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■ニュースの時間■
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「嘘八百」。偽物の茶器を巡ってドタバタが展開されるこの映画を安倍晋三首相が最近、鑑賞したという。古美術にフェイクは付きものだが、国政の場では厳に慎まなければならない。だが、森友学園疑惑を巡る国会論戦は、ウソやごまかしにまみれているのである。
「籠池さん、これは真っ赤なウソ、ウソ八百じゃありませんか」
映画鑑賞翌日の2月5日、安倍首相は衆院予算委員会で、前森友学園理事長の籠池泰典被告(詐欺罪で起訴)について、こう言い放った。森友学園疑惑を追及された場面での、首相答弁を構成する要素は、大要次の五つに分類される。
(1)籠池被告の発言の変遷や些末(さまつ)な事実誤認をあげつらって「籠池はウソつきだ」と言外ににおわせる
(2)「籠池発言を事実として政権を批判した」と野党への逆恨み
(3)『朝日新聞』を中心にした報道批判
(4)聞かれたことをはぐらかしながら(1)〜(3)を繰り返す時間稼ぎ
(5)ヤジに過剰に反応
――の五つだ。
5日の衆院予算委から、首相答弁を抜き出す。
「安倍晋三記念小学校、こう籠池さんが申請した。これを朝日新聞が事実のごとく報道しましたね。籠池さんが考えた名前だから当然そうだと思ったら、実は開成小学校だったんですよ」
「民進党の福島さんがそこに座って『これ、安倍晋三記念小学校と申請されましたよね(中略)そこで忖度(そんたく)が生まれたんですよ。それを認めなさい』と私を追及したんですよ」
何のことやら、さっぱり分からない方も多いだろう。話は昨年5月にさかのぼる。財務省はこの時期、森友学園が2013年に提出した国有地取得の要望書類を開示。そこに含まれていた小学校の設置趣意書は、概要はおろか校名までもが黒塗りにされていた。
「福島さん」とは、福島伸享(のぶゆき)前衆院議員。昨年5月8日の衆院予算委で、「安倍晋三記念小学校だったのではないか」と黒塗り部分について、追及した。当時の同省理財局長、佐川宣寿(のぶひさ)・国税庁長官は「タイトルも含めて学校の経営方針なので、不開示情報とした」と答弁している。
福島氏は昨年10月の衆院選で落選。選挙が終わった11月になって同省は、黒塗りを外した趣意書を開示したが、校名部分は「開成小学校」となっていた。
同時に政権側は、この一件についての『朝日新聞』の報道姿勢に対し、反撃を開始。次世代の党から自民党に移った和田政宗参院議員が、フェイスブックで朝日批判を書き込むと、安倍首相がそれをシェアし、“政権寄り”で鳴らす『産経新聞』がそのことをニュースとして報じた。
安倍首相に名指しされた福島氏が反論する。
「質問の前日、事前説明に来た財務省の担当者から『黒塗り部分の長さから安倍晋三記念小学校ではない別の校名』と聞いていました。だから、断定はせず『その名前だったからこそ、さまざまな忖度がなされ、特例措置が講じられることになったんじゃないですか』と質問しています」
選挙終った途端に反撃の姑息 そもそも、福島氏の質問の趣旨は、国有地の交渉にあたる近畿財務局が早い段階から、学園が安倍首相と何らかの関係があると認識していたのでは、という指摘だ。福島氏が続ける。
「籠池さんは当初、大阪府に『安倍晋三記念小学校』の校名で設立を打診し、変更を求められています。この話は昨春、府の担当課長から民進党の調査チームが確認しました。近畿財務局も、同様の打診があって認識していたはずで、それを隠すために校名を黒塗りしたのです。総理にとってはよほど触れられたくない話なのでしょう。私という敵がいなくなった途端、産経と歩調を合わせて反撃してきたわけです」
ちなみに、福島氏の質疑を伝える『朝日』(昨年5月9日付)の書きぶりはどうかというと、見出しに「安倍晋三記念小学校」という文字はなく、記事本文でも断定は避けている。その上で、まだ逮捕されていなかった籠池氏の証言として、「安倍晋三記念小学校と表記した」と伝えた。
財務省がかたくなに情報開示しなかった当時の状況を考えると、妥当な取材・記事構成と言えるだろう。
政策コンサルタントの室伏謙一氏は「不都合なことを聞かれると逆上し、まともに質問に答えない。歴代の首相の中でも特異です」と指摘する。
「校名の問題は、開示対象となった文書で『開成』となっていたという話にすぎません。対象外の内部的な文書でどうなのかは証明しきれておらず、それで疑惑が晴れたわけではない。特定報道機関への執拗(しつよう)な批判は、萎縮を招く恐れがあるし、品位にも欠けます」
