森のパンやさん 幸せ色のパン編

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大地の息吹  3

「こんにちは!おばあさん、マリーさん!!」
カチガラス君はおばあさんの家に着くと急いで荷物お籠を下ろしました。
扉が開いて、おばあさんが顔を出しました。
 
「おやまあ カチガラス君じゃないかい。ジャムさんに何かあったのかい?」
マリーさんも赤ちゃんのゆりかごの傍から心配そうに見ていました
 
「ジャムさんは元気です。でも、ミミさんのお母さんが亡くなってしまって・・」
 
おばあさんとマリーさんは顔を見合わせました
 
「お気の毒に。随分長い事辛かっただろうに。でもきっと天国から見守ってくれてるだろうよ。もうすぐミミちゃんもお母さんだろう?」
マリーさんはカチガラス君とおばあちゃんを見てからそっと赤ちゃんの髪を撫でました
 
「ミミちゃんは大丈夫だった?」
「何だか顔色も悪かったです。ふらふらしてた」
 
おばあさんがミルクを温めてカップに入れて持ってきました。
「おやおやミューも来てたのかい。いますぐミューにも持ってこようね」
 
おばあさんの言葉にカチガラス君は初めてミューが着いてきたことを知りました。
 
「どうしてミューがいるんだ!」
「あらあらカチガラス君一緒に来たんじゃなかったの?」
マリーさんも驚きました。
普段は滅多に外に出ないミューでした。幼い頃の虐められた記憶が残っているからなのか、ジャムさんのお店の周りしか出歩くことはしませんでした。
 
ミャー
 
一声鳴いてカチガラス君の足元へ身体を擦り寄せます。
 
「よしよし。よく遠くまでこれたね。喉乾いたでしょう。はい、お飲みなさい」
 
おばあちゃんがミューの頭を優しく撫でました
お皿に入ったミルクを飲み始めたミューを首をかしげてカチガラス君は見ていました。
 
「ねえ、カチガラス君。お前さん何かトラブルに巻き込まれてないかい?」
おばあさんが尋ねます
 
「どうしてなの?」
マリーさんがテーブルの籠の中のパンや花束を大切そうに出しながら、おばあさんに聞きました
「ミューにとって親代わりのカチガラス君だよ。こんな森の奥までミューが着いてくるなんてよっぽど心配な事があるからじゃないのかい?」
 
カチガラス君はおばあさんの言葉にハッとしました。
店を出る時まではこんな事になるなんて思いもしなかったけれど、ミューはもしかして予知していたのかも知れません。
 
「ミューそうなの?僕のことが心配で、君は怖いのを我慢して着いてきてくれていたのかい?」
 
ミューは答えませんでした。
 
ミルクのついた顔を手を舐めて綺麗にしていました。
 
「何かあるんだね!」
おばあさんに言われたカチガラス君は、モンシロチョウから頼まれた事を話しだしました。
カーテンの隙間から光が入る部屋で、赤ちゃんがぐずりだしました。
 
「ローズ、どうしたの、ああ眩しかったのね。さあお出でお乳の時間よ」
 
ジャムさんとマリーさんの赤ちゃん。
カチガラス君は産まれた時に見ただけで、今日は久しぶりでした。
「随分大きくなって、可愛いですね」
「きゃっきゃっ」
嬉しいのかローズは笑った
 
「それで、行くんだね!」
おばあさんが聞いた
「はい。僕約束しましたから。」
「そうかい。じゃあちょっとお待ちよ」
おばあさんは、そう言うと奥の部屋に入って暫く出てきませんでした
「気をつけてね。あなたはジャムと私の大切な友人なんだから」
 
マリーさんがカチガラス君の手に自分の手を重ねました。
 
「さあ、これを持って行きなさい。直ぐに解決できるような問題じゃなさそうだ。」
 
大きなリュックサックをおばあさんはカチガラス君の前に置いた。
 
「いいかい。一人でどうにもならなかったら直ぐに助けを呼ぶんだよ。キツツキだっていいし、鳥ならだれでも知らせてくれるだろうからね」
 
「おばあさん。ありがとう、あのミューはどうしよう。預かってくれますか?」
 
「あはっはもういないよ。先に出て行って待ってるんじゃないかい。此処に置いてけぼりされそうだって分かったんだろうよ」
 
見たらミューの姿は無かった。
「大丈夫よ。あなたとミューは相棒でしょ。」
マリーさんがウインクした。
きゃっきゃっ
ローズが笑った。
 
「じゃあ 行ってきます。あの・・ジャムさんにはマリーさん」
「ええ、私から伝えます。今はミミちゃんの事で大変だろうから夕方にでもキツツキさんを呼んで手紙を送るから」
カチガラス君は頭を下げた
 
