いつか・・

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いつか・・其の28

英二・・・
 
声にならない
息をすることも、瞬きも忘れるほどの奇跡が目の前で起きていた
 
アキの天使のような笑顔
愛おしそうに我が子を見つめる父親の姿がそこにあった
 
英二の身体が震え
ゆっくり顔を上げた英二が私を見つめてる
その瞳には
私を愛してくれていた
あの頃の私を包み込むような温かさが宿っていた
 
い つ・・・か
 
左腕がゆっくりと上げられて
アキを抱いた私の背中にまわる
アキを抱いたままの私を英二が抱き寄せた
 
英二・・・・英二・・名前・・思い出したのね・・・・
 
・・・僕の・・・・・
 
僕の・・・いつか・・・・良かった・・・・無事で・・・・
 
英二・・・
 
英二の両腕の中に抱かれた私とアキ
英二のシャツが私の涙で濡れていった
 
神様・・・感謝します・・・アキ・・・アキがパパを夢から醒ましてくれたのよ
アキ・・ありがとう・・
 
いつか・・ありがとう・・生きててくれて
アキを産んでくれて・・・ありがとう
 
英二・・良かった!良かった・・本当に良かった・・
 
顔を見せて・・いつか・・・
 
英二の腕がほどかれた
 
涙でぐしゃぐしゃになった顔をあげる
 
もう・・逃げたりしないから・・・
いつか・・僕とこれから先も歩いてくれるかい?
 
当たり前でしょー!何言ってるのー!!
 
逃げ出したんだ・・・僕は・・現実から逃げ出して・・・何もかも一度は捨ててしまった
大切な君とアキを置いて逝こうとしてた・・・
 
ばかー!!
英二が
英二がいなくてどうするのー!!
これからなんだよーこれから、私たち3人で生きてくんだよー!
 
アキが驚いて泣きだした
 
ぁあ・・アキ・・ごめんね アキに怒ったんじゃないよ・・
ああ 
泣きやんでくれない・・・
立ちあがり背中をポンポンと優しく叩いてなだめた
 
いつか・・・アキを抱かせてくれる?
 
抱いてあげて 泣きやまないかもしれないけど・・
 
英二は左腕と胸でアキの身体を支えた
右手の指が泣いているアキの小さな鼻を頬をおでこを髪を愛おしそうに撫でていく
私は嬉しくて嬉しくてまた、涙が溢れた
英二の細く白い指が泣いているアキの唇を撫ぞる
 
あっ!!
あっ!!
 
二人が同時に声をあげた
 
アキの小さな唇が英二の指を咥えて吸いだした
 
うそー!!
痛っ!!
急に胸が張り出した
 
いつか、アキお腹空いてるんじゃないのかい・・離してくれないよ・・
そう笑った 
英二が笑った 英二が笑ってた  
 
うん、うん、そうだね、もうお腹空いたんだね
 
いつか?お乳あげてみて くすぐったくて仕方ないよー
 
つられて私も笑いながら泣いていた
 
ちょっとーいつかー頼むよー笑ってないで早くー!!
 
ちょっと待って・・用意するから・・
 
涙をハンカチで拭って バックの中から消毒用のテイッシュを取り出した
 
後ろを向いて前ボタンを外す
急に恥ずかしさがこみあげてきた
英二に見せるのは初めてなのだと気が付いたから・・・
 
いつか・・?どうしたの?
 