前出の首相答弁は、立憲民主党の逢坂誠二衆院議員の質問に対するもの。首相の妻昭恵氏が最近、訪問先で「『私が真実を知りたいって本当に思います。何にも関わっていないんです』というふうに語ったと報じられているが、どう思うか」という質問だが、それには直接答えていない。
37分の質問時間中、この答弁に費やされたのは4分超。そればかりか、最後にこう言ってのけた。
「証人喚問まで皆さんが要求をしておられますから、私も少し丁寧に答弁をさせていただいたところでございます」
民進党の杉尾秀哉参院議員は、こう憤慨する。
「都合のいいことだけを長々としゃべって『丁寧な説明』とは驚きます。国民が求めているのは、ことの真相に迫る納得できる説明です。おまけに、最高権力者でありながら、国会で籠池被告をウソつき呼ばわり。推定無罪の原則を無視しています。総理としてというよりも、人間として問題でしょう」
野党が繰り返し、佐川氏と昭恵氏の国会招致を要求しているが、与党側はかたくなにこれを拒否。ただ、公明党の井上義久幹事長は2月2日、「現職の理財局長が答え、それを超えるようなことがあれば現場で協議していく」と述べた。
政府関係者が解説する。
「佐川氏招致という選択肢も捨ててはいないということです。国会中継やニュースで連日、総理が気色(けしき)ばんだり、しどろもどろになったりしている場面を流されると、やはり政権にとってはマイナスですから」
佐川氏罷免を求める署名集めを進めた市民グループの呼びかけ人で東京大名誉教授の醍醐聰氏は、財務省による情報隠し疑惑を厳しく指弾する。
「会計検査院の検査報告直前に、新資料が見つかったなどというのは茶番もいいところで、故意による情報隠しである可能性が高い。その財務省を代表して不真面目な、人をなめたような答弁を続けた佐川氏が責任を問われるのは当然です」
世論調査では7割がこの問題について納得していない。「そのうち忘れる」は到底通用しない悪手なのだ。
(本誌・花牟礼紀仁/河野嘉誠)
(サンデー毎日2月25日号から)
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菅直人質疑
「安倍総理は、5月20日の自らのメルマガで〜海水注入を止めたのは当時の菅総理だと、国民に発信して、私に対して、国民に謝罪して、直ちに辞任するようにと要求されました。お尋ねします。このメルマガは総理自身が発信されたものですね」 アレ「そうではありますが、本件についてはですね、私の就任前のメルマガに関することであり、菅議員から、これ、提訴された、私的な民事訴訟に関する話であるため、内閣総理大臣として国会の場でお答えすべきものではないと思います。
また、既にですね、えー、最高裁で判決が出た、確定したものであり、これ、地裁、高裁、最高裁、私が勝訴、をしているところでございますが、3年半にわたる法廷における議論を、ゼロから、この委員会で、蒸し返すことは、無意味ではないかと、このように思います」
菅「〜事実関係を聞いたんです。
東電は、自らですよ、海水注入は中断してなかったということを、現社長も認められたんですよ。
しかし安倍総理は、中断していたと。そして、それは菅、当時の総理の責任だと。自分が書いたことは認められました。
じゃぁなぜ、こんな間違った情報を書いたんですか?」
アレ「これはもう、訴訟、をされてですね、これは、既に、判決が、出ている、こと、でございまして。個人的に、いわば、私が総理になる前、の判断、に、書いたことについて、ですね、えー、菅、氏から、これ、訴えられた、わけで、ございまして。えーこれ、地裁においても、高裁においても、最高裁においても、私は勝訴をした、もの、で、ありまして。では、判決の判断、なぜ、私が勝訴をしたか、という判決の判断、でございますが、判決文から抜粋を致しますと(約1分半、判決文抜粋を朗読)いずれにせよ3年半ですね、ずっとこれは、私も総理でありましたから、相当な時間を、裁判の手続きにとられた、わけでございますが、既にこれ、結果が出たことでありますから、今、私は、総理大臣として、総理大臣としての行為に対して、答弁をする責任をおっているところでございますが、この問題を、またゼロから蒸し返してですね、ここで議論をすることは、非常に非生産的と言うか、無意味ではないかと、このように考えております」
一個前の
また、既にですね、えー、最高裁で判決が出た、確定したものであり、これ、地裁、高裁、最高裁、私が勝訴、をしているところでございますが、3年半にわたる法廷における議論を、ゼロから、この委員会で、蒸し返すことは、無意味ではないかと、このように思います」
と内容は全く同じ。無意味に長くしただけ。
じゃぁなぜ、こんな間違った情報を書いたんですか?
