしまったのはどうしてでしょうか?」

「これでは大タコの攻撃は難しいですね」

人魚姫も心配そうです
「お母様。どうにかしてください。るうさんもみんなも助けて下さい。」

人魚が頼みます

「私の力はもうそんなに残っていません。あと一つの願いを叶える事しか出来ないでしょう」
人魚姫は悲しそうな顔で人魚を見つめます
「お母様。それはどういう事ですか?」
人魚姫の顔を見た、人魚も不安になりました

大タコの中で糸を引っ張っていたバズーは確かな手ごたえを感じてニヤリと笑います

「もうすぐ抜ける!」
シュリはこっくりとうなずくとクラゲたちの傍に行きました

「みなさん どうですか?」
クラゲたちは集中していました。
「もう少しです」


かっくんは身体が熱くなっていることを感じました 

甲羅の星が輝きます。でもその輝きはるうと一緒にいる時とは違ってあまり強い光は出していませんでした。

「るう るう 僕だよ 聞こえるかい しっかりするんだ るう 起きて!起きるんだよ!」

かっくんがるうに向かって呼びかけます。

「かっくんが呼んでいる 起きなきゃ。かっくん かっくん」

ぐったりしていたるうの額の星が光り出しました

「るう!聞こえたんだね!僕が必ず助けるから るうしっかりするんだ!」

「かっくん 分かったわ」
るうの身体がピクンと動きました
「アッ!今、るうさんが動いたわ!」

コメットが叫びます  
みんながホッとしました

大タコはドンドン進みます。随分浅くなってきた海の中で、るうの身体が海中から出るようになりました。

「早いところ倒さなといけないよ」

ボスさんの言葉を受けてかっくんの星も輝きを増しました
るうの星が呼び合っているように輝きます

るうはまた大タコの手の中で、もがき始めます

「こいつ まだ生きてたか しぶとい奴だ!俺様に握りつぶされたいのか!」

大タコがるうに怒鳴りました

「うううううん ナンダ コノ イタミ イテテ」

大タコの身体が透明からその身体をくっきりと浮かび上がらせます

「見えた!いまじゃ!」

ボスさんが叫びます

かっくんは燃える様な身体の熱を感じながら回転し始めました

グングンその早さを早めると大タコに突進します

大タコは身体の痛みに気を取られてかっくんが向かっている事に気が付くのが遅れました

「わあああー!」

大タコはかっくんの回転する身体で吹き飛ばされて;るうを握っていた手を離しました。

バッシャン!!

るうが海の中に落ちます

コメットも人魚姫もるうの所へ急ぎます

るうは海の中で荒く息をしていました

乾ききった身体を、海の水が優しく包み込みます

「るうさん 大丈夫ですか?」

コメットがるうの身体にそっと触れました

「熱い!るうさん。熱があるわ!」

るうは弱った身体で微笑みます
「大丈夫です。これくらいの事。かっくんは?」
「坊やならあの化け物と戦っておる」

ボスさんも傍にきてるうの身体に触れました

「こりゃ いかん早く薬を煎じよう」

ボスさんが口笛を吹くと、エイが現れてボスさんを乗せて行きました

るうは苦しそうにしていました

今にも倒れそうです
「るうさん‥」

人魚姫がるうの額に触れます

「しっかりするのですよ。いまかっくんが戦っています。あなたも戦うのです。必ず助かります」

るうは眼を閉じそうになりながら、かっくんに呼びかけます

「かっくん 頑張って 私がついている かっくんが勝つ事を信じてる」

かっくんに聞こえてきたるうの声は、とても苦しそうでした
大タコに締め付けられて胸を痛めたのかも知れません。その身体で海中から出されていたのです
かっくんは目の前の大タコに向かってもう一度回転を速めると突進します

大タコは最初のかっくんの攻撃で身体の一部が焼け焦げていました
しかも、身体の中も何かに襲われています
初めて迎える危機に大タコは戸惑っていました

「何故だ‥こんなちっぽけな島で、俺様がこんなに苦労するなんて思ってもいなかったぜ」

大タコはもっと大きな海でいろんな敵と戦ってきました
あの日、自分の身体に異変が起きてからは、誰にも顔さえ合わせられなくなって孤独と戦ってきたのです。この身体を随分恨みました。家族で笑いあったりしている光景を見ると、怒りがこみ上げてきて襲ってしまっていました。
そのうちに、大タコは、この海から全ての生き物を消してしまおうと思ってきました。
大タコは何故自分がこのちっぽけな九十九島に戻って来たのかが分かりかけていました。

