天使の羽

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病院の建物に入った私は赤いランプの灯った処置室の壁をすり抜けて中に入った

慌ただしく動きまわる看護師さんや緑色の服を着けた先生がいた。

ベットに横たわっているのは

「お母さん・・・。」

お母さんだった。
青白い顔には苦しいのか汗がにじんでいる

お母さんの傍にいたかった。例え見えなくたってイイ。

でも、聡の演奏会の時間も迫っていた

お母さんはずっと、聡のピアノを聴いて元気になっていたんだ

どうにかして、この部屋に聡のピアノの演奏を流したい。そして、お母さんに一日でも長く生きていて欲しい

私は考えた。生まれて初めて考えていた

ピピピ ピピピ

「はい。輸血の準備お願いします。」

看護師さんがスピーカに応える。

スピーカー・・・スピーカー。

そうだ!!

私は妖精。魔法が使えるはず。このスピーカーを使って聡のピアノを届けられる

確か、小さな電話がどこかにあるはずだよね

私はナースステーションに行ってみた。

看護師さんたちが使ってる携帯電話は〜〜あった!!

これって ちょっとお借りしますね〜〜ごめん!!

いそげ〜〜メイは天使 飛べるんだよ〜〜!!

っと飛んでるんだけど・・それでこの携帯とどうやってスピーカーを繋ぐんだっけ?

マッいいか 今はとにかく聡の所に急ごう!!

ホールが見えてきた

あっあれはあの時の・・。

ホールの横の公園を走っていたのはあのボクサーの歩だった!

「歩!!ねえねえ歩!!」聞こえる訳ないか。

でも、歩は止まった。そして振り向いた。

「よ!!また会ったな。」

「なんで!なんで歩にはメイが見えるの?」

「黙ってて悪かった。俺、実は昔から見えなくていいもん見えちゃう人なんだ」

「何!!じゃあ、最初かっら見えてたの?メイの事!!」

「ああ、メイだったね。すまない。あんまり人に知られたくなくって黙ってたんだ」

「なんだ、歩むにはメイが見えるんだ」

何だか力が抜けてへなへなと座り込んだ

「おいおいどうした。この間の勢いは!!俺にベンチ飛ばして、威勢良かったじゃないか」

「うわあああん 歩助けてくれる?」

わたしったら泣いちゃってた。

「お前天使だって思ってたけど、天使でも出来ない事俺に出来るのか!」

「これ。。電話」

歩は携帯電話を受け取った

「へえ、いまどきの天使ってのは携帯までつかってんのか!」

「違うよ!分からないから助けて欲しいの・・」

歩は、泣いてる私の横に座り込んで話しを聞いてくれた

「そうか。じゃあ、メイの弟の演奏をお母さんに聞かせてやりたいんだな」

「うん。どうやったらイイの?」

「普通に携帯から病院の電話に送ってそれをスピーカーから流せば。」

「歩〜〜手伝ってじゅれる?」

「任せな。メイは俺達親子の守護神だからな!先ずはその弟の聡さんに説明しよう」


歩むの行動は素早かった

お母さんの状況を聞いて聡の表情は暗かったけど、傍にいた彼女が励ましてくれて、聡は演奏会を予定通りにすることになった。

「歩 ありがとう。じゃあ宜しくお願いね。メイは病院に行って準備するから」

「おお!!しっかりな!!」

「めい姉さん!いるんだよね・・。もうめい姉さんの事見えないし、声だって聞こえないけど、ありがとう姉さん。僕嬉しかったよ。会いに来てくれた事。それから、母さんの事。お願いするよ」

見えないけど、聡はちゃんと私に向かって言っていた。

「歩、伝えて。聡に会えて幸せだったって。それから後でそこの彼女に伝えて。聡を好きならよろしくってね」

聡はニッと笑うと、親指を立てていた。

私は直ぐに病院へ向かった

4時55分

もうすぐだ

病院の電話とスピーカーを繋ぐ作業は案外簡単だった。病院全部に流せる放送を使うんだ。
ただ、あの部屋には普通流されていなかった。でも、あの部屋にもちゃんとスピーカーはあったから操作できるはずだよね

5時だ!!電話が鳴る私はありったけの念力を使ってその電話を放送用のスピーカーに繋いだ

ピンポンパンポン

看護師さんたちが驚いていた。

「誰なの?誰か触った?」

スイッチへ向かう一人の看護師さんのナースキャップを念力で外した
キャッー何これー!!勝手に飛んでった!

