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前回は、
窃盗は「こっそり盗む」ってとこまで確認した。
仲本が持ってきた「盛りそば」は、警察署内で、多くの警察官が見ている中で、いかりやに渡された。
「こっそり盗む」とは、とても言いがたい。
しかし「こっそり」は、絶対条件なのか?
例えば、置き引きを考えてみよう。
道路で、鞄を路上において、友達と話し込んでいて鞄から目を離している間に、こっそり鞄を持ち去っていく。これが典型的な置き引きである。 では、
道路で、鞄を路上において、友達と話し込んでいて鞄から手を離しているが、目は離してない時に、隙を突いて鞄を持って、走って逃げたら、どうだろう。
被害者は、すぐに気がつき「どろぼう!」と叫んで走って追いかけるだろう。でも、犯人がボルト並みに足が速かったら、逃げ切ることが出来るだろう。
被害者が叫んだように、これも「どろぼう」である。置き引きと呼ぶか呼ばないかは、個人の自由、どうでもいい話。窃盗になることは、誰も文句はないだろう。
つまり「こっそり」というのは、おおくの場合、窃盗はこっそりだが、絶対条件ではない。
仲本からいかりやが盛りそばを受け取ったのは「こっそり」ではないが、窃盗になる可能性は皆無ではない。
しかし、ここで、一回、立ち止まろう。
いかりやは、仲本から、盛りそばを奪い取ったのではない。こっそり取ったのでもないが、隙を突いて持ち去ったのでもない。
仲本が積極的にいかりやに渡しているのである。
ちょっと難しい言葉を使うと
窃盗は、他人の財物の占有を奪う犯罪だと言われる。
窃盗は、他人の財物の所有権を奪うモノじゃないのか。普通の人は、そう思うだろう。
しかし、考えてもみて下さい。
犯人を捕まえて、犯人が被害品を持っていたら、被害者に返すでしょ。
なぜ返すの?
それは、被害品が被害者の所有物だからでしょ。 つまり、窃盗によって、所有権は被害者から犯人に移ってはいない。
窃盗は、所有権に対する犯罪じゃないんだな。
(もちろん、所有者は、その物を支配する権利を持っているのに、窃盗されると支配する権利を行使できなくなる。盛りそばで言えば、食べる権利を持っているのに、食べることが出来なくなる。そういう意味で、所有権を制限される被害はあるが、所有権そのものを失うことはない)
話を元に戻そう。
窃盗は、占有に対する犯罪だ。と説明した。
占有というのは、分かりやすく言う「その物を持っていること」。難しく言うと「その物を事実上支配していること」を言う。
ある人が、ある物の所有者であっても(所有権を
持っていても)、その物を事実上支配していなければ、その物を使ったり、鑑賞したり、食べたりする。つまり所有者として振る舞うことが出来ない。
所有者にとって、占有とは、とても大事なことなのだ。
窃盗によって、所有権を奪うことは出来ないが、占有を奪うことが出来る。そして、占有を奪われることは、所有者にとって、所有権を奪われるのに近い被害なのである。
犯人が捕まらず、被害品が返ってこなければ、所有権を失ったのと同じことになるし、犯人が盛りそばを食べてしまっても所有権を失うことになる(所有権の対象物の消滅)。
いったん休憩 |
物語の中の犯罪
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詳細
コメント(2)
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いかりやと仲本の会話の何がおかしいのか?
仲本が「どろぼう」と怒鳴ったところから、点検してみよう。
「どろぼう」というのは通常「窃盗」を意味する言葉だろう。 仲本が、いかりやに対して「あなたは、窃盗犯人ですね」と言ったことになる。
では、いかりやは、本当に窃盗犯人なのだろうか?
窃盗は、刑法235条に規定がある。
窃盗の対象は、他人の財物である。
窃盗の態様は、窃取である。
対象から確認してみよう。
この事件の対象は、そば屋が配達してきた「盛りそば」である。これは、誰のモノか?