「イテテエ イッテエエ」

大タコが苦しんでいる所へかっくんが飛び込みます

大タコの身体が宙に舞います。
その時
大タコの逆さになった身体の中から次々にクラゲが落ちて海に沈みます
「アッ!」

かっくんは回転するのを止めると海の中で待ちました

「バズー!シュリさん!」

大タコの丸く開いた穴の中はクラゲの電気で焦げています。バズーがシュリを抱きしめて手を振っていました

「やった−!バズー凄いや!」

海の中に飛び込んだバズーは、かっくんの傍に来ると、かっくんの肩に手を乗せようとしてひっこめます
 
「危ねえ また火傷するとこだった」

かっくんとバズーが顔を見合わせてお互いの無事を喜び合いました

大タコは海の底で、その最後の時を迎えようとしていました。

かっくんもバズーも大タコのそばに行きます

大タコは薄く開いた目で二人を見ます

「いいな 友達って‥」

大タコから意外な言葉を聞いたかっくん達は驚きます

「俺は、この身体なんかいらなかったんだ‥やっとこれで死ねる」

大タコの身体は穴のあいた所から黒い液体が流れていました
そうしてかっくん達が見ている前で大タコの身体が小さくなっていきます

周りに九十九島の魚たちも来ていました

会長もいます。

「お前は‥」

「会長になったんだ 懐かしい‥ 最後にあんたに会えるなんて‥済まなかった‥この海を守ってくれよ‥何時までも‥」

大タコの身体はバズーよりも小さくしぼんで息絶えました。

会長の目から涙がこぼれます

かっくんもバズーも、この大タコがどんな気持ちで生きてきたのかを知って哀しみました。

九十九島の魚たちもみんな泣いていました

「よし。この海ば自分達で守っていくばい よかか!みんな 頼んだばい」

会長がみんなに向けて大きく叫びます

そこにいた自分を入れて、九十八匹の魚の数を数えた会長は少し考えて言いました

「今からこの組合は九十九会(つくも)って決めたばい。今日の事ば忘れんごと。こいに決める」

みんなの顔が笑顔に輝きます
「そうたい 長ったらしか名前より ちょうどよかたい 九十九会 よか名前たいねえ」
黒鯛が言うとみんな肩を抱き合って大タコだった、タコの周りを囲みました

「九十九会は永遠に九十九島ば守るぞー!」
「おー!!」

かっくんとバズーも笑顔でその様子を見ていました

「かっくん。来てください。」

人魚姫に言われたかっくんは、人魚姫の顔が沈んでいる事を不思議に思って首をかしげます。

「るうさんが危ないんです」

「何だって!どうしてるうが!るう!るう!」

かっくんは岩の上でグッタリしている、るうの傍に急ぎました。

かっくんがるうに触れます

るうの閉じられていた目が静に開きました。

「かっくん、勝ったんだね。良かった‥」

るうはまた目を閉じると眠ってしまいました

るうの身体はかっくんよりも熱くなっていました。

                                       続く

 


   