もう一人がスイッチに手を伸ばす

その時だった 

聡のピアノの音が病院中に響き始めた

「アラッイイ曲ね。もしかして医院長が夕方の合図にでも使ったのかしらねえ 誰か聞いてる?」

その場にいた誰もが知らないと言った

「それいしても綺麗な曲。」

「きっと、医院長先生ですよ。切って怒られたら私嫌です」

「それもそうね。ピアノだったら暫くはイイかもね。このままにしておきましょう」

やったー!!これで大丈夫。次は肝心のお母さんには届いてるのかな

また、壁をすり抜けて入って行った

その部屋の中にもちゃんとピアノの曲が流れていて、みんなは驚いていた。

看護師さん先生をちらっと見て、スピーカーの電源を切ろうと動いた

「先生!!意識が戻りました。目が開いています。」

お母さんはベットの上で、にっこり微笑んでいた。そうしてピアノの曲に合わせて指を動かせていたの。

「メイなんだろう。ありがとう。聡のピアノ聴かせてくれてるんだね」

「分かりますか!佐藤さんご自宅で倒れていらしたんですよ」

「アラッ先生。心配おかけしました。お料理を作り終えて暫くうとうとしてたんです。誰かが来たって思って、慌てて玄関に向かったらフラフラしっちゃったみたい」
「お気分は?」

「気持ちいいですよ。とっても。長い夢を見ていました。最初はとっても辛い夢でした。でも途中からはまるで天国にいるみたいな気持よさでしたよ。もしかして、此処は天国?」

「佐藤さん。大丈夫まだちゃんと生きていらっしゃいますよ!」

「だって、先生。こんな素敵な曲の中で目覚めたら誰だって天国かと思ってしまいますよ!」

「佐藤さんの血圧正常に戻りました。心拍も良好です」

看護師さんの声 

「佐藤さん。実は一部食道からの出血が見られて貧血になっていたようですが、自覚症状があったんじゃないですか?」

「ああ そうねえ時たまふらついてたかしらね。今はなんともないみたい。」

「はい。内視鏡でその部分を焼いて閉じています。でも、やはり手術は駄目ですか!今ならまだ、助かる命なんですよ!佐藤さん。新しい命を取り出すのがあなたの役目なら、僕達医者は癌という出来物を取り除いてその大切な命を守る事に全てを掛けているんです。同じ医者なら、何故分かっていただけないんですか!」

お母さん?なんで・・助かる命を諦めてしまうの?

もしかして、まだ、私に悪かったからなんて思ってないよね・・。

ピアノの音が止まった

〜この曲を母に贈ります。僕の母は偉大な事を毎日しています。それは新しい命。大切な命をこの世に誕生させるお手伝いをしている医者です。僕は双子でした。姉は残念ながらこの世で産声を上げる事ができませんでした。僕も目が見えません。母は苦しみながら、産婦人科への道を歩みました。我が子を失う苦しさを知っているからこそ、母はその仕事を通して、まるで亡くなった姉に詫びるように出産が無事に終わった夜に必ず、姉の為に編んだ靴下を握りしめて寝ます。50年経った今でも。そんな母が、癌になりました。延命治療を受ける事を拒んでいます。何故・・・母さん。母さんは間違ってるよ。母さんが今、諦めて死んで姉さんが喜ぶと想うの?姉さんは母さんにまだ一杯生きて欲しい筈だよ。今、聞こえてるよね。これは姉さんがしてくれたんだよ。母さんに元気になって欲しいって。僕のピアノを聴いて頑張って勉強していたあの頃を思い出してほしいって。母さん。僕だって同じだよ。命を守る仕事をしている母さんが誇りなんだ。Dから僕だって頑張ってこれた。母さん、生きて!生きてよ!まだ、その希望を捨てないで。あの頃みたいにがんむしゃらに頑張って生きようよ!」


聡の声に変わってピアノの音色が響いてきた。

今度はバイオリンと一緒だった

「聡・・・なんて優しい曲なんでしょう」

そこにいた誰の目も赤くなっていた

緑の服の先生なんて鼻をかんでいた

「佐藤さん。良い息子さんですね」
まだ、かすれたような声で先生が言った

「はい、本当にあの子には、随分助けて貰いました。先生。今まで我がままでした。ごめんなさい。宜しくお願いします」

「佐藤さん。手術受けて頂けるんですね!!良かった」
ヤッター!!お母さん手術受けるんだね!!

お母さんより、その先生の方が泣いていた。
後で知ったんだけど、あの先生。実はお母さんが、取り上げた第1号だったんだって!