「お願いします。じゃあ僕行ってきます!」
「しっかりやってくるんだよ。」
「気をつけて、無茶はしないでね」
 
おばあさんとマリーさんに見送られてカチガラス君は軽くなった自転車にまたがりました。
 
「ミュー!!ミュー!」
サッと走ってきたミューが自転車に付いた籠に飛び乗りました。
「よろしく相棒!!」
「みゃー!!」
 

大地の息吹  2

ジャムさんがマリーさんと赤ちゃんを迎えに行けなくなった事を伝える為に、カチガラス君は自転車を森の奥へと急がせました。
森の中はひっそりと静まりかえっていて、お日様の光も木々に遮られていました。
 
湖まで来た時にはカチガラス君は汗でびっしょり。
 
「少し休もう」
湖の水をすくって顔を洗いました
 
湖の上にはお日様のサンサンがいましたが、サンサンは居眠りしているのかカチガラス君には声を掛けてきませんでした。
「お昼なんだ。そうだジャムさんが僕に持たせてくれたお弁当のサンドイッチを食べよう」
 
籠の中にはちゃんと「カチガラス君へ」って書いてある紙袋がありました。
ちょうど座り心地のよさそうな石があったので、腰をおろして食べ始めました。
カチガラス君の目の前をモンシロチョウが飛んでいます
「さっきのと同じかな?」
モンシロチョウはカチガラス君の周りを飛び続けました。
食べ終わったカチガラス君が立ちあがって自転車にまたがると、そのモンシロチョウもずっと付いてきます。
 
「何か話しがあるの?」
 
気になったカチガラス君が聞きました。
 
そのモンシロチョウはカチガラス君の手に止まりました
 
「お願いがあるんです」
「どうしたの?困ったことでもあるのかな?ジャムさんならなんでもできるけど、僕じゃ力になれないかもしれないよ。」
 
「あなたにお願いがあるんです。」
「僕で出来る事ならいいんだけど・・話してみて」
 
「この森の先。谷の向こうの草原が大変な事になっているんです」
「草原が?」
「はい。私たち昆虫にとって命に関わる大変なこと」
「君たちの命が!」
「花や草がどんどん枯れているんです。水も濁っていて、魚達も逃げていなくなりました」
カチガラス君がジャムさんの店に住む前、その谷も草原にもよく行っていました。
仲間のいないカチガラス君は草原で寝転がって空の雲を眺めるのが好きでした。
 
あの頃は川にも魚がたくさん泳いでいました。
水も綺麗だったのに。
「なぜそんな事になったんだ!」
 
モンシロチョウは哀しげに眼を伏せました。
「ジャムさんに本当は相談しようと思っていました。ちょうど、ウサギさんが泣いてたから・・・諦めて帰ろうとした時、あの店でカチガラスさんを見て思いだしたんです。あの時のカチガラスさんだって。草原を好きだったカチガラスさんならきっと助けてくれるって。」
 
一体何が起きたんでしょう
カチガラス君は腕組みをして考えました。
 
「この荷物を届けなくちゃいけなんだ。その後なら、行ってみるよ。僕に何ができるのか分からないけど。それでいいかい?」
 
「もちろんです。あの・・谷は分かりますよね?」
「ああ ちゃんと覚えてるよ。」
「良かったー仲間が心配しているでしょうから、私は先に戻ります」
「分かった。後から必ず行くから。」
 
モンシロチョウは嬉しそうにひらひらと高く飛んで見えなくなりました。
 
カチガラス君は急ぎました。
 
マリーさんたちのいるおばあさんの家まであと少しです。
 
 
 
 
 
 
 