戦いの九十九島   22

大タコはギラギラした眼差しで辺りを見回します
でもその身体は透明だったので潜んでいた魚たちには全く見る事が出来ません。

蟹もイカもタコも海藻の陰や岩の穴の中に入って震えていました。

大きなタコつぼを見つけた大タコがその壺を転がしていました

でも魚たちの目にはタコつぼが勝手に転がっているように見えています
中に居たタコは心臓が飛び出しそうでした

中にタコが入っている事を確認したタコは、壺を持ち上げると魚が隠れていた岩へ、その壺をぶつけて壊しました。

中から飛び出してきたタコを大きな見えない手が掴もうとした時です。

隠れていたタコが10匹以上が一斉に出てくると仲間のタコに目がけて墨を吐きました

墨を浴びた大タコの手が現れて見えました

「今だ!」

今度は蟹の大群が現れてその黒く染まった手に飛びかかります。

一本だけが染まった大タコの他の手がその蟹達を払いのけようと延びてきます。

蟹達も必死です。黒く染まった手にしがみつくとその大きな手をハサミで切りつけます。

たくさんの蟹が見えない手にたちまち投げ飛ばされました。

大タコの黒く染まった手は後少しでちぎれそうにぶら下がっています。

「お前らよくもやってくれたな〜今度はこっちの番だー!」

怒りに今度は眼が赤く光ります。

「いけー!」

会長の声が勇ましく響き渡ると今度はイカがその眼を狙って墨を吐くと姿を消します。

大タコは見えなくなった眼を手で擦ります。

「ちくしょう!お前らまとめて喰ってやるー!」

まだよく見えない眼でギョロギョロ見ますがイカの姿はもう見えません。

「全くお前らそうやって遊んどけばいいさ もうすぐオレがこの島の生き物は皆殺しにしてやるからな」
大タコがイカに気を取られている間に、タコ達はぶらりと下がった大タコの手を引っ張って引きちぎりました。

タコたちは散らばって、ヒュンヒュン泳いで逃げます。

大タコは悔しくて地団太を踏みます。

今度は沢山のウニがその足元にきていました。
砂を激しく叩いた大タコの手という手にウニが突き刺さります。

「うううーーもう容赦しないぞ。片っ端から喰ってやる。」

自分の手に刺さっているウニを取っって食べようとした時です。大タコの口目がけて飛び込んできたのはふぐの針千本でした。それも一匹や二匹ではありません。

ウニが付いた大タコの手は、今ではその姿が見えなくても、どこに居るのかがはっきり分かりました。ウニたちも必死で振り落とされない様に針をドンドン深く食い込ませます。

針千本は何匹も大タコの口の中に入ると暴れるます。あちこちに針が刺さった大タコは慌てて吐きだします。

「大タコの姿が分かる今がチャンスです。」
コメットがかっくんに合図をします。

かっくんとるうは手を繋いでお互いの目を見ました。

「必ず倒せるわ」
るうの言葉を聞いてかっくんは眼を閉じると心の中で祈りました

「神様 僕に力を貸してください。もう一度僕を飛ばせてください。」

かっくんを見つめるるうから温かな温もりが伝わってきます。
かっくんはだんだんと身体が熱くなってきます。
「キャアー!」

その時でした。

「シュリ!」

今まで姿の見えなかったシュリがいきなり眼の前で大タコの口に入れられてしまったのです。

「どうしてー!シュリ!シュリ!」
コメットが叫びます

その声にニヤリと笑うと大タコはコメットへも手を伸ばしてきました

「ちょっと待った!」

「バズーー!」

怒りに顔を真っ赤にしたバズーが、ワナワナと身体を震わせて大タコを睨んでいました。

「よくも シュリをー!許さないー!」

大タコはバズーを見ると笑いました

「何を熱くなってんだ。安心しな、今からここにいる生き物全部を俺が喰ってやるから心配すんな、直ぐに会えるさ」

「うわあああーーー!!!」

バズーは怒りを押さえられませんでした。

一人、大タコに向かって突進します

「行くのじゃ!」

「ボスさんー!」

ボスさんの姿を見たかっくんとるうは顔を見合せます。

ボスの命令で大タコに向かって行ったのは、バズーだけじゃありませんでした。

あのサーカス団で華麗なダンスを見せてくれた、たくさんのクラゲがバズーと一緒に大タコに向かうとその大きく開いた口の中に飛び込みました。
シュリは飲み込まれる寸前に持っていた赤い糸を大タコの口に掛けていたのです。
その糸が目印になってバズー達は大タコの口に上手く入り込んだのでした。

ボスさんがかっくんとるうにウインクします

「コメットさん。これは作戦だったんだ!大丈夫シュリは必ず助かるよ!」

かっくんの言葉に呆然としていたコメットは、涙を流してかっくん、るう。そしてボスさんを見ました。
「ウゥップウウなんだこいつら!自分から食べられにくるなんて、なんて間抜けなんだ」