そば屋に在庫として置いてあるそばは、そば屋の財物である。これに異論は無いだろう。 仲本からの注文に応じて、1人前のそばを取り出しゆで始めた。これは、仲本に配達するためのそばだ。これは、もう仲本のものになることが確定した。じゃあ、この段階で仲本のものになるのか。
民法上、そういう解釈も不可能ではないが、多数者の賛同を得る解釈ではない。
岡持に入れて警察に出掛けた時点でも、まだ、そば屋の財物だ。
多数の考え方に従えば、そばを仲本に引き渡した時点で、そばは仲本の財物となる。
代金を支払ってない、という点もあり、代金を払って初めて所有権が移転する、という考え方も存在しうるが、それも少数の考え方。
そば屋の店内では、配膳されたら前金を払わなくても、そばを食べて良いだろう。つまり、配膳(引き渡し)時点で、客のモノとなったのだ。(立ち食いそば屋は別。食い逃げの危険があるから、代金先払いが原則となる) 本件のそば屋も、代金後払いを許容している。
つまり、代金支払は基準としなくてよい。
ということで、そば屋が、警察に盛りそばを配達に来た時点で、盛りそばはそば屋の所有する財物であった。
ながながと述べてきたが、盛りそばは、そば屋か、仲本の財物であり、いかりやの財物である可能性はないので、刑法235条が規定する「他人の財物」に当てはまることに疑問の余地はない。
次に、態様である。窃取である。
「取」は分かりやすく、取っちゃうことである。
「窃」はどういう意味か?
あまり考えたことがない人が多いのでは?
wiki先生に聞いてみよう。
と思ったが、wiki先生に「窃」はなかった。
しかたないので、コトバンクにお世話になろう。
「窃」一文字でも「こっそり盗み取る」という意味があるらしい。
2番目の意味を見ると「ひそかに」という意味がある。そういえば「窃視」こっそり隠れて見る。という言葉もあるね。
ということで、窃盗は「こっそり盗む」が基本的な
意味だ。
スリ、置き引き、空き巣、みんな見つからないように、モノを盗る態様だ。 ちょっと休憩。
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冒頭の刑事溜まり部屋(?)での会話。
と:部屋の中で一番のベテラン刑事(いかりや長介)が、後輩刑事に自慢話などをしている。
そば屋:おまちどおさま。中西さんの盛りそばです。
いかりや:おーし。こっち、こっち、こっち。
ご苦労さん。ご苦労さん。
と:そばを受け取る。
そば屋:180円です。
いかりや:あいつから貰ってくれよ。
そば屋:どうも!
と:そば屋退室(中略)
と:そばを食べようとするいかりや。そこに入ってくる中西(仲本工事)。いかりやから、そばを取り上げて
仲本:どろぼう!
いかりや:どろぼうとは何だ。人聞き悪いな。
仲本:人の注文したモノを横取りして。刑法38条、252条。自己の占有する・・・
と:仲本の言葉を遮って
いかりや:わかったよ(後略)
さて、この会話の中に、可笑しな部分があります。
それは、なんでしょう。
理由も付けて、お答え下さい。
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今日は、裁判を離れて、事件の背景事情を整理してみよう。
背景事情は、ドラマ進行に従って、徐々に明らかになるのだが、面倒くさいので、一括して整理しておくことにする。
被告人と被害者は夫婦だ。
しかし、恋愛結婚とは言いがたい。
被害者は大学教授、被告人は、そこで院生だか助手をしていた。
大学の研究室で、被害者は美人の被告人をレイプし、そのまま、なしくずしてきに結婚に持ち込む。
家庭では、亭主関白のモハンというか、行き過ぎた亭主関白であった。
被告人「滝川が与えた役割以外に私が勝手な時間を持つことを嫌いました。例えば趣味を持ったり交際を持ったり、子どもを産むことさえ許してくれませんでした。仕事に差し支えるからと言って」 虐待とも言えるものだった。夫婦仲が悪かったのは、想像に難くない。
被害者は、大学で教鞭をとりつつ、執筆活動もしていた。
出版社の担当者が、幸田だ。
幸田には、婚約者がいた。
しかし、被告人が虐待を受けている事実を知り、同情し、いつしか恋慕の情を持つようになっていた。
被告人は、被害者に愛情を感じること無かった。他方で、若くて、逞しく、虐待を受けていることに同情して優しく接してくれる幸田に愛情を抱いていた。
被告人が幸田に虐待を打ち明け、感情をぶつけたときに、幸田は被告人を抱きしめる。抱きしめただけなのだが、それを家政婦(?)に目撃されてしまう。
では、二人は不倫関係にあったのかというと、少なくとも、事件の前は、肉体関係はなかったし、お互いの気持ちを確認し会うこともなかった。
被害者は、2億円の生命保険に加入していたが、保険を勧めたのは幸田であった。
幸田は、2000万円程度の保険を勧めたのだが、何故か、被害者は2億円の保険に入る。驚く幸田。驚く被告人。
2億円もの保険に入ると掛金もバカにならない。生活費を圧迫する。
被告人は言う。生活費を少なくして、私を困らせるつもりなんですわ。
山登りは、被害者の趣味であった。
幸田も被害者に誘われ、2年ほど前から山登りを始め、5回ほど、被害者をパーティを組んで山に登った経験がある。
被告人も、結婚後、被害者とともに山に登った経験が何度もある。
弁護人は、二人の関係を疑われると裁判に不利に働くと、二人で会うことを禁じる。
しかし、被告人は、裁判の打ち合わせと称して、幸田を呼び出す。
そして・・・♡(ほぁ〜ん)
しかし、そのことは、弁護人には秘密にされる。
幸田の婚約者は、二人の関係を疑う。そして、幸田の部屋で被告人と鉢合わせする。
幸田と婚約者との関係はどうなるのか?