という質問に何も答えていない。
こんな答弁じゃ、質問者は怒るよね。
菅「事実関係と評価とは違うんです。確かに最高裁で、私の名誉棄損のことについては却下をされました。しかし、安倍総理はそれよりも先だって、私が一審で要求したメルマガの削除は、二審の途中に、自ら削除されております。
つまり、私の要求の半分は、認められているわけであります。〜安倍総理は、当時、海水注入が中断されたと書かれていますが、それは間違っていたんですね?」
アレ「あのぉー、まずですね、バックナンバーを削除したことについて、菅、議員のですね、理解を示されたわけでありますが、それは、違うんです。菅議員から提訴された本件民事訴訟では、3年半にわたり、これ、地裁・高裁・最高裁、これ、こちらも相当費用がかかるわけでありますが、弁護士と相談しながらの書面作成など、訴訟対応に相当の時間をさくことに、総理大臣として、職務が、ある、わけでありますが、この訴訟に対して対応、相当時間を割かざるを得なかったのは事実でありまして。内閣総理大臣としての職務にも、支障が出る懸念があったわけでありまして。この事案を踏まえまして、総理の職務に専念できるよう、紛争の未然防止の観点からご指摘の、これ、菅総理の記事だけではなくて、ま、菅総理が、訴訟をされましたから、同じように訴訟をする人が出てきてもですね、え、これ、たとえ、完全無罪、というか、私、は、そ、勝訴をしたんですが、いちいち勝訴をするとしてもですね、他の人から何か、そういう人が出て、こざるを、来るかもしれない、言う、リスクを、これ、えー、菅さんの例があったわけですから、事実。これ、地裁、高裁、最高裁で勝とうともですね、この間、私も相当それで、に、このぉー、し、忙殺される、わけでありますから、これが、ほかにも、こういう件が、出ることを防ぐためにですね、全てのバックナンバーをですね、これは、総理として、過去のこの、発言については削除をさして頂いたところでありまして。えしかし、削除をした、あとも、訴訟は継続しており、私は、もちろん逃げも隠れも、し、していない、わけでありますが。ま、その上で、事実関係については、最終的に、これ、責任をとれ、と言うことで、私に対して、訴訟を、起こした、元総理が、現職の総理大臣を訴えるという事態になっ、ったんですが、最終的に最高裁で確定した判決において、私がメルマガで書いた内容の主要な部分は真実であると認められるとされており、私の主張が認められたものと考えております。でー、既にこれ、最高裁で、出た、このー判断、でございますから、この、いわば、私が総理大臣として行ったこと、についてですね、ここ、あるいは、行おうとしていることについて、このま例えば、予算とか、条約等々について、ここでお答えする、答弁をする義務は、ま、ございますが、その前の話について、私的な訴訟について、しかも司法の判断が出ている事について、これ以上議論すること、または一から議論をすることは、私は、意味がないのではないかと、このように申し上げたいと思います」
ながい答弁だけど、意味があるのは赤い部分だけ。やっと正面から(?)答えたよ。
要約すると、こういうやりとりだ。
菅「海水注入を止めたのは当時の菅総理だと、国民に発信した。このメルマガは総理自身が発信されたものですね」
アレ「そうであります」
菅「東電は、海水注入は中断してなかったということを、現社長も認められた。
安倍総理は、当時、海水注入が中断されたと書かれていますが、それは間違っていたんですね?」