大タコは今度は眼に入ってきたかっくんを見るとニヤリと笑います。

「ほお こんな処でウミガメにありつけるなんて思ってもいなかったぜ。こりゃあ旨そうだ」

大タコはウニの付いたままの手を前で組むと、まるで腕をコキコキと鳴らすような素振りをしてから、その長い手をかっくんに向けて伸ばします。

「コメットさん。るう離れて!」

かっくんが叫びます

かっくんは右へ行ったり左へ行ってその手から逃れます。
大タコが手を降りあげる度にウニがポロリポロリと落ちてしまいました。


かっくんは大きな岩の陰に逃げ込みました。

大タコの姿がどこなのか分かりませんでした。

「困った。もうタコさんやイカさんの墨は使ってしまったから‥このままだとあいつが何処に居るのか分からない」

大タコはニンマリしていました

「これでまた俺の姿は誰にも見えない筈だ。はっはっはチビどもが束になった処で俺様には敵わな事が分かっただろうよ」

大タコはジワジワとかっくんに手を伸ばしていました。

「ピューーーィ」

ボスさんが口笛を吹きます

大タコの身体が光ります。

手は透明なのに今度は身体の中が光っていました

透明な身体の中でクラゲたちが光っていたのです。

「ボスさん!」

かっくんもるうも叫びます。
コメットも魚たちもその光に誘われて隠れていた処から出てきました。

「凄い!凄い!」
それまで震えていた、みんなの顔も輝きだします

「坊や 今度はお前さんの出番だよ。早く助けなきゃみんな溶けてしまうよ!」

ボスさんがかっくんの傍に来ていました。

かっくんはボスさんを見るとうなずきます。

かっくんの甲羅の星もるうの額の星も輝きます。

大タコは自分の身体が光っている事に気が付くとまた怒りで真っ赤になりました。

「こざかしい奴らだー!もう許せねえ!」

大タコの大きな長い手が伸びるとるうの身体を掴まえました。

かっくんは驚きました。大タコは自分を狙っていると思っていたのです。

大タコの手に捕まったるうはもがいていますが抜け出せません。

大タコはかっくん達と反対側へ泳ぎだしました。

「まさか、あやつは‥」

ボスさんの顔が初めて青くなります。

「ボスさん!」

大タコが向かう先は‥海岸でした。

「へへこのままバカにされたまんまじゃ気が収まらない。この白いイルカはどうやらあいつらに大事にされてるようじゃないか‥こいつを干上がらせて見せしめにしてやるか」

大タコの手の中でるうはその言葉が聞こえました。直ぐにかっくんに伝えます。

「るう!しっかりするんだ。そんな事絶対僕がさせない。僕が僕が必ず助けるからね!」


                                      続く

それぞれの作戦    21

るうがようやく泣き顔を無理に笑顔を作ってかっくんに向けました。

「ごめんね。私のお父さんだと思う‥。」
かっくんも周りのみんなも黙り込みます

「私、昔友達と遊んでて人間に捕まりそうになったの。友達は捕まってしまって‥お父さんとお母さんが私を逃がしてくれて‥でもお母さんもお父さんも‥捕まちゃった」

るうはゆっくりと話しました。
かっくんはるうの哀しみが伝わって涙が溢れます。
「かっくん。ありがとうあなたがいたから私は此処へ来れた。」
「ううん。僕こそるう、ありがとう。るうがいたから僕も此処まで来れたんだよ」

二人は互いの手を通じて温かな気持ちが伝わると微笑み合いました。

「それなら今あん水族館におるとは、あんたのお父さんかお母さんって事たいね!」

会長が言うとるうがうなずきました。

「白いイルカがお父さんです。」

「うんうん。白かイルカは珍しかけん。そうやろうね。ばってんおいの見たとはそのイルカの事だけたい。他のイルカはどがんしたちゃろか‥」

るうは唇を噛みます。かっくんはそんなるうの肩に優しく手を伸ばしました。

みんなヒソヒソ話し始めました。

「一体どがんなっとるとやろか」
「こいから恐ろしか敵の来るとばってん るうさんの事もどがんかしてやりたかな」

「ばってんやっぱい敵が先たい!」
「そうたい!敵にやられたら親子の対面どころじゃなかたい」

コメットがみんなの顔を見まわします。

「みなさん。まずは敵を倒すためにみなさんと一緒に力を合わせなければいけません。」
「僕も精いっぱい頑張ります。」
「私も敵と戦います」
かっくんとるうの力強い声にみんな、それまで不安そうな顔から次第に引き締まって勇ましい海の男に変っていきました。

