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英二・・・
声にならない
息をすることも、瞬きも忘れるほどの奇跡が目の前で起きていた
アキの天使のような笑顔
愛おしそうに我が子を見つめる父親の姿がそこにあった
英二の身体が震え
ゆっくり顔を上げた英二が私を見つめてる
その瞳には
私を愛してくれていた
あの頃の私を包み込むような温かさが宿っていた
い つ・・・か
左腕がゆっくりと上げられて
アキを抱いた私の背中にまわる
アキを抱いたままの私を英二が抱き寄せた
英二・・・・英二・・名前・・思い出したのね・・・・
・・・僕の・・・・・
僕の・・・いつか・・・・良かった・・・・無事で・・・・
英二・・・
英二の両腕の中に抱かれた私とアキ
英二のシャツが私の涙で濡れていった
神様・・・感謝します・・・アキ・・・アキがパパを夢から醒ましてくれたのよ
アキ・・ありがとう・・
いつか・・ありがとう・・生きててくれて
アキを産んでくれて・・・ありがとう
英二・・良かった!良かった・・本当に良かった・・
顔を見せて・・いつか・・・
英二の腕がほどかれた
涙でぐしゃぐしゃになった顔をあげる
もう・・逃げたりしないから・・・
いつか・・僕とこれから先も歩いてくれるかい?
当たり前でしょー!何言ってるのー!!
逃げ出したんだ・・・僕は・・現実から逃げ出して・・・何もかも一度は捨ててしまった
大切な君とアキを置いて逝こうとしてた・・・
ばかー!!
英二が
英二がいなくてどうするのー!!
これからなんだよーこれから、私たち3人で生きてくんだよー!
アキが驚いて泣きだした
ぁあ・・アキ・・ごめんね アキに怒ったんじゃないよ・・
ああ
泣きやんでくれない・・・
立ちあがり背中をポンポンと優しく叩いてなだめた
いつか・・・アキを抱かせてくれる?
抱いてあげて 泣きやまないかもしれないけど・・
英二は左腕と胸でアキの身体を支えた
右手の指が泣いているアキの小さな鼻を頬をおでこを髪を愛おしそうに撫でていく
私は嬉しくて嬉しくてまた、涙が溢れた
英二の細く白い指が泣いているアキの唇を撫ぞる
あっ!!
あっ!!
二人が同時に声をあげた
アキの小さな唇が英二の指を咥えて吸いだした
うそー!!
痛っ!!
急に胸が張り出した
いつか、アキお腹空いてるんじゃないのかい・・離してくれないよ・・
そう笑った
英二が笑った 英二が笑ってた
うん、うん、そうだね、もうお腹空いたんだね
いつか?お乳あげてみて くすぐったくて仕方ないよー
つられて私も笑いながら泣いていた
ちょっとーいつかー頼むよー笑ってないで早くー!!
ちょっと待って・・用意するから・・
涙をハンカチで拭って バックの中から消毒用のテイッシュを取り出した
後ろを向いて前ボタンを外す
急に恥ずかしさがこみあげてきた
英二に見せるのは初めてなのだと気が付いたから・・・
いつか・・?どうしたの?
あっ、ううん。
まさか今日、この瞬間を迎えられるなんて思ってもいなかった
英二から名前を呼んでもらうことも
英二がアキを抱いていることも
あんなに不安だったこと
願いが叶ったのだ
恥ずかしさなんてどうってことない
英二からアキをうけとってベッドに腰かけた
英二が見つめる
大きく張った乳房
大きくなった乳首
凄い・・・こんなになってたんだ・・・
顔が火照る
泣きながらアキの口が乳首を捉えて咥えた
リズミカルにお乳を吸っていくアキ
英二が横から覗く
いつか・・・ありがとう・・・
いつかが居てアキがいる
僕の左手は失くしてしまったけれど
僕の
僕の一番大切な二人が此処にいる
いつか・・・本当にありがとう
英二・・・ありがとう。
お帰りなさい 英二
英二、これから辛い事も一杯あるかも知れないけれど、何時か
何時かきっと笑い話に変わるよ
そうだな
失くした物はもう戻らない
でも、こうして僕にはまだ未来がある
いつかとアキがいる
三人で歩いていこう
大丈夫 わたしがいるから
英二の左手にだって何にだってなるよ!!
いつか・・
何時か絵を描きたいなあ・・この瞬間を僕は忘れない
この右手で描きたい・・・。
これから、訓練しなきゃ!!
アキがお箸を使うようになるまでに
英二が右手使いこなせるようにならなきゃ!!
大きな声にびっくりしたアキが大きな瞳で見てた
ごめんね。大きくてびっくりしたね
アキー!パパね頑張ってくれるから、アキがお箸を持つ時はパパに教わってね
パパ・・・そうだね
僕がパパ・・パパかあ
がんばろう・・今日から始めるから
うん。
今日から始めよう。
今日からスタートしょう!!
未来は続くけど 完
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