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多くの人が、あちこちでこの事案についての記事を読んでいるはずなので「またか」との印象を与えるかもしれないが、加害者やその支援者は、この件を皆が忘れてくれるのを何より待望している。ならば、繰り返し言及するしかない。 ジャーナリスト・山口敬之がジャーナリスト・伊藤詩織をレイプした事件は、検察審査会で不起訴相当となったが、複数の疑問点が放置、あるいは隠蔽されたままである。ホテルに連れ込む防犯カメラの映像やタクシー運転手の証言等をもとに請求された山口への逮捕状が、逮捕に踏み切る直前、かつて菅官房長官の秘書官だった警視庁・中村格刑事部長(当時)の判断で止められた。このことは、中村自身も認めている。
山口のこれまでの著作を読むと、安倍晋三首相から「山ちゃん、ちょうどいいからさ、麻生さんが今何を考えているかちょっと聞いてきてよ」(山口敬之『総理』)と、麻生太郎への言付けを頼まれてホテルの部屋を訪ねていくなど、ジャーナリストというより伝書鳩と思える仕事っぷりだが、安倍政権を力の限りで持ち上げ続けてきた山口は、この事件の後でも、権力中枢との至近距離を保っている。そのポジションが生む余裕があるからなのか、雲隠れから復帰したネット番組『報道特注』で、「(事件のことを)もし、知らない方がいたら、ネットなど検索しないでおいていただけると!」と漏らして収録スタジオの爆笑を呼び込む、なんてことが出来てしまう。
被害者の伊藤詩織は、手記『Black Box』を刊行した。その手記を受けて、山口も手記を発表した。発表媒体は、自分の身をいつまでも守ってくれる『月刊Hanada』で、そのタイトルは「私を訴えた伊藤詩織さんへ」とある。この山口の手記を読んだ伊藤は、「私が声を上げたのは、彼と闘うためではなく、沈黙したら、同じような被害者がまた出てしまう。性暴力をオープンに話せる社会にし、司法や捜査システムを改善したいため」なのに、「『私を訴えた伊藤詩織さんへ』と手紙風になっていたことにはびっくりしました」(『AERA』2017年11月13 日号)と答えている。自分に向けられる非道な声や視線に耐えながらも、事実を淡々と記した執念の1冊に対し、山口の手紙風手記、つまり感情(と権力)で事実を踏み潰そうとするその手記の方法は、後述するけれど、彼の支援者にも共通する暴力性である。
双方の手記が発表された後、山口はFacebookで実父が入院したことを報告し、父が体調を崩したのは、今件を問題視する発言や記事を書いた「自称ジャーナリスト」達のせいだと責め立て、「私は父の内蔵から出た、大量の鮮血の色を一生忘れません」と記している。山口の実父の体調が回復することを祈念するが、伊藤がただただ事実の解明を求めているのにもかかわらず、そこで投げられた問いに答えず、記者会見にも応じず、一方的に感情を垂れ流す手記を記した上で、実父の体調不良をジャーナリストのせいにするのは、あまりにも説得力に欠ける。
山口のFacebookの投稿によれば、彼の父は、息子が根も葉もない言い分に苦しめられていると感じているようだが、根や葉のそれぞれを理論的に否定せずに放っておくからこのような状況におかれているわけである。手紙風の感情論で無罪を主張する彼は、たとえば、レイプされた後に彼女から送られてきた業務報告メールについて、「これが、被害者がレイプ犯に送る文面でしょうか?」と分析しているが、レイプの被害者が必死に平静を装い、強姦された事実を自身の記憶から抹消しようと試みることを知らないのだろうか。
説明不足の点はたくさんあるのだが、彼の手記、そして、彼の弁明の機会を与えた『月刊Hanada』の動画を見て、突っ込むべきところをいくつかに絞って列記する。
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「あなたはスーツケースから、私のTシャツのうちの1つを選び、その場で素肌に身に着けました。覚えていないとは言わせません」
「結局、私はそのTシャツを未だに返してもらっていません。そのTシャツの存在を認めると、自分の主張の辻褄が合わなくなるからですか?」 (山口敬之「私を訴えた伊藤詩織さんへ」『月刊Hanada』2017年12月号)