あっ、ううん。
 
まさか今日、この瞬間を迎えられるなんて思ってもいなかった
英二から名前を呼んでもらうことも
英二がアキを抱いていることも
 
あんなに不安だったこと
願いが叶ったのだ
 
恥ずかしさなんてどうってことない
 
英二からアキをうけとってベッドに腰かけた
英二が見つめる
 
大きく張った乳房
大きくなった乳首
 
凄い・・・こんなになってたんだ・・・
顔が火照る
 
泣きながらアキの口が乳首を捉えて咥えた
リズミカルにお乳を吸っていくアキ
 
英二が横から覗く
 
いつか・・・ありがとう・・・
いつかが居てアキがいる
僕の左手は失くしてしまったけれど
 
僕の
僕の一番大切な二人が此処にいる
 
いつか・・・本当にありがとう
 
英二・・・ありがとう。
 
お帰りなさい 英二
 
英二、これから辛い事も一杯あるかも知れないけれど、何時か
 
何時かきっと笑い話に変わるよ
 
そうだな
失くした物はもう戻らない
でも、こうして僕にはまだ未来がある
いつかとアキがいる
 
三人で歩いていこう
 
大丈夫 わたしがいるから
英二の左手にだって何にだってなるよ!!
 
いつか・・
 
何時か絵を描きたいなあ・・この瞬間を僕は忘れない
この右手で描きたい・・・。
 
これから、訓練しなきゃ!!
アキがお箸を使うようになるまでに
英二が右手使いこなせるようにならなきゃ!!
 
大きな声にびっくりしたアキが大きな瞳で見てた
 
ごめんね。大きくてびっくりしたね
アキー!パパね頑張ってくれるから、アキがお箸を持つ時はパパに教わってね
 
パパ・・・そうだね
僕がパパ・・パパかあ
がんばろう・・今日から始めるから
 
うん。
今日から始めよう。
今日からスタートしょう!!
 
                                         未来は続くけど 完          
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

いつか・・其の27

アキはスヤスヤ眠っていた
英二は窓の外をぼんやりと見たままこちらを向こうとしなかった
 
英二、アキよ。
私たちの赤ちゃん
 
心を落ち着かせて、出来るだけ柔らかな声で、英二に話しかけた
 
英二には聞えてる筈なのに窓の外を見つめたまま表情も変わらなかった
 
ハンカチを握りしめてギュッと目を閉じた
 
英二の心は今、何も求めていないのか・・・
英二の記憶が消え、心までも壊れてしまって何も受け入れることが出来ないのなら
アキと三人の生活を決意した私の決意までが揺らぐようで怖くなって身体が震えた。
 
目をそっと開けた時
アキの小さな瞳が私を見つめていた
 
アキ、起きてたの・・
ごめんね ママが震えてしまったから、あなたも不安になったのね
 
アキの小さな身体が震え
突然大きな声で泣きだした
 
病室がアキの泣き声に響く
壁から壁に伝わる
 
お腹は一杯の筈だった
慌てて英二のベッドに寝かせおしめが濡れたのかと確かめる
濡れていなかった
 
どうしたの?
どこか痛いの?
どうしよう・・アキ・・
真っ赤な顔で泣きやまないアキ
 
英二が煩く思っているだろうと思うと焦った
思うように服を着せられない
 
英二 煩いよね ごめんね
 
泣きやまないアキにやようやく服を着せてホッとした私は英二を見た
 
英二・・・・
 
英二はアキを見ていた
いつものあの冷たい眼差しでは無かった
英二の目から涙が溢れ頬を伝う
 
英二・・・・
英二 アキよ 私と英二の赤ちゃん
 
ア・・・キ・・・・
 
英二!!そうよ!!アキ!あなたが付けた名前アキよ!!  
 
アキ・・・・
 
アキを抱いて英二の傍へ連れていった
 
アキの小さな瞳が英二を見て泣きやんだ
 
英二の指がアキの濡れた頬をそっと撫でる
無垢な瞳が英二の瞳を見つめる
 
カーテンが風に揺れる
光が差し込み英二の零れる涙がキラキラと輝いた
 
アキが小さな手をのばす
 
英二が顔を寄せて小さな手が触れる
 
涙が溢れて止まらなかった
声が漏れないように唇を強く噛んだ
 
アキは笑っていた
英二の瞳が優しく温かくアキを見つめる
 
アキ・・・・僕のこども・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

いつか・・其の26

翌日から私は英二の病室とアキの病室へと通って夜はマンションで眠る生活を繰り返していた
 
英二はあれから一言も話す事は無かった
過去を思い出せない自分に怒っているのか、それとも哀しんでるのか
その顔には全てを拒絶しているようで、冷たい瞳は氷のようだった。
 