ホントに助けたかったんだね。感謝だよね。

その後 お母さんは手術が成功して癌の転移した部分の摘出も2回行われたんだ。

末期がんって言ったのは、自分が諦めてしまったからあの年配の看護師さんに言ってたんだけど、まだ、手術で治る段階だったんだって。

聡はもうすぐお父さんになるんだよ。

そうそうあの時の響子さんと結婚したんだ

なんと双子!!

メイはどうしてるのかって?

メイはずっと旅を続けていたよ

日本中を飛び回ってた。もうそろそろ赤ちゃんが生まれるかも知れないから戻って来たんだ

弟子と一緒にね!!

アレ!知らなかった?天使になったら、先輩として後輩の天使を一人面倒みるの

なんでメイにはそんな先輩いなかったのって!

いたよ!でも、どの先輩もメイの面倒見れないからってりタイヤしたの!一人が楽じゃん。

その頃私って飛べなかったからね。

で、その弟子ってのがまた困った食いしん坊なのよ〜子ブタちゃんみたいに太ってるから羽があるのに飛べないの!!もう、どうにかして〜〜面倒見きれないよ!!

ああ お母さんだ!やっぱり白衣が似合うねえ♪

あれはっ!!響さんだ!!生まれるんだね

「メイ先輩。あのお腹には私、負けてますよね」

「はいはい そうだね。でもあれって赤ちゃん産んだらぺちゃんこになるんだよ」


「いいなあ ねえ先輩この中に赤ちゃんいないですよね?いるんだったらよかったなあ」

「プーミン置いて行くよ!」

「あーん メイ先輩置いてかないで下さいよ!」

おぎゃあ おぎゃああ

おぎゃああ おぎゃあ

双子ちゃん 無事生まれたんだ 良かった

聡おめでとう。
お母さん。おばあちゃんだね。

「アレ先輩!もう行くんですか?来たばかりなのに、少し休ませて下さいよ」

「しょうがないなあ ホラックッキー食べないの!!」

「だって随分歩いたからお腹空いて、背中がくっつきますよ」

「あんた、背中見えないでしょ。分かるの?」

「いやだな〜例えですったら!!」

キャキャ
キャキャ

「笑ってる・お母様。この子達今、笑いましたよね!」

「ああ笑ったね。大かた天使でも見えたんだろうよ。おお可愛いでちゅねえ」

ばればれやん

ほな またな 

ん・・前んとこの訛りが・・・ほな さいなら みなさん おおきに

また 何処かであいまひょ

コホン  また 何処かでお会いしましょうね。

いつか その日まで さようなら

私は聡と彼女が乗り込んだ車の跡をぼうっとしながら着いて行った。

あんなに願っていたはずなのに、今、羽を使って飛んでいる事が信じられないくらいに
喜びが無かった

聡にはもうメイの事が分からない そっちの方がショックだった。

「お母さんにも、もうメイの事見えないのかな…本物の天使になんてならなきゃ・・・」

天使になれなかったら、消えてしまう事も忘れるくらい、無性に話しがしたかった

「お母さん、聡、やっと会えたのに・・」

私の目から滴がこぼれた

緑に囲まれた大きな建物の駐車場に車は着いた

ここが今夜聡が演奏するホール。

聡、メイはちゃんと聴くからね。聡のピアノ。

車から降りて歩き出す二人は、とても楽しそうだった。

あの二人ってお似合いかもね・・メイの事なんて忘れて、聡は笑っていて欲しい

少し落ち着いた私は、二人の後ろ姿を眺めながらそう思った

「メイ!!しっかりしろ!!あなた、仮にも天使でしょう!人間の幸せを見守らなきゃ!」


そうだった、メイは天使、本来人間の幸せを手助けしたり、見守るのが役目なんだ。
自分の事ばかり考えていたんだ。

ホールの控室に着いた二人は、笑顔であいさつを交わして別れた

会場の責任者らしい男の人がやってきて、打ち合わせを始めていた

「では、演奏開始は17時でお願いします。リハーサルはこの後直ぐに出来ますので、宜しくお願いします」

男の人が出ていった。

私は、もう一度聡の目の前に立ってみた

でも、聡にはやっぱり私は見えていない

「聡・・もう話せないんだね」

その時、扉が開いて、さっきの彼女が入って来た

「あの、リハーサルに行かれますか?今日は私が聡さんの案内役になったんです。よろしくお願いします」

「ああ、あなたえっと、響子さん。こちらこそよろしく。」

「まあ名前覚えてくださったんですね。ありがとうございます。」

二人の顔は笑顔で輝いていた。

聡にはもう、メイは必要じゃないね。

ちょっぴり?ううん。凄く寂しいけど、聡の笑顔を見た事で私はその場所から、離れた

お母さんの所へ行ってみよう。お母さんなら、きっと分かってくれるはず

背中の羽を広げてみた。

よし!!一人前の天使になった姿をお母さんに見て貰おう!

