たます・みうらのオモログ

おもちゃとモノのモノローグ (紹介は表紙に。 どの記事にでも気軽にコメントください)

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素人のオリジナル小説です。書庫です。目次からどうぞ。
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追悼、栗本薫

栗本さんが亡くなった。それと共にもう何度目の青春が終わったことだろう。

今日泊亜蘭や野田大元帥や氷室冴子、他に海外の大御所、最近では田中文雄など
知ってる作家が亡くなったときでもスルーしていたのだが、やはり好きな作家の
一人である栗本さんなので追悼のため久々に更新します。

読者として多分一番付き合いの長い作家かもしれません。
そう、あのグインをいまだに読んでるので・・・。

奇しくも昨日、亡くなるほんの数十分前にグインサーガの豪華限定本をジュンク堂で
予約しました。実はそれまで全然買う気がなかったのですが何故か急に申し込んだの
です。虫の知らせかな?

さて栗本作品はミステリ(”僕ら〜”とか伊集院ね)を除いて大概読んでます。
中島梓名義の評論とかは読まないけど、SFの短長編とか魔界水滸伝、挙句の果ては
今の腐女子の走りともいえる今西良シリーズ(真夜天とかね)も結構好きで
読んでました。

グインは第一話が連載されているSFマガジンを持っているぐらいで第1巻から
最近の126巻まで全て初版(1巻は改訂版も持ってます)で持っているリアル
タイム読者なんだけど多分130巻ぐらいで絶筆なのかな。結末はどうでもいいや。

グインって途中、801(やまなし、おちなし、いみなし)に走ってぐだぐだに
なった時も見捨てずに読み、最近少し盛り返して(ガンダルのくだりは全編の中でも
結構面白かった)今またぐだぐだなんだけど他の作家の作品と比べて最初から
のめり込むほど面白いと思ったことはなかったので腐れ縁みたいな付き合いだったなあ。

2年前ワールドコンで見た時は元気そうだったんですけどね。この頃はずっと
悪いというはなしを聞いていたので忌野清志郎の時と同じくショックは
それほどでもないですね。(坂井泉水(3回忌ですね)とかびっくりしたけど)

しかしやっぱり残念でなりません。
ご冥福を祈るばかりです。
グインの続きは天国で書いてるのかなぁ。。。

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ファン限定でアスカのシークレットアップしてます。
ファン以外の方には本日は読みきり小説です。

ではぞうぞ。


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ストレンジ・ストーリー 第二話
Strange Story  vol.2
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「ジャック・ジャック・或いは、ジャック」
― Jack Jack or Jack ―


―― ちょっと一息 ――
―― Give me a break. ――


―― 船内バーラウンジ ――

 「どの娘だい? サムが玉砕したっていう娘は・・・・・・」
 ニコニコしながらジョニーが近づいてくる。

 「あのコさ」顎をしゃくってカウンターの方向を見る。

 カウンターには女性が一人、こちらに背を向け座っていた。
 遠目で見てもかなりスタイルがいい。

 「なるほど、サムは俺と同様、ルックスは悪くない。というか俺たちは
自分で言うのもなんだが、かなりイケてるほうだからな。口説き方を失敗した
んだろ?」

 「いや、常套手段だがうまくやったと思うんだけどな。ここ2,3日ああ
やって、退屈そうにずっと一人でいるもんだから、バーテンに酒をあげる様に
指示して近づこうとしたんだが、はなからつき返されて」
 バーボンで口を湿らし続ける。
 「それでも話かけに行ったんだけど、そのあまりにもの美貌に圧倒されて
ちょっとしどろもどろになったのは事実なんだけどね。完全に無視されたよ」
 サムはかなり意気消沈している。

 「わかった。じゃあ、俺が仇を討ってやろう。サムよりは俺のほうが百戦
錬磨だしな。俺が口説いて落ちなかった女はいない」
 ジョニーは自信満々だ。

 「まあ、好きにやってくれ。落せたら素直に祝福して譲るよ」サムは一気に
残りの酒を飲み干した。

――――

 さて、大きく出たものの作戦など立てる余裕が無かったのでジョニーはこれ
までの経験から、とにかくぶっつけで行くことにした。なんとかなるだろう。
 サムが色々凝ったことをして失敗したということは正面から行くと成功する
ことが多い。正攻法だ。