それでも私は構わず看護師さんと一緒に英二の世話をした。
食事を摂ろうとしない英二に無理やり食べさせた
三日目には英二は大人しく食べてくれるようになった
それでも頑なな態度は変わらない
一口一口 英二が食べてくれるだけで嬉しかった
生きる望みは捨てていない
それだけで良い
それで十分幸せだった
 
英二の左手は傷も塞がり硬い板を外されて腕は動かせた
英二はその腕を見ようとはしなかった
英二が眠っている時
私はその左腕をさすった
失くした過去と左手
英二は闘っているのだ
私は決して諦めない
英二とアキと三人の未来だけを祈りながらその左腕をさすった
 
アキは順調に大きくなっていた
大きな二重の目 鼻筋 その顔が日増しに英二に似てきた
義父も忙しい仕事の合間に二人の顔を見にきてくれていた
一週間が瞬く間に過ぎ、アキの退院が明日に迫った。
 
遥も心配して顔を出してくれた
 
退院したら遥もアキを一緒にみてくれると言ってくれた
 
遥はずっと言えないでいた自分の結婚が決まった事を退院の日に教えてくれた
 
ごめんね 一番に知らせたかったのに・・・
 
遥、私こそ、自分の事ばかりで・・遥、本当に良かった、おめでとう、凄く嬉しいよ
 
遥のお腹には愛する人との赤ちゃんが宿っていた
 
アキちゃんの子守は任せてね!予行練習になるんだもん、あっ!授業料いるかな?
 
あはは馬鹿ね・・こっちが子守のバイト代払いたいくらいよ!!
遥、ありがとう。遥がいてくれてどんなに心強いか。
 
少女時代から一緒に育ってきた二人
お互いの絆がまた深まったと、繋いだ手から伝わった
 
アキの退院の日
アキにお乳を飲ませた後
アキを抱いて英二の病室の前で深呼吸をした
 
アキ あなたのパパがこの中にいるんだよ
アキ パパにやっと逢えるね
 
早まる鼓動
手がじっとり濡れる
持っていたガーゼのハンカチが濡れるほどに
 
 
 
 
 
 

いつか・・其の25

シャワーを浴びた
 
熱いシャワーを浴びながら張った乳房の大きさにアキを想いそして英二を思い出していた
 
愛し合ったことも全て忘れてしまったのだとしたら・・・
 
不安でいっぱいになる
確かに二人は愛し合い、求め合いアキが生まれた
けれど、その二人の想い出は私だけの中にしか無いとしたら、英二は私を、そしてアキを愛してくれるのだろうか?
英二は画家として売れ始めたばかりだった
初めて、画廊に展示してもらえるようになった事を二人で喜びあった日。
祝杯のワインを飲んだ行きつけのカクテルバーの片隅の席で、英二からプロポーズされた。
嬉しさのあまり泣きじゃくる私
突然、店の灯りが消えて戸惑う私の前にマスターが持ってきたケーキには、キャンドルの炎が一つ揺らめいていた。
 
おめでとうー!!
おめでとうー!!
やったなあ英二!!
おめでとうーいつかさん!!
 
テーブルはいつの間にか常連の仲間に囲まれていた
 
英二・・?
驚く私に英二が耳打ちした
 
ごめん。実は内緒でマスターに頼んでたんだ。
いつかからOKの返事もらえたら出してって。
 
英二・・・
もし、もしも私が断っていたら?
 
その時はみんなで残念パーティーに早変わりするだけさ!!
 
マスターが笑いながら大きな声で叫ぶ
 
それが合図のようにクラッカーが幾つも鳴った
 
さあ 一緒にろうそくを消してーお祝いしようよー!!
 