幸田は被告人と結ばれるのか? そもそも、裁判で被告人は有罪となるのか?
興味を掻き立てたところで、今日は、オシマイ。
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さ、おっぱじめるぞ。
第2回公判
証人幸田の証人尋問
検察官(封筒から1枚の山の写真を取りだして)「遭難したのは、この写真のどのあたりですか?」
幸田(岸壁の一部を指差して)「この辺りです」
検察官(もう一枚、拡大写真を示し)「つまり、ここですな?」
・・・おい、どうやって、調書に残すんだよ。
そもそも、その写真は証拠採用された写真なのか?
甲何号証なんだ? 検察官「被告人がナイフでザイルを切ったところは見たのですか」
幸田「さあ。それがよく分からないのです。夢中でしたから」
検察官「見たのか?それとも、見なかったのか。そんな簡単なことが、なぜ答えられないんですか?」
幸田「見ませんでした」
検察官「見ない。はー。先刻、証人は、証人の位置から滝川氏の姿は見えなかった。しかし、被告人の姿は見えた。とそう言いましたね」
幸田「はい」
検察官「それで、ザイルを切ったところは見えなかったんですな」
幸田「なにぶん、夢中でしたから」
(中略) 検察官(証拠品のザイルとナイフを示し)「使用したザイルと、被告人が切断したときに使ったナイフ。これに間違いありませんね」 ・・・おいおい。幸田証人は「見てない」と証言しているんだぜ。ザイルを確認するのは良いとして、ナイフを確認するのは筋違いってもんじゃありやせんか。
証人・長野県警刑事部長の証人尋問
刑事部長「ザイル切断の前後の状況に、被告人の供述に曖昧な点がありました。追及しましたところ、十分な手を尽くさずして、ザイルを切断したと認められたのであります」
検察官「それは、つまり、被告人に殺意があって切ったということだね」
弁護人「裁判長、異議があります。検察官の質問は証人に推測を求めております」
裁判長「検察官は、質問を変えるように」
検察官「ただ今の質問を撤回します」
・・・おいおいおいおい。
こら!弁護人!異議の理由は、誘導尋問じゃないのか?
それから、裁判長!異議を受けて、すぐに検察官に注意するんじゃなくて、右陪席、左陪席と合議して(通称、首振り)合議の上の決定として、異議を採用し、尋問を変えるよう指揮しなさい。
検察官「その他に、証拠となる状況は?」
刑事部長「東京に照会中の報告が入り、被害者が境遇に不相応の金額の生命保険を契約していることが判明いたしました。
さらに、幸田修と被告人との関係も親密以上だったという聞き込みも、事件当時の三人の関係を裏付けるものとして、逮捕に踏み切ったのであります」
・・・おーい、弁護人!伝聞法則って知ってるか?
この証言は、伝聞ばかりだぞ。
異議を言え。異議を!!!
それから、警察は不倫関係について、証拠を握っているじゃないか。どういうことなんだ?え?
じゃ、この裁判は負けが決まったのか?
第2回公判は、ここまで。
風呂に入るので、さようなら。
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