 女の後ろから近づいていく。かなりのオーラを感じる。こんなことは初めてだ。
ちょっと武者震いをする。

 女が何気に横を向いた。横顔だがそれを見たジョニーは息を呑んだ。
 (かなりの上物だ・・・)

 抜群のプロポーションに加え、ルックスも素晴らしい。少しウエーブのかか
ったロングのブロンド、陶器のように白い肌に赤く濡れた唇。長く濃い睫毛に
碧の大きな瞳。成熟した大人だが若く見える。

 (現世に舞い降りた女神のようだ)
 大げさな表現だがジョニーには充分そう見えた。

 回り込むように横から近づく。彼女は物憂げにグラスを傾けている。

 「と、となり・・・」声が少し上ずった。間近で見ると余計に神々しい。
咳払いをして言い直す。
 「隣いいですか?」

 彼女は視線をくれることもなく軽く頷いた。

 サムが玉砕するわけだ。だが勝負はこれからだ。

 「綺麗な指してますね」陳腐な台詞だがこんな入り方しか出来ない。

 が、女性は自分の指を見た。

 (これはちょっと脈があるかも)
 ジョニーは急に元気づく。

 (ここは一気呵成だ。)

 「ほんとに綺麗な指だ。それに加えて瞳もとても美しい」

 女性がこちらを向いた。目が合う。吸い込まれそうだ。だが視線をそらし
たりしない。そらしたら終わりだ。というか出来なかったのが本音だが。

 また女性は前を向く。バーテンは知らん顔だ。何度も同じ光景を見せられ
てるのかもしれない。

 ジョニーはめげない。少しは反応があったところを切り込むのが常套だ。

 とても白くて細くて滑らかな指。透明なマニキュアか磨いているのか
つけ爪かネイルも綺麗に整えている。

 バカの一つ覚えのように何度か繰り返した後、さらに突っ込んで云う。

 「その指が欲しい。その瞳が欲しい。とても狂おしい・・・・・・」

 途中で言葉が途切れる、彼女がこちらを向いて何か云おうとしたからだ。

 「そんなに綺麗? 私の指?」

 とても綺麗な声だ。鈴を転がしたように胸をくすぐる。

 「ああ、とっても綺麗だよ。瞳も食べたくなるほどに・・・・・・」
 かなり大げさに言う。

 「瞳も?」

 ジョニーは大きくうなずく。

 「わかったわ。じゃあ、あげる。ちょっと惜しいけど。」

 ジョニーは胸が躍らんばかりに喜んだ。
 (やっぱり、俺に落せない女はいない・・・・・・ん、惜しい?)
 と、思ったのも束の間、ジョニーは彼女の所作に驚嘆することになった。

 彼女は自分の左手の小指を握ったと思うとねじりながら引きちぎり、ジョ
ニーが悲鳴を上げそうになるところに輪をかけるように今度は眼を抉り取って
血だらけの小指と共にこれも血だらけの眼球を手のひらに乗せてジョニーに
差し出したのだ。

 「あげる」血だらけの顔でにっこり微笑む。

 「ひぃぃぃっ!!!」ジョニーはスツールからすべり落ち、腰を抜かして
逃げ出したいのに動けない。バーテンもやはり腰を抜かしていた。
 サムは面白くないのでとっくに自室に帰った後だ。他に客はいなかった。

 そこへ男が入ってきた。

 「ウル!トムが呼んでるよ」
 イブは、この状況に特に驚いた様子もなくウプシロンに話しかけた。

 「ば、化け物っ!!」ようやくジョニーが叫ぶ。

 「あ、ごめんね、これマジックなんだよ。彼女冗談が好きでね。ここでの
ことは無かったことにしてね。後でお詫びに、なにか持っていくから」

 イブはまた記憶の操作しなくっちゃ、とウプシロンのおふざけにうんざりし
ながら、ウプシロンを引きずって退出していった。

 残されたカウンターの血のように見えた赤い潤滑油は蒸発して跡形もなく
なっていた。

 ジョニーは、自分よりもはるかにハンサムな男に引きずられていく女を見な
がら、もう女は懲り懲りだとその場で呆けていた。

                           ―― Fin.