みんなにはやし立てられて二人でろうそくに炎を吹き消した。
 
幸せなプロポーズの夜
 
その夜だった
そう私は確信していた
神様からも素敵な贈り物が届けられて事を。
 
身体を拭いて熱い紅茶を飲んだ
ジャスミンの香りが気持ちを落ち着かせてくれた
 
英二は大丈夫 私は大丈夫
もしも、英二の記憶が失われたとしても、私が覚えてる。
英二と辿ってみても良い 英二との想い出の場所を。
もしもそれでもダメだとしたら・・・・
 
もう一度
始めから好きになってもらえばいい
 
英二に恋されるような女でいよう
 
二人の寝室のベッドに横になる
 
英二の匂いのする英二の仕事用のシャツを抱きしめていた
絵具が浸みこんだシャツを着た英二の姿を想い浮かべながら眠りについた
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

いつか・・其の24

大阪の大学での生活をしていた英二が4年になった時、初めていつかと英二は二人っきりで旅をした。
 
それまで夏休みや冬休みにペンションに帰る事はあっても、二人で過ごす事は極力避けてきた
 
それは、遥への遠慮もあったけれど、育ててくれたおじさん達へまだ、二人が付き合っている事を言えないでいたからだった。
 
社会人になって、いつかは生活費をおじさんに渡していた。
おじさんはそれを遣わずに貯金してくれていたのだけど。
 
働きだして3年目、ペンションを出て独り暮らしをする事を打ち明けた時、おじさんとおばさんは寂しそうだったけれど、笑顔で送り出してくれて、その時、おじさんが通帳を渡してくれた。
 
何時でも帰ってきていいんだからね。
いつかちゃんの実家は此処なんだから。
 
おばさんが涙ぐみながらそう言ってくれた。
 
遥に英二との事を話せたのは、遥が通う京都の大学を訪れた時だった。
 
遥から紹介された大学の先輩は遥の恋人だった。
遥はとっくに知っていたのだ。
二年生に上がる春休み、遥は想いを英二に打ち明けた
まだ大学に残っていた英二の処へ遥が行った夜だったらしい。
英二から好きな人がいつかだと聞いて、かなりショックだったと、後で笑いながら話してくれた
 
遥を想っていた先輩がいる事は聞いて知っていたが、遥が傷心して京都に戻るとその先輩がアパートの前で待っていたらしく、遥が突然泣き崩れてしまいあたふたしながら慰めてくれたのが、その恋人になった渡辺さんだった。
それから少しずつ二人の間が親密になっていったらしい。
 
遥から電話で彼氏が出来たから紹介したい
そう報告を受けた私は京都の遥を訪れた。
幸せそうな遥の笑顔に安心して、その夜、遥の部屋で英二との事を打ち明けたのだった。
 
あの時のいつかの困ったような顔は今でも笑っちゃう。
 
結婚する報告をした時、遥が冷やかした。
 
英二との旅は英二が萩を選んで計画を立ててくれていた。
大阪駅で待ち合わせして広島へ向かった。
広島から宮島へ
 
海に浮かぶ美しい神社
朱色の社殿は英二が描く絵に多く使われたいた赤い絵の具を想わせた。
宮島の幻想的な風景の中を二人、手を繋ぎ歩いた
 
その日は宮島で夜を過ごし、昼過ぎにレンタカーを借りて萩へと向かった。
萩焼に惹かれる
 
英二がそう言っていたから、萩への旅は行く前から英二は愉しそうによく笑った。
萩に着いて逸る気持ちを抑えるように、一軒のうどん屋さんに入る。
萩焼の器に盛り付けたシンプルなうどんだった。
 
でも、そのつゆをひと口飲んで二人は顔を見合わせた
 
柚子の香りが爽やかに喉をそして心を潤した
 
美味しい
 
こんなに美味しいうどんは初めてだった
 
憧れの地にいる事で緊張していた英二も笑顔だった。
 
萩の旅の香りの柚子を私はお土産にした。
英二は連絡していた体験させてくれる窯で、珈琲カップを2個作った。
それが、あの日割れた想い出のカップだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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