私ったら、自慢したくてしょうがなかったみたい

お母さんのいる病院までを急いで飛んだ

さっきはぼうっとしてたから分からなかった空からの景色を、今度は思いっきり味わいながら飛んだんだ。 すれ違う鳥の驚いた顔や、天使の子がお祝いを言ってくれた 

「ついに飛べるようになったんだ!これで、メイも本物の天使だね。」

その言葉が嬉しく感じられた。


病院の前には、救急車が停まっていたの

「また、誰か運ばれたんだ・・赤ちゃん産むのって大変なんだね」

って、また、お産の人が運ばれたって思ったの。

でも、違ってた。

担架の上にいるのは

「お母さん!!どうしたの!!」

苦しそうな顔で、横になっていたのはお母さんだ!

一体どうしたんだろう。さっきまであんなに元気だったのに・・。

「お母さん!メイだよ!!どうしちゃったの?」

お母さんは聞こえないのか、目は閉じられたままだった

「どなたか一緒にお願いします」

救急隊員の呼びかけに、あの時、手術室にいた、年配の看護師さんが慌てて乗り込んだ

眼鏡の先生は、心配そうにしていたけど、その看護師さんが言った

「先生、後は頼みましたよ。しっかり守ってて下さいね!」
っていう言葉に、ハッとしてうなずいた

サイレンを鳴らして救急車が走りだした。私はその車のドアをすり抜けた

「お母さん・・どうしちゃったの・・」

あんなにしゃきしゃきしていた手術室での姿とは違って、目の前にいるのは年老いた様子の母だった。看護師さんが、救急隊員に告げた言葉

「実は、先生、末期の食道癌なんです。痛みは薬で抑えていたんですが、延命治療はしないっとおっしゃってて・・」

「そうでしたか、では、掛り付けの病院へ連絡しましょう」

看護師さんはお母さんの手を握ったまま、うなずいた。

「先生。まだですよ。明日は聡さんの50歳の誕生日でしょう。記念の日になるっておっしゃってたじゃないですか」

看護師さんの声が震えていた

お母さんがもうじき死んでしまう・・そんな・・・。やっと、やっと会えたのに。

私は何か出来ないの?
天使のくせに、何にも・・・。落ちこぼれのままで良かったのに。お母さんや聡と話しが出来た方が嬉しいよ!!

私は天使になんて向いてなかったんだ。最後の最後にこんな悲しい事になるなんて。
せめて、お母さんの命を守る事が出来るんなら、私の天使としての資格なんていらない!消えてしまってもかまわないのに・・・。

救急車がブレーキをかけた

病院へ着いたんだ

待っていた大勢の人にお母さんの乗った担架が運ばれていった

なんとかしなきゃ。なんとか
私はマザーの処へ行く事に決めた
これまでは飛べなかったから、天使の梯子を使っていくその場所へ行く事は出来なかったけど、今ならそれが出来る

良かったんだ。羽を使えるようになった事って・・。

初めて、羽を使って飛べる事を喜ぶ事が出来た

感謝!空が明るくなってきた!

雲の隙間から差す光。天と地上を結ぶ梯子

仲間の天使はその梯子を使って
自由に天上界と地上を行き来していた。

今だ!!

天使の梯子が見えた!

私はその梯子目がけてスピードを上げた

何人かの人の魂が昇っていっている。仲間の天使がその魂を案内していた。

「お先に失礼!!」

「メイ!!飛んでる!!おめでとう!!」

先を行っていた天使から声が飛ぶ

応えてる時間はないの ごめんね!!

私は天上界目がけて飛んだ

マザー!!

マザーは既にそこで私の到着を待っていた

「メイ、おめでとう。これであなたはもう消える事はありませんよ。後は天使としての仕事をしっかりおやりなさい」

「マザー!!お願いです。やっと、やっと会えたんです。お母さんと弟に!!幸せでした。ほんの短い時間だったけど、二人に会えたんです。マザーならもう分かっていらっしゃいますよね!」

マザーは静に微笑んでいた

「マザー私は消えてもいいんんです。どうか、母を助けて下さい!!お願いします!」

マザーは泣いている私の傍に来てそっと抱きしめてくれた

とても温かく、優しい光で包まれているようだった

「メイ。運命は変えられないのです。人や生き物には、その者に与えられた命に寿命があります。私たち天使には、その寿命を変える事は許されません。私たちに出来る事は、その最後の時を幸せに導く事です。メイ。あなたにも分かっているでしょう。」