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ストレンジ・ストーリー 第二話
Strange Story  vol.2
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「ジャック・ジャック・或いは、ジャック」
― Jack Jack or Jack ―


―― chapt.7 ――

 「そろそろ、云っておいたほうがいいとは思っていたんだよ」
 新聞を見せ付けられた幸造は観念した様子で語りだした。

 「ミウラ君、ここはね、32年前の私の思い出の世界なのだよ。この時
私はかけがえのないものを失った。その話を聞いてもらえるかな」

 言葉遣いが若い。と老人は見る間に若がえっていく。が、ミウラの認識が
狂うためかイメージを老人の姿に戻す。

 「私は今、若い頃の自分のイメージで行動しているんだが君には老人に
見えているだろう。だがね、ここでは私は会長ではなく30そこそこの一介
の会社員に過ぎないんだよ。
 当時、といってもこの世界では今だがね、私は恋をしていた。そう、あの
リン・ジョンロンの妹のリン・ファア(林華)だよ。
 とても美しく聡明で、気立てのいい女性だった」 幸造は思いだすように
少し間をおいた。 しばらくして話を続ける。

 「はじめて、家に招待されたときに私は一目ぼれしてね。何回か家にお邪魔
してるうちに彼女のほうも私に好意を持ってくれるようになったんだ。
 プライベートで二人きりで出かけることも多くなってね。ふむ。そのあたり
のことはどうでもいいから省略しよう。で、あるとき彼女からお兄さんの様子
がおかしいと聞かされたんだ」

 ミウラはその後を今、追体験している訳だ。今この後の状況も既に過去の
ことなのだから判ってるはずだ。幸造に先を促した。

 「そう、あの時の私は予定通り一週間、日本に帰った。そして何日か経って
日本の私のところに届いた知らせは、リン兄妹が何者かに殺されて遺体で
発見されたという訃報だった。発見されたところは殺された場所とは違った
らしいので、そこで待ち伏せすることも出来ない。
 あと、幸いにも我が社の機密はライバル社には漏れなかったようだ。
 ジョンロンはもしもを考えてメディアを持っていかなかったのだろう。
 で、もしもが起こった。ファアもジョンロンと行動を共にしていたのかは
謎だが、今のところその気配はない。私はジョンロンの裏切り行為をファアが
やめさせるために巻き添えを食って殺されたのではないかと思っている」

 「ちょっと待ってくれ、それは想像だろ。願望といってもいい。まあ、
老師の夢の中なら別に構わない話だが・・・」 釈然としないミウラに
幸造は同意する。

 「確かにそうだ。でもそう思わせてもらってこの後の展開に付き合って
もらいたい。この世界の話はまだ終わってないからな」

 「みすみす危険の中に介入するのか。まあ、夢だとわかってしまえば
危険でもないかも知れないが・・・」ミウラが後半ごちるのを聞き流すかの
ように幸造は念を押した。

 「あと少しだ。私が日本に帰ってる間にかけがえのない人を失った。やり
直して彼女を救いたい。この後、取引現場でも私をサポートして欲しい。悪い
夢だと思って諦めてくれ」

 「最後まで付き合いますよ、悪夢が覚めるまでね。夢にしてはあまりにも
リアルですけど。まだ騙されてる気分だ」 ミウラは己の数奇な運命の中
では比較的楽なほうだとぼんやり考えていた。

