
ミロワール・ド・シクリズムNo.81のシクロツーリズムにまつわる物語です。
以前、同じくミロワール誌のシクロツーリズム文をUPしましたが、今回はその一つ前の号になります。
舞台はその時の「自転車担ぎ」同様、ピレネー山脈のフランス側山岳地で、トゥルマレ峠を駆け上がるアマチュアレースの物語です。
画像左はこの物語の舞台周辺のgoogle地図、画像中はgoogleアースで作ったコースの俯瞰図です。
まずは前半部分です。
[ここから]
Premieres Armes
一番の武器
Pierre ROQUES
そう遠くないある冬の夕刻、一人の自転車ツーリストが、自分のこれまでのレース記録ノートを見ていた。 長い経歴なかで最初の挑戦にして大きな記録の思い出が、彼の脳裏によみがえってきた。 まず、その時乗っていた、肩書きも”本格的”と銘打たれた自転車を思い出し、その不完全さと単純さと時代遅れ加減に、思わず苦笑した。 そして今更ながらに感心した。 「あんなマシンでよくやったな」と。
ノートに目を戻した彼、Godefroyには、薄汚れたページに書かれた文字が目に入ってきた。
”1950年7月28日、ラリー・ド・トゥルマレ 3位 1時間31分...”
----- * ----- * ----- * ----- * ----- * ----- * ----- * ----- * ----- * -----
その7月28日の前夜は、とても暑かった。
当時、Godefroyは18歳、フロントギアはごく一般的なダブル44−47T、リアの最大は24Tでそれより小さい歯数は、今では思い出せない。 自転車そのものは、ハンドル取り付けの高級なボトルケージとリアバッグを装備した正真正銘のデミ・クルス(*1)だ。 明らかにクラシックで初心者用のマシンだが、装備面での不十分さは、若者の怖いもの知らずの熱意によって何とか補うことができると信じていた。
(*1) 註: 「準レース車」 とでも言い換えれば判りやすいでしょうか。
Godefroyは主催クラブがあるLoudesへ向かった。 このクラブは、誰もが知っているあの峠を駆け上がるタイムトライアルレース”ラリー・ド・トゥルマレ”を開催していた。
Godefroyはトゥルマレ峠には一度だけ行った事があった。 その時は歩いて登ったので、次は自転車で来ようと心に誓っていた。 このようにして彼はラリーに参加したのだった。 タイムを競うのではなく、まずは足を付くことなく峠を登りきることを目標として。
その夜は、翌日のレースが気になってなかなか眠りにつけなかった。 宿のロッジの軒先で、気の利かない登山者が、長い間洗い場へ水を流しっぱなしにするものだから、雨かと思って彼は何度も起き上がり、窓から空を見上げる羽目になった。
結局は何事も無く朝を迎え、少々眠い小さな目に大きな目標を見据えて、Godefroyは集合場所のCyclos Lourdaisに現れた。 新参者の彼は、少し下がった位置にいて、本当の”本格的”ツーリング自転車をしげしげと覗き込んだ。 彼はあるマシンを見ていささかショックを受けた。 フロントギアが3枚もあるなんて! と。
集団は仲良く、Argelesへと向かった。 本当に和気あいあいと、タイムレースのスタートポイントのLuzまでは。
このレースのために、Godefroyは一番鮮やかな黄色のジャージを着ていた。 この色は膨張して見えるのでマークされるね、と年長者から冷やかされた。 彼は、栄光の印であることに気づいて、はにかんだ笑みを返した。
Luzでのスタート前の最後の準備の時、Godefroyは気を落ち着かせようと歩道の端に座った。
彼のポケットには、いくばくかの砂糖のかけらが入っていて、少なくとも3km毎に口にしようと目論んでいた。 足をつかずに峠まで登りきり、ゴールの峠からの景色を見逃さないという目標を達成するために。
一人の少年がそばに来て座った。Godefroyは、この恥ずかしがり屋で素直そうな少年と少しばかり話し込んだ。
どうも、彼は、Bagneres-de-Bigorreに住んでいたロビック(*2)の倍くらい調べ上げ、トゥルマレ峠については自分の庭のように知り尽くしているようだった。
(*2) 註: Jean Robic 1947年ツールで、マイヨ・ジョーヌを一度も着ることなく
最後に総合優勝 だそうです。
http://fr.wikipedia.org/wiki/Jean_Robic
ロビックと同じBagneres出の少年は、Godefroyの謙虚な目標を聞いて微笑んだ。
しかし、彼はこうも言った。「自分の思うようにやってみなよ。 あんたならきっとできるよ。」 この少年は案外いい奴かもとGodefroyは思った。
[後半につづく]
後半のUPまでの間、googleストリートビューでコースをお楽しみください。
↓
http://maps.google.co.jp/maps?f=q&source=s_q&hl=ja&geocode=&q=Luz-saint-sauveur&sll=42.911178,0.002747&sspn=0.185572,0.233116&ie=UTF8&ll=42.871435,-0.00206&spn=0.185692,0.233116&z=12&iwloc=addr
地図左側のスケールバーの上にある人間マークを、Aのあたりにドラッグすると、スタート地点付近のストリートビューが見られると思います。
|
おお〜、続きが気になりますね〜。
2009/4/3(金) 午前 2:02
清々しい記事ですね〜
タイムスリップして選手になって走った気分です♪
[ velovelobar ]
2009/4/3(金) 午前 11:22
ウウウッ。後半は何時なんですか?、スッゴク気になっちゃいますヨ^^;。
自分でも厳しい峠を登ったときの気持ちを思いだしてしまいます。
[ east_bred ]
2009/4/3(金) 午後 7:31
katoさん。east_bredさん。
ペースが遅くてすみません。ちびちび出しているのは、決して作戦ではなく、単に仕事が遅いからです。 がんばります。
[ AncienneBicyclette ]
2009/4/3(金) 午後 9:13
veloさん。
私も解読していると、気持ちが入り込んでしまいます。
(自分が一番楽しんでいるだけかもしれません。)
[ AncienneBicyclette ]
2009/4/3(金) 午後 9:29