マザーの瞳が優しく見つめる

「でも、でも・・。マザー!」

「メイ。あなたはもうお母様の魂を幸せへと導いています。あなたに会えた事で、お母様の長年の苦しみが癒されたのです。あなたを死なせてしまった苦しみを、お母様はずっと胸に抱えていました。メイは知っていますか?お母様が何時からお医者様になられたのか」

「マザー?」

「そうです。あなたを失ってしまった哀しみから暫くは口もきけないほど沈みこんでいらしたのです。目が見えない息子さんの事も自分の責任だと、深く悩んでいらしたのです。でも、その息子さんが5歳になった時に、お母様に言った言葉で、お母様は立ち直る事が出来て、お医者になられたのですよ」

「聡が・・。」

「お母さん、僕、目が見えなくたって幸せだよ。二人分の幸せを僕が一人占めしてるんだもん。お姉ちゃんみたいに生きたくてっも死んじゃった子の魂ってね、天使になるんだって!でも、天使になる子が増えるのは僕嫌だな、だって、お母さんみたいなお母さんが増えるって事だよね!僕ね、とっても悲しそうなお母さんが増えないでほしいんだ」

マザーの瞳を覗き込むとその時の映像が鮮明に見る事が出来た

「お母様は必死に勉強をして、自分みたいな悲しい経験をするお母さんを少しでも減らしたいと考えて、今のお仕事をされていらしたんです」

お母さんの哀しみの事なんて考えてなかった

ずっと、聡と幸せに暮らしていたと思っていたんだもん

「聡さんは勉強しているお母様を少しでも元気にしようと、お母様の好きだった曲をピアノで弾いていらしたんです。」

マザーからいろんな話を聞いて、私は、死んでしまって天使になった自分よりも、生きて生活していた二人の方が沢山の哀しみを乗り越えて、そして努力をして幸せを手に入れていたのだと知った

「お母様は、あの手術室で貴方と逢った事で自分の終わりを感じていらしたのですよ」

「あの夜、お母様はちゃんと覚悟なさっていたのです

メイ、家に帰ってごらんなさい

あなたに宛てた手紙があるはずです

聡さんへの手紙は、ある方が預かっていると思います。」

「メイ。私たち天使の役目を果たしなさい。それがお母様の願いです」


マザーは私の額に優しく触れた

また、温かな、優しい物が身体に沁みていった

「マザーありがとうございました。私は、私の役目を果たします」

二人が生きてきた50年

わたしは何をしていたんだろう

落ちこぼれの天使でいいやって、ずっと、諦めて過ごしてきた

行こう 地上へ 

天使の梯子は消えかけていたけど、もう迷わない

まっ直ぐに向かう あの場所へ

羽が‥羽が開いた

あと少しで、完全に羽をはばたかせられる

「めい姉さん、僕は出掛けるよ。コンサート絶対にきてよね 待ってるからね」

「うん。絶対に行くからね。頑張ってね、聡」

「母さん じゃあ、僕は行くよ」

「ああ いっといで 今夜はお前の好きなチラシ寿司と茶碗蒸し用意しとくからね!」

「ありがとう!行ってきます。」

聡は、一人で、出掛けて行った

「おばあちゃん・・お母さん。聡は一人で大丈夫なの?」

おばあちゃんはにっこり微笑んだ

「ああ、通い慣れてるホールだからね。あの子が小さい頃から通い続けた道だよ」

それでも私は何だか胸騒ぎがした

「お母さん、私やっぱり、聡と一緒に行くから!」

「おや。そかい じゃあ いっといで。」

おばあちゃん お母さんは何だか寂しそうな顔をしたけど、私はそのままにして開いていた扉から外へ飛び出した

階段の下の道を杖をつきながら歩いている聡が見えた

声を掛けようとしたけど、驚かせたくなくって、急いで階段を駆け降りた。

目の端に白いボールが転がってくるのが見えた!


聡の足元に向かっている

「聡、ボール!!」

大きな声に聡が立ち止まった

次の瞬間

小学生の男の子が走ってきて、止まりきらずに聡にぶつかった

男の子を抱いた格好のまま、よろよろと聡の身体が道路に出てしまった

「危ない!!」

聡は、男の子をとっさに歩道の方へ、押しやった。

車が迫っていた

私はめいいっぱいの念力で車を止めようとした
運転手が倒れている聡に気が付いてブレーキを踏む!