            ◆

 ジョンロンが向かった先は郊外の海のそばの倉庫だった。あまりにもステレ
オタイプのシチュエーションだ。ミウラたちも後をつけて倉庫の中に気付かれ
ないように入った。

 距離を置いて物陰から様子を伺っていたミウラたちだったが程なく複数の
人影が現れジョンロンと接触するのがわかる。

 しばらく話していたようだが決裂したのか揉めているようである。

 その時、幸造が動いた。何かに気付いたようだ。ミウラに私が危うくなった
ら援護射撃を頼むと云ってそっと物陰を回りこんでいく。

 ミウラにも判った、遠くの物陰から女性が一人ジョンロンたちのもとに
向かっていくのが見えたのだ。

 「兄さん! もうやめて!」女性が叫ぶ。

 そちらに向かって取引相手の人間が誰何したかと思うと、いきなり拳銃を
向ける仕草に移った。ミウラも動く。奴らの構えた拳銃を狙って発砲する。

 幸造が女性に抱きつくようにして身をかわそうとする。ミウラは何人かの銃
は瞬時に撃ち落したが数が多かった。一人の撃った弾が直接あたりはしなかっ
たが兆弾して砕けた破片が幸造に浴びせられる。

 ミウラは近くにあった非常ベルを鳴らす。遠くでサイレンの音が鳴る。
パトカーのようだ。幸造が呼んでいたようだ。

 取引先の相手は一斉に逃走した。ジョンロンは立ち竦んでいたが、妹が危険
にさらされた事実に目が覚め幸造のもとに駆け寄っていた。

            ◆

 手術は成功した。医者が言うには脳に達する金属片があったそうだ。但し
最近のものではなく、古い傷であって昔刺さったものだということらしい。

 今まで何事もなく普通に生活できてきたのが奇跡だとも付け足した。

 ただ、まだ二人の意識が戻らない。術後の安静が必要だ。幸造が峠を越す
まで予断を許さないらしい。

 「レニーがトムの意識の中に介入できないの?」 ウプシロンが珍しく口を
開いた。

 イブが首を振る。
 「トムのガードは固い。トムがこちらを意識してくれないと難しいね。何度
かやってみてるし、これからもやってるみるけどね」

            ◆

 ミウラは幸造のところに走り寄った。幸造は怪我をしていたが意識はあった。

 「ついにやったよ。長年の夢が果たせた。ありがとう、ミウラ君」
 幸造が礼を云い、話を続ける。
 「さあ、もう行くがいい。君の使命も終わった。後はジョンロンが何とか
してくれるだろう。なあ?」ジョンロンを見る。ジョンロンが頷く。

 「もうすぐ警察が来る。面倒になるから、その前に行きなさい」幸造の
言葉に促されるが、ミウラはどうすべきか戸惑っていると、
 「君の友人のことを考えるんだ。すぐに迎えに来てくれる」

 ミウラは幸造の云うとおりにした。目の前にイブの姿が現れる。
 「さあ、トム! こっちに」ミウラはイブが差し伸べる手をとった。

 幸造が気を失った。ミウラも気を失った。


 (続く)

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ストレンジ・ストーリー 第二話
Strange Story  vol.2
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「ジャック・ジャック・或いは、ジャック」
― Jack Jack or Jack ―


―― chapt.6 ――

 イブは、かなりイライラしていた。

 船内診療所の常駐の医師団は皆、ここの設備では無理だと云う。
 このまま放っておくと、まずいのは必至だ。生態レベルが落ちてきている。

 ホワイト・パラダイスのカジノルームは立ち入り禁止にしていた。ミウラと
老人が二人とも意識不明で横たわっている。医師団が言うには老人の方は軽い
脳溢血か脳梗塞のようだという。だが同じくして意識をなくしたミウラの方は
原因が判らないらしい。あまり動かすなと云うのみである。

 イブは船内にテレパスで外科医らしき意識をいくつか確認していた。老人の
お付きである秘書たちに云って船内放送で協力を求めさせていたがあまり期待
はしていなかった。

 そこにひとり医者だと名乗りをあげてきた者がいるということで部屋へ通す
ように云った。

 入ってきたのは背の高いとてもハンサムな西洋と東洋の混血らしい青年だっ
た。

 遠目で横たわる二人を見ながらの第一声が少し意外な言葉だった。
 「これは若い方にとって、まずい状況ですね」

 イブはこの医者がどの程度の力量なのか心を読んでみた。

 医者の考えが入ってくる。
 (若い方の魂がほとんど老人のほうに流れていってしまってる・・・。)

