一誠館第弐〜日々の戯言〜

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 僕が彼に出会ったのは、僕がまだ母のお腹の中にいたときだった。その時、母と彼は10年ぶりの再開だった。彼が友達達と飲んでいたとき、母は彼の友達に呼ばれ再会したのだった。
 10年の月日は二人の微妙な関係を埋めるには十分な時間だった。母と彼は本当にそれこそ10年以上ぶりに会話をした。二人は大人になっていた。25歳になった二人は懐かしく、恥かしくて話せなかった中学生の時の思い出話をしていた。
 
 その日からちょうど二週間後、母と彼は街の中で偶然出会った。母が野次馬達に囲まれているそんな中で二週間ぶりの再開を果たした。母は破水していた。ホンの1分前に母はうずくまり、すぐに回りに人が集まり、そして彼が現れた。
 一瞬驚いた彼はすぐに状況を確認しタクシーを止めた。母のカバンから母子手帳を探し、産婦人科の住所を運転手に伝え、彼は病院に電話をしていた。彼は電話を切った。顔面蒼白だった。
 
 母は心臓が弱かったのだ。
 
 彼は運転手に急げと怒鳴っていた。しかしタクシーは動かなかった。渋滞に巻き込まれていた。運転手は総理大臣が演説しているので交通規制をしていると言っていた。母は弱っていた。彼は焦っていた。母子共に健康に出産を終えるには、しっかりした設備のある病院で出産する必要があった。母は二週間ほど早く僕を産もうとしていた。母は明日から入院する予定だった。
 渋滞の中でタクシーは全然動かない。彼はタクシーから降りた。そして走って前の車に駆け寄り何か話をしている。話が終わるとその前の車へ、そしてまた次の車へと走っていく。彼は何をしているのだろうと思っていたら、前の車が横に寄っていく。そしてその前の車も寄っていく。道が出来ていた。
 進路が確保されると彼は急いで帰ってきた。運転手に横道への進路ができたことを告げると、タクシーは走り出した。しかし時間はかなり経っていた。普通にタクシーで走ればもう病院に着いている時間だった。タクシーが病院に滑りこんだのは、倍以上の時間が経った頃だった。
 母は動悸がおかしくなっていた。病院の前で先生達が待っていた。急いでストレッチャーに乗せられた母は意識が半分朦朧としていた。朦朧としながら彼の手を握っていた。初めて手を握れた母は少し笑っていた。

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