大地の息吹  1

ジャムさんのパン屋さんの朝は早い
 
まだ、暗いうちから起きてジャムさんとカチガラス君は準備を始めます。
 
今朝も変わらない光景の厨房でした。
 
小鳥達が賑やかにさえずり
店の前に置いたパンくずの入った箱の周りを囲んでいました。
 
お日様が顔をゆっくり出す頃には森じゅうにバターが入ったパンの焼ける香ばしい匂いが漂います。
いつものようにカチガラス君が店のドアを開けて看板を出しました
 
小鳥たちが一斉に挨拶します
 
奥からジャムさんも出てきてみんなに声をかけていました
 
「やあ サンサン 今日も君に逢えて嬉しいよ。気持ちのいい朝だね。」
 
「やあジャムさん、カチガラス君。今朝も早くからご苦労さん!ところで可愛い天使ちゃんにはまだ会えないのかな?」
 
そうよそうよ
早く会いたいわ
いつなの?
名前は?
小鳥たちが口ぐちに聞いてくる
 
ジャムさんはニコニコ笑顔
カチガラス君もそんなジャムさんを見てニコニコ。
カチガラス君の足元にはミューがニッコリ。
 
「ジャムさん。マリーはいつ帰るんだい」
「今日の午後には迎えに行くよ」
 
みんなが喜びの声をあげる
愉しみね
楽しみだわ
きっとマリーさんに似て可愛いんでしょうね
アラっジャムさんに似てても可愛いでしょ
店の前には
小鳥たちの他にも森の動物たちが集まっていた
 
みんなが笑顔いっぱいのジャムさんを見て笑顔になった
 
今日はマリーさんと赤ちゃんが森のずっと、ずっと奥のおばあさんの家から帰ってくる日でした
 
「あの・・もうパンは買えますか?」
最初は声が小さくて誰にも聞こえなかった
「あのーパンをください!」
みんなが声の方を見た
 
そこにいたのは
 
真っ赤な目に涙をいっぱいにしたミミちゃんでした
「ミミちゃん。どうしたんだい。お母さんに何かあったのかい?」
ミミちゃんのお母さんは昔から身体が弱く、ミミちゃんが長い間看病していました。
ジャムさんが街へパンを売りに行く時は、必ずミミちゃんの家に寄って蜂蜜や森で採れた果物を持ってお見舞いに行っていました。
 
「ジャムさん・・・お母さんが・・お母さんが・・・一昨日・・・」
わあーっと泣きだしてジャムさんの胸に飛び込んでいました。
 
ジャムさんはミミちゃんの背中をそっと撫でました
ミミちゃんはふっくら膨らんだお腹に手を当てていました。
 
ミミちゃんはもうすぐお母さんになります
 
ミミちゃんがまだ小さい頃からジャムさんは、このうさぎの親子を見守ってきました。
お母さんの看病を献身的にしていたミミちゃんが去年、お嫁さんになった時、お母さんと手を取り合ってジャムさんは喜びの涙をながしたものでした。
先日、訪れた時もベットの中から青白く弱々しい笑顔で、赤ちゃんの誕生を愉しみに頑張るってジャムさんに話していたお母さんでした。
 
「大好きだったパンをお墓に・・」
 
賑やかだった小鳥たちも、今は静かに二人を見ていました
サンサンは黙って目を閉じて、ゆっくり昇っていきました
 
カチガラス君は足にぴったりくっついたミューの頭を撫でました。
 
ジャムさんは郵便屋のキツツキさんを呼ぶようにカチガラス君に手で合図を送りました。
 
「僕が行ってきます。ちゃんと事情を話してきます」
 
ジャムさんはミミちゃんを店の中に連れて入っていきました
 
カチガラス君は看板を『本日おやすみいたします』にしました。
 
カチガラス君が準備を始めると、ジャムさんが自転車の鍵を持ってきました。
自転車の後ろにはパンに入った籠が結んでありました。小さな花束も。
 
「マリーとローズ。それにおばあさんに。よろしく頼んだよ」
 
カチガラス君は頷いて受け取りました。
 
春の訪れを告げるようにモンシロチョウが飛んでいきました
その蝶が飛んでいった森の奥のずっと奥に向かってカチガラス君は漕ぎ出しました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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