山口は、伊藤がレイプされていたならば絶対にしないはずの行動として、伊藤が翌朝、山口のTシャツを借りた行為をあげた。これをひとつの証拠に、あれは合意に基づいた性交であったのであり、「あなたの強い被害者意識は最初からあったのではなく、あとから時間をかけて醸成されたものだということになります」と力説している。伊藤の主張の中には、そのTシャツについての記載がなく、それは「Tシャツの存在を認めると、自分の主張の辻褄が合わなくなるからですか?」と伊藤を半ば挑発している。山口の手記だけを読めば、そうか、伊藤はそうやって都合良く事実を加工しているのか、やっぱりおかしい、と思うはず。『月刊Hanada』の常連寄稿者の復帰作でもあるこの手記を、多くの読者が信じ込むだろう。見出しには「不都合なTシャツの存在」とも記されている。
だが、『Black Box』を読めば、彼の指摘がまるっきり嘘であることがすぐにわかる。清々しいほどの嘘だ。なぜならば、「不都合なTシャツの存在」と銘打ったTシャツについて、伊藤は平然と書き記しているからだ。どうして書かないのかと山口、それを書いていた伊藤、こうなると、正しいのはどちら、と比較する以前の問題だ。正しいのは伊藤だ。
激しい痛みを感じて目を覚ました伊藤はトイレに駆け込むと、「そこには何も身につけていない、体のところどころが赤くなり、血も滲んで傷ついた自分の姿が映って」おり、すぐに部屋を出ようとするが、山口は「ごめんね」「ピルを買ってあげる」「パンツくらいお土産にさせてよ」と語り、ショックを受けた伊藤はその場で崩れ落ち、床に座り込んだ。
洋服を探し、ようやく見つけたブラウスは、なぜかびしょ濡れになっていた。「なぜ濡れているのか聞くと、山口氏は『これを着て』とTシャツを差し出した。他に着るものがなく、反射的にそれを身につけた」。それが伊藤にとってどれだけ屈辱的なことだったか。伊藤は自分の部屋に戻ると「真っ先に服を脱いで、山口氏に借りたTシャツはゴミ箱に叩き込んだ」という。伊藤は手記にそう書いている。だから、本当に驚く。伊藤の手記を読めばすぐに分かる話を、山口は「Tシャツの存在を認めると、自分の主張の辻褄が合わなくなるからですか?」と書いている。伊藤は淡々と、Tシャツの存在を認めている。彼の手記がいかに適当なものかが一発で伝わる箇所だ。どうしてこんなに適当なのか。そのままご主張をお借りして、「自分の主張の辻褄が合わなくなるからですか?」と問いたい。
この手の箇所がいくつも出てくる。山口は手記で、当日の夜、「ワシントン時間の午前中、すなわち日本時間の23時過ぎまでに済ませなければならない作業(メール確認やパソコンでの調査・連絡)を複数抱えて」いたために、「神奈川県に住んでいるあなたを送っていったら作業が時間内に終わらない」と判断し、タクシーに乗せ、ホテルに連れて行ったと説明している。しかし、伊藤の手記にあるタクシー運転手の証言を読むと、女性(伊藤)は運転手に「目黒駅へお願いします」と言い、駅の近くまで来ると男性(山口)が「都ホテルへ言ってくれ」と言った。女性は「その前に駅で降ろしてください」と告げると、男性は「まだ仕事の話があるから、何もしないから」と言ったという。伊藤の手記にあるこの第三者の証言について、山口は言及していない。
山口は今件を問題視する発言や記事を書いた書き手を「自称ジャーナリスト」と称したが、これもまた、そのままお返ししたくなる。ジャーナリストの弁明として、あまりにも稚拙だ。
「彼女が(タクシーで)ゲロ吐くわけですよ。それでホテルに行ってですね、ゲロ吐いたから少しはまあ落ち着いて歩いてですね、荷物持ってですね、彼の部屋にいく、そこでまたいきなり吐くんですよ。部屋中に、あとトイレに。で、そんな人をさ、強姦しようと思う? 普通。いやー、気持ち悪いですよ」