 イブは慌ててこの医者が何者かテレパスで読もうとしたが確固たる信念と
自信に裏打ちされた冷静な解析能力しか読み取れない。
 動揺してイブはおもわず、訊き返してしまった。
 「わかるのか?」 云ってから少し後悔する。

 「ということは貴方にもわかっていたようですね」医者は応える。
 かなり鋭い。一瞬のミスも逃さない。実はイブにもミウラの意識が老人の方
から感じて判っていたのだ。だから、この状況を一番、把握していたといえる。

 「いや、症状がわかるのかと訊いただけだ」イブは何とか取り繕うとした。

 入ってきた医者はそれ以上突っ込まず、話を続けた。

 「若い方のオーラが老人に吸われてるような状態です。私のいるERでは
頻繁に見かけるんでね。その・・幽霊というか、オーラのようなものですが」
 自分でもばかげたことを云ってると思っているのだろう。 少し、しかめた
顔で云う。

 「どうなったんでしょうか?」医者は嘘は云ってない。胡乱そうに見ている
回りの秘書たちとは違って、イブは素直に聞き従うことにした。

 「まず、その時の様子を教えてもらえますか?」 もっともな質問だ。この
医者が何でも知ってると思うのは早計である。

 「若い方はミウラというんですが、彼の手をおじいさんが掴んだ途端、二人
とも同時に倒れたのです」イブが説明する。

 医者は少し考えている風だったが、すぐに応えた。
 「若い方、ミウラさんといいましたか? 現状の様子だとミウラさんがこの
ご老人のからだをジャックしたというより、ご老人にミウラさんの意識が拉致
されたといえると思いますよ」

 イブは気にかかっていたことを訊いてみた。
 「もし、老人が死ぬようなことがあったらどうなりますか?」

 周りにいた秘書たちがざわめきだす。万が一のことをイブがあっさり云った
からだ。秘書たちもその時の対処に困っていた。

 「おそらく、ミウラさんの魂も持って行かれて、永久に意識がもとに戻らな
くなると考えられますね」 イブは自分と同じ意見を平然と応えるこの医者に
畏敬の念と少しの苛立ちを感じていた。

 「先生はこの老人を治せますか?」イブの質問に秘書たちも耳を傾ける。

 「ここでは無理です」医者は素っ気なく云った。

 イブはがっかりした。落胆の色を隠せないイブに向かって医者は続ける。

 「治せないと云ってないですよ。ここでは無理といっただけ。私が同行して
いるクライアントのところに設備があります。そこへ運べばなんとかなるで
しょう。 これからクライアントに頼んでみましょう」

 後で判った事だがこの医者は高価な精密医療器具を扱うクライアントと共に
装置を使う側のスーパーバイザとして乗船していたらしい。

 イブには、その時、この医者が天使に見えた。


 (続く)

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ストレンジ・ストーリー 第二話
Strange Story  vol.2
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「ジャック・ジャック・或いは、ジャック」
― Jack Jack or Jack ―


―― chapt.5 ――

 尾行は続く。また、その間、世間話も続く。

 幸造はミウラの腕時計が現地時間になってないことを咎めた。

 ミウラは別に訳があったのではなく面倒だからと返事した。

 「じゃあ、わしの時計と交換しよう。その時計なかなか頑丈そうだしな」
 幸造がいきなり強引なことを言い出した。

 「ちょっと待ってください。私はこの時計には特に思い入れがあるわけでも
ないし、この間買ったばかりですが安物の何処にでもあるフィールドウォッチ
ですよ。 それに対して老師の時計はかなりの値打ちものなんでしょ?あまり
詳しくないですが、それぐらいわかりますよ」 ミウラは及び腰だ。

 「はん、詰まらん。せっかくなんだから貰っておくがいい。わしは若い頃
自分が立派になったら、いくつかこうしたいというものがあった。 まあ、
ステータスシンボルみたいなもんじゃな。 家とか車とか、馬主だとかな。
その一つにメーカーに特注で腕時計を作ってもらうというのもあってな。
今じゃ、ほとんどの夢は叶えた。だが、この時計のオーナーになっても昔
叶えられなかったことが今でも一番心残りでな。それはもう、叶わぬ夢だった
のじゃがその夢が叶うのだったら、こんな時計なんぞ何の価値も無いと思う
ようになっての」 幸造は遠い目をして語る。