「止まれ!!」

私はそう叫びながら 必死で羽を動かした

ふわり

信じられない

突然、身体が地面から離れて宙に浮いていた

「やったー!!ついに飛べた!急げ!!」

聡の目の前に迫る車

聡は必死に逃げようとしていた

「おじさん こっちだよ!!」

さっきの男の子が手を伸ばしていた

車の前に私は立つと念力を強めた

キューガッーガーッー

パーン
車は私の身体をすり抜けて止まった。
ほんの一瞬の差で、聡は男の子の手を掴んで歩道へと戻っていた

アレ?おかしくない?だって、私って壁の通り抜けも出来ないんだったよね今はそんな事より

「聡!大丈夫!!」

男の子が泣きじゃくっていた

「怖かったね。もう平気だよ。ボールは安全な処で遊ぶんだよ」
「ボール・・・もう潰れて使えないよ!!」

車から降りてきた運転手が男の子と聡の身体を見ていた

「大丈夫ですか!!アッもしかしてピアニストの聡さんですよね!」

髪の長い綺麗な女の人だった

「はい。あなたも驚いたでしょうね。済みませんでした」

「いえ、無事でよかった。私だって人を轢きたくなんてないですから」

男の子のお母さんが走ってやってきた

車のブレーキ音を聞いて慌てて来たみたいだった

なんども何度も頭を下げて親子は帰っていった

「あの・・もしかして、今夜のコンサート会場へ行く途中ですか?」

「よく分かりましたね!」

「実は、私、そのホールで今日、スタッフとしてお手伝いさせていただくんです。よろしかったら一緒に乗って行きませんか?」

何だか結構イイ感じ!!

メイも乗せて!!

「聡、乗っていこうよ!!」

アレっ変!!
聡に聞こえてないの?

「ねえったら、聡!!」

聡の目の前で、手を振った

でも、聡に私が見えてない?

どうして・・・。

私は、その事がショックで、自分が、本物の天使になって、羽を使って飛んでいる事への喜びよりも、自分の姿も声ももう、届かない事が悲しかった

 

「早くに生んでしまった。私のせいなんだよ」

「おばあちゃん。じゃなかった お母さん」

「あはっはっは おばあちゃんでいいよ!いきなりだったからねえ」

「お母さん、お母さんが悪いなんて事、ありませんよ。」

「聡・・」

聡は私が見えているって言ってた

この二人が、本当に私の家族なの?

「めい姉さん。聴いてくれる?この曲はめい姉さんの為に作ったんだ」


聡はまた、ピアノの前に座るとその白くて長い指で、ピアノを弾き始めた。

「なんて、優しい曲なんだろうね」

おばあちゃんは香りのイイコーヒーを淹れながら呟いた

聞いているうちに私は何だか眠くなってしまって、いつの間にか本当に眠っていた

目が覚めて辺りを見回した。
部屋の中はもう暗くなっていて、誰もいなかった。

ピアノは?

あの真っ白い大きなピアノが無い

おばあちゃんがいたキッチンも無い

此処は何処?


フワフワと身体が揺れる
「気持ちいい。温かいあの時と同じだ!もう少し眠っていよう。きっと、夢見てるんだ。」

メイはまた眠っていたの

温かな水の中をフワフワと浮かびながら

「メイ メイ姉さん。大変だよ。」

目を開けると、赤ちゃんの聡がいた

「お母さんが大変なんだ。ホラッ姉さんの羊水が減って来てる。早く此処から出なきゃ」

「聡、メイ何だかもう力が出ない。聡先に行って。」

「何言ってるの!一緒に行こうよ!」

「いいんだって、私はこのまま此処で眠ってるんだから」

「だって、一緒にじゃないと、僕だって行けないよ」

「聡だけ行ってったら!」

「メイ姉さん。忘れたの?僕たちは一心同体だって事」

「何それ?凄く眠いの、ほっといて・・。」

「姉さん、僕と姉さんは背中でくっついているんだよ!」

えっ!!

そう言えば背中に聡の体温を感じている。

声だって 後ろから聞こえていた。双子って言ったから同じお腹の中にいるのは、当たり前だと思ってたけど、背中がくっついてたの?