(花田紀凱「月刊Hanada編集長の『週刊誌欠席裁判』」2017年10月23日公開)
この手記を載せた『月刊Hanada』の編集長・花田紀凱がYouTubeチャンネルを設けており、その場で山口の潔白を訴えていた。その主張が、上記にあるような、ゲロを吐くような女性を強姦しようと思うわけがない、である。言わずもがな、主張、と言えるほどのものではない。山口は手記に、そこら中に吐いた伊藤について、「私はあなたのあまりの痴態に怒り呆れました」と記しているが、そもそも、伊藤の手記では、ホテルのハウスキーパーの記録に「ホテルの部屋に吐しゃ物があったという記録はみつからなかった」と、吐いた行為自体が確認されていなかった、とある。
花田は上記のように山口をかばったが、しかし伊藤ではなく、山口自身も性交したことを否定していない。「痴態に怒り呆れ」たくせに、性交に及んでいる。山口の手記では、性交に及ぶ様子については、「ここから先、何が起きたかは、敢えて触れないことにします。あなたの行動や態度を詳述することは、あなたを傷つけることになるからです」と、人情派気取りの筆致で逃れようとしている。それもそのはず、山口は伊藤とのメールのなかで、性交に及んだことを認めているから、詳述できないのである。
伊藤の手記には「あなたのような素敵な女性が半裸でベッドに入ってきて、そういうことになってしまった」と山口から送られてきたメールが載っている。このメールは伊藤の手記が発売される前の週刊誌報道の時点で散々報道されている。花田は山口をかばうならばもっと他の方法を考えるべきだっただろうが、あろうことか、ゲロを吐いた女なんて強姦しないよね、を理由にしている。山口は性行為に及んだことを否定できていない。
避妊具なしで性行為に及び、妊娠の恐怖におびえる伊藤に出したメールが、「精子の活動が著しく低調だという病気です」である。つまり、避妊具なしで性交したことも否定していない。「そんな人をさ、強姦しようと思う? 普通。いやー、気持ち悪いですよ」という花田の答弁は、もしも山口を支えようとしているならば、質が悪すぎる。
このYouTubeチャンネルでは、「デートレイプドラッグ」を混入された可能性を記した伊藤の指摘を糺弾しているが、その話をした後、花田と、トークの相手であるオンザボード代表・和田憲治(数多くの右派系言論チャンネルを運営)と、このようなやりとりをしている。そのまま書き起こす。
和田「(読者から)絶対買うわ、というふうに(コメントがきている)。……どっちのことなのか(笑)。薬のことなのか、『月刊Hanada』の来月号のことなのかわからないですけど、絶対買うわ、と」
花田「雑誌でしょうね(笑)」 (両者大笑い。スタッフも大笑い。)
和田「……書き込みがありました」
花田「ネットでしか買えないんだ、それは。それは一般に売ってないから」 ただただ呆れる。伊藤の切なる訴えが総じて虚偽だと訴えるならば、それだけの情報を並べ、ひとつずつ細かく虚偽であると指摘し、(彼らなりの)真実を提示するべきではないのか。もちろん、そんなものを提示できないからこそ茶化して嘲笑するという選択肢にすがっているわけだが、本人だけではなく、雑誌を編纂する側までこうやって訴えを潰していることが、一応、同じ出版の世界で生息している人間として、とてつもなく恥ずかしい。
山口も、彼を支援する人達も、事件が忘れられていくことを待ちこがれている。だからこそ彼らは事件の詳細を語るのではなく、茶化すことに専念する。ならば、繰り返し指摘する必要がある。山口の手記は、何の弁明にもなっていない。少なくとも、伊藤がそうしたように、記者会見に臨むべきだ。自分をかばってくれる雑誌と、なかばプライベート空間のFacebookのみで反論する人間を「ジャーナリスト」とは呼べない。
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