 ジョンロンが六合に入る。ナイトマーケットで賑わうこの通りも朝は流石に
閑散としていて車も普通に通れる。

 「まあ、追加報酬の一部と取ってもらえばよい。それとも、この時計は趣味
じゃないかね」

 「いえ、そうですね、これも何かの縁だし記念といってはなんですが、いた
だけるなら大事にしたいと思います」 珍しくミウラは殊勝に云って交換に
応じた。 実はずっと欲しかったのだ。最初に幸造が身に付けているのを見た
時から気になっていてミウラにしては初めて人のしているものが欲しいと思っ
ていたのだった。 それが幸造から交換を申し出てもらって渡りに船である。

 「でも、ほんとにいいんですか? これ、何処にでもあるものですが」
 ミウラは自分のしている普通のクォーツを指して云った。

 「くどいのう。わしが良いって云ってるんだからな」
 幸造はミウラがずっと欲しそうにしていた視線を読み取っていたのかもしれ
ない。 何のためらいもなく外し交換した。幸造はミウラから受け取った時計
の時間を合わし始めた。

 「その側のレバーをスライドしてみなされ」幸造の云うとおりレバーを引く
とミウラが貰った時計はすぐに美しい音色を奏ではじめた。

 最初に2回、同じ音がなり、次に違う音で3回、そして更に違う音色で1回
鐘を叩くような音だ。

 「最初が時間、次がクオーターの回数、そして分だよ。つまり今は2時46
分じゃ」 幸造が自慢そうに説明する。ミウラはその複雑な機能と音色の美し
さに感動していた。

 「素晴らしいですね。機械のみでここまで作る技術力に感心します。一生、
大事にします」ミウラは夢中になっていた。だが、その日は特に問題はなか
ったので、存分に堪能することが出来た。

 3日めの夕方、帰宅中にリンはいつもとは違うコースに入った。

 「何か動きがありそうですね」ミウラがやっと退屈な(といっても有意義
な時間ではあったが)尾行に変化があったので内心わくわくして云った。

 「うむ、そうじゃな」幸造は言葉少なだ。撒かれないよう一定間隔をあけ
て後を追う。

 どうやら、リンは墓地へ向かっていた。 ミウラたちも気付かれないように
見張る。

 「あそこにはリンの家の墓があったはずじゃ。だが滅多に行かないはずじゃ
が」幸造も訝しんだ。

 「あれ? なにか、ごそごそしてるようですよ」ミウラの云う通り、リンは
お墓の中に何かを隠したようだ。

 「おそらくアレじゃな。こんなところに隠す意図がわからんが、まあ取引
相手に指定されたのかもしれんな。とりあえず尾行は続けよう。ほらリンが
帰っていくぞ」幸造のいう通り、リンは、そそくさと墓地を後にする。

 「やはり置いて行ったな。発信機の反応が墓地に残っておる」

 だが、幸造はそっちは放っておいてリンの後をつけることを選んでいた。

 「いいんですか? 相手先に持っていかれますよ?」ミウラの心配をよそに
幸造はどんどん進んでいった。

 「いいんだ、何とかなる。ちょっと細工もしてあるし。それより、リンを
見失わないようにしたい」 幸造の語調が老人のそれから少し軽快になって
いる。行動的になった現われであろうか。

 また、バイクのリンを車で追い続けてしばらく時が流れていた。

 食料を調達するためリンが休憩している間にミウラは傍らのコンビニに入っ
た。これまでは幸造に任せていたが、ミウラが率先して買出しに出たのだ。

 ミウラはその時、店内であるものに目がいった。そしてそれもついでに買っ
て車に戻る。

 戻ったミウラはいきなり、幸造に向かって咎めるようにこう云った。
 「どういうことです? ここのコンビにはこんなに古いものを売ってるんで
すか? それともこれは正しいのですか?」

 ミウラが見せたのは今日の新聞だった。そこには30年以上前の日付が入っ
ていた。


 (続く)

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