「ホラッ急ごう、お母さんも苦しんでるんだよ!!」

「分かった、分かったから引っ張らないで!聡強いよ。痛いって!!」

私ったら、ぐっと握っていた手を開いて、聡を背中から殴ったりして抵抗してた。

「痛い!!うわああん痛いよ〜目が痛い!!」

突然の悲鳴

赤ちゃんの指にだって爪がはえてるんだね

私の指の爪で聡の目を傷つけていたんだ

「聡!!ごめんね!!聡大丈夫?早く行こうね、早くでよう!」

目の前が急に暗くなった聡を背中にくっつけて、私は出口を探してた。

心臓が爆発しそうだった。

「どうしよ。どうしよう。聡。聡。」

背中の聡は黙りこくっていた。

その時、急に眩しい光が天井から降ってきた

「光だ!あそこから出れるんだ!聡!もうすぐだよ!ホラッ光が見えてるよ!」

聡の返事は無かった

「聡?どうして何にも言わないの?」
心臓がまたドックンドックン耳にこだました

「メイ姉さん。覚えてて。もし。この目が見えなくなっても、僕はメイ姉さんが大好きだからね。

ずっと、一緒に居られて嬉しかったよ。メイ姉さん幸せになってね」

「何言ってるの?聡?そんな、お別れみたいな事言わないでよ!!嫌だよ?ずっとずっと一緒にいるんだよね?」

眩しい光の中で、私と聡は先生の手によって取りだされた。

「やはり此処で繋がっていたのか。直ぐに切り離そう!」

「先生!二人とも、二人とも無事なんですよね?」

若い女の人。お母さんの声

看護師さんが、お母さんの目に見えない様にと、私と聡は、直ぐに別の部屋に連れて行かれた

そこには、別のお医者さんが待っていた。

背中と背中。皮膚だけだと軽い手術で済むんだ!良かった!

「片方の赤ちゃんの心音が弱っています」

「そんな・・そうかとにかくマッサージも並行してするんだ。」

看護師さんと若い先生の会話

「聡?心臓動いてないの?聡!返事してよ!聡!!」 

沢山の人がざわざわと動いていた。

「おんぎゃ〜おんぎゃ〜〜」
「えっ!聡!!良かった!大きな声だね。もう大丈夫!!」

「先生、心拍戻りません。弱まっています」

看護師さんったら、今、大きな声で泣いたでしょ! 

ん?そっかあ 私なんだ。私の方が弱ってるんだ。そいう言えば苦しい。息が出来ないかも

でも、聡が無事で良かったなあ。聡、お母さんをお願いね!お姉ちゃんのせいで聡の目が見えなくなったらどうしよう・・本当にごめんね。もし、無事に生きてたら、お姉ちゃん聡に目をあげるよ

はあ また眠たくなってきた 聡、お姉ちゃん眠るね。


ここまで リアルな夢って

あり?

私、今自分が死ぬところ見たんだね
そうだったんだ こんな風だったんだね

聡に目ってあげられなかったね ごめんね

シャー
カーテンが開けられて、外の光が眩しかった

白いピアノもちゃんとあった。キッチンではおばあちゃんが朝ごはんの用意をしていた。

「おはよう メイ姉さん!」

聡が声をかけた

「聡、ごめん!!全部私のせいだったんだ。聡の目が見えなくなったのって・・・」

「姉さん、まだ気にしていたの?大丈夫だって言ったでしょう。今夜、僕のコンサートがあるんだ。もちろん 来てくれるよね!」

「へえ 聡ってコンサートするんだ!凄いじゃん!」

「結構売れっ子なんだよ!こうなれたのだって、姉さんのお陰なんだから」

「はい。出来たよ。お食べ」

テーブルには美味しそうなご飯とおかずが並んでいた。

「今朝は張り切ったんだね!」

三人で座って食べる朝ご飯

天使ってご飯食べるのかって!!

時と場合によってはね!
念じて〜〜物体を動かす!!
ヨシヨシ。

今朝はン〜何だかいけそうだよ!
「いただきます!!美味しそう!アッチ!」

ヤバイ、猫舌になってる!

「ゆっくり お食べよ。逃げないからね」

おばあちゃんが笑った。聡もお笑った。私も笑ったんだ。

「おや めいこ、昨日よりもっと羽が広がってるよ!」

「ホントに!!」

あと少しで本当に羽が開いて飛べそうだった

「良かったね。メイ姉さん」

「ありがとう!!」

もしかして、落ちこぼれ天使じゃなくなる?

そうなったら、魔法も使えて・・聡の目も治せるかな?

「ホーホケキョ〜〜ピィピピピ ホ〜〜ホケキョ」

「春だねホトトギスが庭の梅の木に来てるよ!」

「おばあちゃん!今日って何日?」

「今日は3月30日だよ。僕のコンサートの日だからね」

どうしてだろう 何時の間にこんなに日が過ぎたんだろう。

人間と一緒にいるから?一日が凄く早く感じる。ヤバイ あと1日で3月って終わりじゃん!

どっちが早いか!羽が広がるのが早いか、それともメイが誰かの役に立つのが早いか!! 

「メイ姉さん!味噌汁零れてるよ!」
「あああ しまった!」
集中が切れちゃった

お椀は床に転がっていた。

うう痛い!チクッって今した!  