「そうたい!やるばい!この海ば守るたい!」
「そうばい!力ば合わせればよか!」

るうもかっくんもみんなの生き生きとしてきた顔を見て嬉しそうです。

「みなさん。敵は姿を消せる恐ろしい怪物タコです。みなさんここで話し合いをして作戦を立てましょう」

コメットが先に立ってみんなを集めるとコメットからの考えを聞きました。
それぞれに質問したりグループを決めて作戦実行に向けて準備を始めます。



バズーは手の中でスヤスヤ眠るシュリを落とさない様になるべく揺らさない様に泳いでいました。
バズーの目がエイの姿を捉えました。

「助かった!お〜い。俺だバズーだ!」
エイがバズーの声に気が付いて振り向きました。
「あれバズーどうしましたか?」
エイは相変わらず紳士の様に振舞います
「おやっバズーさん。可愛いらしい子ですね」

エイにニッコリ笑われてバズーは慌てて手を離しました。

「キャッーびっくりしたーアラッこの方はあどなたかしら」

シュリは尾ひれを美しく揺らしながらエイの前にいくと丁寧にお辞儀をしました。

「これはこれは 素晴らしい身のこなし。ただ者ではありませんね。初めまして私はこのバズーの友人でエイのガンチョと申します。宜しく須恵器なレディー 」

エイはシュリの手い軽く触れて挨拶しました。

「まあなんて素敵な方なんでしょう。初めまして私はシュリと申します。ガンチョさんよろしく」

バズーはなんだか面白くありませんでした。
口をとがらせてそっぽを向きます。

「うほっほん。バズー何か用があるんじゃなかったのですか?」

エイはバズーの様子に気が付くとそう言ってバズーのご機嫌を伺いました。

「そうだった。バスは?ボスに直ぐ来てもらいたいんだ」

「また何か問題でも」

「怪物だ!今度はメガロドンよりも手強い!」

エイは身をすくめます。

「おおーなんとトラブルが好きなんでしょう。分かりました。案内しましょう。」

バズーとシュリはホッとして笑い合いましたがバズーは直ぐに顔をそむけました。
バズーの顔が赤らんでいるのをシュリは見逃しませんでした。こっそりクスッと笑いました。


エイに案内されてバズーとシュリはボスさんの前に立っています。
説明を聞き終わったボスさんは煙を吐くと輪っかにしてシュリを喜ばせました。

「今度の敵は厄介だね‥そうだ。みんなを呼んでおくれ」

ボスさんは短い間に何かを思いついた様です。
「バズーボスさんって凄いのね流石ねえ年の功って言うんだよね」
バズーにだけ聞こえるようにシュリは言ったつもりでした。

「ありがとよ。だてに年とってんじゃないからね」
シュリは照れ笑いしながらバズーの後ろに隠れました。

「可愛い子を見つけたじゃないか。嫁さんには出来ないだろうけど。」

「ボス!!」
バズーの顔が真っ赤になります
ボスをちらっと観たシュリはボスさんからウインクされます。
「ボスさんって素敵!憧れるな〜」
想いながら姉のコメットを想いだして頭を振りました。
「お姉さまももう少しユーモアがあればいいのに‥」

バズーはそんなシュリを見て笑います

「お前さんがじゃじゃ馬すぎるんだよ!全く呼びもしないのについて来て」

シュリはへへと笑ってバズーの身体に尾ひれをぶつけます。

「さあさあ じゃれあいはよそでやっとくれ。いいかい今から言うようにやるんだよ。」

皆を前にしてボスさんは考えた作戦を話始めました。


巨大化した大タコは海の静けさに頭を捻ります。

「ははん 怖くなってみんな隠れたな。今夜は誰も通らないじゃないか。それならこっちから行きますか。いよいよこの九十九島は俺様の物になるんだ。はっはっは愉快愉快」

大タコは醜い色の自分の身体の色を隠すと九十九島の島の中を進みます。

誰が見てもその姿は見えません。ただ唯一、時たま月の光を浴びて、妖しく光る目が二つ海の中でキョロキョロと動いていました。


海蛇と、エイが砂に埋もれてその様子を見ていました。
海蛇に合図を送ったエイが砂の中をヒラヒラと泳いでいきます
海蛇はまだ大タコに気付かれないように用心しながら後を追います。


いよいよ戦いの時を迎えたその夜の九十九島は、満月に照らされてくっきりとその島々の姿を見る事が出来ました。
 

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