窓から名古屋城が見える

名古屋在住の管理人が書き綴る日記、読書・映画・岩崎宏美等に関するメモです。

全体表示

[ リスト ]

 何度か、母は私の首を絞めた。
 「節子、一緒に死のう」と言う。
 私は、死ぬのは嫌だったけど、いつも「うん」と答えた。
 母があまりにも可哀想だった。
 母が死んだら私も生きていけないと思った。
 だから、一度も抵抗しなかった。
 何度も首を絞められたが、最後まで締め続けることはなかった。
 もうろうとなった意識の中で、母の泣き声だけが聞こえていた。
 父も母も、泣いてばかりいた。
(辛淑玉著『鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)――「楽園」に帰還した私の家族』解放出版社、2003年、初版、p.46)


 北朝鮮関連の報道が続いている。

 一昨年前だったか、東京の知人から「今度、ある人と辛淑玉さんを引き合わせる調整役を引き受けてしまった。僕もその人も、辛さんについて詳しく知らない。会う前に読んでおいた方がよい著作は何だろうか」と相談を受けた。
 僕は、迷わず同書と、当時刊行されたばかりの『怒りの方法』(岩波新書)の2冊を勧めた。

 ちなみに、彼女の著作が岩波から出たという話を聞いた時、正直、驚いた。
 月刊『世界』の毎号の目次を見ると分かるけど、この雑誌は学者でもない在日の人に、大々的に誌面を提供することはしない。
 その一方で、巻頭グラビアでチマチョゴリの少女の写真は掲載する。
 さも、在日問題について力を入れています、とアピールするかのように。
 『世界』にとって、在日コリアンは、巻頭グラビアに載せるだけの「標本」に過ぎない。
 肝心の在日問題の議論に出てくるのは、必ず日本人の学者だ。

 彼女はこうした岩波の体質を知っている。
 その岩波から、新書を出した。
 岩波の体質が変わった、という見方も出来る。
 だけど、僕は、むしろ、彼女なりに言論の舞台のウイングを広げているんじゃないか、と感じた。

 ・・・話が脱線してしまった。
 同書は、国家に翻弄された拉致被害者の気持ちを一番理解できるのは、在日朝鮮人ではないか、との問いかけのもと、戦後の在日朝鮮人を取り巻く歴史と彼女の個人史を重ね合わせたもの。

 個人的に、学生や若い世代の社会人と話すと、在日コリアンの問題について、問題の所在、問題の存在すら知らないケースが多い。
 僕たちの住む日本という国が、これまで在日コリアンに何をしてきて、何をしてこなかったのか。
 どういった悲劇が引き起こされていたか。
 どれだけ多くの人々の血と涙が流れてきたか。
 在日コリアンの問題については、政策論や法律論など法技術的な面では、色々な考え方があると思う。
 だけど議論の前の前提を知る意味で、特に若い人に是非、欲しい1冊だ。
 

この記事に

閉じる コメント(0)

コメント投稿

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

名前パスワードブログ
絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

.


みんなの更新記事