変だ 変だぞ 胸が痛い?
背中の羽をバタバタさせてみた。先っちょがまだくっついている。

急がなきゃ  消えてしまう 聡の目をどうにかしたい・・・。

おばあちゃんは、メイの落としたお椀を拾って、汚れた床を雑巾で拭いていた。

「めいこ お前此処にずっといれないのかい?お前さんの姿が少しばかり薄くなってきてるんだ」

「ちょっとまったー!!おばあちゃん?何言い出すの?」

机の上に置いてある写真

そこには今の私とそっくりな顔の男の子がいた。

「これは・・誰なの?」

「あたしの息子だよ。そして、お前さんの弟さ」

「またまた、そんな冗談を〜〜確かに似てるよ!でも、私の年聞いて納得してね!!」

おばあちゃんは潤んだ瞳で、まるで愛しい子をみているようだった

「99歳!!ほらね!!分かったでしょ!メイがおばあちゃんのこどもなわけないじゃん」7

「お前さん。それって人間の年なのかい?犬や猫だって年の数え方があるんだ。天使の年齢は人間の倍の速さなんじゃないのかい?」

「そんな〜〜ちゃんと教えられたんだよ!」

「誰にだい お前さん何年に天使になったんだい?」

「えっと〜〜確か  1961だったかな?1年に一人の天使しか生まれないから、その年が天使ナンバーになるんだって!」

「1960年 4月1日 私が子ども産んだ日、そして、失った日だ。」 

何だか、おばあちゃんの真剣な顔を見ていたら・・私は指を折って数えてみた。

「えっと・・おばあちゃん、今って何年だっけ?」

「2010年さ。もうすぐ息子も50歳だ」

アレレ おかしい何度数えても49年にしかならない。

「メイってほんとはまだ49歳?なんで99歳って想ってたんだろう・・確か 天使の年って・・そうだったんだ!!あの時マザーが言ってたのは、半人前って意味じゃなくって2分の1って意味だったんだ。おばあちゃん!そうだ!マザーって天使の一番偉い天使で、そのマザーが言ってた。人間の年齢はあなた達天使の半人前つまり、2分の1時間なんだって!じゃあ、天使の1年って人間だと半分の半年。だとすると??」ああこんがらがる〰〜数字って苦手!!


「あたしの主人の名前が明と書いてあきらさん。あたしが聡子さとこ。最初に生まれて来た子に明さんの漢字を付けて明子めいこ、二番目の子にはあたしの漢字で聡さとる。」


おったまげ〜〜びっくりもいいとこ
メイって、このおばあちゃんの娘だったの!!だからなの?

天使の私の姿を見る事が出来たのって・・・・

「お帰りなさい めいこ」

おばあちゃんの瞳から涙の滴がぼとぼと落ちていた

まだ、よくわからないけど・・

「ただいま・・・」 

「あの  それで、おばあちゃんは幾つなの?いや お母さん?」

涙を拭いながらおばあちゃんは笑ったよ

「あたしは70歳。あなたたちを20歳で産んだからね」

「じゃあ。ちょうど杏ちゃんくらいの時だったんだね!」

「そうなんだ。あの時も今日と、同じような感じだったんだ。まさか・・・」

おばあちゃんの顔が曇った
「メイなら平気だよ!死んじゃったんだよね。赤ちゃん。」

「ごめんよ。ちゃんと産んであげれなくって」

「仕方ないよ!それに、早く死んじゃったから、こうして天使になったんだもん」

「それより、双子って言ってたから、そのさとしって弟に会いたいな!元気なんだよね!オッサンになってるんだろうね!」

「こっちにおいで」

おばあちゃんは、椅子から立ち上がるとスタスタと廊下の奥を目指して進んだ。


「此処は?」

「病院から家への階段に繋がってるんだ」

真っ白い壁の中を歩いて母屋のドアを開けて入って行った。

「聡!」おばあちゃんが・白いピアノの前にいた男の人にお母さんが呼びかけた。

「ああ やあ来たんだね もうそろそろ来る頃だと思っていたよ!」

一体、聡は誰に向かって言ったのだろう。お母さんに?まさか聡まで私が見えるの?

「めい姉さん お帰りなさい、」

聡に名前を呼ばれてびっくりした
もう一つ。

聡は白い杖をついて、私の前まで歩いてきた

「目が見えないの?」

「あはっはっは。目は見えないけど、めい姉さんはよく見えてるよ!」

「聡は生まれつき、目が見えないんだよ」

私は聡とお母さんを交互に見て突っ立っていた。

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